従来の組織モデルでは、マネジメントが必要とされていました。マネジメントに頼らずフラットな関係で自発的に成長するというティール組織は、組織モデルの常識を覆す概念として注目を浴びました。
ティールは青緑という意味で、次に紹介するインテグラル理論からきています。
フレデリック・ラルーは、この「意識のスペクトラム」と組織の発展の様子を重ね合わせ、組織概念を5段階に分類しているのです。ここでは、Red組織からTeal組織まで、5つの組織概念について解説します。
Red組織は、衝動型組織とも呼ばれ、原始的な組織形態です。圧倒的な力を持つトップが組織を支配し、個人の力でまとめています。Red組織は、目の前の利益を重視し、個人の能力に大きく依存する点が特徴です。衝動的で、再現性がない組織といえます。
Red組織は、戦争や国家破綻などの危機に置かれた世の中では高い対応力を発揮しますが、中長期的な目標・計画を持ち、継続的に組織を運営していくことは難しいでしょう。現代では、ギャングやマフィアのように、敵対的な環境に適しています。
Amber組織は、順応型組織とも呼ばれ、Red組織よりも一歩進んだ組織のことです。Amber組織にはヒエラルキーが存在し、階級や役職などが明確に定められています。メンバーの上下関係によって秩序が保たれており、メンバーは自分の役割を全うすることを重視します。
トップダウンで命令が出され、それを遵守することで中長期的な計画を達成する組織です。Red組織よりは目標達成に適しており、個々の力にも依存しにくいという特徴があります。しかし、ルールや秩序を重視するあまり新しいアイデアが生まれにくく、状況変化には適用できません。
Orange組織は、達成型組織とも呼ばれ、変化に対応できる組織のことです。日本社会における一般的な組織モデルともいえます。Amber組織のようにヒエラルキーが存在するものの、成果を出せば昇進できるのが特徴です。
Orange組織では、メンバーが個性や才能を発揮することが期待されており、新しいアイデアやイノベーションも生まれやすいです。また、競争相手よりも成果を上げることが優先されるため、さまざまな目標が設定されたり、効率化が図られたりします。
一方で、成果を出すための競争が激化したり、厳しい数値管理で過重労働問題が発生したりするリスクがあリます。
Green組織は、多元型組織とも呼ばれ、Orage組織よりもメンバーそれぞれが主体性を持って行動しやすい組織です。最終的な意思決定はトップが行いますが、意思決定のプロセスはボトムアップ方式という特徴があります。
メンバーの個性や多様性が尊重され、トップの役割はメンバーの働きやすい環境を実現することです。このように、目標達成だけでなく、個人にも焦点が当てられます。
Teal組織は、進化型組織とも呼ばれ、組織を一つの生命体として捉えているのが特徴です。メンバーそれぞれが意思決定権を持ちます。ヒエラルキーは存在せず、メンバーそれぞれが個性や才能を発揮して自発的に組織を運営するのです。
メンバー間の関係が、フラットである点が大きなポイントです。目標達成に向けて全員が自主的に行動するため、環境の変化にも対応しやすい組織といえます。
そのため、以下の3つの要素が不可欠です。
ここでは、ティール組織に共通する3つの要素について解説します。
一人ひとりが自発的に行動して組織を運営していくためには、セルフマネジメントが必須です。セルフマネジメントとは、メンバー自身で判断し、行動していくことを指します。心身の健康管理や、目標の達成に向かって自ら行動を改善していくことも重要です。
また、適切な意思決定のためには、他者からアドバイスを判断に活かすことも有効です。ティール組織では、「助言プロセス」といって、他者からアドバイスを受けられる仕組みが整っています。
ティール組織では、意思決定の前に、あらゆる関係者からアドバイスをもらうことが求められます。アドバイスを受け、熟考した結果意思決定を下すのです。
最終的な判断は個人の自由ですが、助言プロセスによって意思決定が慎重になり、周囲は積極的にアドバイスをするようになります。このプロセスによって、適切なセルフマネジメントが実現するのです。
ホールネスは「全体性」と訳され、組織の中でいかにありのままの自分でいられるか、ということです。心理的安全性が確保されているか、とも言い換えられます。
メンバーそれぞれが能力を発揮するためには、メンバー全員がフラットな組織の中で自分らしく存在できることが重要です。そのためには、メンバーの個性や多様性を認め、尊重できる組織である必要があります。
また、「自分らしくいられる」という心理的安全性が確保されることで、組織の目的と自らの目的が一致する可能性が高まるといわれています。個人が自己実現のために行う行動が、結果として組織の成果につながるのです。
進化する目的は、存在目的(エボリューショナリーパーパス)とも呼ばれ、組織が存在する目的を進化させる必要がある、ということです。
ティール組織では、メンバーそれぞれが「なぜ組織が存在するのか」という目的を理解し、その目的を変化に応じて進化させることが求められます。
ティール組織において、リーダーはトップダウンで命令を出す存在ではありません。そのため、組織の目的についてもリーダーが提示するのではなく、メンバー全員で進化させるものとされています。
全員で目的を認識し、追求し、進化させることで、組織の存在目的を意味あるものにできるのです。
ティール組織では、命令を下すトップは存在せず、メンバーがそれぞれオーナーシップを持ち、個性や才能を発揮して組織を運営していきます。ティール組織を実現するためには、セルフマネジメント・ホールネス・進化する目的の3つの要素が不可欠です。
ティール組織の事例は、海外だけでなく日本にも存在します。日本での事例を参考にしながら、この記事でご紹介したポイントを実践し、ぜひティール組織を取り入れてみてはいかがでしょうか。