面接における「アイスブレイク」の目的は、応募者の緊張をほぐすことです。応募者の緊張をほぐすことで、応募者自身の言葉を引き出せます。そうすることで、応募者の魅力を引き出せるだけでなく、会社や面接官に対し良い印象を持ってもらうことにもつながります。
ここでは、面接におけるアイスブレイクの目的と効果について解説します。
アイスブレイクの目的は応募者の緊張を解くことです。面接に来る応募者の多くは、緊張していると思われます。入念な準備をした結果、肩の力が入った状態になっている人もいるでしょう。
面接官は、教科書通りの言葉ではなく、その人自身の言葉から人間性を感じ取り、自社が求める人材なのかを見極めたいと考えています。そのような応募者の肩の力を抜くのがアイスブレイクです。アイスブレイクをすることで応募者の緊張がほぐれ、その人自身の言葉を引き出せるでしょう。
応募者の魅力を引き出すのもアイスブレイクの目的です。アイスブレイクで緊張がほぐれることで、応募者自身の言葉を引き出せます。応募者も緊張がほぐれることで、パフォーマンスも発揮しやすいはずです。
応募者は自分の言葉で話すことで、素の部分が出るようになります。会話から人間性や魅力を感じることもできるでしょう。応募者の人間性や魅力を引き出すためにも、アイスブレイクは有効というわけです。
アイスブレイクをすることで、応募者から良い印象を持ってもらえる場合もあります。アイスブレイクなしで面接が始まった場合、緊張感から「面接官が冷たい」「高圧的な態度で質問された」といったネガティブな印象を持ってしまう人も中にはいるでしょう。
ネガティブな印象を持ったまま面接が終わった場合、その印象が周囲に広がる可能性があります。現代は会社の評判がインターネットで確認できる時代です。とくにネガティブな印象は広がりやすいため、できるだけ良い印象を持ってもらうことが会社を守ることにもつながります。
アイスブレイクをすることで、応募者は緊張がほどけるため、面接官に対する印象も良くなるでしょう。会社や面接官に対し、良い印象を持ってもらうためにもアイスブレイクは有効というわけです。
アイスブレイクは、オンライン面接でも重要な役目を果たします。コロナ禍の昨今では、オンラインで面接を実施する会社も増えてきました。しかし、オンラインの面接では対面と同じように面接すればいいわけではありません。オンラインならではのポイントがあります。
オンライン面接は応募者だけでなく面接官も慣れていないケースがあります。その場合、お互いに緊張してしまい、応募者の魅力を引き出せずに面接が終わってしまうケースも少なくありません。
また、オンラインでは全身が映らないため、仕草や細かい表情がわかりにくいというデメリットもあります。通信状況によっては音声が途切れたり聞こえなくなったりしてしまうこともあるでしょう。
そのため、対面以上に応募者にリラックスしてもらうことが必要です。アイスブレイクでリラックスしてもらうことで、表情が読み取りやすくなったり、トラブル発生時のやりとりもスムーズにできたりといった効果があるでしょう。
面接時のアイスブレイクでは、相手の話を聞くだけでなく、面接官側から自己開示することがポイントです。応募者への質問は、答えやすい「クローズド・クエスチョン」から始めるとよいでしょう。アイスブレイクに使う時間配分を決めておくことも、成功のポイントです。
ここでは、面接時のアイスブレイクを成功させるポイントについて解説します。
面接時のアイスブレイクを成功させるポイントは、面接官から積極的に自己開示することです。アイスブレイクの失敗例として、場を盛り上げようとするあまり、応募者を質問攻めにしてしまうケースがあります。
その場合、応募者の緊張はほぐれるどころか、威圧感を持つ可能性があります。応募者の話を聞くのではなく、まずは面接官の話をしましょう。そうすることで、応募者は面接官が自分に対して心を開いてくれていると感じるはずです。
来社のお礼とともに面接官自身の自己紹介をし、面接官のことを応募者に知ってもらったうえで質問をすれば、応募者も答えやすいのではないでしょうか。また、アイスブレイクの質問が合否に影響があると思い、なかなか緊張が解けない応募者もいます。
そのため、面接官の自己紹介と一緒に、アイスブレイクの内容は選考には関係ないことを伝えましょう。
面接時のアイスブレイクでの質問はYESかNOで答えられる「クローズド・クエスチョン」から始めましょう。緊張している応募者に難しい質問をしても、答えにくかったり歯切れが悪くなったりします。
クローズド・クエスチョンであれば、答え方が限定されるため、緊張していても比較的答えやすいです。「今日はここまで電車でいらっしゃったのですか?」といった話から始めるとよいでしょう。
ただし、「クローズド・クエスチョン」はすぐに回答が終わるため、繰り返すと尋問のようになります。「趣味は〇〇なんですね?」といったクローズド・クエスチョンでスタートし「いつから始めたんですか」とオープン・クエスチョンに切り替えれば、話が膨らんでいくでしょう。
アイスブレイクは時間配分を決めることも大切です。アイスブレイクにより緊張感がほぐれる反面、長くなりすぎると、緊張がほぐれるどころかなくなってしまい、締まりがなくなります。逆に、短すぎても緊張がほぐれません。
アイスブレイクの時間目安は、面接時間が60分であれば3分程度がよいでしょう。長くなっても5分以内にしましょう。ただし、この時間はあくまで目安です。人には個人差があるため、すぐに打ち解ける人もいれば、長めのアイスブレイクが必要な人もいるでしょう。
応募者の雰囲気を見ながら時間を調整するのも一つの方法です。盛り上がりすぎてアイスブレイクが長くなり、面接の時間がなくなってしまうケースもあるため、時間配分を決めたうえで臨機応変に対応しましょう。
オンラインでの面接では、聞き取りやすい話し方を心がけることが大切です。オンラインは回線状況や機材の質によっては、音が途切れたり、雑音が入ったりします。また、全身が映らないため、ジェスチャーが伝わりにくいデメリットがあります。
そのため、対面での面接よりも、話すスピードを抑え、大きくはっきり話すことが大切です。開始時に「声が途切れたり、聞き取れなかったりしたら挙手してください」とあらかじめトラブルシューティングを伝えておけば、応募者も安心するでしょう。
話すだけでなく、聞くときも注意が必要です。応募者の話に対し、リアクションを少し大きめに取り、相手の話を聞いていることを伝えましょう。オンラインならではのバーチャル背景を使用すれば、アイスブレイクのネタにもなるのでおすすめです。
ゲーム形式のアイスブレイクもよいでしょう。ここでは、アイスブレイクの鉄板ネタについて解説します。
アイスブレイクの鉄板ネタはプライベートネタです。多くの人は、話す相手と共通点があれば親近感が湧くものです。履歴書に書かれている趣味や特技、出身地の中から共通の話題を見つけて話せば、会話が弾みやすいでしょう。
応募者からも「自分のことをしっかり見てくれている」と感じてもらえるため、信頼度も上がるはずです。ただし、出生地や本籍・家族に関する話題は厚生労働省で禁止されている話題であるため、気をつけましょう。
遠方から来社された応募者には、来社方法を聞くのもおすすめです。「大変だったでしょう」といったねぎらいから、道中でのハプニングネタなど、話が弾む話題が出てきやすいネタなので、使ってみましょう。
参照元:厚生労働省「公正な採用選考の基本」
アイスブレイクのネタとして時事ネタは欠かせません。性別や年代を選ぶことなく話せるため、年の差があった場合でも気軽に使えるネタです。流行りのニュースやイベントといったネタであれば、お互いが知っているため、話が弾むでしょう。
人にもよりますが、オリンピックやワールドカップといったスポーツイベントは盛り上がるネタの一つです。天気ネタであれば、出身地と絡めて話を膨らませることもできるでしょう。
このときポイントになるのが、グッドニュースを選ぶことです。バッドニュースを選んだ場合、ネガティブな気持ちになるため、その後の面接にも悪影響となるかもしれません。グッドニュースでポジティブな感情のまま面接に進むことを意識しましょう。
ゲーム形式のアイスブレイクを取り入れるのも鉄板ネタの一つです。多く利用されているゲームとして、以下のものがあります。
・GOOD&NEW「GOOD&NEW」は、24時間以内で起こった「良かったこと」や「気付いたこと」を発表するゲームです。ポジティブな気持ちになるだけでなく、発言内容からキャラクターがわかるため、短い時間で相手のことを知れます。一人ひとりの発表後に全員で拍手をするため、一体感も生まれるでしょう。
「リレー式自己紹介」は、自己紹介時に、自分より先に自己紹介した人の名前をいうゲームです。「Aさんの隣のBさんの隣のCさんの隣のDです」といったように、終盤に進むにつれて難しくなり、自然と盛り上がります。
これらのゲームは、グループ面接だけでなくオンライン面接でも使えるので、試してみましょう。
面接時に、個人の思想やプライバシーに関する話題を聞くことは厚生労働省により禁止されています。トラブルにも発展しかねないため、しっかり把握しておきましょう。また、会話になりにくい話題や、ネガティブな印象を与える時事ネタもアイスブレイクには相応しくありません。
ここでは、アイスブレイクでNGとされる話題について解説します。
個人の思想や、ハラスメントと受け取られかねない話題はアイスブレイクでは禁止です。以下の話題は厚生労働省により禁止されています。
・宗教や支持政党
・人生観や生活信条
・尊敬する人物
・個人の思想
・労働組合に関する情報
・出生地や本籍、家族に関すること
・住宅状況や生活環境、家庭環境
・購読新聞・雑誌・愛読書など
アイスブレイクでデリケートな質問をする人は少ないかもしれませんが上記の項目をすべて把握している面接官は多くないでしょう。愛読書や尊敬する人物といった話題は、一般的な質問項目としても聞いたことがあるのではないでしょうか。
何が禁止されているかを把握したうえで、応募者の人柄を引き出すことが大切です。
参照元:厚生労働省「公正な採用選考の基本」
会話になりにくい質問もアイスブレイクには相応しくありません。たとえば「緊張していますか?」と聞かれても相手は「はい」としか答えられず、その後の会話も形式的なものになるでしょう。それでは、緊張はほぐれず、アイスブレイクの役目を果たせません。前述したように「クローズド・クエスチョン」と「オープン・クエスチョン」を組み合わせることが大切です。
また、応募者の緊張を気遣った結果、面接官ばかりが話してしまうケースもあります。面接官と応募者の双方が話さなければ、お互いが打ち解けることにはなりません。お互いが話す時間のバランスを考えましょう。
ネガティブな印象を持つ時事ネタも相応しいとはいえません。時事ネタは盛り上がる話題が多い一方、その内容はポジティブなものからネガティブなものまで多岐にわたります。
感染症や災害、事件といった話題は、応募者に不快感を与えてしまいがちです。そうなると応募者はネガティブな印象を持ったまま面接に進み、自分のパフォーマンスを発揮できずに面接が終わってしまうケースも考えられます。
ネガティブな印象を与えかねない時事ネタは避けるようにしましょう。
面接におけるアイスブレイクは、応募者の緊張をほぐすことが目的です。応募者の緊張をほぐすことで、応募者の魅力を引き出せるだけでなく、会社や面接官に対し良い印象を持ってもらうことにもつながります。
面接時のアイスブレイクでは、相手の話を聞くだけでなく、面接官側から自己開示することがポイントです。応募者への質問は「クローズド・クエスチョン」と「オープン・クエスチョン」を組み合わせるのが有効です。アイスブレイクに使う時間配分を決めておくことも、成功のポイントといえるでしょう。
アイスブレイクのネタは、ゲーム形式や、趣味や特技、出身地といったプライベートのネタや、流行りのニュースやイベントといった時事ネタがおすすめです。共通点を見つけやすく話も弾みます。
ただし、時事ネタには注意が必要です。面接時に、個人の思想やプライバシーに関する話題を聞くことは厚生労働省により禁止されています。このような質問をした場合、トラブルの原因にもなりかねません。
また、会話になりにくい話題や、ネガティブな印象を与える時事ネタも、アイスブレイクには逆効果です。ポジティブな感情のまま面接に進めるような話題を意識しましょう。アイスブレイクのポイントを理解し、効果的に使いましょう。