採用活動で求める人材を確保するには、面接官の役割も重要です。面接で面接官が十分に役割を果たさないと、候補者の選考辞退を招く可能性があります。
面接官の役割とは、以下の4つに分類されます。
1人あるいは複数の面接官がこれらの役割を担うことが、採用活動を成功に導く秘訣です。それぞれどのような役割なのか、具体的にみていきましょう。
面接官には応募者に寄り添い、不安を和らげるフォロワーとしての役割を担います。主に応募者の窓口となる人事担当者の役割です。
ほとんどの応募者は緊張しており、リラックスして本来の実力を発揮できるための雰囲気づくりが欠かせません。面接冒頭に緊張を解く気軽な会話を行い、表情や言葉遣いなどにも気をつけながら応募者に安心感を与えるのもフォロワーの役割です。
モチベーターは、応募者の入社意欲や志望度を高める役割です。自社の魅力を伝え、応募者のモチベーションを高めるために働きかけます。
フォロワーとモチベーターは同じ人が兼ねる場合も少なくありません。応募者が描く将来の姿を把握し、自社でその夢をかなえたいと思ってもらえるよう、チャレンジ精神や志望動機の形成に注力します。
インパクターは、面接で気づきや新しい視点を与える役割があります。面接の場は自社の魅力を伝えるのに適した場所であり、その機会を利用して会社の素晴らしさを伝え、気づかなかった部分を知ってもらうという役割です。自社についての正しい理解を促します。
インパクターを担えるのは、主に現場のトッププレーヤーなど社内で活躍している優秀な人で、部長・役員クラスも適しています。
クローザーは応募者に入社の決断を促す役割をします。主に経営トップや役員が担います。会社への不安や迷いが残るまま入社しても、本来の実力を発揮できないでしょう。
入社後に活躍するには不安をなくし、「この会社に自分の将来を託す」という覚悟で入社することが求められます。クローザーはその決断を迫り、内定へと導く存在です。
面接官は、まず自身の役割を理解することが大切です。面接官としての役割は、以下の3つです。
具体的にどのような理解が必要なのか、みてみましょう。
面接官は応募者に対して企業を代表する存在です。応募者は面接官を通して企業をみています。面接官の言動は企業の印象を左右し、入社意欲に影響を与えます。
面接後に「良い会社だった」と感じてさらに選考への意欲を高めるのか、「思っていた会社と違った」と選考辞退に至るのかは、面接官の対応次第です。企業の代表であるという自覚を持ち、発言や行動に責任を持たなければなりません。
面接官は、応募者の中から一緒に働く仲間を選びます。面接を通して、応募者が企業に必要な人材なのか、そして企業にふさわしい人材なのかを見極めることが必要です。
企業にふさわしい人材を見極めるためには、面接官は自分の価値観や好き嫌いで応募者を判断してはいけません。客観的かつ冷静な視線を保ち、企業にとって応募者が本当に必要な人材を見極めましょう。
面接は企業が応募者を選ぶ場所であると同時に、応募者が企業を判断して選ぶ場でもあります。人材不足が深刻化する近年では、後者の比重の方が大きいといえるかもしれません。
選ばれる側であることを自覚し、マイナスの印象を受けないような心構えや振る舞いが必要です。くれぐれも、選ぶ立場だという意識で高圧的な態度をすることは避けましょう。身だしなみを整えて清潔な印象にするとともに、応募者をもてなす意識で対応することが必要です。
面接をスムーズに進めるために、面接官は事前準備が必要です。
事前準備の事項を明確にしておきましょう。
それぞれ、詳しく解説します。
自社の求める人材について、会社が定める客観的な基準を事前に確認しておきます。印象だけで判断するということのないよう、基準にかなう人物像を明確に把握してくことが必要です。
専門スキルのある即戦力を求める採用では、現場の担当者にも確認しておきましょう。複数の面接官で実施する場合は、認識の共有も大切です。
応募書類の確認もしておいてください。事前に情報を入れておくことで、質問内容を準備できます。応募者はどのような求人情報を見て応募しているのかを確認しておくことも必要です。自社のどのような情報に興味を持ったのかを把握でき、面接の対話がスムーズに運びます。
評価項目を可視化しておくことも大切です。評価項目と評価基準を記載した面接評価シートを作れば、面接官全員の認識を統一できます。主観に基づく評価を防止し、応募者を客観的に評価できるのがメリットです。
また、シートに面接の記録を残すことで評価の振り返りができ、次回の面接に活かすことができます。
面接評価シートは、以下の手順で作成します。
シートには各項目を確認するための質問例を例示しておくと、面接に慣れていない担当者でもスムーズに面接を進めることができます。
自社の魅力をわかりやすく伝えることも重要です。応募者に自社について説明できるよう、事業内容について理解を深めておきましょう。
事前に以下の項目を整理しておいてください。
事業内容については、どのような事業をしており、どのように進めているのかを説明することが必要です。ビジョンは、市場や顧客に対し会社が持つ理想像です。ミッションは、ビジョンを実現するために会社が担う役割や使命を指します。
バリューとは行動規範であり、ミッションを遂行のためにどのような価値観で仕事をするかというものです。これらを説明することで、応募者の志望度を高められます。
各部署の仕事内容や自社の魅力・強みを具体的に説明できるようにしておくことも大切です。
面接では応募者が企業について知り、疑問を解消するために質問する時間を設けることが一般的です。応募者の疑問や不安に対して適切に回答することで安心感を与え、良い印象を与えて「この会社で働きたい」という動機づけができます。
そのため、応募者から質問されそうな内容を洗い出し、回答を準備することが必要です。
過去の面接内容のチェックや新入社員へのヒアリングを行い、想定される質問とその回答を準備します。
特に、応募者が不安に思っていることや自社の課題ついて的確に答えられるようにしておくことが大切です。
選考辞退や内定辞退、早期離職が多いのは、面接官のスキル不足が問題の可能性もあります。そのようなことのないよう、面接をスムーズに進めるために応募者役を用意して模擬面接などのトレーニングをするのもおすすめです。
トレーニングをしておくことで自社の魅力を正確に伝えられ、応募者の評価をより客観的にできるようになるでしょう。
トレーニングでは面接官の心構えや役割を理解し、ロールプレイングも取り入れながらコミュニケーションの方法を練習します。
トレーニングを適切に行うリソースやノウハウが不足しているという場合には、外部のセミナーを利用したり講師を派遣したりする方法もあります。
派遣型の研修であれば自社向けのアレンジが可能で、会社理念や自社が求める人材像にからめたトレーニングをできるのがメリットです。予算に応じて、自社に合う方法を選択してください。
面接官は一方的に応募者を見るのではなく、面接官自身が応募者から見られているということを十分に意識する必要があります。また、応募者は、面接官に対して抱く印象を企業全体の印象として捉えることもあるため、面接官には第一印象を良くするための努力も求められるでしょう。
第一印象を良くするためには、次の4つに注意することが必要です。
・笑顔であいさつ
・名刺を渡す
・丁寧な言葉遣い
・清潔感のある服装
それぞれどのようなことに注意すべきか、詳しくみていきましょう。
面接官が笑顔であいさつすることは基本です。面接を受けに来てくれたことに感謝し、心からの笑顔で応募者を迎えましょう。面接官が笑顔で接することで応募者の緊張がほぐれると、応募者は本来の人柄や魅力を発揮することができます。
面接官は応募者の本来の姿を見ることができ、一緒に働きたい人物なのかを判断しやすくなるでしょう。面接官が笑顔で接することで、応募者は企業に対して親しみやすい印象を受けます。
特に社会人経験がない新卒応募者は面接時に緊張しやすく、面接官が無表情で話をすると、「この企業は上下関係が厳しいのだろうか」「威圧感があって怖い」と感じてしまうかもしれません。
意識的に笑顔で話すようにし、応募者がリラックスできるように心掛ける必要があります。また、「この企業で働きたい」と感じてもらうことができれば、採用後の辞退も回避しやすくなるでしょう。
笑顔であいさつした後は、応募者の緊張を和らげ、面接へとスムーズにつなげるアイスブレイクも必要です。アイスブレイクは、最初は「はい」か「いいえ」で答えられるクローズドクエスチョン、次に「はい」か「いいえ」では答えられないオープンクエスチョンにすると良いでしょう。
先にクローズドクエスチョンにすることで応募者は質問に答えやすいと感じ、次のオープンクエスチョンで、自分の意見を自由に話せると感じることができます。
例えば、あいさつをした後に「今日は電車は遅れていなかったですか?」と尋ね、遅れていたときはその時の様子を聞くなどすれば、話もはずむでしょう。
その後、履歴書を見て、「特技はバレエなんですね。いつ始めたのですか」と「はい」や「いいえ」で答えられない質問をして、応募者が自由に話す機会を設けます。
あいさつをするときに、面接官が先に自己紹介します。名刺を渡すと、部署名や氏名が記載されているので応募者に説明しやすいでしょう。
面接官から先に自己紹介することで、応募者に威圧的な印象を与えることを回避しやすくなります。また、名刺に記載されている電話やメールアドレスを指し、「後で質問があったら遠慮なくご連絡ください」と伝えると、より親切です。
面接は誰でも緊張するもので、リラックスできる雰囲気を作ることが大切です。緊張している状態では本来の魅力を発揮できず、応募者を正しく見極めることができません。まずは本題に入る前に、アイスブレイクで緊張を和らげます。
アイスブレイクは「氷を溶かす」という意味で、緊張をほぐすコミュニケーションのことです。
アイスブレイクの話題は天気や応募者の出身地など、応募者が答えやすい内容を選びます。
一例は、以下のとおりです。
応募者の緊張をほぐすには、まずYESかNOで答えられるシンプルな質問から始めることがポイントです。
例えば、最初に「趣味は何をしているのですか?」と尋ねると、緊張している応募者は言葉に詰まり、うまく答えられないかもしれません。資料を見て「趣味は〇〇なんですね?」と尋ねれば「はい」と即答でき、「どのような点が面白いのですか?」と続ければ、スムーズに回答できるでしょう。
面接官の方から積極的に話を進めるのも効果的です。
「◯◯さんが出身の◯◯県は、以前住んでいたことがあります」「私も◯◯さんと同じく〇〇に興味があるんですよ」と自分の話もすることで、応募者は親近感を持ちます。緊張もとけやすくなるでしょう。
面接は、面接官も審査される場といえます。面接官の対応が、企業の印象を左右することを意識し、丁寧な言葉遣いを心掛けましょう。
応募者と打ち解けるためにあえてぞんざいな言葉を使うことは、好ましいとはいえません。応募者にとっては、威圧的に感じたり、社風が自分と合わないと判断したりすることもあります。笑顔で親しみを示し、言葉遣いはあくまでも丁寧さを保ちましょう。
企業によっては「面接官はスーツ」と決められていることもありますが、特に規定がない場合は普段の勤務スタイルでOKです。応募者にとっても普段の会社の様子が分かり、入社後のイメージを持ちやすくなるでしょう。
なお、服装を選ぶときは、清潔感が大切です。応募者が一緒に働きたいと思えるように、アイロンがかかったシャツ、磨いた靴、さっぱりとした髪型を心掛けましょう。
異なる面接官が面接を実施しても同じ結果が得られるように、評価基準を共有することが必要です。また、面接官は主観を入れないように心掛け、公正な面接が実施されるように努めましょう。
「面接評価シート」などを作成して評価基準がマニュアル化されている場合は、面接官によらず同じ結果が得られるようになります。主観や先入観を入れずに判断するためにも、面接評価シートや面接マニュアルを熟読しておきましょう。
なお、面接官が注意したいポイントの一つに、ハロー効果があります。ハロー効果とは、応募者のスペックや第一印象で全体の評価が左右されてしまうことです。
例えば、応募者が椅子に腰掛ける前につまずいたのを見て、「落ち着きのない性格なのだろうか。仕事をしても失敗をしそうだ」と判断するのは、第一印象に左右されていると考えられるでしょう。
また、履歴書を見て、面接官自身と同じ大学・学部であることに気づき、「きっと話も合うに違いない」と高く評価するのもハロー効果の一つです。
ハロー効果を避けるためにも、先入観や第一印象に左右されないように面接官一人ひとりが意識することが有用といえるでしょう。また、面接は常に複数の面接官で実施することでも、ハロー効果を回避しやすくなります。
評価基準を基に質問を決めていきます。応募者を多面的に理解し、評価するためにも、次の6つの質問を含めるようにしましょう。
・価値観や考え方を知る質問
・企業風土とマッチするか知る質問
・スキルの程度を知る質問
・意欲を知る質問
・論理的思考力を知る質問
・コミュニケーションスキルを知る質問
それぞれの質問で理解できることを解説し、具体的な質問例も紹介します。
応募者がどのような価値観や考え方を持っているか知ることで、どの部署に配属するのが適切か、どのような教育が必要かなどを具体的に見極めることができます。例えば、「今までに成長を実感した瞬間はありますか?」と質問することで、自分自身を客観的に判断できる人材か、また、成長への意欲が高い人材なのかを知ることができるでしょう。
また、「モチベーションが下がりそうなときはどのような対策をしますか?」と質問すれば、セルフコントロールできる人材か、仕事のどのような部分にやりがいを感じるのかを分析することができます。
企業や業務への適性、また他の社員との相性を判断するためにも、応募者の価値観や考え方を理解する質問を含めましょう。
企業風土と合う人材かどうかを見極める質問も必要です。企業風土と合っていると応募者本人が働きやすさを実感しやすくなり、結果的には離職率を下げることにもつながります。
例えば、「あなたにとって働きやすい環境とはどのようなものですか?」と直接尋ねるのも一つの方法です。
「裁量が十分に与えられて、自分のペースや能力で仕事を進めていける環境」を好ましいと思う応募者もいれば、「マニュアルが決まっていて、ルール通りに働ける職場」に居心地の良さを感じる応募者もいます。企業風土との相性を判断し、応募者を絞り込んでいきましょう。
応募者のスキルも知っておくことで、より企業に必要な人材を採用することができます。例えば、パソコンのスキルや語学力、プレゼンテーションスキルなどもチェックしておく必要があるでしょう。
「海外支社での勤務も希望できますが、どの程度の英語力がありますか?」「以前の会社ではシステムの保守を担当されていたようですが、どのようなツールやシステムを使っていましたか?」のように、より具体的なビジネススキルが分かる質問を用意しておきます。
応募者の専攻や職歴を確認し、より詳細なスキルレベルを尋ねることもできるでしょう。
応募者が自社一社だけの面接を受けているとは限りません。複数の企業に同時応募していると考えられるため、採用辞退や早期離職を防ぐためにも、入社に対する意欲について確認する質問をしておきましょう。
「なぜ当社を志望されたのですか?」「当社でどんな仕事をしたいとお考えですか?」と尋ねることで、自社への志望度の高さを知ることができます。仕事内容や社風を理解せずに応募したと判断されるときは、採用したとしても辞退する可能性が高いかもしれません。
応募者が論理的思考力を持っているかどうかについても、面接時の質問を通して探っておきましょう。論理性に欠ける場合は、業務が進めにくくなったり、他の社員と共同でプロジェクトを行いにくくなったりする可能性があります。
新卒であれば「卒業研究のスケジュールはどのように立てましたか」、中途採用者であれば「普段の業務スケジュールはどのように管理していましたか」などと尋ねてみることができるでしょう。
スケジュールの立て方には、応募者の論理的思考力だけでなく計画性や見通す力なども表れます。
また、「過去にチームを組んで何かをしたことがありますか?どのような役割を果たしていましたか?」と尋ねれば、集団の中での仕事の進め方や立ち位置も知ることができるでしょう。
新卒であればアルバイトやサークル、部活動の経験から、中途採用であれば今までの職場での経験から説明するように促すと、より応募者は具体的に説明しやすくなります。
応募者のコミュニケーションスキルが分かる質問も必要です。面接でのやり取りを通して知ることもできますが、具体的な質問があると、より応募者の普段のコミュニケーションスキルを理解しやすくなるでしょう。
例えば、「簡単に自己紹介してください」という質問から、応募者のコミュニケーションスキルの高さや自分自身への客観的な理解などもチェックできます。
また、「友人とのコミュニケーションにおいて、何か心掛けていることはありますか」などの質問で、コミュニケーションに対する応募者の考え方を知ることができるでしょう。
業務を円滑に進める上で、ストレス耐性も必要です。特に営業などストレスの多い仕事では、ストレス耐性があるかを確認する質問は欠かせません。
仕事では人間関係や責任、成果に対するプレッシャーなどストレスのかかる要因は多々あります。ストレスに対応できなければパフォーマンスが下がるだけでなく、メンタルにも不調をきたします。離職にもつながりやすくなるでしょう。
ストレス耐性を知るには、ストレスの原因を敏感に感知する能力や回避する能力、適切に処理できる能力を確認する質問を行います。
質問の一例をみてみましょう。
ストレスの原因を敏感に感知する能力を確認する
「どのようなときにストレスを感じますか?」
「前職やアルバイトなどで仕事をした際、どのようなことにストレスを感じていましたか?」
ストレスを回避する能力を確認する
「急なトラブルが起きたときにはどのように感じますか?」
「顧客から理不尽なクレームを受けたときにどう思いますか?」
ストレスの処理能力を確認する
「これまでに最も大きかったトラブルの内容と、乗り越えた方法を教えてください」
「人間関係で悩んだとき、どのように対処していますか?」
心の状態は複雑であり、ひとつの質問だけでストレス耐性を判断するのは難しいでしょう。いくつかの質問と一連の会話を通し、総合的に評価することが大切です。
紹介した7つの質問は、どの応募者にも尋ねたい質問です。質問して的確に評価することで、応募者と企業のミスマッチを回避し、採用辞退や早期離職を減らすことができます。また、企業に合った人材を確保することで、企業成長も実現できるでしょう。
また、応募者のケースごとに含めたい質問もあります。新卒採用と中途採用、アルバイト・パートに分けて、応募者に尋ねておきたい質問についてみていきましょう。
新卒採用の場合、応募者のビジネススキルや仕事での経験などから採用するかどうかを判断することができません。そのため、企業の求める人物像に合っているかどうかを丁寧に確認することが必要になります。
まずは企業側で求める人物像を定義し、その定義に合う人材なのか確認するようにしましょう。例えば、チームでプロジェクトを組むスタイルでの業務が多い企業であれば、コミュニケーションスキルが高く、なおかつ主体的に働ける人材が好ましいかもしれません。
また、応募者が持つポテンシャルも評価しておくことが必要です。積極性や向上心などを判断する質問を実施し、即戦力はなくても長い目で見れば企業に有益な人材かどうかを確認します。
例えば、活躍している既存の社員を何人かピックアップし、共通する資質を分析し、その資質を応募者が持っているかチェックするのも有用な方法といえるでしょう。
中途採用の場合は、退職理由、入社動機、ビジネススキルの3つを尋ねる質問を含めると良いでしょう。例えば、「なぜ前の会社を退職したのですか?」とストレートに尋ねることも一つの方法です。答えから、応募者の価値観や仕事において重要視していることなどを知ることができます。
仕事の進め方はどのように行っているかを知ることも大切です。仕事の進め方を聞くことで、これまでの経験が自社の業務に活かせるかを知ることができます。
これまで行ってきた仕事で特にアピールできる取り組みについて質問し、どのように進めていたか確認しましょう。仕事の進め方を聞くことで、業務遂行の能力もチェックできます。
進め方の質問では、業務遂行の過程で直面した課題とその解決方法・結果なども合わせて聞いてみると、課題解決力の確認もできます。
「なぜ当社を希望されたのですか」という質問も欠かせません。自社の魅力を理解して入社した社員は、離職率が低く、長期にわたって企業の戦力になると考えられます。また、入社動機を尋ねることで、自己分析がきちんとできているかも確認できるでしょう。
客観的に自己分析ができている応募者であれば、理想や夢といった漠然としたイメージで応募先を選ばず、自分に合う職場かどうかを冷静に判断しているはずです。
自社で必要としているビジネススキルをいくつか紹介し、応募者に持っているかどうかを尋ねることも必要になります。即戦力として働けるのかを判断できるだけでなく、配属先を決める参考にもなるでしょう。
アルバイトやパートの採用面接においては、意欲があるか、人柄は問題ないか、シフトにどの程度入れるかの3つの要素を尋ねることが必要になります。
アルバイトやパートの面接は正社員の面接とは異なり、1回のみで採用するかどうかを決めることが一般的です。そのため、面接時に確認しておきたいことを整理して、漏らさず質問するようにしましょう。
例えば、「なぜこの仕事に応募されたのですか?」「初対面の人と話すことは得意ですか?」などのように直接的に、動機や適性を確認することもできます。
「曜日ごとのシフトの希望はありますか?」「1ヵ月にどの程度の給料を希望していますか?」のように、具体的な質問も必要になるでしょう。
また、新卒採用の社員は入社前後に研修を実施してから実際の業務を開始しますが、アルバイトやパートは働きながら研修も行う傾向にあります。そのため、意欲があり、なおかつ適性があるかどうかを確認しておかないと、短期間で離職する可能性も想定されるでしょう。
「今までにアルバイトをしたことがありますか?」と尋ねることで、前回の離職理由を確認できます。根気強さなどもチェックできるでしょう。また、「仕事に対して何か到達したい目標はありますか?」と質問することで、早期離職しない人材かどうかも確認できます。
アルバイトやパートの社員は正社員に比べて研修コストはかかりにくいものの、採用にかかる時間や手間、仕事を開始して慣れるまでの効率性の低下などを考えると、早期離職は極力避けなくてはいけません。適切な質問を用意し、応募者を見極めるようにしましょう。
面接にはNGな質問や行動があります。どのような質問や言動がNGなのか事前準備で確認し、本番で避けることが大切です。ここでは、NGな質問と行動をご紹介します。
面接時では尋ねてはいけないNG質問があります。特に次の2点は面接時に尋ねないだけでなく、採用選考の基準に影響を及ぼさないよう注意が必要です。
本籍や家族・住宅状況などは応募者自身に責任のある事柄ではなく、質問はNGです。例えば、「本籍地はどこですか?」「ご家族はどのような仕事をしていますか?」「ご家族は持ち家で暮らしていますか?」といった事柄は、いずれも応募者が選んだことではなく、質問する意味がありません。
これらは特に採用結果に影響を及ぼすものではなく、アイスブレイクの際の雑談でも避けるようにしてください。
また、宗教や支持政党・生活信条などは本来、応募者の自由意思に基づくものであるため、採用結果に影響を及ぼしてはいけない事柄です。
例えば、「キリスト教系の学校を卒業していますが、ご家族もキリスト教なのですか?」「ご親族に政治家がいますが、同じ政党を支持しているのですか?」といった質問は避けましょう。
そのほか、思想や尊敬する人物・購読新聞・愛読書なども、応募者本人の自由意思に任せられるものであり、質問は避けてください。あくまでも応募者の適性や能力、ポテンシャルなどによって採用を決定することが原則です。
面接官は企業を代表する存在であり、行動にも十分気を遣わなければなりません。面接官の行動や対応によって応募者の入社意欲を下げてしまう可能性もあります。
以下のような行動には注意してください。
このような行動は事前に応募書類を読んでおらず、準備をしていないことを教えるようなものです。応募者に「真剣に採用活動をしていない」「自分に興味がない」と感じられてしまうでしょう。
また、以下のような行動もNGです。
応募者について掘り下げない面接では正確な判断ができず、一方的に質問で終わることは応募者の不安や疑問も解消しません。マイナスの印象をもたれる可能性もあります。
面接はあらかじめ進め方のスケジュールを作成し、それぞれの時間配分を設定することが必要です。ここでは、面接の進め方と適切な時間配分について説明します。
面接は、大きく以下のような流れで進めていきます。
まずアイスブレイクで応募者の緊張をほぐし、話しやすい雰囲気を作りましょう。
その後、面接官の自己紹介により距離感を縮めます。その際は自身の入社動機も話すことで、会社のイメージを伝えることができます。
次に、会社説明を行います。自社の魅力を伝えてアピールする機会であり、応募者の入社意欲を左右する場面です。今後の展望や募集に至った経緯、求める人材なども伝えれば応募者は会社への理解をより深め、入社後のイメージを持ちやすくなります。
応募者への質問は一方的に行うのではなく、会話のキャッチボールとなるように進めましょう。ひとつのエピソードについて深掘りすることで、準備していなかった質問への対応力が判断できます。質問が終わったら、応募者からの逆質問を受け付けましょう。質問内容により、応募者の入社意欲がわかります。
公式サイトを見ればすぐにわかる質問や、待遇についての質問ばかりする場合は、仕事に対する熱意が低い可能性もあるでしょう。
最後に、次の面接日程や採否の通知方法など事務的な確認をして終了です。
面接時間は企業により異なり、30分〜1時間程度が一般的です。質問に対する受け答えや第一印象を重視する場合は短く、質問を深堀りして人柄や能力を見極めたい場合は1時間程度必要になります。
限られた面接時間を有効に使うためには、決めた時間内で適切な時間配分をすることが必要です。
時間配分は質問内容によっても異なりますが、目安は以下のとおりです。
会社説明などで時間をとりすぎないよう、時間内で的確に説明できる準備が必要です。
面接後の対応も、企業の印象を左右する事項です。以下の2点には注意してください。
企業イメージを損なわないためにも、最後まで誠実に対応することが不可欠です。
面接後の対応について解説します。
まず、選考結果が決まったらすぐに連絡することが重要です。優秀な人材を確保するために吟味する時間を必要とする企業は多いかもしれませんが、結果連絡が遅いと応募者の就職活動・転職活動に支障をきたします。
基本的には3日以内ですが、遅くとも1週間以内には連絡しましょう。応募者が多い・選考に時間がかかるなどの理由でそれ以上かかる場合は、連絡が遅くなる可能性があることをあらかじめ伝えておくことが大切です。連絡が遅くなると応募者からの問い合わせが入ることもあり、事務作業が増えることになります。
また、受け取った履歴書や職務経歴書は個人情報が入った重要な書類です。流出や紛失することがないよう厳重に保管し、不採用の場合は返却するか破棄するかも必ず伝えましょう。
不採用の場合でも必ず連絡することが大切です。不採用の連絡をしない、あるいは連絡方法が丁寧でない場合、企業イメージを損なう可能性もあります。
貴重な時間を使って応募してくれたことに感謝の気持ちを表しましょう。また、企業としても真摯に選考を行い、十分に検討を重ねて結論を出したことも伝えます。
不採用を伝える手段は書面・メール・電話の3種類があり、状況によって適した方法は異なります。自社に合う方法で行ってください。
このうち、書面やメールは応募者の手元に結果が残るため、後日「言った・言わない」のトラブルが発生するのを防ぐことができます。連絡を急ぐ場合に電話を利用する場合でも、書面やメールでの通知を併用するとよいでしょう。
書面やメールで不採用通知を送る場合は、以下の項目を記載します。
メールで送る際は、ほかのメールに埋もれないよう「【選考結果のご連絡】〇〇株式会社」など、メールの内容や差出人が一目でわかるようにしてください。
面接は、面接官が主役ではありません。企業で定めた基準に合う人材を探し、そして応募者が企業に対して良い印象を得るようにする役割を担うのが面接官です。与えられた役割を正しく理解し、応募者の個性や実力を発揮できる空気感を作りましょう。
面接を成功させるためには、丁寧な下準備が欠かせません。企業が求める人物像を正確に把握し、面接マニュアルを熟読して面接に備えておきます。
また、相手とより打ち解けようとしてNG質問を口にする可能性があるため、アイスブレイクの話題をいくつか用意しておくことも必要になるでしょう。