採用ノウハウ一覧|スタンバイ

アルバイトも雇用調整助成金の対象になる?概要や今後の見通しを解説

作成者: スタンバイ制作チーム|2022/05/10

1.アルバイトも対象の雇用調整助成金とは


新型コロナウイルス感染症が猛威をふるい、観光業や飲食店などサービス業を中心に多くの店舗が休業や営業時間短縮を余儀なくされ、そこで働く人たちも窮地に追い込まれました。

そこで、政府は「雇用調整助成金制度」を拡充する特例を設け、さらに本来は雇用調整助成金の対象とならないアルバイトやパートは「緊急雇用安定助成金」の対象として、実質的に同制度を適用することとしています。

1-1.本来の雇用調整助成金の概要

雇用調整助成金は、経済上の理由により事業活動の縮小せざるを得なかった事業主が、雇用の維持を図るための休業手当として支払った費用を助成する制度です。受給するためには、

1. 雇用保険の適用事業主である
2. 売上高などの指標について最近3ヵ月間の平均が前年同期比10%以上減少した
3. 実施する雇用調整が一定の基準を満たす

などの条件を充足する必要があります。

休業した場合や教育訓練を実施した場合などが同制度の対象です。受給額は、休業を実施した場合は事業主による休業手当負担額を、教育訓練の場合は賃金負担額をそれぞれベースに一定の助成率を掛けた額となっています。

教育訓練の場合は加算があり、受給額の計算に当たっては1人1日あたり8,265円が上限となるなど細かな基準もあるため、受給を検討する際にはハローワーク等に事前に問い合わせたほうがよいでしょう。

参照元:厚生労働省「雇用調整助成金」

1-2.雇用調整助成金と緊急雇用安定助成金の違い

今回、アルバイトやパートにも拡大された助成金は、正確には雇用調整助成金ではなく、緊急雇用安定助成金と呼ばれるものです。アルバイトやパートは雇用保険に加入していないため、労働保険料を原資とする雇用調整助成金の対象とはなりません。

政府はコロナ禍での厳しい雇用環境に対応するため、後述のような雇用調整助成金の特例を設けました。その際、アルバイトやパートの雇用にも大きな影響が出ていることを重く見て、アルバイトなどを雇用調整助成金と同等の内容である緊急雇用安定助成金の対象としています。

緊急雇用安定助成金は財源などの建付けが雇用調整助成金とは異なりますが、内容や申請の方法は同じです。

参照元:厚生労働省「雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例)」

2.雇用調整助成金の特例とは


ここでは、新型コロナウイルス感染症の影響に伴って施行された、雇用調整助成金の特例措置について説明します。この助成金の受給には従来から、「申請書類を書くのが面倒」「添付書類が多い」などの難点があるとされてきました。

今回はコロナ禍に際し、特例措置により助成率や上限額の引き上げが行われ、また手続きの簡素化により迅速な対応ができるようになっています。

2-1.支給対象となる事業所の3つの条件

特例措置による支給対象となるのは、以下の3つの条件を満たすすべての事業所です。

1. コロナ禍の影響で経営環境が悪化し、事業活動が縮小している
2. 労使協定に基づき休業などを実施し、休業手当を支払っている
3. 最近1か月間の売上高などが前年同月比で5%以上減っている

売上高などの減少率については、比較対象とする月についても柔軟な取り扱いを取ることとされています。

2-2.助成対象となる労働者

助成の対象となるのは、雇用保険の被保険者である労働者に対して支払われた休業手当などです。アルバイトやパートなど、雇用保険の被保険者ではない労働者に事業主から支払われた休業手当は、緊急雇用安定助成金によって助成されます。ただし助成の内容や申請方法は同様です。

2-3.助成額と助成率に2つの特例

助成額は、「(平均賃金額×休業手当等の支払率)×助成率」の式で計算します。1日1人当たりの助成額上限は、以下に記載した2つの特例に該当すれば増額されます。助成率は原則として、解雇などの有無と労働者数の減少度合いから判断されますが、こちらも2つの特例に該当する場合は要件緩和の対象です。

助成額の上限引き上げなどが行われる2つの特例は以下のとおりです。

1. 業況特例
2. 地域特例

業況特例は、売上高などの最近3ヵ月の平均が、2020年または2021年の同期と比較して3割以上減少していることが条件です。地域特例は、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の対象地域にあって、営業時間の変更や収容人数の制限などの、都道府県知事による要請に協力した企業を対象としています。地域特例に当たるかどうかの判断は施設ごととなるため、詳細は各自治体に問い合わせてください。

2-4.1日休業したらいくら支給されるのか

判定基礎期間(休業の実績を判定する1か月単位の期間)の初日が2022年3月から6月だった場合、特例の適用対象となる1日1人当たりの助成金上限額は、原則では9,000円です。しかし、上記の2つの特例に当たる場合は1万5,000円に増額されます

原則措置の上限額は、判定基礎期間の初日が2011年12月までは1万3,500円、2022年1月と2月は1万1,000円と徐々に切り下げられてきましたが、上記2つの特例に当てはまる企業では1万5,000円のまま継続されています。

参照元:厚生労働省「雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例)

3.雇用調整助成金の支給までの流れ


雇用調整助成金の申請から支給までの流れは、以下の5つのステップで進みます。

1. 休業等計画、労使協定の締結
2. 休業等を実施
3. 休業等の実績に基づき支給申請
4. 労働局の審査
5. 支給決定

従来、雇用調整助成金の支給を申請するためには、休業等を実施する際に計画届の提出が必要とされていましたが、コロナウイルス感染症の影響に伴う特例措置に関する申請では、計画届は不要となりました。

3-1.支給決定まで5つのステップ

雇用調整助成金はやむを得ず休業等を実施した事業主が、労働者に支払った休業手当の費用を助成するものであるため、休業等の具体的な計画を策定し、労使間で休業等に関する協定を締結することが最初に必要です。次いで、休業等を実施するフェーズに移ります。

休業等の実績に基づく助成金の支給申請は、支給対象期間ごとに行います。申請期限は支給対象期間の末日の翌日から2ヵ月以内です。申請に基づいて労働局で審査が行われ、支給が決定すれば支給額が振り込まれます。申請手続きは、事業所を管轄する都道府県労働局かハローワークで受け付けており、郵送でも可能です。

参照元:厚生労働省「雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例)」

4.アルバイト・パートはこちら!緊急雇用安定助成金の申請手続き


アルバイトやパート従業員が対象となる緊急雇用安定助成金の申請手続きは、次の手順で進めます。

1. 助成率と使用様式の確認
2. 休業した実績を申請書に記入
3. 支給要件確認申立書を記入
4. 添付書類をそろえて提出

申請先は、事業所を管轄する都道府県労働局かハローワークです。郵送やオンラインでも受け付けています。郵送の場合は簡易書留など、必ず配達の記録が残る方法で送ってください。

4-1.まずは助成率のチェックから開始

緊急雇用安定助成金の申請手続きは、まず助成率を確認するところから始めます。業況特例か地域特例に該当するかどうかにより、申請の様式が異なるため注意が必要です。解雇等の有無、雇用の維持といった要件に応じて、助成率が10分の10から5分の4の間で決まり、併せて助成される日額上限も決まります。

続いて休業実績などの記入です。休業実績一覧表と支給申請書は地域特例とそれ以外で様式が異なります。支給要件確認申立書は共通様式で、雇用調整助成金と同時に申請される際は提出不要です。添付書類には以下のようなものがあります。

・比較した月の売上などがわかる書類
・休業させた日や時間がわかる書類
・休業手当や賃金の額がわかる書類
・役員名簿
・通帳またはキャッシュカードのコピー(任意)

業況特例や地域特例に該当する場合は、それを示す資料も必要となります。業況特例の場合、比較した月の売上などがわかる書類で、最近3ヵ月と前年または前々年同期の分が必要です。地域特例では、要請等対象施設の所在地が確認できる書類と、その施設の労働者が確認できる書類を用意しましょう。

この他、納税証明書など審査に必要な書類の提出を別途求められることがあります。

4-2.必要書式は最新様式で

支給申請に必要な書式は、厚生労働省のサイトからダウンロードできます。制度変更に合わせて書式の改定が随時行われているため、支給申請する場合はその都度、最新の書式を使ってください。

古い書式で申請を行った場合、手続きに時間がかかってしまう可能性があります。事業の継続と雇用の維持に必要な助成金であるため、最新の書式でスムーズに申請しましょう。

4-3.自社に合う申請書類の見つけ方

支給申請にどの書式を使ったらよいかわからない時は、厚生労働省サイトの「雇用調整助成金の様式ダウンロード(新型コロナウイルス感染症対策特例措置用)」ページを確認してみてください。企業規模について、利用する特例について、教育訓練についての3つの質問に答えると、適切な様式の書類が探せるようになっています。

参照元:厚生労働省「雇用調整助成金の様式ダウンロード(新型コロナウイルス感染症対策特例措置用)」

5.雇用調整助成金の今後の見通し


新型コロナウイルス感染症の拡大基調がいったんは鈍化し、2022年のゴールデンウイークは3年ぶりに行動制限のない大型連休となるなど、コロナ禍以前の日常が取り戻されつつあるようにも見えます。

今後、雇用調整助成金やアルバイトなどを対象とする緊急雇用安定助成金の特例はどのようになるのでしょうか。見通しを以下に示します。

5-1.コロナ禍における求人マーケット

コロナ禍以前の2019年12月には1.57倍だった有効求人倍率(季節調整値、新規学卒者を除きパート
タイムを含む)は、コロナ感染の拡大を受けて2020年9月には1.04倍まで急降下しました。しかし、その後はゆるやかに回復し、2022年4月には1.23倍と4ヵ月連続で回復しています。人材マーケットも徐々に人手不足感が高まってきているようです。

5-2.特例は2022年9月まで維持

政府は新型コロナウイルス感染症の影響に伴う雇用調整助成金などの特例を、2022年9月まで延長することを決めました。1日1人あたりの上限額は6月までと同じで、判定基礎期間の初日が7月から9月であれば原則として9,000円、業況特例、地域特例に該当する場合は1万5,000円に増額されます。

しかし、雇用調整助成金はコロナ対策の特例措置を講じたことにより、本来の財源である雇用安定資金が枯渇しており、失業給付にあてるための積立金からの借入や、一般会計からの繰入によって賄われているのが現状です。2022年10月以降の特例の延長があるかどうかは不透明といえそうです。

5-3.不正受給にはペナルティ

雇用調整助成金や緊急雇用安定助成金の不正受給は、いうまでもなく厳禁です。不正受給には以下のようなペナルティが設けられています。

1. 不正受給した事業所名の積極的な公表
2. 割増付きの返還請求
3. 5年間の不支給措置

不正受給した事業所名だけでなく、不正の指南役となった人の氏名も公表の対象となる可能性があります。割増付きの返還請求は、不正発生日を含む期間以降の全額にあたる不正受給額の2割相当額と延滞金の合計額という内容です。

5年間の不支給措置については、雇用調整助成金以外の雇用関係の助成金も不支給となります。都道府県労働局は都道府県警察本部との連携を強化しています。悪質な不正受給の場合は捜査機関への刑事告発が行われ、刑法246条の詐欺罪などに問われる可能性もあることを胆に銘じておきましょう。

参照元:厚生労働省「緊急雇用安定助成金 支給申請マニュアル」

6.雇用調整助成金は申請前に最新情報を確認しよう


本記事ではここまで、雇用調整助成金とコロナ禍に対応した特例措置や、アルバイト、パートに適用される緊急雇用安定助成金について、概要から申請方法、今後の見通しまで幅広く解説してきました。

新型コロナウイルス感染症という思いがけない経営課題に対処し、雇用を守り抜くうえで、助成金の活用は事業主を助ける施策の一つといえるでしょう。

雇用調整助成金などを巡る制度は随時見直しをされています。助成を受ける際は最新情報を確認し、最新の書式を使って申請してください。