国家資格以外はすべて民間資格となり、民間団体や公益法人、企業などが独自の審査基準が設けて運営しています。民間資格でも、知名度が高く就職や転職の際に有利になるものがあります。
また、人事のスペシャリストとなってスキルの証明ができ、キャリアアップを図れるという利点もあります。人事担当が資格を取得することで得られるメリットをみていきましょう。
人事の仕事は幅広いスキルが求められ、基本的に日々の業務の中で身につけていきます。しかし、時には高度な知識が必要になり、判断に迷うこともあるでしょう。
資格取得の勉強で業務に関連する正しい知識が身につけば、困難な問題が起きたときも迷わずに判断できるようになるでしょう。スムーズに業務が進み、効率化を図ることができます。
人事の資格はキャリアを証明できるメリットもあります。人事で習得した知識やキャリアがどれだけのものかを証明するのは容易ではありません。勤続年数で実績は示せても、具体的なキャリアをアピールするには弱い部分もあります。
一方、資格は客観的に第三者が評価したものであり、資格を保有しているだけでスキルの証明に役立ちます。転職や社内での異動などでも、人事のスペシャリストとしての証明が簡単にできるのがメリットです。
経理や会計に関する知識が身につく日商簿記の資格も、総務の仕事に役立つでしょう。ここでは、人事の基礎を身につけられる資格をご紹介します。
一般社団法人人事総務スキルアップ検定協会が主催し、人事や総務に関する知識を広く習得できる民間資格です。等級は以下の3種類に分かれています。
3級は幅広い知識の習得と基本事項の確認を目指すもので、人事総務の経験がない場合は、まず3級の取得を目指しましょう。
2級では実務対応能力や労務管理、就業規則などを深く学ぶことができます。1級は2級取得後に、より高度な知識を習得するための資格です。合格者は協会に登録することで、指導的業務を行うことができます。
「ビジネス・キャリア検定」はJAVADAが主催し、厚生労働省が後援する公的資格です。職務の遂行で必要となる知識の習得を目的とし、8分野44試験から自分の職種に合った受験ができます。
人事の分野では人事、人材開発、労務管理などの分野から選べ、等級はBASICから1級まで4段階に分かれます。BASICは基礎知識の習得を目指すもので、未経験者に最適です。
2級、3級は専門知識を活用する能力が問われ、実務経験3〜5年程度の人に向いています。1級はマネジメント能力が問われ、実務経験10年以上の人が対象です。
「日商簿記検定」は、日本商工会議所が主催する民間資格です。簿記の技術と知識を認定する試験で、簿記検定の中でも規模が最も大きいとされています。
簿記は企業の経営活動を記録・計算・整理し、経営成績と財政状態を明らかにする技能であり、試験ではその習得度をはかります。簿記は経理で必要になるだけでなく、財務諸表を読む力や基礎的な経営管理・分析力が身につき、総務の仕事にも役立ちます。2級は実務レベルの内容で、資格取得を採用の条件に設定する会社も少なくありません。
財団法人全日本情報学習振興協会が主催する民間資格です。「マイナンバー制度」を理解し、マイナンバーの適切な取り扱いができる能力を判定します。
マイナンバーとは、日本国内に住民票をもつすべての人に割り当てられる12桁の番号です。マイナンバー制度は行政手続きの円滑化を図り、税金や保険などお金の流れを明確にすることを目的としています。企業でマイナンバーを管理する際は個人情報の漏洩を防ぐため、細心の注意を払わなければなりません。資格の取得が適切な管理に役立つでしょう。
3級はマイナンバー制度に関する一般的な知識であり、実務で活用するには2級以上の取得を目指してください。
また、労働環境の安全性や衛生状態を確認する労働安全・労働衛生コンサルタントもキャリアアップに適しています。人事のキャリアアップに役立つ資格をみてみましょう。
「産業カウンセラー」は、一般社団法人産業カウンセラー協会が認定する民間資格です。心理学的手法を用い、社員の悩みなどにアドバイスを行います。
ストレスコントロールなどのメンタルヘルス対策やキャリア開発、職場における人間関係開発へのサポートを主な業務とする資格です。学科試験と実技試験があり、受験資格を取得するには日本産業カウンセラー協会が行う養成講座を修了するか、大学院で所定の分野を専攻・修了しなければなりません。社員のメンタルヘルスケアは企業にとって重要な問題であり、産業カウンセラーの資格を持つ人材は今後も重宝されるでしょう。
「キャリアコンサルタント」は、厚生労働大臣の登録を受けた登録試験機関が実施する国家試験です。キャリアコンサルティングを行う専門家であり、職業選択や職業生活設計、職業能力の開発・向上に関して従業員の相談に応じ、アドバイスを行います。
社内では主に従業員のキャリア形成支援を行い、キャリアプランを明確にして知識・資格の習得や業務の選択などをサポートします。
学科試験と実技試験があり、受験資格として3年以上の実務経験もしくは指定された講習の受講が必要です。
厚生労働大臣の指定により、安全衛生技術試験協会が実施する国家資格です。労働環境の安全性や衛生状態を確認し、従業員の安全衛生水準の向上のため職場の診断や指導を行います。
企業にとって労働環境の改善は重要事項であり、労働安全・労働衛生コンサルタントとしての仕事は今後も需要が高いでしょう。キャリアの幅を広げるために役立つ資格です。
受験資格は理科系の正規学科を終了し、5年以上衛生関係の実務に携わるなどいくつかの条件があります。
労務管理のエキスパートになるために役立つ資格について、3つご紹介します。
大阪商工会議所が実施する民間資格です。従業員の心の不調を未然に防止し、活力ある職場づくりを目指してメンタルヘルスケアに関する知識や対処方法を習得します。
職位・職種別に以下の3つのコースを設定しています。
III種は一般社員が対象で、自らのストレスの状態を把握することで不調に早く気づき、自らケアできるスキルの習得を目的にしています。
II種は管理職向けで、上司として部下のメンタルヘルス対策を実施するスキルが問われます。I種は人事労務管理スタッフや経営幹部向けのコースで、社内のメンタルヘルス対策を推進できるスキル習得が目標です。
労務管理のスペシャリストとしては、I種の取得を目指しましょう。
厚生労働大臣が認定する機関が主催する国家資格です。衛生管理者は、従業員の健康や安全を守るための取り組みを行います。常時50人以上の従業員を使用する会社は、専属の衛生管理者を選任しなければなりません。
試験は第一種衛生管理者試験または第二種衛生管理者試験の2種類があり、有害業務を含む業種かどうかの違いがあります。「有害業務」とは、適切に管理しないと従業員の健康に重大な影響が出る環境で行う業務を指します。第二種衛生管理者免許では有害業務を行う職場の担当ができません。
受験資格には実務経験が必要で、規模の大きい企業で需要のある資格です。資格手当がつく場合もあります。
「社会保険労務士」は労働保険や社会保険、就業規則の作成など、労務の領域に関する専門家であり、国家資格です。難易度の高い資格ですが、取得しておけばキャリアアップや転職に有利となります。
企業において採用から退職までの労働・社会保険に関するさまざまな問題や年金の相談に応じるなど、幅広い業務に携われる資格です。
企業の人事部で活躍するほか、独立して事務所を経営するケースも少なくありません。
ほかにも、人事の仕事にプラスになる資格があります。「中小企業診断士」は中小企業の経営課題に関する診断やアドバイスを行う資格であり、総務の仕事に役立ちます。
外国人雇用の多い企業では、外国人雇用についての専門知識を身につける「外国人雇用管理主任者」の資格を持つと便利でしょう。人事の仕事に役立つ資格をご紹介します。
経済産業大臣が登録する国家資格です。中小企業の経営課題に対応するための診断や助言を行います。企業と行政・金融機関を結ぶパイプ役となるほか、経営的な判断で人材配置を行う際に役立つ資格です。
試験は中小企業診断士に必要な知識を判定する第1次試験と、知識を事例に当てはめて経営課題を解決する能力を見る第2次試験が行われます。専門性の高い資格であり、社内でキャリアアップを目指したい場合におすすめです。
外国人雇用支援センターが認定する民間資格です。外国人雇用についての専門知識を身につけ、外国人雇用に関するトータルサポートができる人材を育成することを目的としています。
近年は人材不足で外国人を雇用する企業も増えており、ビザ申請の手続きや生活相談などに対応する人事労務担当者に役立つ資格です。
外国人雇用管理主任者として登録できるのは3年であり、3年ごとに更新が必要となります。
ビジネスのグローバル化に伴い、世界に市場を展開する企業が増えています。グローバルに活躍する企業では、経営者のビジネスパートナーとなり戦略人事を行うHRBP(Human Resource Business Partner)の体制を採用するケースも増えてきました。
そのような企業で国際的に活躍したい場合は、「MBA」を取得するという選択肢もあるでしょう。ここでは、MBAの概要をご紹介します。
MBAとは「Master of Business Administration」の略で、経営学修士とも呼ばれます。大学院で経営学を修了すると授与される学位であり、資格ではありません。
MBAは経営戦略や人事戦略だけでなく、マーケティングや金融、経済学など、経営に必要な幅広い知識を身につけることができ、経営者のビジネスパートナーとして戦略人事の知識を得られるのがメリットです。
正しい知識を身につけることで、業務の効率化を図ることができるでしょう。人事担当社員が少しでも早く業務を覚えて仕事の幅を広げられるよう、資格取得を検討してみてはいかがでしょうか。