パルスサーベイとは、従業員の組織に対する意識調査を短い期間で繰り返し行う、従業員満足度調査の手法の一つです。従業員の意識状態を随時チェックでき、問題の早期発見やエンゲージメントの向上に役立ちます。簡単な質問を繰り返して従業員の意識をリアルタイムに把握し、組織改善に活かします。刻一刻と変化する状況を迅速に捉え、速やかに問題解決への対策ができる方法です。
ここではパルスサーベイとはどのような調査かを説明し、モラールサーベイとの違いもご紹介します。
「パルスサーベイ」とは、従業員に対し簡単な質問を繰り返し行う意識調査の方法のことです。短期間に繰り返すことが特徴で、1~5分程度で回答できる質問を、週1回あるいは月に1回など定期的に行います。
従業員の変化する意識を常にリアルタイムでチェックできるのがメリットで、従業員満足度の向上に効果が期待できるとして多くの企業が実施している方法です。
同じ従業員満足度調査に「モラールサーベイ」があります。モラールとは「やる気」のことで、中長期的な指標に関する質問などをして、従業員の意識をより明確にする手法です。従業員のやる気や満足度を測定し、本音を引き出して組織の改善に活かします。
パルスサーベイとは異なり年に1回〜数カ月に1度の低頻度で行う方法で、社員のパフォーマンスにどのような要素が影響しているかを確認します。
モラールサーベイは従業員が日ごろ感じる不満について伝えることで不満を解消する効果をもたらし、調査すること自体にメリットがあります。しかし、それ以上に、調査結果が組織課題の改善に反映されることに大きな意義があるといえるでしょう。
パルスサーベイは、従業員の満足度をリアルタイムで確認することが目的です。従業員も自身を振り返る機会ができ、自己分析や自己改善を図れるというメリットがあります。
また、調査の結果を受けた業務改善により従業員エンゲージメントの向上を図れることや、低いコストで調査できることも利点です。
ここでは、パルスサーベイの目的とメリットについてご紹介します。
パルスサーベイの実施は、従業員満足度をリアルタイムにチェックできるのがメリットです。常に最新の従業員満足度を把握することで、些細な問題も見逃さずチェックできます。
問題発見と改善のPDCAを短期間に回すことで、従業員満足度は向上していくでしょう。満足度が高くなれば生産性が上がり、優秀な人材の離職を防いで定着率も高くなります。
パルスサーベイにより従業員エンゲージメントも向上します。従業員エンゲージメントとは会社への愛着心や貢献への意欲のことです。調査結果を検証して問題点を改善していく会社の姿勢に対し、従業員は信頼を寄せるでしょう。会社への帰属意識や理念への共感を呼び起こします。
従業員エンゲージメントの向上により従業員は仕事への意欲を高め、生産性が高まって業績アップへとつながることが期待できるでしょう。
パルスサーベイは低コストで行えるのもメリットです。
パルスサーベイのほかに職場で行われる調査には、「ES調査」とも呼ばれる「従業員満足度調査」があります。従業員満足度調査は調査項目が数多く、手間やコストがかかるのが特徴です。
アンケート形式で年に1回〜数カ月に1回程度行われ、大規模な調査になるとアンケートを集めて分析してフィードバックを行うまでに数カ月要することもあります。社内の負担を減らすために調査会社に外注することもできますが、高額な費用がかかるのがデメリットといえるでしょう。
パルスサーベイであれば質問は簡単であり、自社で作成することも可能です。近年はパルスサーベイ用のツールも開発され、より簡単で低コストでの実施ができるようになっています。
パルスサーベイの実施は、以下のような手順を踏んで行います。
質問項目の作成に際しては、従業員満足度を高めるために何を確認すべきか、自社の課題をチェックします。調査の実施では時間帯などに配慮しましょう。
パルスサーベイを行う手順について、詳しくご紹介します。
まず、パルスサーベイの質問項目を決定します。質問項目は目的により異なるため、前提として実施する目的を明らかにしなければなりません。
パルスサーベイは従業員満足度を知るという目的がありますが、さらに「離職を防止したい」「生産性を上げたい」「コミュニケーションを活性化させたい」など、具体的な目的を深掘りしてみます。明確にした自社の課題に沿った質問項目を決めましょう。
パルスサーベイは短い質問で手軽に実施できることがポイントです。必要な質問のみ厳選し、10個以内にするようにしましょう。
回答方法は「はい」か「いいえ」で答えるものか、5段階評価で簡単に答えられるものを設定します。
作成した質問項目でアンケートを作り、チャットツールやメールを使って従業員に配布します。ツールを使用する場合は、回答用URLを共有してください。
回答率を高めるためには、期限を設定するのがよいでしょう。
業務に支障のないようアンケートを送る時間帯には配慮する必要があり、質問も答えやすい雰囲気を考えるなどの工夫が必要です。
回答を集計し、調査結果を分析します。良い調査結果は継続と強化を行い、悪い結果があれば改善と再発防止の対策を検討しましょう。
回答率が低い場合は客観的な判断ができないため、質問内容や質問数などで問題がなかったか検証が必要です。質問が難解であったり、質問数が多過ぎたりすると、回答が集まりづらい傾向があります。また、氏名の記載を義務にすると、答えづらくなるかもしれません。
調査結果から課題を洗い出し、適切な対策を考えます。結果は個人単位と組織単位で判断しましょう。
個人単位で前回から大きく評価が変わった場合、個人的に大きな変化があったと考え、場合によってはケアを考えなければなりません。
組織単位で大きな変化がある場合、マネジメントに課題があると考えて適切な対策が必要になるでしょう。
調査結果は良くても悪くても従業員に公表し、会社としてどう対処していくかを説明することが大切です。
パルスサーベイを活用して高い効果が得られるのは、主に以下のような場面です。
「オンボーディング」は新入社員や異動した従業員のフォローに役立ち、新しい人事評価制度の効果検証にも活用できます。また、短期的に従業員のストレスチェックができ、メンタルヘルスのケアにも効果的でしょう。
パルスサーベイの活用場面をご紹介します。
オンボーディングとは新規採用の従業員が会社に定着し、戦力となるまでのプロセスのことです。オンボーディングの進み具合は従業員ごとに異なり、適切にフォローするには短い周期で調査できるパルスサーベイが効果的です。
パルスサーベイで調査とフォローをしていくことで離職防止ができ、早期に戦力となることが期待できます。
パルスサーベイは新しく導入した人事評価制度や管理職の研修など、人事施策の効果検証に活用できます。
パルスサーベイで従業員の声を汲み取れば課題を見つけやすく、改善につなげることが可能です。上からの一方的な運用では従業員の不満が出ることもあります。パルスサーベイを取り入れることで、従業員の納得を得られる制度の運用ができるでしょう。
パルスサーベイは、従業員のメンタルヘルスのチェックにも活用が可能です。従業員は日々の業務の中で、人間関係や業務内容などさまざまな要因でストレスを受けることがあります。
ストレスは業務のパフォーマンスに影響を与えるため、放置したままでは生産性を低下させる可能性もあるでしょう。
短いスパンのパルスサーベイでストレスの状態をチェックしていくことで、ストレスへの早期対応ができます。
パルスサーベイを実施する際は、いくつか注意したい点があります。まず、調査自体が目的とならないよう、実施の意義を従業員と共有することが大切です。
また、調査が従業員の負担にならないよう、配慮しなければなりません。個人が特定されないなど、従業員が率直に回答できるような事前説明も必要です。
パルスサーベイを行う際の注意点をみていきましょう。
調査の目的や分析の結果は、従業員に共有するようにしましょう。実施の目的が十分浸透しなければ、定期的に調査すること自体が目的となり、マンネリ化する可能性があります。
目的を明確にしてデータを集計・分析し、結果に応じた改善や施策などを従業員と共有することが大切です。目的を知ることで、従業員も調査に対し積極的に取り組むことができるでしょう。
パルスサーベイは実施の頻度が多く仕事の時間を削って回答するため、従業員の負担になりやすくなります。
1回の回答時間が長すぎたり、回答方法が煩雑であったりすると、社員のモチベーションは下がるでしょう。有効な回答が得られなくなる可能性もあるため、調査方法には十分配慮しなければなりません。
また、高頻度で行うパルスサーベイは、運用担当者の負担にもなります。作業の量が多い場合、分析や施策に十分な時間がかけられなくなる可能性もあるでしょう。
業務を効率化するツールを利用するなど、運用方法の工夫も必要です。
率直な回答ができるよう、従業員への事前説明も忘れないようにしましょう。回答した内容で人事評価に影響が出る恐れがあれば、本音を控えてしまう可能性があります。
回答により個人が特定されることはないということや、調査内容がどの範囲まで共有されるのかなどを事前にしっかり説明し、納得を得てから行うことが大切です。
それではパルスサーベイの質問例(項目)について具体的に解説していきます。
質問項目は大きく5つの質問軸に分けて質問を作っていくと作りやすいです。
パルスサーベイは短いスパンに繰り返し行う従業員調査であり、現時点での従業員満足度が確認できる手法です。課題を見つけて改善していくPDCAを短期間に回すことで、従業員エンゲージメントや満足度の向上に役立ちます。
オンボーディングやストレスチェックなどに活用でき、人事評価の効果検証にも有効です。パルスサーベイで従業員満足度が向上することで生産性は高まり、業績アップも期待できるでしょう。