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ジョブ型雇用のメリット/デメリットとは?注目される背景や従来型との違いも解説

作成者: スタンバイ制作チーム|2022/05/10

1.ジョブ型雇用とは?

「ジョブ型雇用」とは、仕事の範囲をあらかじめ決めて雇用するスタイルです。例えば、経理や資料作成など、特定の業務のみを担当します。

ジョブ型雇用では、求めるスキルや知識の基準を明確に提示してから求人募集を行うことが一般的です。そのため、専門性の高い人材がターゲットになります。また、すでにスキルや知識を備えた人材を雇用するため、研修やセミナーなどの教育を実施しないことが多いのも特徴です。

ジョブ型雇用では、採用するときに仕事内容や勤務地、賃金などを明確に定めます。職務に空きが出ると求人募集するというサイクルが一般的なため、基本的には特定の時期にまとめて採用することはありません。

また、雇用条件で定められた仕事自体がなくなると、雇用を継続しない可能性もあります。例えば、ジョブ型雇用により経理の人材を採用していた場合、ICT化により経理業務が大幅に減ったときには雇用の打ち切りなども検討されるでしょう。

1-1.メンバーシップ型雇用との違い

「メンバーシップ型雇用」とは、仕事内容を問わず人材を採用するスタイルです。担当していた業務がなくなっても、他の業務に就いて仕事を続けることができるため、社員自身が希望するときには基本的には終身雇用制となります。

メンバーシップ型雇用は、日本では一般的な雇用制度です。仕事内容を細かく決めず、人材そのものを見て採用可否を決定します。また、幅広い業務に対応できるようにさまざまな研修やセミナーなどを実施し、長期的に教育するのもメンバーシップ型雇用の特徴です。

1-2.タスク型雇用との違い

「タスク型雇用」とは、特定のタスクだけに従事する人材を採用する雇用スタイルです。スポット雇用とも呼ばれています。人手が不足する時期だけ、あるいは特定のプロジェクトだけに必要な人材を雇用するため、ジョブ型雇用やメンバーシップ型雇用と比べて短期間の採用となることが一般的です。

例えば、人材派遣会社を通して人材を確保するときは、タスク型雇用だと考えられるでしょう。新規事業や新営業所を立ち上げるときなど、人材が不足するときのみ採用し、タスクが終了すると雇用契約を解消します。

 

 

2.ジョブ型雇用の注目が高まっている3つの理由

日本の雇用方式は、かつてはメンバーシップ型雇用が大半を占めていました。しかし、現在ではジョブ型雇用を実施する企業も見られています。ジョブ型雇用の注目が高まっている理由としては、次の3つが挙げられます。

  1. 専門スキルを有する人材を確保したいから
  2. 終身雇用制の維持が難しいから
  3. 同一労働同一賃金制に適しているから

それぞれの理由について、詳しく解説します。

2-1.専門スキルを有する人材を確保したいから

人ではなくスキルに注目した採用を実施したいと考える企業もあります。「何でも卒なくこなす優秀な人材」よりも「フロントエンドに詳しくHTMLを用いたプログラミングができる人材」のように、特定の経験やスキルを有している人材を確保したいときは、メンバーシップ型雇用ではなくジョブ型雇用が適しています。

また、AIやビッグデータなどのさまざまな技術革新が進むなか、担当できる人材の不在からICT化の流れに対応できない企業も少なくありません。そのため、より一層、人ではなくスキルに注目せざるを得ない状況になってきています。

2-2.終身雇用制の維持が難しいから

終身雇用制は、経済が右肩上がりに成長していることが前提の制度です。毎年多くの新入社員を雇用し、なおかつ既存社員に対して定年退職時まで給料を払い続けるためには、好景気が続き、なおかつ企業の利益が右肩上がりに増え続けなければなりません。

しかし、デフレが続く現代においては、所得が増えることも企業利益が増え続けることも非現実的です。終身雇用制が前提となるメンバーシップ型雇用ではなく、企業にとって必要なスキルや知識を備えた人材を採用するジョブ型雇用が現状に即しているといえます。

また、メンバーシップ型雇用により入社した人材が必ずしも適材適所に配置されていないことも、ジョブ型雇用が注目されている理由の一つです。

メンバーシップ型雇用ではローテーション制で配属され、人材と業務がミスマッチを起こすときは生産性が著しく下がることもあります。しかし、ジョブ型雇用であれば、仕事内容に適した人材を雇用するため、業務とミスマッチを起こしにくく、生産性の向上が期待できるのです。

2-3.同一労働同一賃金制に適しているから

2020年4月より、同一労働に対しては同一賃金を支払う「同一労働同一賃金」に関する法制が施行されました。同一労働同一賃金とは、経験や能力、成果などが同じ場合は、同額の賃金を支払わなくてはいけないという決まりで、正社員と非正社員の待遇格差の是正を目的とした取り組みです。

メンバーシップ型雇用では年齢や勤続年数によって賃金が決まるため、同一労働同一賃金を実施することは容易ではありません。しかし、ジョブ型雇用であれば仕事内容やスキルの熟練度などに応じて賃金を決めることが可能です。同一労働同一賃金を実施しやすく、正社員と非正社員の格差も生まれにくくなります。

参照元:厚生労働省「同一労働同一賃金特集ページ」

 

 

3.ジョブ型雇用のメリット

ジョブ型雇用を実施することには、さまざまなメリットがあります。労働者側には経験や能力を評価されやすい、得意とする分野の仕事に従事できるなどのメリットがありますが、企業側のメリットも少なくありません。主なメリットには次の4つが挙げられます。

  • 専門性の高い人材を確保できる
  • 即戦力になる
  • ミスマッチを回避できる
  • テレワークを導入しやすい

それぞれのメリットについて、詳しくみていきましょう。

3-1.専門性の高い人材を確保できる

ジョブ型雇用では、仕事に注目して求人募集を行うため、専門性の高い人材を集めることができます。必要な人材をピンポイントで採用することができ、企業が抱える課題もスピーディに解決できるのが特徴です。

3-2.即戦力になる

メンバーシップ型雇用とは異なり、ジョブ型雇用では、基本的には仕事を開始するにあたって研修やセミナーなどを実施する必要はありません。担当する仕事内容を理解し、なおかつその仕事に必要なスキルを備えた状態の人材を採用しているため、即戦力として活用できます。

3-3.ミスマッチを回避できる

メンバーシップ型雇用では、どの仕事を担当するか決めずに採用することが一般的です。研修期間終了後、企業側が判断した適性や社員本人の希望によって配属先が決まりますが、必ずしも配属先で担当する業務が社員に合うわけではありません。

社員によっては働きにくさや適性のなさを感じて、仕事に対する意欲を失くす可能性があります。また、ミスマッチが深刻なときには、早期に離職するケースもあるでしょう。

一方、ジョブ型雇用では仕事内容を提示して求人募集を行うため、仕事内容と人材がミスマッチを起こす可能性は低いと考えられます。働きやすさを感じ、長く勤続してもらうためにも、仕事内容に注目したジョブ型雇用を検討できます。

3-4.テレワークを導入しやすい

ジョブ型雇用では社員の仕事内容が明確なため、指導や調整に時間を割かなくても仕事を開始してもらえます。パソコンを使って行える仕事内容であれば、テレワークに切り替えることも可能です。

また、元々テレワークを前提として採用する場合には、業務連絡の取り方や業務進行のフローについての打ち合わせをしておけば、スムーズに実施できます。なお、テレワークの導入は、労働する側にとってはより自由な働き方を選択できることを意味するため、求人募集の応募者を増やすことにもつながります。

 

 

4.ジョブ型雇用のデメリット

ジョブ型雇用には、いくつかデメリットもあります。主なデメリットとしては、次の3つが挙げられるでしょう。

  • 人材流出しやすい
  • 業務内容の変化に対応しにくい
  • 企業への愛着心を育てにくい

それぞれのデメリットを詳しく解説し、どのような対策を検討できるのか紹介します。

4-1.人材流出しやすい

社員は仕事内容で入社を決めているため、企業そのものが気に入って入社しているとは限りません。そのため、同じ仕事内容でより好条件な職場があれば、離職する可能性があるでしょう。

人材流出を防ぐためには、応募者にとって魅力となる条件を提示することが必要になります。例えば、「報酬が高い」「テレワークに対応している」「休日が多い」「フレックスタイム制を導入している」などの条件も検討できます。

4-2.業務内容の変化に対応しにくい

企業の業務内容は、いつまでも同じ業務を同じ仕事量で行うとは限りません。対応する仕事の分野の変化やICT化などにより変化するため、ジョブ型雇用をしたにもかかわらずそのジョブに対するニーズが少なくなると、社員が不要になることがあるでしょう。また、別のスキルや知識を持った人材が必要になることもあります。

一方、メンバーシップ型雇用であれば、業務内容が変わったときは、社員が新しい業務に対応できるように教育を実施することで雇用の継続が可能です。すべての人材をジョブ型雇用で採用するのではなく、臨機応変に対応できる人材としてメンバーシップ型雇用でも採用しておくことで、業務内容の変化に対応しやすくなります。

また、業務内容だけでなく勤務地が変更になることもあります。ジョブ型雇用では業務内容以外の条件も詳細に決めた状態で契約するため、勤務地が変更になると雇用契約を継続できない可能性があることに注意が必要です。

ジョブ型雇用で採用された社員の中には、勤務地が変更になっても働き続けることができるケースもあります。社員の意見にも耳を傾け、契約を継続するか、新たに人材を採用するか検討することが求められます。

4-3.企業への愛着心を育てにくい

ジョブ型雇用では、応募者は企業に魅力を感じて応募するのではなく、仕事内容などの条件に魅力を感じて応募する傾向にあります。そのため、ジョブ型雇用で採用した社員に関しては、会社への愛着心を育てることは難しくなります。

より好条件の企業があればすぐに離職する傾向にあるのも、その表れです。優秀な人材に長期にわたって働いてもらうためにも、単に業務内容を共有するだけでなく、企業のミッションやビジョンを共有し、会社という組織の一部であることを実感してもらえるようにしましょう。

また、上司や管理する立場にある社員と話す機会を定期的に設け、仕事に対する悩みなどを相談できるようにすることも企業への愛着心を育てる方法です。チャットサービスなどのコミュニケーションツールを導入し、気軽に質問や雑談ができる環境を整えることも検討できます。

ジョブ型雇用で採用した社員は、単独での作業を行うことが多く、チームでの活動も少ないため、横のつながりも広げにくい傾向にあります。そのため、より一層、企業に対する愛着を持ちづらくなることが懸念点です。

仕事を通して関係性を築くことが難しいときは、社内イベントなどを開催することも検討できます。定期的に社内の人々と交流する機会を設けることで、社員としての自覚が持ちやすくなり、企業に対する愛着も増す可能性があります。

5.ジョブ型雇用を実施するために必要な3つの要素

紹介したとおり、ジョブ型雇用には少なからぬデメリットがあります。しかし、応募条件を工夫することや社内コミュニケーションを意識することなどの対策をしておくことで、デメリットを抑えてジョブ型雇用を導入しやすくなります。

また、次の3つの要素に注目することで、よりジョブ型雇用を導入しやすい環境を構築できます。

  • 評価制度を整える
  • 再配置精度を整える
  • 管理職のマネジメントスキル向上を図る

それぞれの要素について、詳しくみていきましょう。

5-1.評価制度を整える

同じ業務内容を担当している社員であっても、仕事の量や質は異なります。同じ業務内容に従事する社員全員の賃金を一律にしてしまうと、仕事の量や質が評価されず、不公平感を生み出すことになりかねません。

また、このような状況において不公平だと感じるのは、同一時間に多くの仕事をこなすことができ、クオリティの高い作業をする優秀な社員です。そのため、優秀な人材の流出を促進することにもなります。

優秀な人材を確保し続けるためにも、適正かつ公正な評価制度を整えておくことが不可欠です。業務時間だけでなく、量や質を適正に評価し、なおかつ報酬や待遇に反映させる土壌を構築してからジョブ型雇用を導入しましょう。

5-2.再配置制度を整える

企業が必要とする業務内容は、時代の流れやICT化によっても変化していきます。ジョブ型雇用により特定の業務に秀でた人材を採用することも大切ですが、変化に対応できる仕組みを作っておくことも大切です。

例えば、ジョブ型雇用で採用した社員には、事前に了承を得たうえで、「再配置制度」を適用する契約にしておくこともできます。再配置制度とは、特定の業務に固定するのではなく配置換えを受け入れるという制度で、メンバーシップ型雇用であれば標準的に適用されている仕組みです。

特定の業務に対して優秀な結果を出す人材は、別の業務もスムーズに習得し、対応できる可能性があります。配置換え前には研修なども実施すれば、より高いスキルで業務に従事してもらえるでしょう。

5-3.管理職のマネジメントスキル向上を図る

メンバーシップ型雇用で採用した社員と比べるとジョブ型雇用により採用した社員はどうしても業務上の関わりが薄くなるため、管理職が積極的に関わり、業務に対する悩みを聞いたり、精神的なサポートをしたりすることが求められます。

そのため、ジョブ型雇用を導入するためには、ジョブ型雇用について熟知し、ジョブ型雇用した社員を適切にマネジメントできる管理職が必要です。ジョブ型雇用を導入する前に、管理職を対象とした研修などを実施しておくことが求められます。

6.自社合う雇用方法を選択しよう

専門的なスキルや知識を持つ人材を雇用するという点では、ジョブ型雇用は優れた採用方法です。しかし、企業への愛着心を育てにくい、早期離職につながりやすいなどの懸念点もあり、導入する際には適切な準備が求められます。

雇用方法を選ぶときは、自社の実情に合うかどうかを吟味することが必要です。どのような人材が必要なのか、どのような働き方を提供できるのかを丁寧に検討し、より良い採用方法を選択していきましょう。