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早期退職優遇制度とは?内容や希望退職との違い、メリットを紹介

作成者: スタンバイ制作チーム|2022/08/10

1.早期退職優遇制度とは?

「早期退職優遇制度」とは通常の退職よりも有利な条件を設け、自主的な退職を促す制度のことです。退職を希望する社員には、一般的に退職金の上乗せや有給休暇の買い上げ、再就職支援サービスなどの優遇措置を設けています。

ここでは、早期退職優遇制度の内容や希望退職制度や選択定年制との違いについてご紹介しましょう。

1-1.優遇措置を設けて自主的な退職を促す

早期退職優遇制度とは定年前に退職を望む社員に対し、自主的な退職を促す制度です。主に社員のキャリアアップ支援や人件費削減を目的に行われます。

定年前に会社を離れ、さらなるキャリアアップや新たな分野への挑戦、独立開業など、新たなステップに進みたいと考える社員を後押しする制度です。また、人件費削減や、組織の新陳代謝を図るといった目的もあります。

制度の対象者には、退職金の上乗せなどの優遇措置を設けているのが一般的です。

1-2.希望退職制度との違い

早期退職優遇制度は、「希望退職制度」とは異なります。希望退職制度は主に経営悪化に伴い事業の見直しをする際、退職志願者を募集する制度です。あくまでも会社都合の人員整理を目的に行われます。

強制的に退職させることはできず、社員の意思が優先されるのは早期退職優遇制度と変わりません。目標人数や期限を定めて臨時的に行われるもので、整理解雇であるリストラの前段階として行う企業も増えています。

1-2-1.失業保険の取り扱いは?

早期退職優遇制度と希望退職制度は、失業保険の取り扱いが異なります。

早期退職優遇制度は継続勤務できるにもかかわらず自分の意思で退職したと判断されるため、自己都合による退職となります。

一方、希望退職制度は会社の業績悪化など、会社に原因がある場合の退職と判断されるため会社都合による退職です。

自己都合の退職は失業保険給付に待機期間があるため、会社都合と異なりすぐには支給されません。また、会社都合よりも給付日数が少なくなります。

1-3.選択定年制との違い

早期退職優遇制度と似た制度には、ほかに「選択定年制」があります。選択定年制とは、定年を何歳に設定するか企業と社員の協議で決定する制度です。一般的には、60歳から65歳の間で定年退職する年齢を設定します

「高年齢者雇用安定法」では、60歳を超えても引き続き働きたい社員は65歳まで雇用することが義務付けられています。これに加え、65歳になる前に退職するという選択肢を増やすのが選択定年制です。

選択定年制で所定の定年年齢より前の退職を選択した場合には、優遇措置が設けられている場合もあります。

参照元:厚生労働省「高年齢者雇用安定法 改正の概要」

2.早期退職優遇制度の目的

早期退職優遇制度には、主に社員のキャリアアップを支援する目的があります。福利厚生の一環として運用されることが多く、次のステップに進みたい社員を後押しするものです。

また、主に中高年層へ早めの退職を呼びかけ、人員の最適化を図るといった目的もあります。

ここでは、早期退職優遇制度を行う2つの目的をご紹介します。

2-1.従業員のキャリアアップを支援する

早期退職優遇制度には、定年前に会社を離れ、キャリアアップや別の道を進みたいと考える社員を支援する目的があります。

早期退職優遇制度の多くは退職金が上乗せになる優遇措置が設けられているため、新しい夢を実現したい社員に対して資金面も含めた支援をする趣旨があります。社員のさまざまなライフプランを尊重し、後押しする制度といえるでしょう。

 

 

2-2.組織人員の循環を促す

早期退職優遇制度は、組織の循環を促すことも目的の一つです。

年功序列制を採用している場合、中高年の社員にかかる人件費は高額になります。少子高齢化により若手社員が減少し、これまでと同じ年功序列を維持した場合は人件費が会社運営を圧迫することになりかねません。

そのため、主に中高年層へ早めの退職を呼びかけ、人件費を削減することを目的に行います。

3.早期退職優遇制度の代表的な優遇措置

早期退職優遇制度では、さまざまな優遇措置が設けられています。退職金の上乗せや転職活動を行うための休暇付与、使いきれなかった有給休暇の買取などがその例です。

また、転職市場で不利になりがちな中高年が退職する場合、再就職支援を行う会社もあります。

早期退職優遇制度で設けられている、代表的な優遇措置をご紹介します。

3-1.退職金を上乗せする

早期退職優遇制度の優遇措置では、通常の退職金に一定額を上乗せするのが一般的です。上乗せする金額には特に決まりがなく、会社により異なります。

一例として、以下のような方法が行われています。

  • 全員に同じ金額を上乗せする
  • 年齢・勤続年数に応じた金額を支給する
  • 定年まで勤務したとみなして計算する

厚生労働省の調査によれば、早期退職優遇制度を利用した勤続20年以上、45歳以上の社員における退職金の平均は、大卒・大学院卒で2,326万円です。自己都合の場合は1,519万円であり、800万円以上多くなるという結果です。

参照元:厚生労働省「退職給付(一時金・年金)の支給実態」

3-2.特別休暇を付与する

早期退職を決めた社員が転職活動などをするため、特別休暇付与という優遇措置を設ける場合もあります。通常の勤務をしながら転職活動をするのは難しい場合もあり、活動しやすくするために早期退職者の勤務を免除するものです。

特別休暇は労働基準法で定められた休日以外に会社が独自に休日を付与するもので、一般的に「慶弔休暇」や「リフレッシュ休暇」などの名称でも付与されています。

特別休暇の日数は会社によりさまざまであり、有給とするか無給とするかも会社が自由に設定できます

3-3.有給休暇を買い取る

退職日までに使いきれなかった有給休暇を買い取る場合もあります。特別休暇を有給休暇で消費させる場合もありますが、有給休暇の日数が多い場合など消化が難しいケースもあるでしょう。

そのような場合に企業が日数に応じて単価を決め、買い上げる措置を講じます。単価の決め方は、「1日あたり一定の金額にする」「基本給の1日分に換算する」など、さまざまです。

3-4.再就職を支援する

早期退職優遇制度の対象となるのは中高年層が多く、転職市場では不利になりがちです。そのため、再就職支援の優遇措置を設ける会社もあります。

再就職支援では再就職支援会社と契約を交わし、再就職先の紹介や履歴書の添削、面接の指導、キャリアカウンセリングなどを行い、退職者を支援します。

再就職支援の優遇措置を設けておけば、年齢が高い場合でも安心して制度を利用できるでしょう。

4.早期退職優遇制度のメリットと問題点

早期退職優遇制度には、人件費を削減し、組織の若返りを図るなどさまざまなメリットがあります。一方、退職金の上乗せなどで一時的にコストが増えたり生産性が下がったりする可能性があるため、注意しなければなりません。

メリットだけでなくデメリットな側面も把握し、慎重に導入を検討するのがよいでしょう。

早期退職優遇制度のメリットとデメリットをご紹介します。

4-1.人件費の削減

早期退職優遇制度は、年功序列により高額になった中高年社員の人件費を減らすというメリットがあります。年功序列制のもとで中高年層の役職者にかかる人件費は高額であり、必ずしも生産性と比例するものではないため経営を圧迫します。

優遇措置によって中高年層の退職が促進されれば、人件費を大幅に削減できるでしょう。

4-2.組織の若返り

早期退職優遇制度は、組織の若返りを図ることができるのがメリットです。

中高年の社員がメインを占める職場は、若手社員の活躍が制限される可能性があります。熟練した社員は必要ですが、キャリアアップできず役職や待遇が変わらない状態では若手社員のモチベーションに影響するでしょう。能力に見合う待遇が受けられず、転職を考える社員が出てくる可能性があります。

早期退職優遇制度は若手社員のキャリアアップを図り、組織の若返りと活性化が図れるという点がメリットです。

4-3.一時的に生産性が下がることも

早期退職優遇制度は長期的に見て人件費削減となりますが、退職金の上乗せなど一時的にコストが増加します。そのための財源を確保しなければなりません。

また、早期退職する人員や規模によっては現場の業務に影響を及ぼし、生産性が低下する可能性もあります。想定される状況を検討しながら、慎重に計画を立てるようにしましょう。

5.早期退職優遇制度を導入する流れ

早期退職優遇制度の導入は、主に以下の手順で行います。

  1. 制度の目的を定める
  2. 対象や条件を決定する
  3. 労使間で協議し、取締役会で決議する
  4. 社内に制度を周知する

まず、制度の目的を明確にして、誰でもわかるように明文化することが大切です。また、自社に必要な人材が流出するのを避けるため、対象者の範囲は具体的に定めましょう。

早期退職優遇制度を導入する流れについてご紹介します。

5-1.制度の目的を明確にする

早期退職優遇制度の導入は、目的を明確にすることから始めます。制度は主に、以下のような目的で導入されます。

  • 市場の変化を乗り切れる組織体制へとチェンジする
  • 中高年層のセカンドキャリアを支援する

目的がわからないまま制度を導入すると、「経営状況が悪いのではないか」という疑問を社員に抱かせる可能性があります。目的を定めたら、社員に趣旨が伝わりやすいよう明文化しましょう。

5-2.対象者や条件を設定する

明確にした制度の目的に沿って、対象者と応募条件を設定します。対象条件として年齢や職種、勤続年数などを定めます。

また、募集期間や募集人数、退職する日、優遇措置の内容などを応募時の条件として設定します。

全社員を対象にすると会社に必要な社員まで応募してしまう可能性があるため、範囲は明確に定めることが大切です。

5-3.労使間の協議と取締役会決議を行う

早期退職優遇制度は社員の今後に重要な意味を持つ制度であり、導入は慎重に行わなければなりません。制度の導入を決めたら、社員にアンケートをとるなど現場の意見を調査します

労働組合がある場合は協議を行い、制度内容が社員に不利益とならないかを吟味する必要があります。協議のうえ改善が必要な点があれば対処し、社員の理解を得られるようにしましょう。

また、早期退職優遇制度の導入は会社法362条4項に定める「重要な業務執行」にあたると考えられ、取締役会での決議も必要です。

参照元:e-Gov法令検索「会社法」

5-4.制度を社内に周知する

制度の内容を決定したら、社内に周知します。周知は、主に以下のような方法で行いましょう。

  • 説明会を開催する
  • 社内報や掲示板で全社に広報する
  • 管理職から部下の一人ひとりに説明する

周知では、応募条件や優遇措置の内容を具体的に盛り込むことが必要です。社員から質問できる体制を整え、疑問を解消しておくことも欠かせません。

6.早期退職優遇制度を実施する際の注意点

早期退職優遇制度を実施する際は、トラブルを起こさないために注意したい点があります。条件の周知は徹底し、誤解のないように運用しましょう。守秘義務の徹底も重要です。

また、応募した社員はすべて対象になるのではなく、 会社の承認を必須条件にすることも忘れないようにしましょう。

早期退職優遇制度を実施する際の注意点についてご紹介します。

6-1.条件の周知を徹底すること

早期退職優遇制度では、条件に誤解があるとトラブルになる可能性があります。未然に防ぐため、条件の周知は徹底しましょう。起こりやすいトラブルとして、以下のような内容が考えられます。

  • 退職金の上乗せが事前に聞いていた内容と違う
  • 再就職支援をどう利用してよいかわからない
  • 有給休暇の買い取り金額が想定と異なる

このようなトラブルを防ぐため、事前説明はしっかり行うことが大切です。

6-2.守秘義務を徹底すること

早期退職優遇制度の対象となるのは主に中高年層であり、長年勤務してきた社員です。これら熟練した社員が競合他社へ転職する場合、自社のノウハウが流出する恐れもあります。

そのようなリスクを避けるため、退職時に「誓約書」や「秘密保持契約書」を作成し、退職後も競業避止義務や守秘義務を守ってもらうようにしましょう。

6-3.会社の承認を条件にすること

会社に必要な人材まで退職してしまうことのないよう、 会社の承認を必須条件にすることも大切です。「会社の承諾がなければ早期退職できない」という注意事項を明記しておきます。

「応募しても承諾はできない」という重要な社員がいる場合は、個別に連絡をして応募しないよう伝えておくことも必要です。

7.トラブルなく早期退職優遇制度を導入しよう

早期退職優遇制度は、人件費の削減だけでなく、組織の若返りや社員のキャリア形成支援などを目的に導入する制度です。退職金の上乗せなどの優遇措置を設けるのが一般的です。

導入の際は目的を明確にし、現場の声も汲み取りながら慎重に行うことが大切です。応募条件も十分検討し、トラブルのない制度の導入を実施しましょう。