人員配置とは、組織の目標を達成するために行う人材管理の手法です。業務の効率化を図り、社員のモチベーションを高めるなどのメリットがあります。今回は人員配置の目的やメリットを紹介し、行う手順や成功させるコツをお伝えします。
1.人員配置とは
人員配置とは、従業員を適材適所に配置して会社の目標を達成するための手法です。人員配置により業務の適正化や効率化を実現し、計画的な人材育成を達成します。
さらに、人材を有効活用して会社の目標を達成することや社員のモチベーションアップなどを目的としています。
人員配置の意味や目的について、みていきましょう。
1-1.社員を適材適所に配置すること
人員配置とは、社員のスキルや適性などを考えながら、それぞれが能力を発揮できるポジションに配置換えすることです。入社時や昇格、降格時に人員配置を行いながら、人材をマネジメントします。
適材適所に配置することで、企業は資源の一つである人材を有効に活用できるのです。
社員は業務に最大のパフォーマンスを発揮できるようになり、生産性が高まります。それにより、事業計画の達成がスムーズに進むでしょう。
1-2.人事配置の目的
人員配置の最終的な目的は事業計画の達成です。そのために適材適所の人員配置を行い、業務の適正化と効率化を図ります。人員を有効に活用できる部署に配置して能力を最大限に発揮することで、生産性を高め、事業計画の達成を可能にするのです。
また、計画的な人材育成を目的に人員配置を行う場合もあります。将来的に管理職となることを前提に、さまざまな部署に配置して経験することで成長を促すといった目的です。
2.人員配置のタイミング
人員配置を行うタイミングは、企業によってさまざまです。毎年定期的に人員配置を変更する場合もあれば、欠員や働き方の変更などで人員配置が見直される場合もあります。
人材を新規に採用する場合は人員配置をあらかじめ決めてから募集を行うのが一般的です。昇進や昇格、役職が変更する際も人員配置が行われます。
ここでは、人員配置のタイミングについていくつかご紹介しましょう。
2-1.新規採用
新卒や中途採用で新しい人材を迎える際、人員配置が行われます。企業では、あらかじめ人員配置を決めてから募集を行うケースが一般的です。新卒は長期的に育成して将来の会社を担う存在であり、採用に伴う人員配置は組織の若返りも期待できます。
中途採用は即戦力を期待されており、退職者の後任として業務を行ったり新規事業の担い手として活躍したりします。
新規採用はどちらも、組織を活性化させる役割を果たすでしょう。
2-2.組織体制の変更
組織のスリム化や新事業の開始など、組織体制の変更時も人員配置のタイミングです。業務の担当を変える、部署を統合・廃止するなど、さまざまな形態で人員配置が行われます。
経営戦略を見直す際に合わせて人員配置が行われることも多く、ベンチャー企業など経営の意思決定が早い企業では、事業の拡大のため積極的に組織体制の変更が行われる傾向があります。
組織体制の変更は会社の成長を目指す重要な施策であり、戦略に沿って入念な人員配置の検討が必要です。
2-3.雇用形態や働き方の変更
雇用形態や働き方、勤務時間の変更などにより人員配置が行われます。契約社員や派遣社員、アルバイトなどから正社員に、あるいはフルタイムから時短勤務になるなど、雇用形態や働き方の変更がある場合は人員配置のタイミングです。
変更した雇用形態や働き方に合わせた人員配置を行うことで、変更後もスムーズに業務を実施できます。
2-4.昇進や昇格、役職の変更
昇進や昇格、役職の変更なども人員配置のタイミングです。役職変更は組織体制の変更と同時に行われる場合もあります。いずれの場合も、当事者だけでなく周辺の社員も含めた人材配置を検討しなければなりません。
昇進や昇格ではこれまでよりも難しい仕事、責任の重い業務に携わることになります。人員配置は社員のモチベーションアップとなるでしょう。昇進・昇格で空いたポジションには会社の将来を担う優秀な人材を配置することで、組織力の強化にもつながります。
2-5.人事異動
人事異動は企業で頻繁に行われる人員配置であり、適正な配置を検討するのに適したタイミングです。各社員のスキルや能力、適性を考慮して配置換えをすることで、さらなるスキルアップや能力の発揮、成長を促すことができます。
また、特定の顧客との癒着を防止する目的で行われることもあります。
部署や支店間など、変化の大きい異動は、能力や期間を考慮しながら慎重に決定しなければなりません。
2-6.リストラや契約の解除
企業の業績悪化や業務の縮小など、余剰人員を減らすために人員配置が行われる場合もあります。リストラの条件は法律に沿って適正に行わなければならず、社員への丁寧な説明は欠かせません。十分納得を得たうえで実施することが大切です。
有期雇用契約の契約社員や派遣社員、パートなどの契約解除により人員配置が行われるケースもあります。
人員が減る配置であり、残った社員の負担が増加してモチベーションの低下が起こる可能性があるため、慎重に実施しなければなりません。連鎖退職にも注意が必要です。
3.適正な人員配置により得られるメリット
人員配置が適切に行われた場合、得られるメリットは大きいものです。適材適所で能力が発揮されることで生産性が向上し、業績アップにつながります。
また、人員配置は業務の効率化や時間短縮、良好な人間関係につながり、社員のモチベーションも上がるでしょう。
ここでは、適正な人員配置で得られるメリットを2つご紹介します。
3-1.生産性が向上する
人員配置は生産性を向上させることがメリットです。社員のスキルや能力に合わせた人員配置が行われることで能力を発揮でき、業務の効率化が期待できます。生産性アップへとつながるでしょう。
自分に適した配置につくことにより、最小限の努力で最大のパフォーマンスを発揮できるようになるでしょう。余裕をもって仕事に取り組むことができ、業務改善や新しいアイデアの提起をするなど、業務の質を高めることにもつながる可能性があります。
3-2.社員のモチベーションが上がる
人員配置は社員のモチベーションアップにもつながります。適正な人員配置で社員は能力を発揮でき、評価されることでさらに仕事への意欲が高まるでしょう。
成果を出せる環境になれば上司や周辺社員とのコミュニケーションが活性化し、人間関係も良好になります。モチベーションの向上は、人材の離職防止にもなるでしょう。
4.人員配置を行う手順
人員配置を効果的に進めるには、正しい手順を踏まなければなりません。
- 現状を把握して目標を定める
- 人員のスキルや適性を適正に判断する
- 社員の要望を聞く
- 人員配置計画を作成して実行する
まずは現状の人員や業務の質を確認し、目標を定めることが必要です。社員のスキルや適性を人事評価により判断しますが、社員へのヒアリングも欠かせません。
また、人員配置は一度行えばいいというものではなく、事業の目的を達成するため、手順を繰り返すのが一般的です。
人員配置を行う手順を詳しくみていきましょう。
4-1.現状を把握し目標を明確にする
適切な人員配置を行うために、現状の人員や業務の質を把握して課題を抽出することが必要です。そのうえで、人員配置で達成したい目標を明確にします。具体的な数字で表すことがポイントです。
現状を把握したあと、目標達成のために不足しているものは何か分析を行いましょう。
分析で不足する要素を確認できたら、どのような人員配置で補えるかを検討します。
4-2.スキルや適性を見極める
次に、各社員の勤怠やスキル、能力、保持している資格などのデータをまとめます。学歴や職歴、志望動機など採用時の情報や過去の人員配置の状況などもチェックしましょう。
人事評価の結果や面談記録も確認し、人員配置後に社員が能力を発揮できるよう、あらゆるデータを見ながら検討します。
すべての社員のスキルや適性を見極めるとともに、業務に必要な人数の把握も必要です。
4-3.社員の要望をヒアリングする
人員配置は会社の判断として人事部や管理職が最終的な決定を行いますが、社員の希望をヒアリングすることも大切です。本人はどのような仕事を望んでいるか、今後のキャリア形成についてどう考えているのかを確認しましょう。
適性の高い仕事が必ずしも本人にとってやりがいのある仕事とは限らず、会社の判断で配置しても、かえってモチベーションを下げる可能性があります。現在はスキルや経験が不足していても、スキルアップを目指して取り組みたいと考えている場合もあるでしょう。
社員へのヒアリングをしない一方的な人員配置は不満を与えることにもなり、思うような効果が得られない可能性があります。
4-4.人員配置計画を作成・実行する
現状把握により抽出した課題と社員のデータにより、目標達成に最適と考えられる人員配置を作成し、実行します。
実施後は、人員配置の前後で効果を検証し、事前の現状把握で確認した課題が解決できたかをチェックすることが大切です。
検証結果は社員にもシェアして成果があることを伝えれば、モチベーションのアップにつながるでしょう。
5.人員配置を効果的に行うポイント
人員配置を適正に行うためには、押さえるべきポイントがあります。社員のデータは誰もがいつでも参考にできるよう、一元管理しなければなりません。
また、人員配置システムや人員配置図などを利用してシミュレーションを行うことも、人員配置を成功させる事前準備として大切です。
人員配置の効果を高めるポイントをご紹介します。
5-1.社員のデータを一元管理する
適切な人員配置を行うためには、社員のデータを一元管理することが大切です。データは人事担当や管理職がいつでも参照できるよう、可視化しなければなりません。現場の監督者だけが社員のデータを持つという状況では、全社的に適材適所の人員配置ができなくなるからです。
採用時の面談情報や研修履歴、人事評価の履歴など、あらゆる情報を必要に応じて抽出できるようにすることが必要です。
5-2.人員配置図や人員配置表を活用する
人員配置を行うためには、人員配置システムや人員配置表、人員配置図の活用が効果的です。人員配置システムとは各社員のスキルに合わせた業務配置を設定するマネジメントシステムです。社員の情報管理や配置の可視化などの機能を搭載しています。
システムの活用で、人員配置を簡単にシミュレーションできます。可視化されている従業員の情報を参考にして、シミュレーションの配置を俯瞰しながら最適化が図れます。
人員配置システムはさまざまなツールが提供されているため、自社に必要な機能を備えたツールがあれば利用してみるのもよいでしょう。
5-3.フォローとフィードバックを行う
人員配置後は、成果を上げるためにフォローとフィードバックが欠かせません。しかし、すべて現場に任せるのでは、問題がある場合に適切な解決ができない可能性があります。
人事部による定期的な面談などを行い、課題があれば迅速に対策をとるようにしましょう。また、人事部がフォローとフィードバックを行うことで、部署別の人事ノウハウを蓄積することができます。
5-4.人員配置後に効果測定する
人員配置後は、人員配置前と配置後を効果測定して検証します。契約獲得数や売上高、利益率など数値化できるものを記録し、変化を確認しましょう。
社員満足度など数値化しにくい内容も、アンケートによって数値化することができます。
管理職や配置換えの対象者に対し、満足度を確認することも大切です。人員配置による影響について聞き取ることは、次回の人員配置を検討する際に役立ちます。
6.効果的な人員配置はポイントを押さえよう
人員配置は社員を適材適所に配置し、能力を最大限に発揮させることです。事業の目的を達成する目的で行われます。人員配置のタイミングは、新規採用や人事異動、昇格などさまざまです。
人員配置を行う手順は現状を把握して目標を定める、人員のスキルや適性を一元管理するなどの手順を踏み、社員の要望を聞くことや効果検証を行うことも欠かせません。
会社の成長と事業目標の達成に向けて、適切な人員配置を行いましょう。