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360度評価の失敗例とは?原因や対策を解説

作成者: スタンバイ制作チーム|2022/08/10


1.360度評価でよくある4つの失敗事例


「360度評価」は上司だけでなく同僚や部下、他部署の社員などが多面的に行う評価を指し、主な目的は人才育成と人事評価の2つです。360度評価でよくある失敗事例としては、以下の4つが挙げられます。

1.忖度で社員間のコミュニケーションに支障が出た
2.社員のモチベーションが下がった
3.現場に大きな負荷がかかった
4.処遇と連動させたことで不正や回答のゆがみが生じた

失敗事例を知ることで、自社での同じような失敗を避けられるかもしれません。一つずつ確認していきましょう。

1-1.忖度で社員間のコミュニケーションに支障が出た

360度評価でよくある失敗事例として、良い評価をつけて欲しいがために忖度が増え、コミュニケーションに支障が出るケースが挙げられます。従来の評価制度と異なり部下による評価もあるため、管理職として本来行うべきである部下に対する適切な指導や注意を、上司が敬遠するリスクもあります。

コミュニケーション不全はチーム内の連携に影響し、生産性の低下や離職者の増加を招く要因の一つです。率直なフィードバックを受け取れないことによって、個人や会社が成長する機会を失う可能性があることにも注意しましょう。

1-2.社員のモチベーションが下がった

360度評価を導入したことにより、社員のモチベーションが下がってしまうケースもみられます。上司や同僚、部下など多方面から否定的なフィードバックを受けた場合、従来の1対1の評価制度以上に自信を失うためです。

また、適切な評価スキルを身につけないまま評価者となってしまうと、私情を交えた主観的な評価をしてしまう可能性もあります。そのような評価を受けた場合も、社員のモチベーション低下は避けられないでしょう。

 

 

1-3.現場に大きな負荷がかかった

現場に大きな負荷がかかってしまうことも、360度評価のよくある失敗事例の一つです。従来の評価方法に比べて評価に関わる社員数が増え、さらに一人が複数人の評価をすることになるため、本来の業務が圧迫される可能性があります。

現場に対して運用を丸投げをしてしまうと、反感を買うだけでなく制度を定着させることが難しくなるでしょう。各部署における360度評価の運用状況の確認や、細かいフォローを欠かさないようにすることが重要です。

1-4.処遇と連動させたことで不正や回答のゆがみが生じた

従来の評価制度と同様に給与や賞与などの処遇と連動させると、360度評価制度を不正に運用したり、回答にゆがみが生じたりするケースが出てくる可能性があります。

そのため、例えば360度評価は人材育成を主な目的とし、従来の評価制度との導線をわけるようにするといったように切り分けをすることをおすすめします。

 

 

2.360度評価が失敗する原因4つ


360度評価が失敗する原因として考えられるのは、以下の4つです。

1.導入する目的の共有ができていな
2.設問数が多く現場の負担が大きい
3.給与や賞与に連動させている
4.評価を実施した後のフォローが不十分である

それぞれの内容を解説していきます。

2-1.導入する目的の共有ができていない

全社で360度評価を導入する目的の共有ができていないと、取り組みを成功させるのは難しいでしょう。そのため、360度評価を導入する目的や運用によって得られる効果を、全員が納得できるように、根気よく説明を続ける必要があります。

360度評価を導入する目的の共有が不十分だと、スタート時点から現場と人事担当者との温度差が生じる可能性が高まるでしょう。表向きは協力的であっても、次第に不満が蓄積していくことも考えられます。

また360度評価の導入目的が正しく浸透していないと、評価するポイントや社員へのフィードバックの内容が本来の目的からずれるなど、運用に支障をきたす可能性も出てきます。

2-2.設問数が多く現場の負担が大きい

設問数が多く現場に負担をかけることも、360度評価が失敗する原因の一つです。社員によってはこれまで評価を行った経験がなく、評価自体が不慣れである可能性もあります。そのような状況でさらに設問数が多いと、かなりの負担がかかり、本来の業務を圧迫しかねません。

360度評価は、設問数が多いほど効果が上がるわけではないといわれているため、設問はある程度の数にとどめておくとよいでしょう。

2-3.給与や賞与に連動させている

360度評価の制度を給与や賞与に連動させた場合、運用上の不正や回答のゆがみを招きかねないことは、すでにお伝えしたとおりです。

給与や賞与などの処遇に結びつけてしまうと、少しでも良い評価を得ようとする心理が働き、職場の健全なコミュニケーションが失われる可能性があります。さらに、相手を厳しく評価すると自分にも返ってくるかもしれないと、保身のために事実とは異なる評価をするケースも増えるかもしれません。

また、従来の評価制度と目的が重複してしまうとわかりづらくなるばかりか、それぞれの制度への信頼性も損なわれるリスクがあります。

360度評価を処遇と連動させる場合は、すでに運用されている評価制度との整合性を図るために、既存の制度を大きく見直す必要になる場合があるといえるでしょう。

2-4.評価を実施した後のフォローが不十分である

せっかく360度評価を実施しても、その後のフォローが不十分である場合、制度を運用する意味がなくなるリスクがあります。

360度評価の後におこなわれるフィードバックで周囲からの評価を確認し、それを自己変革のきっかけにするのがあるべき姿です。しかし、その後に振り返り面談を実施しないと、せっかく受けたフィードバックはそのまま忘れ去られてしまうでしょう。

また、360度評価においてはコメント内容が率直なものである場合も多く、受け止め方によってはモチベーションを下げてしまい、離職の要因となることもあります。

3.360度評価を失敗させないための対策5つ


ここまでご説明してきた内容を踏まえて、360度評価を失敗させないためには、以下の5つの対策を講じることが有効です。

1.経営陣とも現場とも導入の目的や意義を共有する
2.ガイドラインを明確にし、スケジュールを周知徹底する
3.適宜、評価者研修を行う
4.設問数を最低限に抑える
5.評価後のフィードバックやフォローアップを行う

ここからは、360度評価を失敗に終わらせないための対策をご紹介しましょう。

3-1.経営陣とも現場とも導入の目的や意義を共有する

360度評価を導入する目的や意義を、経営陣とも現場ともしっかりと共有することが重要です。掲げる目的の表現のしかたは各社異なるでしょうが、いずれにしても人材育成に有効な施策です。

「360度評価のコストは未来のために必要な投資である」という認識を経営陣と共有できるよう、働きかけましょう。経営陣の強いコミットがあれば、現場にも導入目的や意義が浸透しやすくなります。

実際に導入する際には、社員に対する事前説明会を行う必要があります。また、導入時だけでなく運用がスタートしてからも、疑問点を解消できるように相談窓口をもうけることも効果的です。

また、360度評価に即効性を期待してしまうと、成果を感じられないなどの理由から、取り組み自体をすぐにやめるといった事態になりかねません。短期的に目に見えるような効果が出る制度ではないことについても、経営陣を含めて共有しておくことが重要です。

3-2.ガイドラインを明確にし、スケジュールを周知徹底する

360度評価の実施にあたっては、あらかじめガイドラインを明確にし、スケジュールを周知徹底させることもポイントです。

具体的な実施の流れや評価のポイントなどを示すガイドラインがないと、現場を混乱させてしまうでしょう。また、できる限りスケジューリングをおこない、それに沿って実施することが理想的です。


特に人材育成を目的としている場合、給与や賞与に連動させる従来の評価制度に比べて期日が曖昧になる傾向があります。あらかじめ実現可能なスケジュールを設定し、そのとおり実施されているか確認をしましょう。

スケジュールに沿った運用が重要だといっても、ルーチンワークとしてこなすといった状況にならないように注意しなければなりません。「なんとなく月に1回くらい面談をしておけばよいだろう」というスタンスは制度を形骸化させるため、注意が必要です。

3-3.適宜、評価者研修を行う

360度評価の運用を成功させるためには、必要に応じて評価者研修を実施し、社員の評価スキルを育成することも有効です。

評価の経験を持たない若手社員も関わるため、不安を与えないようにしなければなりません。また、一人ひとりの評価スキルのバラつきが大きいと、360度評価の納得性を保つことが難しくなるでしょう。

3-4.設問数を最低限に抑える

360度評価の導入によって現場に大きな負担がかからないように、必要以上に設問数を増やさないことをおすすめします。すべてを設問形式で回答するのではなく、設問におさまりきらない指摘は自由記入欄で補います。

また、360度評価の評価用紙の配布や回収などにも時間を取られるため、現場の業務負担を軽減させるためにシステムを活用することも有効な選択肢の一つといえるでしょう。

3-5.評価後のフィードバックやフォローアップを行う

360度評価を始めたものの、とりあえず周囲の社員に評価をしてもらって終わりにしていては、ただの絵に描いた餅で終わってしまいます。まず、360度評価の後には面談形式でフィードバックを実施します。

周囲の評価を受けて課題を明らかにし、克服するために行動レベルまでの落とし込みを行わないと、個人の成長につながりません。上長と一緒に、そのための意思確認を行うためのフィードバックはとても重要な意味があります。

面談形式でのフィードバックを実施したら、ある程度の期間を空けて振り返りの面談を実施します。振り返り面談をきちんと実施しないと、適切なフィードバックを受けた場合でも時間の経過とともに忘れてしまうものです。360度評価のスケジューリングの際に「フィードバックの日程」「振り返り面談の日程」をセットで組み込んでおきましょう。

また、360度評価で厳しい評価を受けた社員に対しては、それらを前向きに受け止められるように精神的フォローをすることも重要です。
360度評価で失敗しないためには、ここまで述べてきた対策を講じるほか、360度評価を昨今の労働環境の変化に対応させることもポイントです。例えば、部下が上司を評価するという側面を活かして、ハラスメント対策に用いると効果が期待できます。また、外国人の従業員にはできるだけ母国語でフィードバックするなど、状況に応じて工夫するとよいでしょう。

 

 

4.失敗を防ぐために|360度評価のシステム化が有効な理由3つ


360度評価を導入することで、現場に負担がかかってしまうことは避けるべきです。そして、360度評価をシステム化することは現場の負担軽減にとどまらず、有効な手法といえます。

360度評価のシステム化が有効な理由として挙げられるのは、以下の3つです。

1.現場の負荷を軽減できる
2.データの活用によって効率化を図れる
3.安全性が高い

4-1.現場の負荷を軽減できる

360度評価をシステム化することで、用紙に評価を書き込む必要がなく、システムに評価を入力して完結させることができます。評価用紙を配布したり回収したりといった現場の社員にかかる負荷の軽減につながります。

導入するシステムによっては、シート未提出である社員を対象にして、システム上でリマインドを送ることも可能です。

4-2.データの活用によって効率化を図れる

360度評価をシステムで行うことで、評価や面談の履歴をデータで記録し、必要に応じて確認できる点もメリットです。

データが一元化されていない紙やエクセルファイルでは、過去の面談履歴をさかのぼって確認することも大変です。探す時間と手間を省くため、記憶を頼りに面談を実施することになるかもしれません。

360度評価の目的の一つである人才育成の観点からも、過去の評価内容やフィードバック面談で決めた行動への落とし込みなどを、適宜確認することが重要です。

4-3.安全性が高い

360度評価をシステム管理する場合、個別にエクセルのファイルをメールに添付してやり取りをする必要がなく、メールの誤送信や用紙の紛失を避けられるでしょう。

また、360度評価をシステム内で完結することができると、評価者の匿名性を担保できるため、周囲の目を気にせずに率直な指摘をすることができます。

5.失敗事例を踏まえ、360度評価を適切に運用しよう


360度評価とは上司や同僚、部下など多方面から評価を実施する評価制度のことです。周囲からの評価と自己認識とのギャップに気づき、成長のきっかけになる有意義な仕組みである一方で、コミュニケーション不全や現場への負荷の増加などの課題もあります。

360度評価を自社で成功させるためには、他社の失敗事例や原因を知っておくことが有効です。

360度評価を成功に導くポイントとしては、経営陣や現場と導入する目的をしっかりと共有する、設問数を最低限に抑える、フォローアップを怠らないといった点が挙げられます。360度評価を適切に運用し、個人や会社の成長に確実につなげられるようにしましょう。