「人事評価」とは待遇などを決めるために社員を評価する制度で、能力や実績に基づく人事管理を進めるための基礎となり、人材育成に役立つものです。
人事評価の書き方には、本人にとって将来プラスになることを書くなど、いくつかの押さえるべきポイントがあります。
ここでは、人事評価の書き方で押さえるべきポイントをご紹介します。
人事評価は社員が進むべき方向性を具体的に示し、本人にプラスに働く内容であることが必要です。
社員は会社が自分をどう評価しているかを確認することで、目標に向かってモチベーションを高めることができます。マイナスな内容では働く意欲をなくすでしょう。改善するべき点を指摘することは必要ですが、「こうすればさらに良くなる」というように前向きな表現が必要です。
人事評価とは公平に評価されるべきもので、主観を排除して客観的な事実に基づいて評価しなければなりません。
「自分がこう思ったから」ではなく、「具体的にこのような成果を上げた・影響を与えたから」というように、客観的事実の裏付けが必要です。
評価する者の主観に左右される人事評価は公平性を欠き、仕事へのモチベーションも下がってしまいます。
評価基準をわかりやすくするよう、成果はできるだけ数字を使いましょう。よい評価でも具体的な基準がなければ納得が得られず、次の行動に活かせません。目標の数字があれば、実際に出した数字を出して成果を評価できます。
数字にするのが難しい目標の場合は、「顧客の〇%から満足したという反響があった」「仕事の効率が〇%良くなった」など割合を示し、できるだけ達成した内容を数字に表していくとよいでしょう。
評価はすぐに内容を把握できるよう、要点をまとめてシンプルに書くことが大切です。「よくできた」など抽象的な言葉は避け、わかりやすく短い文章を心がけましょう。
シンプルで短い文章であれば、あとで見直す際にも内容がすぐに理解できます。
また、文章は結論から書くようにしましょう。何が言いたいのかわからないと、経営層がチェックするときに評価の視点がわからなくなります。
人事評価はただ社員の能力や功績を評価するだけでなく、今後の仕事に活かし、高い能力を発揮してもらうことが大切です。そのためには、上司が適切なフィードバックを行うことが欠かせません。
改善すべき点を指摘し、何が良くて何が悪いのかをしっかり認識してもらうことが必要です。良かった点は褒め、至らなかった点は改善するための提案を行いましょう。
人事評価を行う目的は、公平な評価基準を構築し、昇給や昇進などの待遇を適切に決めることです。
また、評価基準を明確にすることで会社理念やビジョンなど会社の方向性を示すことができ、社員は明らかになった目標に向かってモチベーションを高めることができます。
人事評価を行う目的について、さらに詳しくみていきましょう。
人事評価を行うのは、社員の昇進や昇給を適切に行うための基準を明確にして、公平に評価するためです。人事評価の方法が上司によって違っていたり、業務の違いを考慮していなかったりすると、社員は納得できず働く意欲をなくします。業績にも悪い影響が出るでしょう。
公平で明確な評価基準を導入することで、人事評価の公平性を高めることができます。明確な評価項目や基準により成果が適切に昇給・昇進に結び付くと理解できれば、社員は意欲をもって仕事に取り組めます。
人事評価の基準は、会社理念や会社の目指す方向性が反映されます。評価基準を提示された社員は会社の方向性を認識し、自分が行うべきことや会社に貢献できることを把握できるのです。
社員は明確になった目標に向けてモチベーションを高め、より意欲的に働くでしょう。人事評価には社員の成長を促す人材育成の役割も果たすのです。
人事評価の基準は、「成果」「能力」「取り組みの姿勢」の3つから成り立ちます。成果基準は目標に対する達成率で評価し、能力基準は業務に対し能力がどれだけ発揮できたかを評価するものです。
業務に取り組む姿勢を評価する基準も必要です。主に協調性や積極性を評価します。
人事評価の基準となる3つの基準をご紹介します。
成果基準は目標に対してどれだけ達成できたか、業務の実績を評価するものです。業績目標達成度や課題目標達成度、日常業務成果が評価項目になります。現れた結果だけでなく、そこに向けたプロセスも評価します。
成果や目標の達成度を数値化することがポイントで、数値化しにくい目標の場合もできるだけ割合で表すなど、達成度が具体的にわかるようにすることが必要です。
社員がもつ能力をどれだけ仕事に発揮できたかに対し、評価するものです。評価基準となる能力はその業務に必要なスキルのほか、ビジネスで一般的に求められる能力として以下のようなものがあげられます。
・コミュニケーション力
・実行力
・問題解決力
・企画力
・リスク管理能力
・改善力
どのような能力を評価するかは、会社ごとに定めた一定の基準に従うことになります。
業務に取り組む姿勢や勤務態度も評価基準の一つです。目標に対してどのように取り組んでいたか、意欲的に勤務していたかなどを評価します。
具体的には、同僚や上司と協力して業務を遂行する「協調性」や熱意をもって職務に取り組む「積極性」、担当の職務に責任をもって取り組む「責任性」などが評価の対象です。
また、就業規則の遵守や遅刻・欠勤などの勤務態度も評価対象になります。
人事評価で目標を設定する際は、いくつか注意すべき点があります。まず、目標設定は最終的に企業の成長や業績向上につながらなければならず、設定は経営方針に基づくことが不可欠です。
また、数値化しにくい目標は、期限の設定といった達成条件を設けることで具体化する必要があります。
目標設定の留意点をご紹介します。
目標設定は、経営方針に基づいたものであるべきです。
経営の最終的な目的は、社員が各自の目標を達成して業績向上につなげることにあります。人事評価も、それに沿って行われなければなりません。会社が目指す目的を実現するため、各自が担うべき役割を踏まえた目標設定が必要です。
現状を確認し、現在の人事評価に経営方針が十分に反映されていないと思われるときは見直しを検討しましょう。
売上などの目標は具体的に数値化できますが、数値化、定量化できない目標は達成できたか否かの判断が難しくなります。評価基準が曖昧になり、上司と部下の間で判断の違いが起こる恐れがあります。
数値化しにくい目標は、あらかじめ達成条件を決めておくことをおすすめします。具体的な期限を設定するなど、誰が見ても達成度がわかる基準を設けましょう。
また、目標設定は実現可能性があることも大切です。高すぎる目標は達成できない可能性があり、社員のモチベーションに影響します。反対に低すぎても社員の育成に役立ちません。
目標の達成だけに目を向けるのではなく、何が不足しており、今後どうなりたいのかも考えながら目標を設定することも必要です。
人事評価は、職種ごとに書き方や重視したいポイントが異なります。営業職は成果を数字で表しやすいため、できるだけ数字を出す評価が効果的です。一方、事務職は成果を数字で表しにくく、作業効率や正確性で評価することになります。
技術職も数字で表すのが難しい側面があり、質の向上など具体的な評価項目の設定が必要になるでしょう。
職種別に、人事評価の書き方や重視したいことをみていきましょう。
事務職は成果を数字に表すのが難しい職種です。日常業務のなかで上司は部下を観察し、作業内容をチェックすることになるでしょう。作業のスピードが上がっている、ミスが少なくなったなど、できるだけ具体的な評価基準を設ける必要があります。
事前に改善すべき課題を個別に取り上げ、目標を定量化することもできるでしょう。例えば、毎日のルーティンワークの処理が午後までかかっていたことを午前中に終えるといった目標です。
業務に対し積極的に取り組んでいるなど、仕事に対する姿勢も重視するポイントです。
営業職は売上や成約数、目標達成率など、成果を数字で表しやすい職種です。できるだけ数字を出して評価することはもちろんですが、数値ばかりを重視するあまり見えない部分の評価を忘れないようにしなければなりません。
目標の実現に向けた取り組みの姿勢や課題の分析、改善策をどのように立てているのかも評価すべき対象です。
技術職も成果を具体的に確認するのが難しい職種です。できるだけ具体的な評価項目を設定し、貢献度を評価することが必要になります。
技術職は企業の課題に対し、技術を用いてどれだけ貢献できるかが重要です。作業によってどのくらいのコストダウンができたか、システムを構築して作業効率がどれだけ良くなったかなど、具体的な成果についてできる限り数値化して設定するとよいでしょう。
人事評価は昇給や昇進などの評価について公平な基準を設ける制度で、社員のモチベーションを高める目的があります。人事評価の書き方は客観的な基準に基づき、できるだけ成果を数字で表すものでなければなりません。
数値化しにくい目標は達成条件を設けるなど、評価基準を明確にすることも大切です。人事評価の書き方についてポイントを押さえ、目標達成や人材の育成に役立てましょう。