VUCAを構成する、それぞれの単語の意味を解説していきます。
変動性(Volatility)は予測困難で、急激に変わりやすい状況をあらわす言葉です。近年はIT技術の急速な発展によって、新しいサービスや商品が登場しています。また、消費者の価値観や市場のニーズも多様化しています。
変化に素早く対応できれば、新しい価値観や仕組みを生み出すことができ、ビジネスにおいて有利になる可能性が高いです。しかし、対応が遅れてしまうとビジネスが衰退するリスクもあります。
不確実性(Uncertainty)は、不確実な事柄の多さによって、この先自分たちを取り巻く環境がどう変化するのかが判断できない状態を意味します。
不確実性が高い状況では、事業計画や販売計画などを立てにくいことが特徴です。
さまざまな要素や要因が複雑に絡み合い、全体を把握して解決策を導き出すことが困難な状況を指すのが、複雑性(Complexity)という言葉です。
複雑性が高いと、たとえばある国や1つの企業での成功事例をほかの国や企業に適用できない、あるいは1つの国や企業のみでは、問題の根本的な解決に至らないといった状況に陥ります。
一方で、市場の複雑性を分解して背景にあるものを理解することができれば、既存の枠組みを超えたビジネスや革新的なアイディアが生まれるケースも少なくありません。
曖昧性(Ambiguity)は解釈の可能性が複数あるため、絶対的な解決方法を決定することができない状態のことです。この状態は、ここまでご紹介した変動性・不確実性・複雑性がセットになることで生まれるとされます。
幾とおりにも解釈できる場面でも、その裏にあるニーズや価値観を読み取ることで、ビジネスを有利に進めることができるでしょう。
それぞれの内容についてお伝えしていきます。
現在は経済やビジネス、個人のキャリア形成に至るまで、あらゆることが不確定な要素で構成されるため、先の見通しを行うのが困難です。
従来は、ある程度過去の経験を未来の予測に活かすことができました。しかし、人々の価値観の多様化やIT技術の進化などによって、想定外の出来事が起きるのがVUCAの時代です。
そのためチームで入念な議論を重ね、結論を待って対応を行うと、想像以上のスピードで変化する事態に間に合いません。個人が自ら素早く判断を下し、行動することが求められます。
VUCAの時代は、これまでにないサービスが次々と登場し、市場が大きく変化することが特徴です。
これまでは業界内の動きを意識していれば、ほとんどの場合は問題がありませんでした。しかし、そもそも業界の概念を覆すようなビジネスが生まれるため、はじめは自社の売上低下の原因が何か、見当もつかないことも珍しくありません。
ただし、先の見通しが困難であることはネガティブな面だけではなく、大きな可能性を秘めた時代であると、前向きに捉えることも可能です。予測不可能な時代だからこそ、固定概念にとらわれない新たなサービスや商品を生み出すチャンスに溢れているといえます。
今までの常識が非常識になることも、VUCA時代に起こる事象の一つです。
たとえば、多くの企業では設備や人材を固有の財産とし、それらに対して投資を行うことが常識とされてきました。しかし、テクノロジーの進化によって、これまで経営資源として抱えてきたものが意味をなさなくなるケースも散見されます。
突然それらの経営資源を手放すことは現実的でないと逡巡している間に、新しいビジネスモデルで戦う企業が勝ち上がっていく現象が、あちらこちらで起こりつつあります。
10年前の常識がもはや過去のものであるように、現在の常識も一瞬にして塗り替えられていくでしょう。変化し続ける状況に素早く対応し、新たなビジネスチャンスを掴むために自らも動くことが重要です。
先を見通すことが困難なVUCAの時代には、主に以下の5つスキルが求められます。
1つずつ、内容を解説していきます。
VUCAの時代に活躍するには、テクノロジーへの理解力は必須です。テクノロジーは進化の起点となることが多く、たとえばITの活用によって突然参入した企業が、業界のシェアを奪うことも想定されます。
そのためテクノロジーに関する情報を積極的に収集し、新しいアイディアや状況に合った判断ができることが望ましいとされます。
情報収集力と処理能力も、VUCAの時代には不可欠です。情報処理力とは、情報や知識の蓄積と適切にアウトプットするスキルを指します。
情報過多ともいえる現代では、多くの情報を収集するだけではなく、膨大な情報から必要なものを選択し、情報を状況に合わせて適切に使いこなす必要があります。
VUCAの時代は、想定外のことが起こる可能性も高いため、計画どおりに進まないことも少なくありません。状況が目まぐるしく変化しているにもかかわらず、従来の成功体験や既存の計画にこだわっていると、時代の流れについていくことは不可能です。
そのため、臨機応変に対応する能力が必須です。想定どおりには進捗しないことを前提として計画を立て、また最悪の事態もしっかりと織り込んでおくことで、予想外の事態にも柔軟に対応できます。
長年の経験があっても容易には正解を導き出せないのが、VUCAの時代です。だからこそ、それまでのセオリーでは解決できないような課題であっても本質を見極め、解決する能力が求められます。
持っている情報を適切に使いこなし、どのような事象に対しても仮説を立てアプローチを行える人材が増えれば、不確実性の高い状況であっても迅速に対応できる組織に変わります。
VUCA時代のリーダーは、これまで以上に率先して動く必要があります。経験したことのないスピードで次々に起こる課題に対し、瞬時に解決策を提案しなければなりません。
またリーダーとして、メンバーが自律的に課題解決できるように、サポートすることも重要です。
VUCAに対応できる組織作りの5つのポイントは、以下のとおりです。
それぞれについて、ご説明します。
まず、人材マネジメントの刷新が挙げられます。日本企業は長い間、終身雇用や新卒採用などを前提とした人材マネジメントを行ってきました。VUCA時代にはこれらのマネジメント手法は通用しなくなり、多様性を尊重した組織作りが求められます。
さまざまなバックグラウンドや価値観を持つ人材が集まり、多様性を認め合うことで、VICAの要素である「変動性」「不確実性」「複雑性」「曖昧性」に対応できる可能性が高まります。
人材マネジメントの刷新の具体的な事例は以下のとおりです。
ステークホルダーへの積極的な発信と対話も、VUCAに対応できる組織に求められることの一つです。不確実性が高く今後を予測することが困難なVUCAの時代においては、さまざまな立場の人々の知恵や意見を取り入れる必要があります。
そのため経営陣は、「社員」「資本市場」「労働市場」といったステークホルダーに対し、積極的に経営戦略を発信し、対話を重ねていくことが求められます。
テクノロジーの活用は、VUCAを生き抜く組織には不可欠です。テクノロジーを上手に活用し、業務プロセスの見直しや新たなビジネスモデルを創出するデジタルフォーメーションは、VUCAの時代の企業にとって、取り組む必要のあるテーマといえるでしょう。
スーピーディーな経営判断も、VUCAに対応する組織に求められます。あらゆる状況が変化し続けるVUCAの時代では、昨日までは常識とされていたことがあっという間に覆されます。綿密な計画を立ててから実行するスタイルでは、このような変化に対応することは困難です。
そのため、起こることをすべて予測し計画することは不可能であるという考え方を前提として、計画と実行のサイクルをスピーディーに繰り返すことが重要です。
ビジョンが明確に示されておらず、従業員への浸透も十分になされていない場合、課題やトラブルに対して企業として一貫した対応が取れません。
VUCAの時代は、次に何が起きるか予測することが困難です。そのため、従業員がその場面でもっともふさわしい対応を選択できるよう、中核となる企業のビジョンをしっかりと浸透させておくことが求められます。
VUCAとは、社会やビジネスにおいて不確実なことが多く、先の見通しを行うことが困難な状況をあらわす造語です。「変動性」「不確実性」「複雑性」「曖昧性」という4単語の頭文字から生まれました。
これまでの概念やセオリーが通用しないため、ネガティブに受け止められる面もあるものの、変化に素早く対応できれば、ビジネスでの優位性を確保できるチャンスともいえます。
人材マネジメントの刷新や意思決定プロセスの見直しなどに取り組み、VUCA時代に合った組織作りを始めましょう。