2007年に雇用対策法が改正され、求人の募集・採用の際に年齢制限を設けることは原則として禁止されています。
年齢制限禁止の義務化は、一人ひとりの能力や適性を判断して募集・採用することで、均等に働く機会が与えられようにするためです。 少子高齢化で労働人口が減少しているなかで日本経済が成長するためには、年齢ではなく各自の能力や適性に応じて活躍の場が用意されなければなりません。
そのため、従業員を募集・採用する際には、原則として年齢を不問とすることが必要です。
例えば、若者向けの衣料販売だから20代以下で募集する、従業員が30代以下のため募集も30代以下にするといった求人はできません。
ただし例外として、一定の事由にあてはまる場合は年齢制限ができます。
参照元:e-GOV法令検索「雇用対策法」
求人の年齢制限は原則禁止ですが、次に紹介する6つのケースでは、年齢制限が認められています。年齢制限として上限を定める場合、求職者や職業紹介事業者等に対し、理由を提示することが必要です。
年齢制限が認められる6つのケースについて、内容を詳しく紹介します。
定年の年齢を上限とし、上限未満の労働者を期間の定めなく募集する場合は年齢制限が認められます。例えば、定年が62歳であれば、正社員を募集するときに「62歳以下を募集」と記載しても問題ありません。
ただし、定年が65歳の場合に「30歳以上62歳未満」とするのはNGです。あくまで上限を設定するだけで、下限年齢の設定はできません。
また、更新し続ける場合でも、契約期間を設ける募集はNGです。あくまでも期間の定めのない労働契約でなければなりません。
労働基準法その他の法令の規定により、特定の年齢層の就労が禁止・制限されている業務があり、そのような業務では求人でも年齢を制限できます。
例えば、労働基準法第61条では、22時以降に18歳未満を働かせることを禁じているため、求人で18歳以上と記載できます。
ほかにも労働基準法第62条の危険有害業務、警備業法第14条の警備業務は18歳未満の勤務ができず、年齢制限をしても問題ありません。
長期勤続によるキャリア形成を図る目的で、若年者等を期限の定めなく募集する場合も制限が許されます。
新卒一括採用で自社内でのキャリア形成を図り、定年まで務めるという日本の雇用慣行と調和を図るため設けられた例外事由です。
そのため、対象者の職務経験は不問とし、 新卒以外の者について新卒と同等の待遇にすることを要件に、新卒をはじめとした若年者等に上限年齢を定めることが認められます。
技能・ノウハウが承継されることを目的に、特定の職種で労働者数が少ない年齢層に限定し、 期間の定めなく募集する場合は年齢制限ができます。
年齢制限できるのは30歳から49歳までとされ、求人では5〜10歳幅で区切ります。「労働者数が少ない」場合とは、同じ年齢層の上下と比較して、労働者数が半分以下の場合です。
芸術作品のモデルや演劇などの役者募集で、表現の真実性などが求められる場合、特定の年齢層に限定した募集が認められます。
例えば、「演劇の子役として、〇歳以下の人を募集」といった場合です。特定の年齢に限られるため、年齢は上限及び下限ともに設定できます。
芸術・芸能の分野ではなく、イベントコンパニオンなど、単に商品・サービスの提供などが目的の場合は認められません。
60歳以上の高齢者、就職氷河期世代の不安定就労者(昭和43年4月2日~昭和63年4月1日生まれ)、無業者または特定の年齢層の雇用を促進する政策の対象となる人を募集する場合は、年齢制限をしても問題ありません。政策は、助成金など国の施策に限ります。
60歳以上の高齢者を募集する際、70歳以下など上限年齢を設定することはできません。
参照元:e-GOV法令検索「労働基準法」
参照元:e-GOV法令検索「警備業法」
参照元:厚生労働省「その募集・採用 年齢にこだわっていませんか?」
年齢以外でも、求人に記載してはいけない項目があります。具体的にみていきましょう。
男女雇用機会均等法により、求人の募集・採用に際して、男女を指定する文言の記載は認められません。
禁止される場合と、記載できる場合を表にしました。
記載の内容 | NG例 | 記載OKの例 |
性別を理由に求人対象から排除した表現 | 主婦歓迎 女性歓迎 営業マン |
主婦(夫)歓迎 女性活躍中 営業マン(男女)・、営業職・営業スタッフ |
男女に分けて募集人数を記載 | 募集人数:男性6名、女性3名 | 募集人数:9名 |
性別で異なる条件を記載した表現 | 営業職(男性:営業の経験あり、女性:未経験可) | 営業職(営業経験者歓迎。未経験可) |
ただし、業務を行う上で男女どちらかでなければならない理由がある適用外職種の場合、性別を限定できます。
一例として、以下のような場合です。
心身の障害や身体的特徴を指定するなど、特定の人を差別・優遇する表現はNGです。人種や民族、性格、現在の居住地などを指定することもできません。
一例として、以下のような表現は禁止されます。
生まれ持った性質や現在の居住地を指定するのはNGですが、後天的に身につけられるスキルや技術を記載することは問題ありません。
実態と異なる好条件を記載するのは虚偽の表現であり、禁じられます。経営状況の変化などで求人の掲載時から入社時までに労働条件などが変わることはありえますが、その場合は応募者に説明が必要です。
また、労働条件について、以下のような内容は禁じられます。
求人内容が法の基準を満たしているか、しっかりチェックしましょう。
2021年に「職業安定法に基づく指針」が一部改正され、求人サイトなど職業紹介事業者が求職者に対し「就職お祝い金」などを提供して募集する行為は禁じられています。
職業紹介事業者が紹介した就職者に対し、転職したらお祝い金を提供すると持ちかけて転職を勧奨し、繰り返し手数料を得ようとした事例がありました。このような行為が行われないよう、自らの紹介により就職した者(無期雇用契約に限る)に対して、就職した日から2年間は転職の勧奨をすることが禁止されています。
なお、これは職業紹介事業者に対する制限であり、企業が直接求人を出す場合に就職祝い金などの特典をつけることは禁止されていません。
求人で年齢制限を設けることが禁じられている以上、例外事由を除いて求人への応募者に対して年齢で断ることはできません。
応募者がターゲットとする年齢層に合わない場合でも、年齢以外の理由で断る必要があります。
ここでは、採用を見送る場合の断り方を紹介します。
選考の結果、採用を見送ることになった場合、年齢について言及するのは避けてください。求人に年齢制限を設けることが禁じられている趣旨からは、お断りを伝える際も年齢を理由にするのはNGです。
企業には不採用の理由を伝える義務はなく、「応募者多数のため」といった表現で不採用通知を出せば問題ありません。応募者が次の行動に出やすいよう、不採用通知は早めに出すことが大切です。
お断りを伝える方法は手紙や電話もありますが、便利なのはメールです。郵送よりも早く結果を伝えられ、電話のように不採用の理由などを直接聞かれることがありません。
お断りメールの例文を紹介しますので、参考にしてください。
件名 【選考結果のご連絡】 〇〇株式会社 人事担当△△ |
書類を返却する場合は、「お預かりしている応募書類につきましては、履歴書に記載の住所へ返送いたしますのでご査収ください。」などと記載します。
求人には、原則として年齢制限を記載できません。年齢ではなく、一人ひとりの能力や適性に応じて活躍の場を用意することが目的です。
ただし、定年を上限とした制限や、法で年齢制限がある場合など、例外事由に該当する場合は制限できます。その際も要件があるため、注意してください。また、年齢制限以外にも求人に記載できない表現があります。求人を出す際は、記載内容に十分気をつけましょう。