確証バイアスとは?人事・採用での具体例や回避する方法を解説

採用ノウハウ

確証バイアスとは、誰もが持っている「思い込み」のことで、無自覚でいると人事評価や採用で重大なミスジャッジをするリスクがあります。この記事では、確証バイアスにはどんなものがあり、それを回避するにはどうしたらよいかを詳しく解説します。

1.確証バイアスとは、自分に好都合な情報を信じる認知傾向

確証バイアスとは、自分に好都合な情報を信じる認知傾向
「確証バイアス」とは、仮説や信念を検証する際にそれを支持する情報ばかりを集め、反証する情報を無視または集めようとしないことです。最初に抱いた思い込みや理解した内容を正しいと信じるため、物事の本質を見誤ってしまうというリスクがあります。

確証バイアスは、実生活においてさまざまなシーンで見られます。例えば、インターネットで何らかの情報を閲覧したとき、その情報が正しいかどうかを検証せずに信じてしまうかもしれません。その後、最初に見た情報と同じ内容であれば「正しい」、異なる情報であれば「間違っている」と判断し、真実を知る機会を失うことがあります。

一方、「認知バイアス」とは、今までの経験や思い込みなどの先入観から合理的ではない判断をすることを指す言葉です。確証バイアスも認知バイアスの一種で、先入観に合致する情報だけに目を向ける状態を指します。

認知バイアスが存在することで、一つひとつの現象や状況を検証する必要がなくなるため、脳の負担が軽減されるのです。また、新しい状況に置かれたときでも、今までの経験や思い込みから導き出した方法で対応するため、不安が軽減されるという効果を期待できます。

認知バイアスには、確証バイアス以外にも、正常性バイアス、ハロー効果など多くの種類があります。例えば、正常性バイアスとは、自分にとって好ましくない情報を無視するあるいは過小評価することです。

災害が起こり、避難警報が出されていても、「そこまで被害があるわけではないだろう」「この家は丈夫だから避難する必要はないはずだ」と思い込み、逃げ遅れてしまうかもしれません。

また、「ハロー効果」とは、第一印象や肩書などのわかりやすい特徴に引きずられ、評価がゆがめられてしまうことを指す言葉です。

見た目だけで「信用できる人に違いない」と判断する、あるいは学歴だけを見て「優秀に違いない」と思い込み、その人本人に対する評価に反映させることはハロー効果によるものといえます。

なお、ハロー効果には、ポジティブな影響とネガティブな影響があります。見た目や経歴の良さをプラスに解釈し、本人の能力よりも高く評価するときは、ポジティブなハロー効果が働いたと見ることができるでしょう。

一方、見た目や経歴から「劣っている」と判断し、本人の能力よりも低く評価するときは、ネガティブなハロー効果が作用したと考えられます。

 

 

2.人事評価・採用でおこり得る確証バイアスとその影響

人事評価・採用でおこり得る確証バイアスとその影響
確証バイアスは、人事評価や採用などにも影響を与え、弊害を生むことがあります。例えば、次のような思い込みから、仕事に対する適性や能力を正確に判断できなくなることがあるかもしれません。

・学歴が高い人材は仕事の能力も高い
・体育会系出身は打たれ強い

人事評価や採用は、対象となる人材の人生を左右する重要度の高い問題です。確証バイアスによって正しい判断を阻害されないよう、十分に注意する必要があるでしょう。

 

2-1.学歴が高い人材は仕事の能力も高い

「学歴が高い人材は仕事の能力も高いだろう」という確証バイアスが働き、実際の能力を見ないで学歴だけで判断してしまう可能性があります。場合によっては、最初から「採用したい」という気持ちで応募者に接し、不公平が生じるかもしれません。

また、採用選考の中でワークショップを実施した場合などにも、確証バイアスが働く恐れがあります。学歴が高い人材が思わしくない成果を出した場合でも、「きっと題材が合わなかっただけで、本当はもっと高いスキルを持っているはずだ」とゆがんだ評価をしてしまうかもしれません。

反対に学歴が低い人材が素晴らしい成果を出したときは、「たまたま良い成果を出したのだろう。実際に働いたところで、常に良い成果が出るとは限らない」と評価をネガティブにゆがめる可能性があります。

 

2-2.体育会系出身は打たれ強い

「体育会系出身者は打たれ強く、根性がある」という確証バイアスが働き、採用選考の評価がゆがめられる可能性があります。

応募者の個性に目を向けずに、体育会系に所属していたからという理由で「ポジティブでフットワークが軽く、失敗してもめげない」という先入観で判断してしまうかもしれません。

このように応募者をステレオタイプに判断し、誤った評価をすると、公正な採用選考を実施することが難しくなります。属性ではなく応募者本人を正しく評価するように、面接官一人ひとりが注意することが大切です。

3.確証バイアスでの判断ミスを避ける方法

確証バイアスでの判断ミスを避ける方法
確証バイアスは、日常生活の至るところに潜んでいます。人事面だけに限っても、次のような確証バイアスを持ち、無意識にゆがんだものの見方をするケースは少なくありません。

・育児は女性がするものと思い込み、採用面接時、女性だけに結婚や出産の予定を尋ねる
・女性は数字に弱いと思い込み、数学的思考を必要とする業務を男性に担当させる
・高学歴だから部下としては扱いづらいだろうと思い込み、別のチームに推薦する

いずれも本人の能力に目を向けず、特定の思い込みに影響を受けて、誤った判断をする例です。次の5つの方法を実践し、確証バイアスによる判断ミスを防いでいきましょう。

・確証バイアスは頻繁に生じることを認識しておく
・クリティカルシンキングをする習慣をつける
・利害関係のない第三者の意見を聞く
・確率や統計の観点から考え直してみる
・プレモータム分析(死亡前死因分析)を行う

それぞれの方法について、解説します。

3-1.確証バイアスは頻繁に生じることを認識しておく

確証バイアスに左右されることは、誰にでもあることです。確証バイアス自体が無意識による思考のため、気づかないうちに影響を受けています。

しかし、確証バイアスが頻繁に生じることを知っているなら、「この判断は本当に思い込みによるものではないだろうか」と自分自身の考え方を疑い、検証することが可能です。常に確証バイアスを意識することで、確証バイアスに左右されることを防いでいきましょう。

3-2.クリティカルシンキングをする習慣をつける

「クリティカルシンキング」とは、根拠に基づく論理的な思考のことです。何かを考えるときに、常に「根拠はあるのか」「飛躍や思い込みが入り込んでいないか」と検証することで、確証バイアスが入り込むことを回避できます。

また、そもそもの前提に確証バイアスが入り込んでいることもあるでしょう。例えば、女子中高生をターゲットとしたお菓子の企画開発をする際、「女子中高生だからかわいいパッケージが良いだろう」という前提で考えると、アイデアの幅が狭まります。

女子中高生がかわいいものを好むという考え自体が確証バイアスの可能性があるため、調査を実施して根拠に基づくデザインを開発することが必要です。

3-3.利害関係のない第三者の意見を聞く

同じ確証バイアスを持っている人が集まっていると、思い込みに左右されていることに気づきにくくなります。利害関係のない第三者に意見を求めることで、確証バイアスに気づけるかもしれません。

例えば、付き合いが長いクライアントに自社サービスを提案する場合について考えてみましょう。今までクライアントが利用していたサービスやクライアントの性格などを反映したサービスばかり選んでしまい、目新しい提案ができないかもしれません。

利害関係のない第三者の意見を聞くことで確証バイアスに左右されない提案ができ、クライアントが本当に求めるサービスに気づける可能性があります。

3-4. 確率や統計の観点から考え直してみる

確証バイアスによる思い込みを「確率や統計による事実だ」と誤解している可能性があります。無意識に判断している内容を、一度、確率や統計の観点から考え直してみてはいかがでしょうか。

例えば、特定の人が参加すると雨が降りやすいことを雨男・雨女と呼ぶことがあります。しかし、雨男・雨女と呼ばれる人は常に雨空の下で生活しているわけではないため、確率や統計で考えるとナンセンスといえるでしょう。

3-5.プレモータム分析(死亡前死因分析)を行う

「プレモータム分析」(死亡前死因分析)とは、始める前に失敗の原因について話し合うことです。例えば、プロジェクトなどを始める前に、このプロジェクトが失敗したとしたら、その原因となるものは何かについて関係者で話し合っておくことで、失敗を回避しやすくなります。

失敗の原因を論理的に検討することで、確証バイアスが入り込む隙をなくすことが可能です。論理的にプロジェクトを進めるためにも、プレモータム分析を実施してみましょう。

4.人事・採用の判断で確証バイアスを回避する3つの方法

人事・採用の判断で確証バイアスを回避する3つの方法
人事や採用領域における判断は、対象となる人材の人生に大きな影響を与えます。次の3つの方法を実施することで、確証バイアスを排除して、より公正かつ公平な判断をすることができるでしょう。

・評価の基準を明確にする
・直属上司1人だけで評価を決定しない
・先入観(過去の実績)に囚われない

それぞれの方法を詳しく解説します。

4-1.評価の基準を明確にする

何となくいつも忙しそうで、声が大きく、活発に動いている社員は、業務に対して全力で取り組んでいるように思えるかもしれません。反対に、いつもゆっくりと仕事をし、おとなしい印象のある社員は、仕事量も少ないように感じるでしょう。

業務に対する姿勢や努力などの数字で結果が出ない部分に対する評価を、「定性評価」と呼びます。定性評価は数字で明確に示せない分、印象や思い込みに左右される傾向にあり、ともすると公正性を欠く可能性があるでしょう。

定性評価を行うときは、あらかじめ「最低限満たしているべき点を満たしている」「努力目標を達成している」などの基準を設け、それぞれに点数をつけて数値化することが必要です。

また、評価の基準を明確にすることで、印象や思い込みに左右されず、社員を適正に評価できるようになるでしょう。

定性評価だけでなく、営業成績などの数字で示される「定量評価」も組み合わせ、より多面的に社員を評価することも大切です。それぞれの評価基準を明確にし、確証バイアスを排除しつつ公正性のある評価を実施しましょう。

4-2.直属上司1人だけで評価を決定しない

評価基準を明確にしても、評価する人が1人だけでは印象や思い込みに左右される可能性があります。確証バイアスを排除して、より公正かつ公平な評価を実施するためにも、直属上司1人だけでなく関連部署の上司、同僚など複数の関係者の評価を取り入れることが必要です。

このように多くの関係者が評価する方法の一つに「360度評価」があります。上司から見ると「仕事が遅い」「頼りない」社員であっても、同僚や部下から見れば「よく手伝ってくれる」「親身になってアドバイスしてくれる」社員かもしれません。

より正しく評価するためにも、360度評価を導入することを検討するのもよいでしょう。

4-3.先入観(過去の実績)に囚われない

過去の実績に囚われることも、確証バイアスの一つです。去年も一昨年も悪かったから今年も悪いだろうと思い込み、今年の成果を適正に評価できない可能性があります。

また、今までは仕事に対して積極性を見せていなくても、最近は主体的に取り組んでいるかもしれません。今までの印象に左右されることなく、評価期間内の成績や取り組む姿勢を純粋に評価することが大切です。

5.確証バイアスを回避して適正な人事判断をしよう

確証バイアスを回避して適正な人事判断をしよう
誰もが確証バイアスを持っています。実際に確証バイアスが存在することで早い判断や不安の解消などにつながることもあるため、良い面もあるといえるでしょう。

しかし、人事評価や採用の場面においては、確証バイアスがプラスに働くことはありません。対象者の能力や成果を正しく評価しにくくなるだけでなく、人生を左右してしまうことにもなります。

確証バイアスを回避するためにも、常に論理的かつ根拠に基づいて考えることが大切です。また、確証バイアスがかかっていないか、何度も吟味・検証することも役立つでしょう。

確証バイアスに囚われずに判断するために、評価者を増やすことや第三者の意見を聞くこと、評価の基準を明確にすることなどの対策も必要です。適正に人事判断を行うためにも、確証バイアスに注意していきましょう。

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