人材を採用しようとするとき、応募者の面接をしないということは基本的にありません。これから自社の戦力として活躍してくれる人材を獲得しなければならないため、面接官となる社員に与えられた使命は重大です。
重大な任務を任せる面接官だからこそ、しっかりとしたトレーニングを積んでもらう必要があります。面接官をトレーニングする理由としては、大きく分けて以下の2つが挙げられます。
面接官は応募者を採用するかどうかについて、一定の評価基準を持っていなくてはなりません。面接官ごとに評価基準が異なっていたら当たりはずれが出てしまい、良い採用に結びつかない恐れがあります。
自社が必要とする評価基準を設定し、それを面接官がどのように見極めるかをトレーニングしなければなりません。
面接官は応募者と対面し、直接対話することになります。面接官の与える印象が悪かったり、応募者の質問に的確に答えられなかったりすると、折角の人材を取りこぼすことにもなりかねません。
面接は応募者を選ぶだけでなく、応募者に自社を選んでもらうための場でもあります。「この会社に入りたい」と思ってくれるようにするスキルを付けることも、面接官をトレーニングする大きな理由の一つです。
面接官に必要とされるスキルにはどのようなものがあるでしょうか。応募者の能力を見極める力はもちろん、志望度合いや業務に対する考え方などを引き出す質問力、緊張をほぐして実力通りの姿を見せてもらうための会話力、相手に悪い印象を与えないマナーなど、面接官には硬軟さまざまなスキルが要求されます。
ここでは以下の6項目について説明していきます。
自社が必要とする人材であるかどうかを見極める力は、面接官が持つべきスキルとして最も基本的なものです。応募者の能力は自社が求めるレベルに達しているか、志望の本気度はどの程度かなど、数多くの項目を見極めていかなければ採否の検討に進むことすらできません。
この見極めをするためには、評価基準が確立していることが不可欠です。
面接官だからと言って上から目線で応募者に対応するのはご法度です。仮に不採用にするとしても、自社に対して悪印象を持たれないよう、ビジネスマナーを踏まえた節度ある態度で面接に臨まなくてはなりません。
ぜひ採用したいと思えるような人材は、他社の選考でも合格する可能性が高いと考えられます。面接官の態度や言葉遣いなどが理由で欲しい人材に逃げられるようなことがあるようでは、採用活動の成功もおぼつかないでしょう。
面接官には、応募者が自社の評価基準にかなう優秀な人材だった場合、入社してもらうように背中を押す役割が求められます。これが「動機付けする力」です。応募者に対して自社の強みや入社後の待遇、キャリアプランを提示するなどして、採用に結びつけるスキルが面接官には求められます。
応募者の個性や長所を引き出しながら、入社への動機付けも行うことが面接官の力量の見せどころです。
面接のような場面では、緊張してうまく話ができないという人も少なからずいます。そんな人の緊張を解きほぐすスキルも、面接官なら備えてなくてはなりません。緊張したままの面接で応募者の本来の実力や本音を引き出せなかったら、応募者はもちろん、採用側の企業にとっても優秀な人材を獲得するチャンスを失うことにつながります。
面接の出だしに軽い雑談をして、応募者がリラックスしてから本題に入るようにすると良いでしょう。
面接の大部分の時間は、質問と回答で成り立ちます。あいまいな内容の質問では相手も答えにくいだけでなく与える印象も良くないため、端的な質問を心がけましょう。ぶつ切りの質問で終わるのではなく、質問の回答を深掘りするように次の質問を重ねて、応募者の考えを理解していくテクニックなどをトレーニングで身につけたいものです。
面接官は、当然のことですが採用に関する基礎的な知識を持っていなければなりません。男女差別やセクシャルハラスメントに該当する発言などはもってのほかですし、思想信条や政治的な背景など面接にふさわしくない質問も同様です。
最近はSNSを利用する人も多く、不用意な発言で炎上を引き起こしでもすれば、自社のイメージに甚大な損害を与えかねません。
面接官をトレーニングするメリットとしては、1.採用の精度を高められる、2.ミスマッチによる内定辞退や早期離職を防げる、3.企業イメージの向上につながる……などの点が挙げられます。面接官のトレーニングを疎かにしたら採用の精度は低下し、内定辞退や早期の退職に悩まされるばかりか、企業イメージを悪化させてしまうことも懸念されます。
メリットを意識しながらトレーニングに励んでください。
面接官のトレーニングを行う最大のメリットは、精度の高い採用につなげられることです。トレーニングによって応募者を見極める力や質問力、会話力を向上させれば、自社が求める人材を的確に見分けられるようになり、採用活動を成功に導くことができるでしょう。
精度の高い採用は、面接官それぞれが統一された評価基準を持つことが前提となります。
せっかく良い人材を確保できたと思っても、ミスマッチで内定を辞退されてしまったり、入社しても早期に退職されてしまったりすれば、その採用活動は失敗と言わざるを得ません。
トレーニングを受けた面接官なら、応募者に良い印象や共感を与えることができるため、ミスマッチによる内定辞退や早期の離職を防ぐことが可能となります。
面接は面接官が応募者を選考する機会であると同時に、応募者に自社が値踏みされる場面でもあります。面接官の言動や態度が、応募者にとっての企業イメージを形作ることを心して対応しなければなりません。
逆に、応募者に良い印象を与えて面接を終えることができれば、仮に採用しなかったとしても、応募者は良い企業イメージを持ってくれるでしょう。
面接官のトレーニングが重要であることを繰り返し解説してきましたが、ここでは具体的なトレーニングの方法について解説していきます。
トレーニングの手法としては、1.座学で知識を学ぶ、2.学んだ知識をベースに演習を行う、3.プロの指導を受ける、4.レポート等を利用してブラッシュアップ……といったやり方があります。
トレーニングの第一歩となるのが、講義形式でスキルや注意点などを概括的に身につけるための集合研修です。採用コンサルタントなどが講師となり、履歴書の読み取り方や掘り下げた質問の仕方などテーマごとに研修を進めていきます。
多人数での集合研修もありますが、最近ではオンラインでの受講に対応できる研修もあり、受講者数やニーズに合わせて選ぶことが可能です。
面接官のトレーニングには、上司が行う実際の面接に同席したり、面接に採用コンサルタントなど人事のプロを同席させたりするスタイルの研修もあります。練習ではなく、本当の面接を研修にも利用し、経験を積ませながら研修を行う点が大きな特徴です。
面接後に必ずフィードバックを行い、場面ごとにどう対応すれば良いのかを実地で学べる利点も持っています。
自社内で面接官役と応募者役に分かれて模擬的に面接をするロールプレイングも、多く採り入れられているトレーニング手法です。実際に対話しながら面接を進めるため、質問の立て方などを実践的にマスターすることができます。
他人の面接手法を見るだけでもスキルアップにつながり、上司や先輩社員などの持つノウハウを共有できる利点もあります。
面接に関する知識、知見を吸収するには、採用コンサルティング会社などが発行しているレポートやホワイトペーパーを活用したり、最近増えている動画教材を使ったりするのも一案です。
人数を集めることが難しかったり、予算的に集合研修ができなかったりするような場合は、こうした資料を自社のマニュアルと組み合わせるなどして研修に利用することもできます。
面接官のトレーニングは単純に知識や技術を教え込めば良いというものではありません。自社の採用戦略や課題を理解し、面接官同士で意識合わせができていなければ、必要な人材の獲得という目的が達成されません。
また、トレーニング実施後に効果測定を行い、さらなる改善につなげていくことも重要です。ここでは、面接官のトレーニングにおける注意点を解説します。
面接官のトレーニングをより実効あるものとするには、自社が抱える採用の課題を明確にした上で、課題解決につながる形でトレーニングを行うことが大事です。
採用したい人物像を設定する際には、採用後に配属される部署に対するヒアリングを行って、ミスマッチが起きないように留意するなど、丁寧な対応を心がけるべきでしょう。
採用は面接官の個人プレーでは成功しません。面接官同士の考え方や設定された評価基準の確認など、認識合わせをすることが不可欠です。認識のズレがあると、採用のバラつきやミスマッチによる早期離職などにつながる可能性が出てきます。
面接官の認識をすり合わせ、一枚岩で採用活動を進めるためには、定期的にトレーニングを行うことが推奨されます。
面接官のトレーニングは、1回実施したらそれで終わりではありません。トレーニング後に効果測定を行わなくては、トレーニングの意義が薄れてしまいます。効果測定をすることで、トレーニングによっても改善されなかった点や期待されたほどの伸びがなかった点などを把握し、次のトレーニングの課題とすることができます。
トレーニング後には必ず効果測定を行い、改善につなげるサイクルを回していきましょう。
面接官のトレーニングは、各面接官の評価基準を一定にし、スキルを向上して採用活動を成功させるのが目的です。本記事では、面接官のトレーニングを行うメリットから具体的なトレーニング方法、トレーニングに際しての注意点などをまとめています。
本記事を参考に、面接官をトレーニングすることで、他社より1歩先を行く採用活動の構築に役立ててください。