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OFF-JT対象の助成金|人材開発支援助成金とは?2022年度の変更点や申請時のポイントも解説

作成者: スタンバイ制作チーム|2022/08/10

1.人材開発支援助成金は教育訓練に適用される

「人材開発支援援助金」は、OFF-JTやOJTといった教育訓練に適用されます。教育訓練に必要な費用をサポートすることで企業の生産性向上につなげることが狙いです。2022年度からは、コースや内容が見直されています。

ここでは、人材開発支援援助金の目的や概要、混同されることが多い「キャリアアップ助成金」との違いについて解説します。

1-1.目的は企業の生産性向上

人材開発支援助成金は、企業の人材育成やキャリアアップに対し、国が資金面でサポートすることで、生産性向上につなげることを目的としています。企業が人材育成やキャリアアップに対する取り組みを実施するには費用が必要です。

生産性を向上させるためには、人材育成は欠かせません。しかし、中小企業の中には人材の確保だけで人材育成の費用を捻出する余裕がない企業もあります。余裕がない企業の人材育成をサポートし、生産性向上につなげてもらうための制度が人材開発支援助成金の目的といえます。

1-2.人材開発支援助成金は8コースで構成

人材開発支援助成金のコースや内容は、国民からの要望や提案を受け見直されます。2022年度からは以下の8コースで構成されています

1. 特定訓練コース

2. 一般訓練コース

3. 教育訓練休暇等付与コース

4. 特別育成訓練コース

5. 建設労働者認定訓練コース

6. 建設労働者技能実習コース

7. 障害者職業能力開発コース

8. 人への投資促進コース(新設)

2022年度から、「人への投資促進コース」が新設されました。このコースは、「人への投資」をより加速させることを目的としています。すべてのコースで、eラーニングによる訓練及び通信制による訓練も助成対象になりました。

ほかにも、「特定訓練コース」や「一般訓練コース」、「特別育成訓練コース」の内容が改正されています。

参照元:厚生労働省「人材開発支援助成金(特定訓練コース、一般訓練コース、教育訓練休暇等付与コース、特別育成訓練コース、人への投資促進コース)」

1-3.キャリアアップ助成金とは対象者が異なる

人材開発支援助成金と混同されやすい制度に、「キャリアアップ助成金」が挙げられます。混同されることが多い理由として、2016年までは、人材開発支援助成金の名称がキャリア形成促進助成金だったことが挙げられます。

キャリアアップ助成金は非正規雇用労働者を正規雇用に引き上げることが目的です。そのため、キャリアアップ助成金と人材開発支援助成金では対象者が異なります。

人材開発支援助成金の対象者が、週の労働時間が20時間を超える雇用保険の被保険者であるのに対し、キャリアアップ助成金の対象者は有期契約労働者・無期雇用労働者です。

有期契約労働者とは、パートや派遣社員、契約社員といった契約期間が決まっている労働者のことです。無期雇用労働者とは、契約期間は決まっていないものの、非正規雇用を指します。

つまり、キャリアアップ助成金の対象者は、非正規雇用労働者です。人材開発支援助成金とキャリアアップ助成金の違いは、目的と対象者といえるでしょう。

2.人材開発支援助成金の利用におけるメリットとデメリット

人材開発支援助成金の利用には、メリットとデメリットが存在します。コストを抑えられることはメリットといえるものの、手続きの負担はデメリットといえるでしょう。ここでは、人材開発支援助成金のメリットとデメリットについて解説します。

2-1.メリットはコスト対策

人材開発支援助成金のメリットは、人材育成にかかる費用を抑制できることです。教育訓練を実施したくても、費用負担が障害となり取り組めない企業が存在します。

人材開発支援助成金を利用することで、障害がなくなり教育訓練の実施に踏み切れるでしょう。

人材開発支援助成金は、要件さえ満たせば助成され、返済の必要がありません。売上ではなく、雑収入として計上できることもポイントです。このようなことから、人材開発支援助成金はコスト対策として有効な制度といえます。

2-2.デメリットは手続きに労力が必要なこと

人材開発支援助成金のデメリットは、手続きの労力が大きいことです。助成金を受け取るには、年間計画書をはじめとする書類の提出が必要です。教育訓練実施の前後に申請する必要があるため、従業員が少ない会社であれば、手続きは負担になる可能性があります

書類に対し、労働局の確認が必要な項目が多いため、申請から受給までに時間がかかることもデメリットといえます。そのため、受給するまでの間は、教育訓練にかかる費用は全額負担する必要があります。

3.2022年度の変更点

見直しがあったコースには、特定訓練コースと一般訓練コース、特別育成訓練コースの3つがあります。すべてに共通して、訓練施設と訓練講師に関する内容が変更されました。

また、人への投資促進コースが新設されました。ここでは、2022年度における変更点について解説します。

3-1.訓練施設の要件から一部の施設が除外

訓練施設の要件からの一部が適用外となりました。以下の施設が適用外になっています。

  • 申請事業主(取締役含む)の3親等以内の親族が設置する施設
  • 申請事業主の取締役・雇用する労働者が設置する施設
  • グループ事業主が設置する施設で、不特定の者を対象とせずに訓練を実施する施設
  • 申請事業主が設置する別法人の施設

次の4つの条件のいずれかを満たすことが必要です。

  • 公共職業能力開発施設など
  • 事業主・事業主団体の設置する施設
  • 学校教育法による大学等
  • 各種学校等(専修学校など)

参照元:厚生労働省「令和4年度から人材開発支援助成金の見直しを行います」

3-2.訓練講師の要件が追加

外部から講師を招いて教育訓練を実施する場合の、講師要件も追加になりました。以下のいずれかの条件を満たす必要があります。

  • 公共職業能力開発施設や各種学校等の施設に所属する指導員等
  • 職業訓練指導員免許を有する者(訓練の内容に直接関係する職種である)
  • 1級の技能検定に合格した者( 訓練の内容に直接関係する職種である)
  • 訓練分野の指導員・講師経験が3年以上の者または実務経験が10年以上

このような変更に伴い、「OFF-JT部外講師要件確認書」の提出が求められるようになったため、注意が必要です。

参照元:厚生労働省「令和4年度から人材開発支援助成金の見直しを行います」

3-3.OJTの助成額が定額に変更

特定訓練コースと特別育成訓練コースでOJTを実施した場合の助成金額が、定額制になりました。

 

見直し前

見直し後

特定訓練コース

(認定実習併用職業訓練)

OJT1時間あたり665円

(大企業380円)

1訓練あたり20万円

(大企業11万円)

特別育成訓練コース

(有期実習型訓練)

OJT1時間あたり760円

(大企業665円)

1訓練あたり10万円

(大企業9万円)

生産性要件を満たした場合、追加の助成があります。また、OJT訓練の指導者に関しては、1日に指導できる受講者が3名までに変更されています。

参照元:厚生労働省「令和4年度から人材開発支援助成金の見直しを行います」

3-4.特定訓練コースの対象となる訓練の統廃合

特定訓練コースでは、対象訓練の統廃合や対象労働者の変更がありました。以下のように変更されています。

対象訓練の統廃合

見直し前

見直し後

労働生産性向上訓練

若年人材育成訓練

熟練技能育成・承継訓練

変更なし

グローバル人材育成訓練

廃止

特定分野認定実習併用職業訓練

認定実習併用職業訓練

認定実習併用職業訓練に統廃合

セルフ・キャリアドック制度導入の上乗せ措置が廃止

見直し前は、「特定分野認定実習併用訓練」に関する助成率は60%(大企業45%)から45%(大企業30%)になります。

認定実習併用職業訓練について、見直し前は、「雇い入れ日または転換日から訓練開始日までが2週間以内」の者でしたが、「雇い入れ日または転換日から訓練開始日まで3ヵ月以内」の者になりました。

認定実習併用職業訓練では、セルフ・キャリアドック制度導入の上乗せ措置(+15%)が廃止され、定期的なキャリアコンサルティング制度を労働協約や就業規則、または事業内職業能力開発計画で定めることが必要となりました。

若年人材育成訓練(35歳未満を対象)の対象労働者の要件は、見直し前の「雇用契約締結後5年を経過していない労働者」から、見直し後では「事業所の雇用保険被保険者となった日から5年を経過していない労働者」になっています。

また、非正規雇用(被保険者以外)で一定年数雇用された方を正社員化して訓練を実施した場合も、新たに助成対象となりました。

参照元:厚生労働省「令和4年度から人材開発支援助成金の見直しを行います」

3-5.特別育成訓練コースの要件が変更

特別育成訓練コースでは、助成対象訓練と計画届提出時の書類に変更がありました。

 

見直し前

見直し後

助成対象訓練

(職業または職務の種類を問わず、職業人として共通して必要となる訓練)

職務に関連した内容に限り制限なく実施可能

訓練時間数に占める割合が半分未満であることが必要

計画届提出時の提出書類

-

「訓練別対象者一覧」「訓練の実施内容などを確認する書類」の提出が必要

※計画提出時に訓練実施予定者全員が新規採用者の場合は、当該様式に変えて訓練受講者を募集していることを証明する必要がある

「有期実習型訓練に係る訓練カリキュラム」の様式が変更

「有期実習型訓練に係る訓練計画予定表」が廃止

参照元:厚生労働省「令和4年度から人材開発支援助成金の見直しを行います」

3-6.人への投資促進コースが新設

2021年11月19日に閣議決定された「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」において、人への投資強化を目的としてデジタル人材育成を民間ニーズを把握しながら強化することになりました。

従業員教育への支援や円滑な労働移動を促すための支援を求める提案を受け、以下の5つを2024年度までの限定で人への投資促進コースとして新設されました。

  • 高度デジタル人材訓練・成長分野等人材訓練
  • 情報技術分野認定実習併用職業訓練
  • 長期教育訓練休暇等制度
  • 自発的職業能力開発訓練
  • 定額制訓練

参照元:厚生労働省「人材開発支援助成金:「人への投資促進コース」の創設」

4.申請時のポイント

人材開発支援助成金の申請には注意点があります。申請手順や最新情報だけでなく、社都合による退職者がいないかどうかも確認しましょう。当然ですが、書類の提出期限を守ることも大切です。

ここでは、助成金申請時のポイントについて解説します。

4-1.手順を確認する

人材開発支援助成金を申請する前に、教育訓練計画作成から助成金を受給するまでの手順と提出書類を確認することが必要です。助成金受給までの手順は以下のとおりです。

  1. 教育訓練計画を作成
  2. 教育訓練を実施する1ヵ月前までに、教育訓練計画を労働局へ提出する
  3. 提出した教育訓練計画どおりに訓練を実施する
  4. 教育訓練終了後2ヵ月以内に、支給申請書を労働局へ提出する
  5. 審査
  6. 審査を通過すれば助成金を受給

決められた手順どおりに実施しなければ、助成金は受給できません。上記の手順を把握したうえで教育訓練に取り組みましょう。

参照元:厚生労働省「人材開発支援助成金(特定訓練コース、一般訓練コース、教育訓練休暇等付与コース、特別育成訓練コース、人への投資促進コース)」

4-2.最新情報を確認する

助成対象や助成内容の最新情報を定期的に確認しておくことがポイントです。人材開発支援助成金に限らず、政府の予算がなくなれば助成はできません。2022年度で内容が変更されたように、年度ごとに内容が変更する可能性も考えられます。

厚生労働省の公式サイトで定期的に最新情報を確認することが必要です。

また、助成要件の変更に合わせて、教育訓練の内容を当てはめた結果、運用が難しくなるケースもあります。なぜ教育訓練が必要なのかを熟考したうえで、助成金の利用を検討しましょう。

4-3.会社都合による退職者がいないこと

助成金を受給するには、会社都合による退職者がいないことが条件です。計画届を提出する6ヵ月前から支給申請までの期間に、会社都合による退職者がいた場合、助成金の支給対象から外れます。教育訓練の対象者だけでなく、雇用保険被保険者すべてが対象です。

これは、退職者を出すことが、人材育成を実施するという助成金制度の主旨から外れているためです。助成金を申請する前に、過去半年以前に解雇や退職勧奨といった会社都合による退職者がいないことを確認しましょう。

参照元:厚生労働省「第1 共通要領 」

4-4.申請期限を守る

書類の申請期限や提出期限を守ることも大切です。書類には提出期限が定められています。支給要件だけでなく、書類の提出期限を守らなければ助成金を受給することはできません。この期限というのは、消印ではなく、労働局に到着する日です。

書類の提出方法には郵送と持参の2種類があります。ただし、書類に不備があった場合、再提出になる可能性があります。再提出による書類の出し戻しのリスクを考えた場合、直接持参するほうが得策かもしれません。

最初の提出書類となる教育訓練計画は、前もって作成しておきましょう。

5.人材開発支援助成金の変更点を把握して正しく利用しよう

人材開発支援援助成金は、OFF-JTやOJTといった教育訓練に必要な費用を支援することで、企業の生産性向上につなげることを目的とした制度です。

2022年度からは、コースや助成内容が見直されました。特定訓練コース、一般訓練コース、特別育成訓練コースの3コースに対し、訓練施設と訓練講師の要件、助成額、対象訓練が変更となっています。2024年までの期間限定で、人への投資促進コースも新設されました。

助成金の申請時には、申請手順や最新情報、会社都合による退職者の有無の確認が必要です。人材開発支援助成金の助成内容を把握し、正しく利用しましょう。