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新入社員研修でおすすめする内容とは?コロナ後の事例や8つのカリキュラム作成ステップも解説

作成者: スタンバイ制作チーム|2022/08/10

1.新入社員研修とは?


新卒対象の「新入社員研修」とは、新しく入社してきた社員を対象にビジネスマナーや業務の知識、スキルなどを指導・育成する研修です。学生気分を抜いてマインドセットし、会社の理念やビジョンを伝えて共感を醸成することを目的に行われます。

ここでは、新卒を対象に行う新入社員研修の目的や行う期間についてみてみましょう。

1-1.マインドセットのスタートラインと捉える

新卒採用の新入社員研修は、まず学生から社会人の意識に切り替えるマインドセットを行うことを目的としています。学生時代にアルバイトの経験がある新入社員は多くても、フルタイムで働くことは初めての人がほとんどです。

そのため、新入社員研修では学生と社会人の違いを知り、社会人としての自覚を持つための教育をしなければなりません。

1-2.会社が何を大切にしているかを教える

新入社員研修の大きな目的は、会社が大切にしているものを伝えることです。企業理念の説明はもちろん、すべての研修を通して会社の価値観を理解してもらうことを目指します

会社が大切にしているものを把握することで、ほかの社員と共通の目標を持って仕事に取り組むことができます。また、業務の中で難しい状況に直面したときも企業理念に沿って判断し、自分の意思で行動できるようになるのです。

1-3.新入社員研修の期間は1~3カ月の会社が多い

新入社員研修の期間は業種や職種によって異なり、事務系や営業職などは1カ月程度と短めなことが多いようです。一方、専門性の高い技術系は3カ月以上と長めになる傾向があります。

最適な研修期間は、研修のゴールをどのように設定するかによっても変わります。職場に早くなじむようにする、ビジネスの基礎的な知識を身につける、事業内容や配属先で必要になるスキルを習得するといったゴールをより具体化して設定すれば、達成するまでにどのくらいの期間が必要かを割り出せるでしょう。

2.新入社員研修で伝えること


新卒の新入社員は社会人としての経験がない人がほとんどで、幅広く多くのことを学ばなければなりません。まず、会社への理解を深めるために企業理念や方向性、事業内容を学ぶ機会が必要です。また、ビジネスマナーやクライアントとの関わり方、職場でのチームワークなどの学びも求められるでしょう。

新入社員研修で伝える必要があることについてご紹介します。

2-1.企業理念 

新入社員研修では、企業の理念や方向性など会社について理解を深める学びが必要です。会社の土台となる理念への理解を深めることで全社員と方向性を統一し、仕事へのやりがいを高めます。

企業理念は経営トップが直接語りかけることで、新入社員の心により深く浸透させることができるでしょう。会社が新入社員に何を求めているかを理解してもらい、目標を明確にすることで、具体的な業務も早く覚えられるようになります。

2-2.具体的な事業内容や組織概要

新入社員は配属先の業務内容に必要なスキルを学ぶとともに、会社全体の事業内容や組織概要についての理解も必要です。

自分が関わる業務が事業内容にどのような影響を与えるのか、会社全体の中でどのような役割を担い、業務を推進できるのかの学びを盛り込みます。自分の役割を知ることは、働くモチベーションにもつながるでしょう。

2-3.クライアント、ユーザーへの企業対応

研修ではクライアントやユーザーとの関わりで信頼関係を築く意義や重要性について理解し、企業の代表として顧客とどう向き合うかの学びも必要です。

特に営業職、接客業の場合、実際に顧客と接した社員のイメージはそのまま会社のイメージとなるでしょう。そのため、顧客の立場に立って仕事をする心構えや、対応のスキルを習得してもらうことが大切です。

2-4.人事制度や福利厚生などの概要と利用法

人事制度や福利厚生など、会社の制度についての理解も必要です。人事制度では等級や評価、報酬など従業員の処遇についての仕組みを知り、会社が従業員に対してどのような姿勢をとっているかを確認してもらいましょう。

また、福利厚生の説明では従業員が受けられる待遇の内容や、モチベーションアップなど福利厚生の趣旨を伝えましょう。利用方法の説明も必要です。

2-5.ビジネスマナー

社会人の経験がない新卒の新入社員には、ビジネスマナーの教育が欠かせません。社会人としての基本的なスキルとして、挨拶の仕方や名刺交換の方法、来客・電話への応対、言葉遣いなどを学んでもらいます。言葉で説明するだけではわかりにくい部分もあるため、ロールプレイングなどによる実践がおすすめです。

ビジネスマナーは形だけ学ぶのではなく、なぜそれらのマナーが必要なのかを説明し、理解してもらうことが大切です。

2-6.職場でのチームワークの意味の理解

職場でのチームワークの意味や重要性を理解してもらうことも大切です。仕事では上司や先輩社員など、年齢や立場の異なるさまざまな相手とコミュニケーションを図らなければなりません。

新入社員研修では「報告・連絡・相談」の方法も含めた相手への伝え方や、社会人としてのコミュニケーション方法についての学びが必要です。座学で身につけるのは難しいため、グループワークやロールプレイングで実際に行いながら習得してもらうとよいでしょう。

2-7.入社1年目でまず身につけてもらいたいスキルの把握

現場に配属されたあとに必要な業務のスキルや、知識の習得も必要です。基本的なOAスキルは多くの業務で使用する機会が多く、新入社員研修で基礎的な部分を習得できるとよいでしょう。

また、以下のスキルは入社1年目で身につけてもらいたいスキルです。

・論理的思考力
課題解決能力
・リーダーシップ
・報連相の仕方
・進捗管理

さらに職種に応じ、傾聴力やタイムマネジメント力などの汎用的なスキルの習得も必要です。座学での理解やOJTによる現場での実践を通じ、習熟度を高めてもらうとよいでしょう。

3.新入社員研修カリキュラムの構築の仕方


新入社員研修は、カリキュラムの作成が重要です。カリキュラムの手法はさまざまな種類があり、研修の目的を達成するため、効果的な方法を設計しなければなりません。

設計の準備では、経営陣や現場へのヒアリングを行うとともに、前年度における改善点のチェックや予算の確認も必要です。新入社員研修カリキュラムを構築する方法について、ご紹介します。

3-1.カリキュラム設計の準備作業 

新入社員研修カリキュラムは、新入社員にどのような役割を求めるかを考えながら設計します。求めるものはなにか、経営陣や現場へのヒアリングを行いましょう。

また、前年度の新入社員にヒアリングし、研修で改善したほうが良い点はなかったかもチェックします。研修は予算の範囲内で行わなければならないため、その確認も必要です。

3-2. 新入社員研修の設計の流れを把握

新入社員研修を設計するには、まずゴールを明確にする必要があります。ゴールを明文化して、研修終了時にどれだけ達成できたのかを評価する方法も考えておかなければなりません。

カリキュラム作成のステップは、以下の8段階で行います。

・新入社員の基礎力を把握する
・研修で身につけてもらいたい項目を洗い出す
・目的とゴールを設定する
・設定可能な研修期間を確認する
・最適な手法を検討する(合宿研修、グループワーク、ロールプレイ、OJTなど )
・カリキュラムを作成する
・新入社員に案内して研修を実施する
・振り返りを行い、報告書を作成する

カリキュラムの設計では、最初に受講者である新入社員がどの程度のレベルなのかを把握しましょう。研修内容は新入社員のレベルによって変わります。

次に、経営陣や現場へのヒアリングを通して研修で身につけてもらいたい項目を洗い出し、目的とゴールを設定します。ゴールを目安に研修期間を決め、目的達成に最適な手法を検討しましょう。

カリキュラムは新入社員を研修に集中させる工夫が必要です。飽きずに最後まで集中できるようにしなければなりません。 

 

4.リモート研修を取り入れるときの注意点

2020年に始まった新型コロナウィルスの拡大は、新入社員研修にも大きな影響を及ぼしています。リモートワークによる新入社員研修を行う企業も増えていますが、これまで集合研修やOJTで行っていた内容をすべてリモートワークで行うのは限界もあるでしょう。

リモートワークでできることと、集合研修で行うことを適切に組み合わせることが必要です。リモートワークで行う研修は主に知識のインプットがメインとなり、フォローが必要なものは会社などに集まって実施するなど分けて行わなければなりません。

そのため、リモート研修を実施する際のカリキュラムは、オンラインで動画やスライドで学習できる部分と、オフラインで知識を深める部分や実技が必要な内容に分けて設計することが必要です。

5.新入社員研修は外注か内製か


新入社員研修は自社でカリキュラムを設計し講師も社員が行う内製と、外部講師や専門業者に依頼する外注の2通りがあります。自社で内製する場合はコストを抑えられ、外注する場合は人事担当の労力を削減できるのがメリットです。

それぞれにメリットデメリットがあるため、自社に合う方法をよく検討して選ぶとよいでしょう。新入社員研修の外注と内製についてご紹介します。

5-1.外注・内製それぞれのメリット・デメリット

外注や内製には、それぞれ良いところ、不都合なところがあります。まず、外注は人事担当や、講師になる社員の負担を軽減できるのが利点です。外注により負担を減らした分、ほかの業務に多くの時間をかけられるでしょう。

専門業者に依頼することでスムーズな段取りができ、教育のプロである講師が担当することで質の高い教育を期待できます。

ただし、外注はコストがかかることがデメリットです。また、外注の場合はカリキュラムが社風に合わない可能性もあります。事前に会社理念や方向性を盛り込めるかを確認しておく必要があるでしょう。

一方、自社で内製する研修はコストがかからず、講師になる社員の成長にもつなげることができます。また、自社の企業理念を浸透させるため、自社ならではの研修内容にすることができるのもメリットです。さらに、自社で行う研修は教育内容を社内で把握しているため、研修後のフォローもスムーズに行えます。

ただし、内製にもデメリットがあります。社員の負担が大きいという点です。新入社員研修は4月の入社後すぐにスタートするのが一般的ですが、4月は人事にとって入退社の手続きなどほかの業務でも忙しくなります。多忙な時期に質の高い研修カリキュラムを用意するのは大変でしょう。

また、社員が務める講師の場合、講師のレベルは必ずしも高いとは限りません。業務の知識は豊富でも、教えることはあまり得意でない場合もあります。 

5-2.外注するときの注意点

新入社員研修を外注するか自社で行うか迷う場合、研修の目的を考えて決めるのがよいでしょう。以下のような場合は、費用をかけても外部に委託する方が効果を得られる可能性があります。

・研修の準備に必要な人材や時間がない
・ビジネスマナーなど一般的な知識の研修を大人数で開催したい

人材が少なく準備に時間がかけられない会社は無理して内製するよりも、外注してプロに任せたほうが効果的な研修を実施できる場合があります。また、大人数の研修は準備に大きな労力がかかり、外注した方がかえってコストを省ける場合があるでしょう。ビジネスマナーなど一般的な知識の研修であれば業者により内容が大きく変わることもなく、外注しやすいかもしれません。

また、内製できない部分だけ外注するという方法もあります。必要な部分だけ外注することで社内だけではできない研修ができるほか、すべて外注するよりもコストを抑えることが可能です。それぞれのメリットを取り入れることができるでしょう。

その際は、自社でまかなえる部分と、外注でしかできない部分を見極めることが必要になります。また、外注する場合は、企業理念や企業の描く社員像について事前に伝えておき、教育内容に盛り込んでもらうことが大切です。

6.研修を実施する際の注意点


新入社員研修を実施する際には、いくつか注意したい点があります。まず、人権やメンタルヘルスに対する十分な配慮が必要であり、労働時間の管理にも気を配らなくてはなりません。

また、宿泊を伴う場合の宿泊場所の選び方にも注意が必要です。さらに、受講生が興味をもてるような研修の工夫もしてみるとよいでしょう。

ここでは、研修を実施する際の注意点について解説します。

6-1.人権への配慮

新入社員研修の内容によっては、受講者に厳しく対応する場合もあります。学生気分を捨てて社会人として自覚を持つよう、マインドセットの意味で厳しく指導する場面があるかもしれません。しかし、怒鳴りつけるなどパワハラや人権侵害に該当するような研修は、もはや指導や教育とはいえないため、絶対に避けましょう。

パワハラ行為が外部に漏れればSNSで炎上したり、人権侵害による訴訟に発展したりする可能性もあります。企業イメージを大きく損なう事態になりかねません。

業務上、必要かつ相当な範囲を超えた言動には注意し、新入社員の人権に十分配慮した研修を行う必要があります。

6-2.メンタルヘルスへの配慮

新卒の新入社員研修は、受講生のメンタルヘルスにも配慮が必要です。生活環境がこれまでとは大きく変化することでストレスを受けやすく、集中して学ぶために覚えることも多いため、きついと感じる受講生も出てくるでしょう。

これから社会人として活躍するために乗り越えなければならないことですが、研修がきついために離職につながることのないよう注意が必要です。会社側は一人ひとりをよく観察し、ケアしていかなければなりません

6-3.労働時間の管理

新入社員研修であっても会社の指示で行われる強制参加の場合、基本的に労働時間となります。特に新入社員研修は多くの内容を集中的に学ぶため、労働時間の管理には注意しなければなりません。時間が長引いた場合は残業代も必要になるでしょう。

合宿などで研修が数日間に及ぶ場合は、どこまでを労働時間として管理するか難しくなります。研修期間中は労働時間として扱う範囲を事前に決め、就業規則などに明記することも必要です。

6-4.宿泊を伴う場合の宿泊場所の選び方

新入社員研修が宿泊を伴う場合、宿泊場所の選定にも注意が必要です。まず、前提として収容人数や予算に合う場所でなければなりません。

また、新入社員が研修に集中できる施設であることが大切です。そのため、移動をしやすいようにアクセスが良い場所にあること、静かで集中しやすい環境にあることを条件に選ぶとよいでしょう。

6-5.興味をもてる「ユニークな研修」も考慮してみよう

多くの内容を集中して学ぶ研修では楽しんで受講できるよう、ゲーム要素を取り入れるなどユニークなカリキュラムも検討してみるとよいでしょう。ロールプレイングやグループワークなど参加型の研修は自分で考えながら実践でき、飽きずに学習できます。

農業体験やものづくり体験など、さまざまな場所で体験しながら学ぶ研修を取り入れている企業もあります。ユニークな研修を行えば新入社員の満足度が高まり、学びの速度を早めることもできるでしょう。

 

7.新入社員研修に使える助成金


新入社員研修の実施では、厚生労働省や地方自治体が提供している助成金を利用できる場合もあります。助成金を活用することでコストを削減できるため、要件に合えば利用を検討してみるとよいでしょう。

新入社員研修の使える助成金は、以下の2種類です。

・人材開発支援助成金
・社内型スキルアップ助成金・民間派遣型スキルアップ助成金(東京都)

「人材開発支援助成金」は正社員に対し、職務に関連する知識や技能の習得を目的とした訓練をする場合に費用の一部が補助される助成金です。8つあるコースのうち、一般訓練コースや特定訓練コースが新入社員研修に利用できます。基本は座学が対象ですが、一部OJTも認められています。

「社内型スキルアップ助成金」「民間派遣型スキルアップ助成金」は、東京都内の中小企業または中小企業の団体が実施する短時間の研修に対し支給される助成金です。受講者の職務に必要な知識や技能の習得を目的とした、座学の研修が対象となります。

参照元:厚生労働省「人材開発支援助成金
参照元:東京都「人材育成の支援」

 

8.新入社員研修で企業ビジョンへの共感を醸成しよう


新卒の新入社員研修はビジネスマナーや業務の知識をはじめ、多くの内容を教えます。なかでも企業の理念など会社について理解を深める学びは企業ビジョンへの共感を醸成し、仕事のモチベーションを高めるために重要です。

新入社員研修カリキュラムは新入社員に求める内容を明確にし、ステップを踏んで設計しましょう。メンタルヘルスケアにも配慮しながら、自社の将来を担う新入社員の研修を成功させてください。