ハロー効果とは、インパクトのある第一印象に目を奪われ、正確な判断ができなくなる心理現象のことです。今回はよくあるハロー効果の例を挙げ、人事評価や採用でその影響を回避する方策を詳しく解説します。
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「ハロー効果」とは、対象の目立つ特徴により、印象判断が左右される心理現象です。「halo」は「後光」や「光輪」という意味で、絵画などで聖人の頭上に描かれている光の輪を指します。目立つ特徴が後光のようになって判断を歪ませることを表しています。
ここでは、ハロー効果の意味について簡単にみていきましょう。
ハロー効果はさまざまな場面で利用されています。ビジネスでは、イメージアップのためにハロー効果を取り入れている企業のホームページが一例です。例えば有名人を起用したホームページは、有名人が持つ好感度の高さが会社の印象に反映され、イメージの向上につながります。
ハロー効果はまた、恋愛にも効果的です。恋愛で第一印象は大切であり、良い特徴を際立たせることで、ハロー効果により全体の効果を高められるのです。
ハロー効果と似た言葉に、「ピグマリオン効果」や「ホーソン効果」があります。ピグマリオン効果とは、「人は期待された通りの結果を出す傾向がある」とする理論で、人の無意識に働きかけるのがハロー効果との共通点です。しかし、ハロー効果は相手の際立った特徴で自分の評価が変わるのに対し、ピグマリオン効果は相手に期待することで相手を変えるという違いがあります。
ホーソン効果は、人から注目されることで力を発揮するという意味です。無意識の働きかけという点でハロー効果と似ていますが、ピグマリオン効果と同じく他者からの意識や視線がきっかけで意識が変わる点で、ハロー効果とは異なります。
ハロー効果には、ポジティブな方面へ向かう効果とネガティブな方向へと印象が変わる効果の二面性があります。
「ポジティブ・ハロー効果」とは、特定部分の印象が良いと感じた場合に別の部分も良く感じる現象です。一方、「ネガティブ・ハロー効果」は悪い特徴をその人の全体として捉え、本来よりも悪い印象を持ってしまうことです。
ポジティブ・ハロー効果は、対象の目立つ良い部分を捉え、実際よりも高い評価をすることです。例えば、口コミの評価が高い商品はいいものだと感じ、あまり商品の内容を見ずに購入してしまうことが挙げられます。
また、飲食店で丁寧な接客を受けたときにその店員が優しい人柄であると感じるのは、ハロー効果の影響です。店員は店のマニュアルどおりに接客しただけであり、実際の人柄とは関係ありません。
ほかに、一流大学出身と聞くと実績を見ずに仕事ができる人と評価してしまうのも、ポジティブ・ハロー効果の一例といえるでしょう。
ネガティブ・ハロー効果は、悪い特徴を全体評価として捉え、実際よりも低く評価することです。例えば、能力が高い人でも服装が乱れていると、仕事もルーズなのではないかという印象を持たれることがあげられます。
買い物や飲食でお店を訪れたとき、店員の態度が悪ければそのお店全体や商品の印象まで悪くなってしまうのもネガティブ・ハロー効果といえるでしょう。
また、良い口コミがポジティブ・ハロー効果をもたらすのと同じく、悪い口コミを見た場合には優れている商品でも購入をやめてしまうネガティブ・ハロー効果を引き起こします。
ハロー効果は主に、商品に対する効果と人物に対する効果で見られます。よくある例をご紹介しましょう。
【商品に対するハロー効果】
・CMや広告で有名人を起用する
・専門家が薦める
・金賞などの受賞歴やNo.1などのタイトルがある
・SNSや口コミで評価が高い
・数値データがある
CMや広告で好感度の高い有名人が起用されたり、専門家が薦めたりすると商品の売上が上がるのはハロー効果の一つです。また、金賞やNo.1などの冠がついていたり、口コミやSNSでの評価が高かったりする商品も、商品の良し悪しとは関係なく信頼性が高くなるでしょう。
「購入者の9割がリピート購入」など数値のデータを示すのも、商品の信頼性を高めて購入につながるハロー効果です。
人物を評価するときも、ハロー効果が起こりやすくなります。よくあるハロー効果は以下のとおりです。
【人物に対するハロー効果】
・良い身なりをしている
・高学歴である
・スキルが高い
身だしなみが整っている人は、それだけで人柄が良く能力が高い印象を受けやすくなります。高学歴であることも、「能力が高い」「仕事ができる」という印象を持たれやすいでしょう。
また、何らかの資格やスキルを持っている人は、仕事全般の能力が優れているという印象を持たれがちです。例えば英語が堪能な人は、ほかの仕事もできると判断されやすいかもしれません。
これらはポジティブ・ハロー効果の一例ですが、同じ事項でも正反対の内容になればネガティブ・ハロー効果が発動してしまいます。
人と向き合う人事の業務においてはハロー効果が現れやすい場面が多々あります。人事評価では社員の性格が評価に紐づく場合があり、採用面接では出身大学の印象が人物の印象と重ねられてしまう場合もあるでしょう。
人事の業務においてハロー効果が顕著に現れる例をご紹介します。
人事評価は、ハロー効果が出やすい場面です。例えば、元気で明るく上司に気に入られている社員は高評価に傾く可能性があり、1年前の成績が悪かった場合はネガティブな評価が行われる懸念があります。
人事評価は客観的な基準で行われなければならず、ハロー効果は極力排除されなければなりません。明確な評価基準を設定し、客観的な事実に基づいた評価が求められます。
採用面接もハロー効果が現れやすいケースの一つです。面接官は短い時間で判断しなければならないため、目につく第一印象などに左右されやすくなります。身だしなみが整っていて受け答えもしっかりしている応募者は、仕事もできると判断されがちです。
一流大学出身や多くの資格を保有している場合などのハロー効果はポジティブに働き、声が小さい、目線が合わないといった特徴はネガティブに働きやすくなるでしょう。
採用面接でハロー効果が現れると、誤った判断で採用してしまう可能性があります。採用のミスマッチが起こり、採用の手間やコストが無駄になってしまうかもしれません。短時間でも適切な判断ができるよう、客観的な採用基準の設定が大切です。
人事評価でハロー効果が働くことは、できるだけ排除しなければならないことはすでに説明しました。しかし、排除できずに人事評価でハロー効果が出てしまった場合、どのようなエラーが発生するのか確認しておきましょう。
人事評価で起こりやすいエラーには、以下のようなものがあります。
・逆算化傾向
・中心化傾向/極端化傾向
・寛大化傾向/厳格化傾向
・論理誤差
・アンカリング
「逆算化傾向」とは、 評価の結果ありきで、つじつまを合わせるために評価をつけることです。例えば、採用活動で「この人を採用したい」という気持ちがあると、採用するために評価を調整してしまうといった行動が挙げられます。
「中心化傾向」とは、批判やクレームを避けるためにどの評価対象者に対しても平均的な評価をしてしまうことであり、「極端化傾向」とは反対に評価が、最高・最低に偏ることです。評価差を付けようとする意識が原因で、どちらも正確な評価ではありません。
また、誰にでも甘い評価をする「寛大化傾向」や、一律に厳しい評価をする「厳格化傾向」もあります。
「論理誤差」とは、評価者が「おそらくこうだ」と評価対象者の事実確認をせず、推測で評価することです。「高学歴だから」「資格を持っているから」といった先入観で相手を判断してしまいます。
「アンカリング」とは、最初に見た評価が無意識な基準となることです。例えば、最初に見た良い評価で優れた人物という思い込みが起こり、適切な判断ができなくなることです。
どれも評価者の主観が入ることによって起こる誤った評価であり、防止するための対策を講じなければなりません。
ハロー効果による評価エラーを防ぐためには、人事評価の手順を適切に設定することが大切です。まず、評価項目と評価基準を明確にし、周知させなければなりません。
評価は成績だけに偏るのではなく、勤務態度や仕事への意欲など、複数の項目を設定する必要があります。また、複数人で評価をするのが理想です。人事評価でハロー効果によるエラーを防ぐ方法をご紹介します。
人事評価は誰が評価しても変わらない評価となるよう、客観的で明確な評価項目と基準を設定しましょう。主観が入らず、事実や行動をベースにした評価が行われなければなりません。
評価項目や基準が明確でないと評価が人により変わり、ハロー効果が起こりやすくなります。すべての評価者が基準に沿って評価できるようにするため、基準の明文化も必要です。
評価項目は1つではなく、複数で評価できるように設定しましょう。複数あることで細かく、さまざまな視点から評価できます。
具体的には、以下の3項目を設定します。
・実績の評価
・能力の評価
・業務への姿勢や勤務態度の評価
実績の評価では、業務に対して設定した目標の達成度と、課題をどれだけクリアできたかなどを評価します。
能力の評価は実績に関係なく、業務を行うために必要とされる能力や知識の評価です。
業務に対する姿勢や勤務態度の評価では、職場での協調性や仕事に対する取り組み、与えられた仕事を最後まで完了させる責任感などを評価します。
評価は一人ではなく、複数人が行うことで評価エラーの発生を減らすことができます。例えば、直属上司のほか関連部署の上司や同僚、部下などが評価を行う360度評価は、評価対象者の納得感が得られやすい手法です。
上司だけが評価する場合は評価に主観が入る可能性がありますが、360度評価では複数の関係者が評価するため、評価結果が公平で客観的になりやすいでしょう。
近年は変化が激しいためビジネス環境も変わりやすく、人事評価においてもあらゆる環境要因やイレギュラーに対応するのは容易ではありません。すべてに対応しようとすると仕組みが複雑化して制約も多くなります。
制度化しきれない部分は上司と部下が十分なコミュニケーションを行い、評価の納得感を高めるために関係性を築くことが求められるでしょう。
ハロー効果とは、際立つ特徴により全体の印象が決まる心理現象です。人事評価や採用面接でハロー効果が働くと誤った評価や判断につながるため、客観的な基準を設けるなど防止対策をしなければなりません。
ハロー効果について理解し、適切な人事評価ができるように対策を講じましょう。