それぞれの役割について、詳しくみていきましょう。
面接官の役割の1つ目は、面接により会社に必要な人材を見つけることです。面接時には、常に「この応募者が会社にとって必要か」「共に働く仲間としてふさわしいか」という点に注目し、主観や個人的な好悪に影響を受けないように注意して応募者を見極めます。
面接官の役割の二つ目は、会社の魅力を応募者に伝えることです。面接は会社が応募者に対して評価を与える機会でもありますが、応募者が会社を評価する場でもあります。
応募者に会社の魅力を伝え、より前向きに入社を検討してもらう必要があるでしょう。
会社の魅力を十分に伝えられないときは、採用を決定しても応募者側が辞退する可能性があります。辞退者が多いときには、採用活動をし直すことにもなりかねません。
また、応募者は、会社に対する印象を面接官の印象で決めることがあります。例えば、面接官が横柄で高圧的な印象であれば、応募者は会社全体が横柄かつ高圧的だと判断するかもしれません。
応募者から好印象を持ってもらうためにも、面接官は自分の振る舞いや言葉遣いなどを客観的にチェックする必要があります。面接の前に面接官同士でロールプレイングを実施し、お互いの話し方や態度などを確認しておくとよいでしょう。
定められた時間内に面接を行うためには、面接の流れを把握しておくことが欠かせません。一般的に、面接は次の流れで進みます。
段階ごとに何を行うのか、詳しくみていきましょう。
最初はアイスブレイクと自己紹介です。アイスブレイクとは、応募者の緊張を解きほぐすための雑談を意味します。「何に乗ってここまで来られましたか?」「雨が急に降りましたが、濡れませんでしたか?」と親しみのある調子で話しかけ、応募者が話しやすい雰囲気を作りましょう。
また、面接官から先に自己紹介することも大切です。簡単に名前と部署を伝えますが、名刺を渡すと、よりスムーズに自己紹介できるでしょう。
自己紹介をした後で、応募者にも簡単に自己紹介するようにと促します。中途採用の場合であれば、現在の職場でどんな仕事をしているかについても話してもらいましょう。
疑問点やさらに詳しく聞きたいことがあれば、その都度、応募者に質問し、どのような人物なのか、また論理的に考え、言葉で説明できるのか確認します。
次に志望動機について尋ねます。志望動機を語ってもらうことで、応募者がどのような考え方を持っているのか、また、価値観や人生・仕事において何を重視しているのかわかるでしょう。話す順番や文章の組み立て方などから、応募者が論理的に物事を考えられる人物なのかもわかります。
応募者が志望動機を端的にまとめて話した場合でも、それで納得してはいけません。「なぜ」そう思うのか、「なぜ」他の会社ではなくこの会社なのかと、「なぜ」というキーワードを使って、応募者の考えを掘り下げていきましょう。
また、中途採用者については志望動機だけでなく退職理由についても尋ねてみます。退職理由を丁寧に分析することで、応募者の価値観を重視することだけでなく、周囲とどのような関係を築く人物か、どうすれば離職せずに働けるのかについてもわかるでしょう。
応募者の考え方やキャリアプランなどについては、志望動機以外からも理解することができます。入社後はどのように働きたいと考えているのか、長期的にどのようなキャリアプランを立てているのか尋ねてみましょう。
また、理想的なワークライフバランスについても尋ねておくと、会社との適性について理解しやすくなります。その他にも、新卒であれば学校や課外活動、アルバイトなどを通してどのような経験をしたのか尋ね、リーダーとしての資質やコミュニケーションスキルなどを測ることができるでしょう。
中途採用者であれば、今までに従事してきた仕事内容やチームの中での立ち位置、具体的に獲得してきたスキルなどについて尋ねることで、即戦力として採用できるのかを知ることができます。
多くの質問をすれば、より応募者についての理解を深めることができるでしょう。しかし、面接時間には限りがあるため、応募者を多面的に把握するための質問を効率良く実施することが必要です。面接時に不可欠な質問の内容と作成方法について、詳しくは後述します。
面接官が一方的に質問するだけでは十分とはいえません。面接は応募者について理解するだけでなく、応募者が会社について理解する機会でもあるため、単に面接官が質問するだけでは目的を達成できていないと考えられます。
面接官からの質問を終えた後、応募者が自由に質問できる時間を設けることが一般的です。質疑応答の時間が短すぎると、応募者の疑問を適切に解消できなくなります。タイムスケジュールを決めて、質疑応答のための十分な時間を確保しておきましょう。
ただし、質疑応答の時間が長くなりすぎることは避けなくてはいけません。次の面接の時間がずれることにもなるため、応募者から受けるよくある質問とその答えをまとめておき、スムーズに答えられるように準備しておきましょう。
例えば、キャリアパスの例、新規事業や今後の取り組み、評価制度などについてまとめておくと、応募者をまたせずに回答でき、時間内に面接を終えられます。
なお、応募者によってリラックスできる雰囲気は異なります。そのため、応募者が話すトーンに合わせることも必要です。応募者を急かせたり、慌てさせたりすることがないように配慮しましょう。
最近ではオンラインで面接するケースも増えてきました。オンライン面接では面接官側の様子が応募者側に伝わりにくいため、応募者が本当に自分に合う会社なのか見極めにくいという問題点があります。
また、応募者側の様子も面接官に伝わりにくくなり、応募者の話し方や雰囲気、細かな気遣いなどに注目せず、話す内容だけで決めてしまうことも少なくありません。
対面で面接するときのように、言外のコミュニケーションも意識的にチェックして、偏りのない判断が下せるようにしましょう。また、オンライン面接だけで決めるのではなく、対面の面接も実施し、応募者の持つ雰囲気や目線、周囲への配慮なども確認することが大切です。
オンライン面接の問題点を解消するための準備も必要になります。例えば、アイスブレイクを長めにして緊張を解きほぐすことや、表情が読み取りやすいように大きめのリアクションを心掛けることなども必要になるでしょう。
そしてオンライン面接がスムーズに進むために、機材のチェックを念入りにしておくことも必要です。応募者にも適度に声をかけ、音声や画質に問題がないか確認しつつ進行していきましょう。
それぞれの質問例を紹介します。ぜひ参考にして、応募者を深く理解するオリジナルの質問を作ってください。
まずは応募者の人間性を知るための質問です。人間性について知ることは、応募者が企業風土に合った人材なのか、どのような考えを持ち、仕事に取り組むのか理解するために欠かせません。いくつか例を挙げ、それぞれの質問から何がわかるのか解説します。
・ご自分の長所を教えてください。客観的に自己分析できているのかを知るうえで、長所について尋ねることは必要です。また、採用後、どの部署に配属すればよいか決める際にも、長所が参考になることもあります。
・ご自分の短所とその克服方法について教えてください。
短所について聞くことも、客観的に自己分析できているかを知るうえで役立ちます。また、克服方法もあわせて尋ねることで、普段から自分のよくない部分とどう向き合っているのか、謙虚かつ誠実な性格なのかを判断することもできるでしょう。
・周囲の人々からどのような性格だと言われますか?
周囲の評価について尋ねることで、応募者がどのような人物だと周囲から思われているのか理解できます。また、周囲からの評価と、応募者自身が自己分析している長所・短所とを比較してみましょう。
応募者が自分自身を過大評価・過小評価せずに捉えられる人物なのか、判断できるでしょう。
・仕事やチームでの作業を行う上で、何を重視していますか?応募者の仕事の進め方を知るうえで、何を重視しているのかを知ることは不可欠です。周囲と歩調を合わせようとする人物なのか、積極的に他者と関わり、サポートできる人材なのか見極めます。
・今まででもっとも苦労したことは何ですか?またどのように乗り越えましたか?応募者の今までの経験から、困難な状況でどのように振る舞うことができる人物なのか理解することができます。根気があるか、問題に対して適切な解決策を打ち立てることができるのか、質問を通して探っていきましょう。
・どのようなときにストレスを感じますか?どんな業務でも、大なり小なりストレスはあります。ストレスとうまく付き合っていけるのかを知るうえでも、ストレスを感じるポイントについて尋ねておきましょう。例えば、初めて会う人と話すときにストレスを感じる方であれば、営業職よりも内勤が適していると判断できるかもしれません。
・休日の過ごし方を簡単に教えてください。働き方だけを聞いても、応募者の人間性をすべて知ることはできません。休日をどのように過ごすのかについても知ることで、ストレスとの付き合い方やライフスタイルについて理解しやすくなります。
また、リフレッシュできる過ごし方をしている人物であれば、ストレス耐性も高いと判断できるでしょう。
仕事はコミュニケーションによって成り立っています。応募者のコミュニケーションスキルを知るためにも、次の質問をしてみましょう。
・簡単に自己紹介してください。アイスブレイクの後で自己紹介をしてもらいますが、自己紹介の仕方でコミュニケーションスキルをある程度測ることもできます。面接官と適切にアイコンタクトを取れるか、面接官が理解しやすいように説明できるかなどをチェックしてみましょう。
また、「簡単に」と注文をつけることで、要点をシンプルにまとめることができるのかも確認することができます。
・上司や先輩とのコミュニケーションにおいて、どのようなことを心掛けていますか?世代や立場が異なる人とは、どのようにコミュニケーションを取るのかについても、質問しておきましょう。相手を尊重できるのか、また、尊重した上で、打ち解けられるのかについて確認できます。
入社後の展望を知るための質問も必要です。また、応募者が仕事においてどのような志向性を持っているのかも確認しておきましょう。
・当社の企業理念について感想を教えてください。応募者の考え方が企業理念とマッチしているのかを知ることで、企業風土に合う人材なのか調べることができます。また、企業理念を理解しているかどうかで、当社への志望度の高さもうかがえるでしょう。
・3年後、10年後のあなたのキャリアプランを教えてください。応募者のキャリアプランを尋ねることで、どのような業務を担当したいのか、またどんな働き方を理想としているのか知ることができます。
そして将来について、どの程度具体的に考えているのか知ることで、成長意欲を持っているのか、計画的に行動できる人物なのかについても理解できるでしょう。
新卒は社会経験がないため、学生時代のエピソードなどからポテンシャルを理解する必要があります。次の質問を行うことで、応募者のポテンシャルについて探っていきましょう。
・ご自身が率先して取り組んだイベントなどはありますか?リーダーシップのある人材か、また、積極性があるかを知ることができる質問です。ただし、リーダーシップがないときでもネガティブに評価する必要はありません。チームの中での立ち位置や自身の役割を理解し、適切に行動できているのかをチェックします。
・今後、どのような分野を学びたいと考えていますか?仕事面で、どんな知識やスキルが必要だと感じているのか質問してみましょう。仕事に対する姿勢や成長意欲も確認することができます。
中途採用の場合は、今までの経験やスキルを確認する質問が必要です。特に即戦力を求めている場合には、経験とスキルについて重点的に尋ねるようにしましょう。
・今まで担当してきた業務を教えてください。どのような業務を担当してきたのか知ることで、業務との適合性や即戦力になるかを知ることができます。また自発的に業務を行える人物なのか、どの程度の責任を負ってきたのかもチェックしましょう。
・苦手な業務はありますか?どのような業務を苦手としているのか確認することで、適切な場所に配属することができます。また、苦手業務について単に答えるのではなく、克服方法を自分で提案したり、チャレンジしたいという気持ちを示したりする場合は、意欲のある人材と判断できるでしょう。
パートやアルバイトの面接では経験や人間性も大切ですが、出勤頻度についての質問が欠かせません。頻度が高いと意欲も高いと判断できるでしょう。また、シフトを組むためにも必要なポイントです。
面接では、本人の適性や能力とは無関係な質問をしてはいけません。例えば、本籍地や出生、宗教などについては、応募者本人の適性や能力とはまったく関係のない事柄です。
応募者のプライバシーを侵害するだけでなく、これらの質問の答えが選考結果に影響を及ぼすのではないかと誤解を与えることにもなりかねません。質問内容はあらかじめ作成しておき、プライバシーを侵害した内容が含まれていないか、複数の面接官によって確認しておきましょう。
温かい雰囲気を作り、応募者が話しやすいようにすることは必要です。しかし、親しみを抱かせる以上のくだけた様子は、好ましいとはいえません。応募者が軽んじられていると感じることがないよう、相手に対して敬意をも持って接し、丁寧さを崩さないことを意識しましょう。
準備をせずに面接に臨むと、採用判断が難しくなるだけでなく、タイムスケジュール通りに進行させることができなくなります。
事前に履歴書や職務経歴書をしっかりと読み込む、応募者からの質問に備えるなど、適切に準備をしてから面接に臨みましょう。