インターンシップを実施することで、企業側は自社で働く楽しさややりがいを学生に直接伝えることができ、優秀な人材の早期確保を実現することが可能です。また、学生側も企業の雰囲気や働き方を直接知ることができ、イメージと現実の違いによるミスマッチを回避することができます。
2021年度の「学生の就職・採用活動開始時期等に関する調査」によれば、2017~2020年の期間において、インターンシップに参加した学生の割合は年々増加していることがわかります。
また参加回数の内訳を見ると、複数回参加の割合が年々高まっており、複数回参加することがスタンダードになっているようです。
<インターンシップ参加経験の有無>
参加経験あり(複数回+1回) |
複数回参加 |
1回のみ参加 |
参加経験なし |
|
2017年度 |
66.5% |
41.9% |
24.6% |
33.5% |
2018年度 |
73.2% |
50.7% |
22.5% |
26.8% |
2019年度 |
73.5% |
52.1% |
21.3% |
26.5% |
2020年度 |
79.1% |
60.3% |
18.8% |
20.9% |
2021年度 |
73.2% |
52.1% |
21.1% |
26.8% |
※2021年度は新型コロナウイルス感染症のまん延防止対策などにより、オンラインによるイベントに切り替わったケースが多いため、インターンシップの参加傾向にも影響が生じています。
また、インターンシップに参加したうちの最長日数は、約半分が半日あるいは1日でした。このことから、インターンシップがより気軽に参加しやすいイベントになってきていることがわかります。
<インターンシップに参加したうちの最長日数>
半日~1日 |
2~4日 |
5日以上 |
|
2019年度 |
45% |
25% |
30% |
2020年度 |
43% |
28% |
29% |
2021年度 |
47% |
33% |
20% |
参照元:内閣府「学生の就職・採用活動開始時期等に関する調査 調査結果 報告書 (概要版)」
2014年度に実施された共育型インターンシップの普及に関する調査によれば、企業規模が大きいとインターンシップの実施率が高いことが報告されています。
企業規模 |
インターンシップの実施率 |
300人以下 |
17.0% |
301人以上999人以下 |
31.8% |
1,000人以上 |
39.3% |
一方、業種によるインターンシップの実施率にあまり差はないことから、実施率の高さは企業規模の影響を受けることがわかります。
業種 |
インターンシップの実施率 |
建設・不動産 |
23.3% |
製造 |
26.6% |
商社・卸売/小売 |
20.6% |
金融 |
20.0% |
サービス |
24.6% |
その他 |
21.9% |
参照元:経済産業省「企業における「新卒採用等への取り組み状況」に関する調査データ」
インターンシップに参加する学生が増えてきていることから、インターンシップで就職先を決める学生も多いと考えられます。半日、1日の短期間でインターンシップを実施する企業も多いため、短い時間で企業の魅力を効率良く伝えられるように丁寧に準備することが必要といえるでしょう。
また、複数のインターンシップに参加する学生が増えていますが、学校で学びながら参加するため、ある程度の数に絞っていると考えられます。そのため、インターンシップに参加する前に、希望する就職先についての情報を集め、おおよその目星をつけていると想定されるでしょう。
採用活動におけるインターンシップの重要性が高まっているだけでなく、インターンシップを実施する前にいかに学生側を惹きつけられるかが採用活動のカギとなっていると考えられます。
インターンシップに注力することは基本とし、リクルーティングサイトや自社サイトを使った広報活動などにも注力することが必要です。
大学4年生と大学院2年生を対象に実施された、2021年度「学生の就職・採用活動開始時期等に関する調査」によれば、最終学年の前の年にインターンシップに参加している学生が多いことがわかります。
特に7月以降に参加している学生が多く、夏期休暇や冬期休暇などの長期休暇に合わせて予定を組み込んでいるケースも想定されるでしょう。
また、多くはありませんが、大学1年生や2年生の時期にインターンシップに参加している学生も見られます。1、2年生向けのインターンシップを企画し、やる気のある学生と早期に接点を持つ計画も検討できるでしょう。
<大学4年生に実施したインターンシップ参加時期調査>
学年 |
大学1年生 |
大学2年生 |
大学3年生 |
大学4年生 |
||||
時期 |
4~3月 |
4~3月 |
4~6月 |
7~9月 |
10~12月 |
1~3月 |
4~6月 |
7~9月 |
参加した学生の割合 |
2.7% |
9.3% |
7.0% |
47.9% |
46.7% |
47.4% |
8.4% |
2.1% |
<大学院2年生に実施したインターンシップ参加時期調査>
学年 |
大学院1年生 |
大学院2年生 |
||||
時期 |
4~6月 |
7~9月 |
10~12月 |
1~3月 |
4~6月 |
7~9月 |
参加した学生の割合 |
4.1% |
45.7% |
42.8% |
44.0% |
5.2% |
4.4% |
参照元:内閣府「学生の就職・採用活動開始時期等に関する調査 調査結果 報告書 (概要版)」
それぞれの理由について詳しくみていきましょう。
少子化の影響を受け、新卒採用できる人材も減少すると想定されます。また、リクルーティングサイトやSNSなどのオンラインを活用した採用活動も普及しているため、多くの企業で複数の手法を活用した多角的な採用活動に取り組んでいます。
そのような中、優秀な人材を確保することはより一層困難になっているのが現状です。優秀な人材と早期に接点を持つためにも、インターンシップの実施、そして、インターンシップへの参加を促す広報活動の実施が必要になってきているといえるのです。
学生が学業に専念しつつ就職活動を行えるように、国が主体となり就職活動や採用活動の日程を定め、経済団体などに要請しています。例えば、2023年度に大学などを卒業・修了する学生に関しては、以下のスケジュールを遵守して採用活動を行うことが必要です。
広報活動開始 |
卒業・修了年度に入る直前の3月1日以降 |
採用選考活動開始 |
卒業・修了年度の6月1日以降 |
正式な内定日 |
卒業・修了年度の10月1日以降 |
国が主導して日程を決めることで、企業は採用活動の期間を自由に定めることができません。そのため、以前よりも限られた時間で効率的に採用活動を進めることが求められています。
採用活動を始める前にインターンシップに取り組んでおくならば、より効率性の高い採用活動を実現できるでしょう。
インターンシップを実施さえすれば、学生が集まり、応募者が増えるのではありません。インターンシップに参加して、その企業に応募するかどうか決める学生も少なくないため、どのような内容にするかが重要な意味を持ちます。
インターンシップの内容を決めるときは、次の3つのポイントに留意すると、より学生にとって魅力的なものになるでしょう。
それぞれのポイントについて詳しく解説します。
企業名に魅力を感じ、インターンシップに参加する学生もいます。しかし、プログラムの内容に惹かれて、インターンシップへの参加を決める学生もいるでしょう。学生が参加したいと思えるプログラムにするためにも、学生が本当に知りたい内容かどうかを確認することが必要です。
2021年度「学生の就職・採用活動開始時期等に関する調査」によれば、インターンシップに参加した感想として9割以上の学生が「業界・業種を理解することができた」ことを挙げています。
また、「会社の雰囲気を理解することができた」「参加した企業から、その企業の採用選考に関する詳細な情報を聞くことができた」などの点を挙げている学生が多いことから、業界や業種、企業についての情報だけでなく、採用選考に関わる詳細情報についても期待されていると考えられるでしょう。
半日・1日のプログラム |
2日以上のプログラム |
|
業界・業種を理解することができた |
94.6% |
96.4% |
仕事の内容を具体的に知ることができた |
80.9% |
92.4% |
会社の雰囲気を理解することができた |
70.2% |
88.7% |
自分自身のスキルや能力についてよく考えるきっかけとなった |
74.2% |
83.5% |
参加した企業から、その企業の採用選考に関する詳細な情報を聞くことができた |
84.9% |
79.7% |
自分の将来設計(キャリアプラン)を考えるのに役立った |
58.9% |
78.3% |
インターンシップ参加者に対しての企業説明会等(広報活動)の案内があった |
84.7% |
76.2% |
半日・1日のインターンシップに参加した学生の約85%が、採用選考や企業に関する詳細な情報を得たと回答していることからも、企業についての情報を得る目的で短期間のプログラムに参加している学生も多いと想定されます。
一方、2日以上のプログラムでは仕事内容や将来設計、自分自身の能力などについて考える機会となったと答えている学生が多いことから、インターンシップが仕事そのもの、人生そのものを見つめ直すきっかけにもなっているようです。
これらの結果から、インターンシップ期間の長さに応じて内容を設定することも必要だと考えられます。学生のニーズに合うようにプログラムを設計し、参加したいと思わせる内容を作り上げていきましょう。
参照元:内閣府「学生の就職・採用活動開始時期等に関する調査 調査結果 報告書 (概要版)」
インターンシップの内容を決めるときは、目的を明確に決める必要があります。例えば、次のような目的を定めることができます。
また、インターンシップのターゲットをどのような学生に定めるのかについても、明確に決める必要があります。例えば、ターゲットを次のように明確に定めると、インターンシップの内容もより具体的に決めることができるでしょう。
目的とターゲットを明確に定めることで、インターンシップを複数回開催する場合も、それぞれの内容に一貫性が生まれます。求める人材を確保するためにも、プログラムの内容を決定する前に、目的とターゲットを決めておきましょう。
どんなに学生に役立つ優れたプログラムであっても、企業アピールにつながらないときは、採用活動につなげることができません。優秀な人材を確保するためにも、インターンシップを通して学生に「この企業で働きたい」と思ってもらえるような内容にすることが必要です。
例えば、企業の業績や今後取り組む分野について説明する時間を少し加えたり、社員に直接質問する場を設けたりすることで、企業についての理解を深めてもらうことができるでしょう。
また、時間内にすべての説明を行うことが難しいときは、パンフレットなどを用意して、後で学生が読めるように工夫することも一つの方法です。
インターンシップは、本格的に採用活動を始める前に実施できる学生と触れ合う機会です。貴重な機会を活かし、実りあるインターンシップを実現するためにも、次の内容をプログラムに含めるようにしましょう。
すべての内容を含めることが難しいときには、何回かに分けてインターンシップを実施することも検討しましょう。学生に負担をかけないように配慮し、参加しやすく、なおかつ参加したくなるインターンシップをプランニングすることが大切です。
まだ社会人として働いた経験がない学生は、業界についても詳しく知らない可能性があります。漠然としたイメージは抱いていても、業界に含まれる分野や将来性についての知識が少なく、「大変なのではないだろうか」「将来的にどのような展望を持てるのだろうか」と不安に感じているかもしれません。
インターンシップには、業界についての理解を深めるためのプログラムを含めるようにしましょう。業界についての関心が高まれば、企業へ就職したいという気持ちも強まる可能性があります。
学生が業界について興味を持ったとしても、企業に興味を持たないのであれば、採用活動につなげていくことができません。そのため、インターンシップでは、業界だけでなく企業についての理解を深めるプログラムを組み込むことが必要です。
例えば、業界内の企業の立ち位置や強み、どのような分野に注力しているかなどについて、データも紹介しながら詳しく解説することができるでしょう。
また、企業の福利厚生制度や評価制度についても紹介するならば、学生が入社後の生活をイメージしやすくなり、求人に応募したいという気持ちを強めることができます。
学生は、「本当に自分に仕事が務まるのだろうか」「社会人としてうまくやっていけるのだろうか」と不安を抱いていることがあります。学生の不安な気持ちを理解し、軽減するようにサポートすることで、就職に対して前向きな気持ちを持たせることができるでしょう。
そのためにも、実際の仕事内容について知るプログラムを含めることが必要です。業務を細分化して詳しく説明するだけでなく、実例を挙げて解説することで、学生が仕事に対して具体的なイメージを持ち、より関心を抱くようになるかもしれません。
スケジュールに余裕がある場合は、オフィスや工場などの現場に連れていき、社員たちが働いている様子を見せることもできます。仕事に対する学生の理解を深めることで、企業に対する興味を引き起こすだけでなく、社会人になる不安を払拭するように工夫しましょう。
仕事内容を詳しく説明することでも学生の不安軽減につなげられますが、具体的なビジネススキルを教えることでも、学生の不安軽減につなげることができます。
さらに、「実際に仕事を体験してみたい」と感じている学生のニーズに応えられるでしょう。
例えば、次のようなプログラムをインターンシップに含めることで、学生の興味を惹きつけることができるかもしれません。
このようなビジネススキルに関するプログラムをインターンシップに含めると、学生の関心を集め、参加者を増やしやすくなります。また、具体的なビジネススキルを教えることで、採用する学生を即戦力として働けるように育成することもできるでしょう。
入社したいという気持ちを持って、インターンシップに参加する学生も多いかもしれません。そのような学生は、採用までの具体的かつ詳細なフローを知りたいと考えているでしょう。
入社を希望する学生の希望に応えるためにも、採用までの今後のスケジュールについて詳しく説明することが必要です。企業説明会や面接開始の日時などをわかりやすく紙にまとめ、学生に配布しましょう。時間に余裕があれば質問会も開催し、採用フローについての疑問解消に努めます。
インターンシップには、プログラムの内容によりいくつかの方法があります。主な方法としては、次の4つが挙げられます。
それぞれの方法と、具体的な実施内容についてみていきましょう。
実践型とは、職場で他の社員と一緒に働くインターンシップの方法です。仕事内容や、企業への理解を深めるときに適した方法といえるでしょう。
また社員と接することで、企業に対して親しみを覚え、入社したいという想いを強めてくれるかもしれません。業務に支障を与えないように配慮しつつ、多くの部署を紹介する機会を設けましょう。
プロジェクト型とは、実際の業務とは切り離して、インターンシップ用のプロジェクトを打ち立て、学生たちに挑戦してもらう方法です。
学生が主体的に取り組めるだけでなく、企業側はリーダーシップやコミュニケーションスキルなどをチェックすることもできるため、より採用活動につなげやすい方法といえるでしょう。
またプロジェクトではなく、グループになって特定のテーマについて調べるグループワークスタイルのインターンシップを実施する企業もあります。
グループワークスタイルでも学生が主体的に取り組めるため、コミュニケーションスキルやプレゼンテーションスキルなど、採用時にチェックしたいスキルを確認することが可能です。
講義型とは、会場に学生を集め、講義の形でプログラムを進めるインターンシップの方法です。短期間で終えやすいため、半日や1日のインターンシップに適しています。また、オンラインでも開催できるため、居住地が遠い学生も参加しやすいというメリットもあるでしょう。
仕事内容や企業への理解を深めるために、社内や工場などの現場を見学するタイプのインターンシップもあります。実践型とは異なり、学生たちは実際の仕事はしないため、業務に支障が出にくいでしょう。
現場で働く社員たちに直接質問する時間を設ければ、より学生たちの満足度を高めることができるかもしれません。ただし、社員たちの協力が不可欠なため、事前に時間を採り、念入りに打ち合わせておくことが必要です。
インターンシップを実施することで、次のようなメリットを得られます。
企業の仕事内容や福利厚生制度、評価制度などを詳しく学生たちに伝えることで、企業に対して関心を持ってもらえる可能性があります。講義型で実施するインターンシップであれば、半日や1日の短期間で実施できるだけでなく、オンライン開催も可能なため、学生側の負担も軽減できるでしょう。
また、業界や企業、仕事内容などに関して詳しく知ってもらうことで、企業と学生のミスマッチを回避しやすくなります。
インターンシップと、学業の両立が難しくなることもあります。特に長期のインターンシップは、学生側にとって負担が大きいといえます。
場合によっては学生が仕事に対する意欲を失ったり、企業に対する興味が薄れたりするかもしれません。時間をかけて丁寧にプログラムを構築し、学生を飽きさせないことを意識しましょう。
短期のインターンシップでは、学生は業界や企業、仕事内容についての理解を深めることができず、入社後にミスマッチが発生する恐れがあります。
また、プロジェクト型やグループワーク型のインターンシップでは、あまり仕事内容と関係のない課題を出すと、学生が業務について間違った理解をしてしまい、ミスマッチを誘発するかもしれません。ミスマッチを回避するためにも、課題選びは慎重に行いましょう。
賃金についても考慮が必要です。例えば、短期間のインターンシップにおいて仕事を体験するときは、賃金の支払いが必要にならない場合が多いです。
しかし、長期にわたる場合や明らかに業務の一部を学生が担っている場合には、学生が労働者とみなされ、賃金の支払いが必要になるかもしれません。事前に賃金が発生するのか、どの程度の金額になるのか確認しておくようにしましょう。
インターンシップの目的を達成し、成功させるためにも、次の2つのコツに留意することが必要です。
それぞれのコツについて、わかりやすく解説します。
インターンシップに参加する学生が増えてきていることからも、インターンシップを開催する企業は多いと推測されます。同業他社が実施するインターンシップとの差別化を図るためにも、企業カラーを打ち出すことが必要になってきています。
例えば、特徴のある商品やサービス、福利厚生制度など、学生にとって魅力的と思われる点をアピールすることができます。
また、オリジナリティの高いプログラムを構築することも、独自のカラーを打ち出す方法の一つです。職場見学からビジネススキル研修、企業説明会までを1日で網羅できるプログラムや、会議アプリなどを使って双方向性のあるオンライン型のプログラムなども検討できるかもしれません。
複数のインターンシップに参加する学生が多いことからも、インターンシップへの参加は求人への応募を確約するものではないことがわかります。
まずは、インターンシップからスムーズに採用まで進んでもらう無理のないストーリーを構築してみましょう。流れの中に自然ではない部分が見つかれば、フローを練り直し、よりスムーズで無理のないプランを作り直します。
特に長期のインターンシップは学生にとって自分を見つめ直す機会にもなるため、自分自身の成長を実感することができれば、企業で働いてさらに自分を磨きたいと考える可能性があります。学生目線で採用までのフローを見つめ直し、より効果のあるインターンシップを実現していきましょう。
まずはインターンシップの目的とターゲットを明確にし、どのような内容を含めるべきかを検討しましょう。実りの多いインターンシップを開催するためにも、丁寧に準備を進めていくことが大切です。