カジュアル面談はあくまでも面談であるため、合否判定はありません。求職者もリラックスした状態で臨めるため、面接だけでは把握できない求職者の本音や雰囲気を引き出しやすいことが特徴です。
近年ではリファラル採用や、スカウトの入り口としてカジュアル面談を実施する企業が増えています。リファラル採用やスカウトの場合、企業から求職者にアプローチするため、求職者側の企業理解度や志望度は高くありません。求職者へのアプローチとしてカジュアル面談を実施することで、企業と求職者双方の理解度を上げ、優秀な人材の確保につなげることができます。
人事担当者と求職者が話をするという行為に着目すれば、カジュアル面談と面接は共通している点があるものの、この2つは明確に異なります。カジュアル面談はカジュアルな服装、面接はスーツ着用が基本というわかりやすい違いもありますが、大きな違いは「合否の有無」です。
カジュアル面談は採用活動の一つであるものの、その目的は双方の情報交換であり、合否を出すわけではありません。一方、面接の目的は合否の判断材料を増やすことです。目的の違いがカジュアル面談と面接との違いといえます。
面接は選考の場になるため、なかなか素の部分を見ることはできません。カジュアル面談で気楽な雰囲気で話すことで素の部分が理解でき、採用後のミスマッチ防止にもつながるでしょう。
カジュアル面談を導入した場合の企業側のメリットとして、以下の2つがあります。
カジュアル面談は選考の場ではないため、求職者はリラックスした状態で面談に臨むことができます。そのため、素に近い会話や姿を見ることができ求職者の人物像を把握できるでしょう。
自社の魅力を、応募者に直接伝えることができる点もメリットです。業務内容や会社の雰囲気といった自社の魅力を伝えることで、応募するには至っていない優秀な求職者に対しアピールすることができます。
求職者側のメリットとしては、以下の2つが挙げられます。
1つ目のメリットは、応募を検討している企業の雰囲気がわかることです。社員とコミュニケーションを取ることで、応募前に企業の雰囲気を知ることができます。応募するかどうかの判断材料にできるのです。
また、社員からアドバイスをもらうことができるのがメリットの2つ目です。求職者自身の進路や方向性に迷いがある場合、実際に働いている社員からアドバイスを受けることもできます。
ここでは、カジュアル面談の正しい進め方を解説します。いきなり面談を始めるのではなく、自己紹介や趣旨を説明することで、求職者の緊張を和らげること大切です。ポイントを押さえて効果的にカジュアル面談を進めましょう。
カジュアル面談は、アイスブレイクを兼ねた自己紹介から始めましょう。カジュアル面談では、求職者といかにフランクに会話できるかが大切です。どちらかが緊張している状態では、素の部分を知ることはできません。
名前や担当業務だけでなく、趣味や好きなもの、出身地といった情報を話しましょう。人事担当者のパーソナルな部分を見せることで、求職者も自己開示できます。その話題をきっかけとして会話が弾み、求職者の素の部分を知ることにもつながるでしょう。
本題に入る前に、面談の趣旨を説明する必要があります。この面談が、合否を判断する場ではないことを伝えましょう。求職者の中には、面談も合否に影響すると思っている人もいるためです。
事前に説明していたとしても、改めて合否に影響がないことを伝えれば、求職者の不安は和らぎます。
「面接ではないので、合否には影響しません。お互いのことを知る機会になればと思いますので、気軽に質問してください」といった一言を入れましょう。
面談が合否には関係ないことを伝えたら、本題に入ります。求職者の状態やニーズをヒアリングしましょう。以下のような質問をすることで、求職者の企業理解度や求めていることを把握でき、伝える情報を整理できます。
求職者は、面談の印象で応募するかどうかを判断します。好印象を与えるためにも、求職者が求めていることを引き出せるような質問をしましょう。
求職者のニーズが把握できたら、ニーズに合わせた情報を説明しましょう。事業内容や業務内容、企業風土といった情報のほかにも、企業理念や福利厚生、キャリアパスも求職者が求めていることが多い情報です。
求職者の反応に合わせて、説明する情報を考えましょう。一方的に説明するのではなく、問題を出すといった求職者も参加できる形式にすることで、一般的な企業説明会との差別化ができます。
説明が終わったら、求職者に「聞きたいことや気になること」がないか確認しましょう。質問を求めた場合「変な質問をしたくない」という気持ちから、質問することを躊躇してしまう人も存在します。
その場合は「仕事以外のことでもいいですよ」といった質問範囲を広げることや「この部分は気になりませんか?」といった逆質問をすることで、質問に対するハードルを下げてあげましょう。
最後に、ネクストステップやスケジュールの案内をしましょう。メールで後日に案内するのではなく、応募者が自社に対して高い関心を持っているその場で案内することで応募率が高まります。後日に案内した場合、自社への興味や関心が薄れ、応募に至らない可能性があります。
特に、優秀であると感じた求職者であれば、早期獲得するためにも、その場で案内するようにしましょう。
選考に進んでもらうには、面談前の事前準備が大切です。パンフレットやホームページといった自社を理解してもらうための資料を求職者と共有しておきましょう。
リファラル採用やスカウト経由の場合、求職者が自社のことを十分に理解していないケースもあります。情報共有しない状態で面談に臨み、面談が企業説明だけで終わってしまっては選考に進んでもらうことは困難です。
事前に情報共有しておくことで、面談では一歩踏み込んだ会話ができるでしょう。面談担当者のプロフィールを伝えておけば、求職者はどのような人が面談するのかわかるため、緊張緩和につながります。
また求職者への質問内容や、エピソードをリスト化しておくことも有効です。事前にリスト化しておくことで、面談後に聞き忘れに気づくといったことがなくなります。特に、面接では本音を話しにくいような内容を質問することで、面接との差別化を図りましょう。
求職者に質問する場合、まずはささいな質問をすることがポイントです。カジュアル面談で大切なことは雰囲気作りです。リラックスした雰囲気を作ることで、求職者から本音を聞き出すことができます。
志望動機や転職理由など、面接でも質問されそうな内容から質問を始めると、求職者は身構えてしまい、本音を話してくれません。
「なにが好きなのか」「どのような人たちと働きたいのか」といった、選考には影響なさそうな質問や、考え方がわかるような質問をすることで、求職者はリラックスすることができます。
どのような質問をすれば求職者の緊張をほぐせるのかを考えたうえで、質問の順番を考えましょう。
自社のリアルな情報を伝えることもポイントです。自社の魅力をアピールするために良い部分だけを見せてしまうと、応募前と入社後の印象にギャップを与え、早期退職につながる可能性があります。
さらに、自社の不足しているところや、ネガティブな部分を包み隠さず伝えることで、自社への信頼獲得にもつながります。
ただし、不足している部分を伝えるだけでは、自社に対して良い印象を与えることができません。どのような対策を打っているのかを伝えることで、求職者からの信頼を得ることができます。
面談担当者と求職者が互いに円滑な情報交換を行うためには、話すバランスを考慮することも大切です。
企業側が求職者から話を聞くことが多くなった場合、企業側の情報を知ってもらう時間が少なくなるため、求職者の企業理解を深めることは困難になります。
企業側の話が長くなれば、求職者の考え方やニーズを知ることができません。企業側と求職者側の話す比率を6:4程度にするとバランスが良くなる傾向があります。
複数の社員と話すことで、選考に進んでもらえる確率が高まります。面談担当者と話しただけでは、業務内容の詳細を伝えることは困難です。
実際に現場に出ている社員と話すことで、業務内容を詳しく伝えられるだけでなく、現場のリアルな魅力を伝えることにもつながります。
年齢や経歴が近い社員と話せば、求職者が持つ不安や悩みを解消できる可能性が高まります。お互いが不足なく情報交換するためにも、複数の社員と話すことは有効な手段です。
採用成功につながるカジュアル面談での質問例として挙げられる1つ目は、経歴です。どのような経歴なのかを確認することで、自社の業務に活かせる経験を持っているかを判断できます。
ただし「これまでの経歴を教えてください」のように、直接的な質問をした場合、堅い返答をされる可能性があります。自己紹介の途中で、質問するような形で聞き出すほうが自然です。
2つ目の質問例は、転職理由です。転職理由を確認することで、求職者の仕事に対する価値観やネガティブな部分を理解できます。ただし、転職理由はネガティブな情報であるため、簡単に聞き出せるものではありません。
打ち解けていない面談開始のタイミングで、本当の転職理由を聞き出すことは簡単ではありません。ある程度お互いの緊張がほぐれたタイミングで質問することで、本音を聞き出すことができます。タイミングを見計らったうえで質問しましょう。
3つ目の質問例は、就職活動や転職活動の状況です。求職者の活動状況によって面談の内容が異なります。現時点では転職にそれほど熱量がなく、興味本位で面談に参加した人に対しては、自社への転職を検討してもらえるような会話が必要です。
ほかの企業との話が進んでいる人に対しては、自社の魅力をアピールするような会話が中心になります。有意義な面談を実現するためにも、求職者の活動状況の確認を忘れないようにしましょう。
4つ目の質問例は、企業選びで重視するポイントです。なにを重視して働く企業を決めるのかを確認することで、自社の風土に合う人材かどうかを判断できます。
重視するポイントには、業務内容や年収、転勤の有無、残業、賞与、人間関係など、多様なものが考えられます。これは、合否判定をしないカジュアル面談だからこそ本音を聞き出せる質問です。求職者の考え方を知ることにもつながります。
5つ目の質問例は、スキルです。募集を検討している職種で必要なスキルがある場合、そのスキルを保有していなければ選考には進めません。そのため、面談時にどのようなスキルを持っているのかを確認する必要があります。
ただし、経歴と同様に、直接的な質問をすると面接のような堅い雰囲気になりかねません。業務内容を説明する際に、さりげなくスキルの有無を確認するとよいでしょう。
6つ目の質問例は、キャリアプランです。「将来どうなりたいのか?」「なにをしたいのか?」を確認することで、自社が募集している人物像とのすり合わせができます。
この質問も、企業選びで重視するポイントと同様に、カジュアル面談だからこそ本音を聞き出しやすい内容です。リラックスした雰囲気で求職者の本音を聞き出すことで、自社で活躍できる人材なのかどうかを見極めることができます。
カジュアル面談の目的は、企業側と求職者側の双方での情報交換です。企業側から見れば、求職者の素の部分を把握できることや、自社の魅力を伝えられることがメリットになります。求職者側から見れば、応募前に企業の雰囲気を把握できることがメリットといえます。
カジュアル面談実施時は、いきなり面談を始めるのではなく、自己紹介や趣旨の説明によって求職者の緊張を和らげることが大切です。事前準備による情報共有はもちろん、質問の順番や内容、話すバランスを考慮することで、優秀な人材に選考へと進んでもらう可能性が高まります。
カジュアル面談では、一方的に質問するのではなく、あくまでも会話の中から情報を聞き出すことがポイントです。カジュアル面談のポイントを押さえ、自社の採用活動に活かしましょう。