従業員満足度を測る要素は働きがいや給与、社内の人間関係、職場環境、福利厚生などです。従業員の仕事や職場に対する満足度が高まると、人材の定着や生産性の向上などの効果が見込まれるため、結果的に顧客満足度の向上にもつながる指標です。
労働力人口の減少や働き方の多様化を背景に注目されており、優秀な人材を確保するために、企業が押さえておきたい指標といえます。
それぞれのメリットの内容を確認していきます。
従業員満足度の向上により、従業員は高いモチベーションを維持して主体的に仕事に取り組むようになるため、生産性の向上につながります。
このような従業員が多い企業は、コミュニケーションも活発化する傾向にあり、従業員同士の連携によるアウトプットも見込めます。
離職率の低下も、従業員満足度の向上によって期待できる効果の一つです。従業員が仕事や報酬、職場環境などに対して満足し、「ここで働き続けたい」と考えることで人材の流出を防ぎます。
既存の従業員が満足して働くことができる企業は、より良い条件を求める求職者にとっても魅力的であるため、採用力アップが見込めます。さらに入社後の定着率も高いため、採用コストの抑制効果が期待できるでしょう。
採用活動や教育にはコストがかかります。これらのコストを抑えられることは、企業にとって大きなメリットです。
従業員満足度の向上は、結果的にその企業の顧客満足度の向上にも作用します。従業員満足度が高い企業の従業員は、顧客や社会に対する自分の仕事の意義を理解しており、顧客が満足する商品やサービスを提供できるよう能動的に努めるためです。
一つずつ解説していきます。
会社のビジョンや経営方針を社員と共有することは、従業員満足度を向上させるために有効な方法の一つです。どのようにして顧客に価値提供を行うのか、また社会に貢献するのかを従業員と共有することで、従業員の企業への帰属意識を高めたり、従業員同士の一体感を醸成するなどの効果があります。
経営方針に対する従業員の共感を得たうえで、それぞれの部署やチームの目標にまで落とし込みができれば、仕事に対する納得感やモチベーションを高めることが可能です。
経営方針を浸透させるには、経営トップが従業員に対して、絶えず伝え続けることが重要といえます。経営方針を小冊子にわかりやすくまとめ、従業員に配布することも一案です。
社内コミュニケーションを活性化させると、従業員は企業に居心地の良さを感じ、それが従業員満足度の向上につながります。社内コミュニケーション活性化のための方法としては、社内の勉強会や懇親会の開催、従業員同士が気軽に話せるカフェスペースの設置、社内SNSの運用などが挙げられます。
上司と部下のコミュニケーションを活発にするためには、1対1での面談、いわゆる「1on1ミーティング」を定期的に実施することも有効です。
従業員満足度を向上させるためには、人事評価制度の見直しも効果的であると考えられます。人事評価は従業員の報酬に直結するため、従業員満足度に対する影響が大きい要素です。
従業員の誰もが満足する人事評価制度を構築することは、非常に難しく現実的ではありません。しかし、年齢や性別といった属人的な要素に左右されない、個人の能力やパフォーマンスが適正に反映される人事評価制度に近づける必要はあります。
人事評価制度の不透明さが課題である場合、目標管理制度や360度評価、コンピテンシー評価などの導入を検討することもおすすめです。
ワークライフバランスを実現することも、従業員満足度を向上させるために欠かせない要素の一つといえます。長時間労働を強いる働き方の見直しや有給休暇の取得促進、テレワークの導入など、仕事と生活をバランスよく両立させるための取り組みを進めることで実現を支援できます。
福利厚生の整備を行うことも、従業員満足度を向上させるための効果的な施策です。具体的には以下のような施策の導入が挙げられます。
ただし、これらの制度を導入しても実際に利用されなければ意味がありません。従業員の福利厚生に対するニーズを、正しく把握することが重要です。
従業員満足度を高めるには、仕事の割り振りにおいて、従業員のスキル・経験を考慮するという視点が必要です。
たとえ高いスキルを持っていたとしても、それに見合わない仕事ばかりを行っていると宝の持ち腐れになるばかりか、モチベーションの低下も招きかねません。反対にスキルや経験に応じた仕事を任せられると、さらなるスキルアップに向けた努力や、従業員のモチベーション向上効果が期待できます。
従業員一人ひとりのスキルやキャリアを管理しきれないという場合は、人材管理システムを活用するのも有効です。
職場環境の改善は、安全衛生法を遵守するための取り組みであるだけでなく、従業員満足度にも影響する施策です。具体的には、快適な作業環境や、疲労回復のための休憩室やシャワー室などの整備などが該当します。
どのような施策を講じれば従業員満足度が向上するのか、イメージしやすいようにそれぞれ解説していきます。
目標の数値化は、従業員満足度に影響する取り組みの一つです。実績に基づいた適正な評価は、仕事に対する意欲を向上させるための重要な施策といえます。
目標を具体的に示し各段階で達成感が得られるように、適切なフィードバックを行うことがポイントです。目標は高すぎると達成が難しく、低すぎるとやる気が低下するため、適切な難易度に設定します。
従業員満足度を高めるために、個別面談を実施することもおすすめです。個別面談には目標達成に対するずれや遅れを修正するほか、日常業務の振り返りによって部下の成長を促す、コミュニケーションの機会を設けるといった目的があります。
従業員満足度を向上させるための具体的な取り組みとしては、目標に対しての成果に応じた外的な働きかけである、インセンティブの支給も有効です。
インセンティブの対象は業績や職務行動が多いものの、社内コンテストを開催し、選ばれた従業員に支給する企業もあります。
社内イベントの開催も、従業員満足度の向上に対して効果的です。社内イベントには、社員旅行やスポーツ大会、ワークショップなどさまざまな種類があります。
業務とは関係のないシチュエーションで顔を合わせることで、従業員同士が普段とは違う一面を見ることができ、コミュニケーションの活性化につながります。
具体的な測定項目について、それぞれ解説していきます。
従業員満足度を測定する項目として、従業員が日々携わる仕事への満足度は欠かすことができません。具体的には以下のような切り口で、調査のための質問を設けることが多いです。
このように現状の仕事内容や人材育成に関する満足度、勤続意向などを問うことが一般的です。
処遇への満足度を調査するためには、以下の質問項目を盛り込むとよいでしょう。
単に給与額が多いか少ないかだけでなく、評価制度が適正に運用されているかどうかも、従業員満足度に影響します。
職場や人間関係への満足度も、従業員満足度を測定するにあたって必須といえる項目です。具体的には、以下のような質問を行います。
メンタルヘルスの状態への質問も、調査に盛り込まれていることが多い項目です。人間関係や仕事が原因のストレスは従業員の精神状態の悪化を引き起こしやすく、離職率にも大きな影響を及ぼすためです。
メンタルヘルスの状態に関する質問には、次のようなものが挙げられます。
また、従業員満足度を向上させることは、労働力人口の減少や働き方の多様化が進む状況において、求める人材を確保するための有効な手段です。
企業のビジョンはしっかりと共有されているか、社内の風通しは良いか、能力や成果を適正に反映する人事評価制度になっているかなど、今一度見直してみましょう。