従業員が1人でもいれば作成が義務づけられているため、個人事業主の場合も作成が必要です。違反した場合、30万円以下の罰金が科されます。労働者名簿は、人事や労務の業務に必要な情報を持っているため、常に最新の情報に更新する必要があります。
例えば、通勤手当を算出する場合、通勤経路の確認に住所の情報が必要です。助成金の申請時に、労働者の情報掲示として労働者名簿の提出を要求されるケースもあります。
参照元:労働基準法
どれが正解というものではないものの、労働基準法では労働者名簿が使用されています。そのため、労働基準法に合わせるほうが無難といえるでしょう。
厚生労働省からは参考様式が提示されていますが、その様式にする必要はありません。項目さえ満たせば、自由に作成することが認められています。
以下に記入例を示します。
氏名 |
山田太郎 |
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生年月日 |
1982年9月21日 |
性別 |
男 |
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住所 |
東京都A区 B町 1-2-3 |
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雇入れ年月日 |
2011年4月1日 |
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従事する業務の種類 |
技術部 |
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履歴 |
2011年4月~2013年8月:技術部 2012年9月~2013年10月:技術部 主任 2013年11月~2017年10月:技術部 係長 2017年11月~2020年3月:技術部 課長 2020年4月~:技術部 部長 |
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退職または死亡 |
年月日 |
2021年3月 |
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事由 |
自己都合 |
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備考 |
参照元:厚生労働省「労働者名簿の様式」
従業員の情報を記載します。漢字や日付の間違いがないように記載しましょう。結婚や離婚を理由に名字が変更された場合は、速やかに変更する必要があります。労働者名簿に記載する名前は、戸籍上の名前です。
結婚後に旧姓を使用している場合でも、労働者名簿には変更後の名字を記載します。備考欄に旧姓を使用していることを記載しておくとよいでしょう。
雇用された年月日の記入も必要です。勤続年数を把握することが目的であるため、採用が決定した日ではなく、あくまでも雇用を開始した日になります。
履歴には、異動や昇進といった社内の履歴を記載します。法律では、履歴に「なに」を「どこまで」記載するのかが定められていません。そのため、あくまでも会社の判断で履歴を記載することになります。
ただし、人事制度とも連動するのであれば、社内の履歴を細かく記載したほうが有効に活用できるでしょう。必要に応じて、学歴や保有資格、これまでの職歴を記載している会社もあります。
住所については、実際に住んでいる場所の住所を記載します。転勤して手続きができていない場合や単身赴任の場合、住民票の住所と住んでいる住所が異なるケースがあります。
労働者名簿に住所を記載する目的は、通勤手当の計算や事故や病気などの緊急時に対応するためです。もし、住んでいる住所を記載していない場合、通勤手当を多く支払ってしまうケースが考えられます。
トラブルのリスクを減らすためにも、住所変更があった場合は、速やかに労働者名簿に反映することが大切です。
従事する業務の種類についても、労働者名簿に記載する必要があります。記載する内容は、部門や役割、業務内容です。この項目は履歴とセットになっています。
異動や配置転換が発生した場合、履歴とともに内容を更新します。ただし、従業員数が30人に満たない場合、記入する必要はありません。1人の従業員が、複数の業務を兼任するケースがあることが理由です。
退職や死亡した場合についても、労働者名簿に記録する必要があります。これは、退職後5年間の保管が義務づけられているためです。いつ退職したのかを明記しておくことで、保管期限が把握できます。
退職理由については、解雇による退職の場合のみ理由を記載する必要があります。自己都合の場合は、記載する必要はありません。従業員が死亡した場合も、理由を記載する必要があります。これは、死因が労災に該当するかを確認するためです。
ここでは、労働者名簿の取り扱い方法について解説します。
人事労務担当者がやるべきこととしては、名簿の作成が挙げられます。労働基準法では、作成方法が定められていません。そのため、紙でも電子データのどちらでも作成できます。
ペーパーレス化やリモートワークへの対応、検索のしやすさを考えると、電子データでの作成が無難でしょう。
ただし、労働者名簿の電子化には「印刷できること」「労働基準監督署の調査時にコピーを提出できること」が条件として定められています。労働者名簿をファイルを開けるパソコンとつながったコピー機が事業所にあれば、心配する必要はないでしょう。
名簿の保管も、人事労務担当者の仕事です。労働基準法では5年間の保管が義務づけられており、期間内に紛失した場合、罰金が科せられる可能性があります。
名簿の保管には個人情報が記載されているため、誰でも閲覧できないように保管することが求められています。紙であれは鍵のかかる場所に保管するだけでなく、鍵の取り扱いについても社内でルールを設けることが必要です。
データ管理であれば、アクセス権の管理が求められています。特定の従業員しかアクセス権を与えないことや、閲覧履歴を残すことも必要です。
名簿の編集も、人事労務担当者の仕事の一つです。労働基準法では、変更時に遅滞なく訂正することが定められています。
労働者名簿には、人事や労務の業務に影響がある情報が記載されています。住所や業務内容によっては、手当に影響する内容もあるでしょう。
もし、古い情報のまま給与を支払ってしまった場合、従業員とトラブルになるケースも考えられます。法律を守ることだけでなく、業務を円滑に進めるためにも、速やかに名簿を編集しましょう。
事業所ごとに管理する必要があるため、それぞれの事業所でルールを定め、運用しなければなりません。ここでは、労働者名簿を管理する際に注意すべき点について解説します。
労働者名簿は、事業所ごとに管理することが必要です。労働基準法で事業所ごとに作成することが定められているため、複数の事業所がある会社の場合は、事業所の数だけ作成することになります。
保管についても事業所ごとにしなければならないため、注意が必要です。事業所が一つであれば、特に気にする必要はないでしょう。
労働者名簿を取り扱う際は、個人情報を取り扱っていることを理解する必要があります。そのため、個人情報保護法についても理解しなければなりません。
例えば、労働者名簿の情報を第三者に提供する場合は、本人の承諾が必要です。第三者に提供するケースとしては、税金や社会保険の手続きが該当します。そのため、労働者名簿を作成する時点で、労働者から承諾をもらう必要があります。
事業所ごとに、個人情報の取り扱いに関するルールを確認しておくことが大切です。
参照元:個人情報の保護に関する法律
記載する項目は、厚生労働省によって定められています。厚生労働省からは参考様式が提示されていますが、項目さえ満たせば自由に作成することが可能です。人事や労務の業務に必要な情報を持っているため、人事労務担当者が取り扱う必要があります。
労働者名簿の作成や保管、編集についても労働基準法で条件が定められています。業務を円滑に進めるためにも、ルールを決めたうえで取り扱うことが大切です。
労働者名簿は、事業所ごとに管理しなければなりません。また、個人情報を取り扱っている点についても注意が必要です。事業所ごとにルールを定め、求められている条件を理解したうえで運用しましょう。