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人事評価が低いとモチベーションダウンになる?退職前に考えるべき原因と対応策を解説

作成者: スタンバイ制作チーム|2022/08/10

1.社員が人事評価に不満を持つ理由


人事評価に対して不満を持つ社員はいるでしょうが、そういう社員の数はなるべく少なくしたいものです。人事評価に不満がある理由を解きほぐしていくと、いくつかの問題点が浮かび上がってきます。

その問題点は評価基準や評価者に端を発するものであったり、処遇や評価対象との関連であったりしますが、ここでは5つの要素について解説していきます。

1-1.評価基準が不明瞭

何故こういう評価になったのか、基準が明確ではない評価は社員の不満を高める危険性をはらんでいます

基準が明らかになっていれば、仮に低い評価を付けられたとしても納得することができ、その評価基準にかなうように努力できますが、評価基準が不明瞭では努力の方向が分かりません。社員の不満が膨らむ可能性があり、モチベーションを上げることは困難です。

 

1-2.評価者の価値観で評価にばらつきが出て不公平

評価する側も人間であるため、好き嫌いや独自の価値観などもあるでしょう。しかし、それを人事評価に反映させるようでは、評価者ごとのばらつきが生じ、評価される社員の不満を呼び起こすことになりかねません。

同じような成果を上げた社員に対して、評価者が違うことで評価の付き方が大きく変わるとしたら、社員のやる気も削がれてしまうでしょう。適切な評価ができるように、評価者のスキルアップを行うことが求められます

1-3.自己評価より採点が低く、その理由が不明

自分では高い評価が得られると考えていたにもかかわらず、実際の評価結果はそれほどでもなかったというケースはままあるものです。その際、低い評価となった理由が分からなければ、社員の不満を高めてしまうでしょう。

自己評価は高めに見積もられるものだといわれることがありますが、本人にはそういう意識はありません。評価者がなぜこのような評価をしたのか、事後に説明やフィードバックを行い、より良い評価を得るための改善課題を示すなどの丁寧なフォローが必要です。

1-4.評価の結果が処遇に結びついていない

高評価を得たにもかかわらず、昇給や昇格といった処遇につながらなかったケースも、社員が不満を持つ理由の一つです。

良い評価を受けたら処遇にどのように反映されるかが明らかになっていないと、社員の期待と実際の処遇との乖離が生まれ、不満を抱えて最悪の場合は離職にまでつながってしまいます。

社員が人事評価で不満を持たないようにするには、評価と処遇との関係をある程度分かりやすく説明しておくことが望ましいでしょう。

1-5.評価対象が成果のみでプロセスへの評価がない

評価制度に成果主義を採用する企業は多くありますが、例えば総務部のような、数字で評価が難しい部署に所属する社員に対しても成果のみで評価をしているとなると、社員が不満を持ってもおかしくありません。

営業部員だとしても、数字だけで評価するのではなく、成果に至る過程も評価対象に加えようとする考え方が近年は有力です。

 

 

2.人事評価への不満がもたらす影響


社員が人事評価に対して不満を持つ理由について解説してきましたが、では社員が人事評価への不満を募らせると企業にどのような影響を及ぼすのでしょうか。思ったよりも低い評価をされた社員が、その理由も分からないままではやる気を出して働こうとは思わないでしょう。

不満が高じた社員が転職してしまい、業務が回らなくなったり業績が悪化したりすることも考えられます。人事評価への不満が企業に与える悪影響について、以下で詳しく解説します。

2-1.業務の生産性を低下させる

人事評価に不満を持った社員は、高いモチベーションを保って意欲的に仕事をこなしていくというよりは、やる気を失っておざなりな仕事ぶりになってしまうと考えられます。

業務の生産性が下がり、サービスの質も低下するという悪循環に陥ることも予想され、企業の業績に与えるマイナスのインパクトも大きなものとなりかねません。

2-2.退職率の増加

適正な評価を受けていないと感じた社員が、退職して他社に転じることを考える可能性もあります。職場の要となるようなエース級の社員が退職すれば、周囲の社員の士気低迷や業務そのものの停滞など、影響が広範囲に広がる恐れもあります

退職者が多数上れば、穴埋めのための採用活動や研修などにコストと時間をかけることになり、採算の悪化が懸念されます。

 

 

3.不満からのモチベーションダウンを防ぐ4つの対策


人事評価に不満を感じてモチベーションが下がってしまった社員を抱える部署では、業務の通常通りの進行にも影響が出かねません。評価への不満を、モチベーションダウンに結びつけないようにするためにはどうしたらよいのでしょうか。

そこで、評価制度そのものの見直し、フィードバックやフォローアップといった事後の対応、処遇のあり方の見直しなど考えられる4つの手法について、以下で取り上げます。

3-1.自社の企業ビジョンに合った評価制度を取り入れる

企業に勤めていると、社員は知らず知らずのうちに各企業の風土に慣れ親しんでいきます。人事評価の制度が自社の風土やビジョンに合ったものでないと、社員の意識とのミスマッチが起こることが考えられるでしょう。

ファミリー的な年功序列を是とする風土の企業であれば、成果主義的な要素の強い評価制度を取り入れても社員のモチベーションが向上することはありません。

逆に、営業成績を評価軸とする一匹狼のような社員が多い企業には、年功序列的な評価制度はそぐわないということになります。

3-2.結果だけでなくプロセスや姿勢を評価する

社員が人事評価に不満を持つ理由として、成果だけで評価される制度の採用が挙げられています。社員の不満を解消するには、行き過ぎた成果主義を軌道修正し、プロセスや仕事に取り組む姿勢なども評価対象とすることが方策の一つです。

年齢やキャリアによって成果とプロセスの比重を変えるなど、きめ細かな対応を行えばなおよいでしょう。

 

 

3-3.1on1ミーティングで目標設定とフィードバック

社員が評価制度に対して納得感を持っていないことが、モチベーション低下の原因となっていることがあります。そのような場合には、評価する側とされる側が1対1で面談し、評価制度への理解の促進や社員の課題解決や目標設定に向けて支援を行う1on1ミーティングが効果的です。

ミーティングを行えば終わりではなく、さらなる改善とより高い目標設定へとステップアップするために、次の人事評価のタイミングでフィードバックすることが不可欠でしょう。

3-4.人事評価に基づいて正しく処遇する

評価に対して処遇が合っていないことに不満を持っている社員が多いようなら、人事評価に基づく正当な処遇を行うように制度を改善した方がよいかもしれません。そもそも評価の目的が処遇の決定であれば、成果主義的な人事評価制度を採用する必要があるでしょう。

社員の能力や成果を客観的に判断し、昇給や昇格などの処遇を決めていくことは、人事評価制度の根幹です。モチベーションを下げる社員や離職する社員が多い状態は、会社の危機的状況を表している可能性があります。

 

 

4.その他の人事評価


企業によって経営戦略や風土が異なる以上、人事評価制度もそれぞれに違うものとなります。かつては年功序列型が中心だった人事評価制度は、成果主義の導入に多くの企業が舵を切った時代を経て、多様化のフェーズに入っています。

ここでは、最新トレンドや独自性の高い企業に採用されている人事評価制度についてまとめました。

4-1.バリュー評価

成果主義をもう一歩進めて、業績成果だけでなく自社のバリュー(価値)をどれだけ高めることができたかを評価軸に加えたものがバリュー評価です。

バリューアップの度合いは数値化できない難しさがあるため、評価者が確固たる評価基準を持ち、主観を排して評価を行う必要があります。トレンドの移り変わりが激しい業界に向いている評価方法とされています。

4-2.360度評価

一般的な人事評価は、上司が部下に対して行うものです。これを進化させ、1人の対象者を複数人で評価するのが「360度評価」で、企業によっては部下が上司の評価を行うこともあります。

1人の評価では見出せなかった社員の能力や志向が明らかになる利点がある反面、評価者が増えることに伴う課題も少なくありません。

360度評価を行うには、すべての評価者がきちんと評価のトレーニングを積んでいることが前提となりますが、そうでなかった場合は評価の質そのものが疑問視されてしまいます。評価方法や内容によっては、職場の人間関係が悪化する可能性もあるため、導入には綿密な制度設計が不可欠です。

4-3.パフォーマンス・デベロップメント(PD)

社員の成長という点に着目した評価制度が「パフォーマンス・デベロップメント(PD)」です。

目標設定に対する成果を中心に構築されてきた従来型の一般的な人事評価ではなく、人材の育成を中心に据えた評価方法だといえます。

上司は部下を成長させなければなりませんから、コミュニケーションが密になり、モチベーションの低下が起こりにくい点がこの手法のメリットです。

一方、社員の成長が企業全体の成長につながるという理念的な人事評価制度であるため、数値化や序列化が難しく、評価に対する不満を持つ社員を生んでしまう懸念も残ります。

4-4.コンピテンシー評価

人材開発分野では、高い実績を残している社員の行動特性を「コンピテンシー」と呼び、これをベースに評価基準を設定する人事評価制度が「コンピテンシー評価」です。

優秀な社員の行動に結びつく思考方法や性格などの総合的な能力を評価しようとする点で、スキルや知識などのそれぞれを評価している一般的な職能資格に基づく評価制度と一線を画しています。

実在の社員や理想の社員像からコンピテンシーを分析し、評価基準を構築していくので社員の納得感が得られやすいメリットを持ちますが、市場環境の変化や経営方針の変遷に対応できない点はデメリットです。

4-5.目標管理制度(MBO)

「目標管理制度(MBO=Management By Objectives)」は、世界的に著名な経済学者のピーター・ドラッカーが提唱したものです。

社員個人や部局など組織ごとに目標を設定し、その達成度で評価を決めていきます。社員個人の目標を組織全体の目標と連動させ、社員の成長を企業の成長にリニアにつなげようとする点が特徴です。

成果主義に近い考え方であり、評価が簡単で社員の能力とモチベーション向上にも役立ちやすい利点があります。ただし、目標を低く設定したり、目標に設定されていない業務に取り組まなかったりする社員が出るなど、よく指摘される成果主義の弊害と同様の弱点はこの制度でも課題です。

 

 

4-6.ノーレーティング

「ノーレーティング」はその名前の通り、レーティング(ランク付け)を行わない人事評価です。A評価、B評価といったランク付けを行わない代わりに、上司と部下が定期的かつ頻繁に対話を行い、業績のヒアリングとフィードバックをしながら評価につなげていきます。

固定化した評価基準がないため、周囲の状況が変化しても追随が容易であり、経済環境の変転が激しい現代にマッチした評価手法といえるでしょう。しかし、部下1人ひとりと月に数回の面談をこなすとすると、人事評価以外の業務も抱える上司の負担が過大になるという問題があります。

5.社員のモチベーションダウンを防ぐ正しい人事評価を


本記事では、人事評価への不満でモチベーションが低下してしまう社員が出るという問題点について、その理由と影響を深掘りし、社員のモチベーションをダウンさせないための方法や様々な人事評価手法についても紹介してきました。

人事評価に不満があって意気阻喪した社員が多かったり、退職者が増えていたりする企業では業績の向上は見込めません。自社にマッチした正しい人事評価を行い、やる気にあふれた社員が思い切り活躍できる、そんな企業作りを目指しましょう。