グループワークを新入社員研修に導入する効果としては、アイスブレイクとチームビルディングへの活用や配属先の選択が挙げられます。コミュニケーション能力や問題解決力を身につけられるだけでなく、座学でインプットした知識を実践で使用するといった効果も挙げられるでしょう。
ここでは、新入社員研修にグループワークを導入する効果について解説します。
「グループワーク」は、アイスブレイクやチームビルディングの手法に使用されることがあります。新人研修ではお互いのことを理解していないことが多いため、緊張感や不安感を持っている社員がいるでしょう。
緊張感や不安感をほぐすための手段として、アイスブレイクがあります。そのアイスブレイクの方法として、小規模のグループワークが採用されることが一般的です。グループワークを実施すれば、課題に対してメンバーで話し合わなければならないため、必然的にコミュニケーションが生まれます。
チームで課題に取り組むことで、一体感や達成感も生まれるでしょう。数日間で実施するグループワークはチームビルディングにも活かせます。数日間でのグループワークでは、進行役やファシリテーター、リーダーといった役割分担が必要です。グループワークを進める中で、自然とチームビルディングができていきます。
グループワークには、コミュニケーション能力や問題解決力を身につけられる効果があります。グループワークは、与えられた課題に対してチームで1つの答えを出す取り組みです。1つの答えを出すまでの過程で、自分の意見を伝えたり相手の話を聞いたりといったコミュニケーションが生まれます。
それぞれの意見をまとめ、チームとしての答えを出すには、問題を解決する力も必要です。多くの仕事は、個人ではなくチームや組織として動きます。仕事に必要なコミュニケーション能力や問題解決力は、グループワークを進める過程で身につけられるのです。
グループワークの実施により、新入社員に対し客観的な評価ができるようになります。座学の研修だけの場合、新入社員のキャラクターをつかむことは簡単ではありません。しかし、グループワークを実施することで、チーム内でのコミュニケーションのとり方や立ち位置のとり方を客観的に見ることができます。
そうした評価は、配属先の選択に役立つでしょう。キャラクターに合わせ、適した部署や上司を組み合わせることもできるため、ミスマッチ防止につながります。
人事にとって、研修中にどれだけ新入社員の能力を向上させられるかは、大きな課題の一つでしょう。体系的な知識を身につける場合は、座学での研修が必要になります。しかし、知識を身につけたからといって、実践で活かせるかどうかは別の話です。
実践で使える知識にするためには、グループワークの実施が効果的です。グループワークで、実際の業務に近いことを体験することで、知識の定着率が向上します。また、座学とグループワークを組み合わせることで、研修にメリハリが生まれるでしょう。参加する新入社員も、飽きずに研修を受けることが可能です。
グループワークには、オンラインで実施できるものもあります。進行役となるファシリテーターと議事録役、タイムキーパーといった役割設定をすることで、オンラインでもスムーズにグループワークを進められます。コロナ禍で対面での研修実施が難しい場合は、オンラインを有効に活用しましょう。
新入社員研修で効果的なグループワークの種類には、プレゼン形式やビジネスケース形式、作業形式が挙げられます。どのグループワークもチームで課題に取り組むため、コミュニケーション能力を養えることは共通していますが、習得できる力や見える一面は異なります。
複数の形式を実施することで、より効果的な研修となるでしょう。ここでは、新入社員研修で効果的なグループワークの種類について解説します。
プレゼン形式のグループワークは、与えられた課題に対しチーム内でアイデアを出し、そのアイデアをチームの意見としてまとめて発表するタイプのものです。「良い会社の定義とは?」「自社のキャッチコピーをつけるとしたら?」といった定義や考え方を議論する課題が与えられることが一般的です。チーム内で自由に議論をしたあと、ホワイトボードや模造紙に意見をまとめて発表します。
主に以下の3つの工程に分けられます。
1.アイデア出し
2.合意形成
3.プレゼンテーション
アイデアを論理的にまとめる力や、合意まで進める力、わかりやすく伝える力を効果的に習得できるでしょう。
ビジネスケース形式のグループワークでは、与えられた課題に対する解決策を考えます。プレゼン形式と同様にアイデア出しから合意形成、プレゼンテーションの工程になりますが、課題がビジネスの事例に即したものになるのが特徴です。
現実に即した課題になるため、より実践に近い内容の議論になります。プレゼン形式がアイデアを出すことに重点をおいているのとは対照的に、課題解決能力に重点をおいているのがビジネスケース形式です。
プレゼン形式で得られる力にプラスして、課題解決力も養えます。
作業形式のグループワークは、実際に体や手を動かすタイプのものです。決められたものを作ったり、与えられた材料からアイデアを出して、制作物を作ったりといった作業をチームで実施します。ペーパータワーやマシュマロチャレンジ、キャンプをする企業もあるようです。
チームで協力して進めることで、コミュニケーション能力や協調性、行動力を養えます。制作完了までの工程や役割分担、時間配分といった仕事で必要な力も求められます。
プレゼン形式やビジネス形式とは違った一面を見ることもできるので、複数の形式のグループワークを実施するとよいでしょう。
グループワークのテーマは、年代や時代背景に合ったわかりやすいテーマを設定しましょう。質の高い研修にするためにも、さまざまなテーマ例を把握しておくのは大切です。ここでは、グループワークで利用されるテーマの選び方やテーマ例について紹介します。
グループワークのテーマは、わかりやすいものにすることが大切です。
プレゼン型のグループワークでは、定義や考え方を議論します。その際、既存のテーマを使うこともあるでしょう。テーマによっては、新入社員世代になじみの薄いテーマになる恐れがあります。参加者の理解度が低いために議論の密度も薄くなり、効果的な研修になりません。
年代や時代背景に合ったテーマを選ぶことで、議論が盛り上がり、研修の質が上がります。質の高い研修にするためにも、新入社員にとってわかりやすいテーマを選びましょう。
より質の高いグループワークを実現するためには、さまざまなテーマ例を把握したうえで、選定することが大切です。
グループワークに利用するテーマを選ぶことは、容易ではありません。新入社員にとってわかりやすいテーマがよいことは理解していても、適したテーマが見つからない場合、以前使用したテーマを与えてしまうケースもあるでしょう。そのような際の参考になるよう、プレゼン形式とビジネスケース形式のグループワークに利用されるテーマ例について解説します。
プレゼン形式のテーマ例として挙げられるのは、イベント企画や広告作成、キャッチコピー考案です。
イベント企画や広告作成は、飲食業界や住宅業界といった店舗型のビジネスを展開している会社で扱われるテーマです。アイデア出しからプレゼンテーションまで、プレゼン型のグループワークの要素をすべて満たせます。
「どんな顧客で」「何に関心があり」「どうやって伝えるか」といった内容を考える必要があるため、マーケティングの要素が高い研修になります。予算や人員、資材の条件を設定すれば、よりリアルな研修になるでしょう。
キャッチコピー考案は、自由なディスカッションができるグループワークです。自社のキャッチコピーを考えれば、自社の理念や魅力について調べることになります。座学研修として自社の理念を伝えることも必要ですが、自分たちで調べることで、自社のサービスに対する理解も深まります。
キャッチコピーを考えるには、ターゲットを設定したうえでどうやって伝えるかといったマーケティングの要素が必要になります。キャッチコピー考案は、自社への理解度とマーケティングを同時に学べるテーマです。
ビジネス形式のテーマには「自社の社員に求められるスキルとは?」「残業は必要か?」「顧客満足度を上げるには?」といった内容が挙げられます。自社の社員に求められるスキルや残業の必要性をまとめるには、自社の理念やサービスについて理解が必要です。理想の社員像を認識することにもつながるため、新人研修としては効果的といえるでしょう。
顧客満足度を上げる方法を考えるためには、さらに自社のサービスを深掘りする必要があります。条件設定を工夫すれば、より実務に近い研修が可能です。グループワークを進める中で既存社員にはないアイデアが出れば、会社としても新たな気付きを得られるメリットにつながります。
グループワークを実施する前には、目的や評価基準を具現化しておくことが必要です。どんな教育をする必要があり、何を評価するのかといった方向性を明確にしておきましょう。
スムーズにグループワークを進めるには、タイムスケジュールや道具の準備も大切です。時間を管理し、必要な道具を揃えておくことで、新入社員はグループワークに集中できます。
ここでは、グループワークを準備するときのポイントについて解説します。
グループワークを実施する前に、目的を明確にする必要があります。「どんな人材に育てたいか?」「研修で何を学んでほしいか?」「研修後にどのような状態になってほしいか?」といった目的を明確にすれば、なぜグループワークが必要なのかが見えてきます。
目的が明確でない場合、テーマや難易度が新入社員に合わないものを選択する可能性があるでしょう。グループワークを実施しても、新入社員のレベルに合わなかったり、実務に活かせなかったりするかもしれません。それではせっかくの研修の時間が意味のないものになります。
どのようなテーマを設定するのか、どのようなグループワークにするのかは、目的次第で変わるはずです。新入社員のレベルやタイミング次第で、設定する難易度も違ってきます。意味のあるグループワークにするためにも、目的を明確にしましょう。
グループワークの準備では、評価基準を明確にすることも必要です。そのためには、できるだけ評価項目を細分化するのがポイントになります。
例えば積極性を評価しようとした場合、評価項目が「積極性」だけでは、見る人によって基準が異なるかもしれません。積極性の中でも「発言数が〇〇回」「発言時間が〇〇分」のように、細分化した評価項目で基準を設定すれば、平等な評価になります。
このとき、評価基準は定量的なものにしましょう。どれだけ評価項目を細分化しても、その基準が定量的ではない場合、平等な評価はできません。数値や、行動の有無といった、誰が見ても同じように判断できる基準を設けることがポイントになります。
グループワークの目的は、評価することではなく社員を育てることです。グループワークでの結果だけでなく、どのようなフィードバックをするのかも明確にしましょう。
スケジュールを管理することも、グループワークに必要な準備項目です。プレゼン型やビジネスケース型のグループワークでは、チームでディスカッションしながら進めていきます。
「アイデア出しは〇〇分」「ディスカッションから合意形成までは〇〇分」「プレゼンテーションは〇〇分」というように、タイムスケジュールを決めておく必要があります。タイムスケジュールが決まっていない場合、合意形成ができなかったり、プレゼンテーションの時間が無くなってしまったりといったケースも珍しくありません。各工程に定められた時間が適切ではない場合も、グループワークが失敗する原因になります。
また、せっかくタイムスケジュールを決めても、タイムキーパーがいなければ予定通りには進みません。各工程にどれくらいの時間が必要なのかをシミュレーションしたうえで、タイムスケジュールを決め、適切に時間を管理しながらグループワークを実施しましょう。
グループワークには道具の準備も必要です。プレゼン型やビジネスケース型のグループワークでは、ホワイトボードや模造紙にチームの意見をまとめて発表します。そのため、最低でも、模造紙やカラーペンといった道具の準備が必要です。アイデア出しをする際は、付箋紙があると便利です。
グループワークを実施した場合、道具が不足することが考えられます。会場によってはすぐに道具が揃わないかもしれません。アクシデントも想定より少し多めに準備しておきましょう。
グループワークを進行するときには、わかりやすいテーマで適切なメンバー構成を選び、全員が主体的に参加できるように工夫することが大切です。時間管理もスムーズに進めるためのポイントになります。
また、グループワークでの経験を次に活かすためにも、事実に基づいたフィードバックが大切です。ここでは、グループワークを進行するときのポイントについて解説します。
グループワークを進行する際には、全員が参加できるように工夫しましょう。グループワークは、参加者全員が主体的に参加するのが原則です。
例えば、参加者のうちひとりだけ詳しいテーマを設定してしまった場合、テーマに詳しいひとりが主体的に話を進めてしまい、ディスカッションにならない可能性があります。全員が主体的に参加するためにも、わかりやすいテーマを選びましょう。
グループごとの人数もポイントです。グループの人数が多い場合、議論に参加できない人が出てくるケースが考えられます。逆に人数が少なすぎた場合、活発な議論にならないかもしれません。
1グループに対し、4~5人が適性人数といえるでしょう。「アイデア出しは発言するのではなく一斉に付箋紙に書く」「リーダーシップを取れそうなメンバーを散らばらせる」といった工夫も有効です。「どうすれば全員が主体的に参加できるのか」という観点で考えましょう。
無駄な時間が発生しないよう、スムーズに進行することも大切です。新入社員研修でグループワークを実施した場合、役割決めや発表資料の作成といった工程に時間がかかることがあります。また、合意形成に時間がかかってしまうケースもあるでしょう。
先に終わったグループがある場合、時間を持て余してしまうこともあります。逆に、議論に行き詰ってしまうケースもあるかもしれません。
このようなリスクに備え、ファシリテーターやタイムキーパーを置き、進捗を管理することが必要です。テーマによっては、事前に議論の方向性や考え方を伝えておくことも一つ一つの方法として覚えておきましょう。
フィードバックの準備をすることも、グループワークを進行するときのポイントです。グループワークは実施すればいいわけではありません。グループワークへの取り組み方や進め方、発表内容についてフィードバックして次に活かすことで、学びはより深いものになります。
フィードバックは事実に対して指摘するのが効果的です。「〇〇チームは〇〇時にこの状況だった」「〇〇さんはこのような発言をしていた」といったフィードバックをすることで、参加者も理解しやすくなります。
より適切なフィードバックを実現するためにも、状況や発言を記録しておきましょう。
新入社員研修にグループワークを導入する効果には、アイスブレイクやチームビルディングへの活用や配属先の選択が挙げられます。コミュニケーション能力や問題解決力の向上、座学でインプットした知識を実践で使用するといった効果も挙げられるでしょう。
新入社員研修で使われるグループワークには、プレゼン形式やビジネスケース形式、作業形式があります。どの形式でも、コミュニケーション能力を養えることは共通していますが、習得できる力や、見える一面は異なります。より効果的な研修にするためには、複数の形式を実施すると良いでしょう。
グループワークを実施する前に、どんな教育をする必要があり、何を評価するのかといった目的や評価基準を明確にしておきましょう。スムーズにグループワークを進めるには、タイムスケジュールや道具の準備も大切です。
グループワークを進行するときは、年代や時代背景に合ったわかりやすいテーマや、適切なメンバー構成を選び、全員が主体的に参加できるように工夫しましょう。グループワークでの経験を次に活かすためにも、事実に基づいたフィードバックが大切です。
グループワーク導入時のポイントを理解し、新入社員に効果がある取り組みにしましょう。