そのため、同じ成果とプロセスの社員に対しては、同じ評価が実施されることが必要です。成果主義は人ではなく仕事だけが評価対象となるため、仕事が同じで評価が異なると矛盾を生じます。
一方、人に注目して評価することは能力主義です。仕事の成果やプロセスではなく、社員が本来持っている能力の高さに注目します。
また、結果主義は、営業成績などの数字で示される結果に注目して評価する制度です。営業職などの具体的な数字が出る業務には採用しやすい制度ですが、事務職のように数字で評価しにくい業務に対しては適用することは難しいでしょう。
なお、成果主義は欧米では主流とされています。元々終身雇用制を導入していた企業が多い日本とは異なり、欧米では転職を繰り返してキャリアアップすることは珍しくありません。そのため、年齢や勤続年数によらない評価方法として成果主義を導入する企業が多いのです。
成果主義では、仕事の成果やプロセスを正確に評価することが基本となります。そのため、仕事の成果やプロセスの評価基準が明確ではないときには、正確な評価を実現できません。
誰が評価しても同じ結果になるためには、評価対象自体が数値化されていることが条件となります。例えば、顧客獲得数や売上のように数字で成果が見える仕事であれば、数字が多い場合は高評価、そうでない場合は低評価になり、評価者に左右されない公正な評価を実現することが可能です。
一方、数字で成果が出ない仕事に対しては、どうしても評価者の主観に左右されてしまい、不公平感が生じることがあります。
例えば、労務管理を担当する社員に対して成果主義を導入した場合、数字で成果が出ないため、「どれほど頑張って業務に取り組んだか」というプロセスに注目することになるでしょう。また、頑張ったかどうかは評価者の主観に左右されるため、社員の自己評価も加味できるかもしれません。
成果主義では、社員個人がどのような成果を上げたかという点に注目して評価されます。そのため、「チーム全体で成果を上げるために協力した」あるいは「作業が遅れがちな社員をサポートした」などの成果として直接評価しづらい要素に関しては、評価の対象にならない傾向にあります。
そのため、個人としての成果を重視すると、社員が個人プレーに走り、チームワークが崩れる可能性も想定されます。また、チームとしての成果が軽視されると、場合によっては企業全体の成果が下がることにもなりかねません。
成果主義だけで評価が決まる職場では、成果が出ないと評価されません。努力はしても成果が出ない社員にとっては好ましい環境とはいえず、離職につながる可能性もあるでしょう。
また、成果はコンスタントに出るとは限らないため、月によって給料が大きく異なり、収入が安定しなくなることも想定されます。より安定した収入を得られる職場へと転職するケースも増えるかもしれません。
成果を上手に出せる社員もいれば、努力をしても成果が出ない社員もいます。成果だけで給料を決めると、格差が大きくなり、不公平感を生む可能性があるでしょう。
また、成果が出ない社員は昇進しづらくなります。勤続年数は長いのにいつまでも役職が付かないと、職場に居づらく感じるかもしれません。
それぞれの方法について、わかりやすく解説します。
売上、成約件数、新規顧客獲得数などの数字だけを成果測定の基準としてしまうと、個人プレーに走る社員が増え、企業全体の業績が下がる恐れがあります。また、お互いをライバル視し、社内の雰囲気が悪くなる可能性もあるでしょう。
成果主義を評価制度として導入するときは、数字以外の成果も評価基準に加えることが必要です。例えば協調性や仲間を助けること、業務の正確さ、早さなども成果の一つとして捉えれば、より公平性が高い評価を実現できるでしょう。
また、プロセスの評価も忘れてはいけないポイントです。成果を生むまでの道筋に着目し、どのような努力をしたのか、どのように同僚や上司と関わったのかを適正に把握し、評価に加えましょう。
評価制度は、社員に優劣をつけるために実施するものではありません。社員が「正しく評価されている」と感じ、満足感を持って働く環境を作るために実施するものです。そのため、評価制度に公平性や公正性がないと社員は不満を感じ、業務に対して熱意を持てず、場合によってはより評価してもらえる企業へと転職を考えるかもしれません。
企業への満足度を高めるためにも、評価制度は社員の意見が反映されたものであることが望ましいといえます。定期的に評価制度についてヒアリングを実施し、より公平かつ公正、そして社員が納得できる基準の構築を目指しましょう。
それぞれのメリットについて詳しく解説します。
成果をコンスタントに出せる人材にとっては、成果主義を導入している企業は魅力的です。特に、今まで仕事の成果を出してきたものの、年齢や勤続年数、学歴などの理由により正当な評価を受けて来なかった方であれば、成果主義を実施している企業へ転職したいと考えるでしょう。
そのため、成果が評価される企業であることを求人情報で紹介すれば、やる気があり、能力が高い人材が集まると考えられます。優秀な人材を広く集めるためにも、成果主義の導入と、導入の事実の周知は欠かせないポイントといえるでしょう。
成果が給料などに反映されることは、業務に対するモチベーションアップになることもあります。仕事に対して意欲的に取り組み、より良い成果を出すために社員が努力するようになるでしょう。
どんなに働いても年齢や勤続年数で評価が決まる場合、余力があっても仕事を差し控える可能性があります。社内に「努力しても無駄」という雰囲気が充満し、モチベーションを持って働きづらい環境になる恐れがあります。
成果主義が導入されると、個人の努力が報われやすくなります。そのため、より多くのスキルを習得して成果を上げるための素養を作っておきたいと社員個々が考え、社内の研修やセミナーなどの教育制度も活発に利用されるようになるでしょう。
社員個人個人のスキルアップは、企業にとっては大きな戦力アップにつながります。また、スキルの高い人材を外部から雇用するには採用コストや採用活動の時間がかかりますが、既存の社員であれば採用関連のコストや時間をかけずに企業の底力を向上させることができる点もメリットです。
社員各自の成果が評価されるようになれば、意欲的に業務に取り組むようになり、社員一人あたりの生産性が向上する可能性があります。また、個々の努力が会社全体の生産性向上にもつながるでしょう。
ただし、社員の成果を評価するときは、チームへの貢献度や他の社員へのサポートなども評価に含めることが必要です。個々の成果だけで評価すると、企業全体のパフォーマンスが下がる恐れもあるため注意しましょう。
それぞれの方法について、詳しくみていきましょう。
成果主義といっても、その成果をどのように評価するかは企業によって異なります。成果に対する評価基準を明確にすることで、社員各自が目標を設定しやすくなり、モチベーションを持って業務に取り組めるようになるでしょう。
また、成果といっても数字だけでなくプロセスなどの目に見えにくい部分も評価に入れることが大切です。各要素をどのように評価するのか表などでわかりやすくまとめ、透明性の高い評価制度を構築しましょう。
評価には、さまざまな方法があります。例えば、売上などの成績上位者を表彰する、記念品を授与することなども評価方法の一つです。また、昇進などの形で評価することもできます。
一般的な方法としては、報酬制度に反映することが挙げられるでしょう。成果がどのように評価され、報酬に反映されるのかについても明確にしておくと、より社員のモチベーションアップにつながります。
例えば、成約1件あたりに1万円のインセンティブを支払う、半年分の売上によって賞与額が決まるなどが挙げられるでしょう。ただし、報酬制度に反映する場合も、チームワークや他の社員へのサポート、仕事の正確さなどの数字で表すことができない点も評価対象に含めることが大切です。
やる気があり、成果を上げられる社員にとっては、成果主義は理想的な評価制度です。しかし、成果主義だけで評価すると、数字で評価されにくい業務や、数字に表れにくい貢献をしている社員には不利な状況になってしまいます。
成果主義を導入するときは、他の制度も組み合わせて実施し、より社員の満足度が高くなるように、また公平かつ公正な評価が実施されるように工夫することが大切です。
例えば、社員の裁量で仕事の手順や勤務時間を決定できる「裁量労働制」を導入することで、社員の働き方の自由度が高まり業務効率化を実現しやすくなるでしょう。
業務の難易度や責任によって報酬を決定する職務給制度を検討するのもよいでしょう。いずれの評価制度も1つに絞り込まないことで、より偏りの少ない評価を実現できるでしょう。
また、評価が正しく実施されるための研修制度も必要です。評価者向けの研修プログラムを構築し、評価基準を正確に理解できる人材を育成しましょう。
成果主義を導入するときは、デメリットについて深く理解し、デメリットを克服するための対策を実施することが必要です。また、他の評価制度と合わせて実施することでも、成果主義の良い面が活かされやすくなるでしょう。
評価制度を構築した後は、評価をどのように報酬制度に反映させるかを検討することが必要です。社員に優劣をつけることではなく、社員のやる気を引き出し、企業に対する満足度を高めることに注目すると、公平性と公正性の高い制度を構築できるでしょう。