自社の業務内容に適性をもつアルバイトを多く採用できれば、長期的な戦力を確保しやすくなります。また、採用担当者が留意しなければならないポイントを共有することで、無用なトラブルを防ぐことにもつながるでしょう。
そのためには、アルバイト採用に適切な採用基準を定めることが不可欠です。明確な採用基準を設け、担当者の共通認識とすることで、精度の高い採用活動が可能になります。
明確な採用基準がない場合、業務に適性をもたない人物を採用するリスクが高くなりがちです。ミスマッチは、早期退職の原因となります。採用コストが無駄になるばかりか、人員不足により業務が停滞する恐れもあります。
アルバイト採用の成功は、採用したアルバイトが、早く業務を覚え、長期間活躍してくれることです。ミスマッチを防ぐ適切な採用基準は、採用の精度向上に欠かせません。
公平な選考には、担当者の主観が入りにくい選考プロセスが望ましいといえます。とくに、複数の担当者が存在する場合、採用基準が明確でなければ、それぞれの価値観や感覚が選考結果に反映されやすくなるでしょう。
採用基準を設定することで、客観的な評価による選考が可能になります。担当者によって異なる判断を防ぎ、選考の公平性を保つためにも、採用基準の設定が必要です。
しかし10年前(2011年度)の実数と比較した場合、若年層(15〜34歳)では、47万人の減少となっています。依然として、アルバイト・パートの採用環境は厳しいといわざるを得ません。
アルバイト・パート採用をするメリットは、柔軟な人員調整が可能になることです。繁閑に応じて調整することで人件費の抑制につながり、生産性の向上が見込めます。また、一定の作業を任せることで社員の負担を軽減することができます。
一方デメリットは、安定的な戦力ではないことです。学生アルバイトであれば、卒業により定期的な入れ替わりが発生します。また、急な休みなどシフト調整の手間が発生することは避けられません。
アルバイト・パートの採用には、こうした特性を理解しておく必要があります。
参照元:総務省統計局「労働力調査 2021年(令和3年)平均」
1.採用の目的を明確にする
2.求める人物像を明確にする
3.必要なスキルや条件を明確にする
4.選考のチェック基準を決める
5.必要最低限の基準を設定する
6.コンピテンシーを適用する
これらのポイントを押さえて採用基準を設定することで、担当者の感覚に頼らない精度の高い採用が可能になるでしょう。
採用基準の設定では、選考で重視するポイントを明確にすることが必要です。例えば、欠員による補充が目的であれば、即戦力となる経験者が望まれます。業務拡大による増員であれば未経験者を採用し、じっくり育てていくことも考えられるでしょう。また、現状のシフトで手薄な部分の補強が目的の場合もあります。
さまざまな背景により、必要とする人材は異なります。目的を明確にすることで、おのずと採用基準も定まるでしょう。
採用基準の設定には、どのような人物が職場の雰囲気や既存のスタッフに馴染みやすいのか、求める人物像を明確にする必要があります。多くの企業ではアルバイト・パートの採用に「人柄・性格」を重視する傾向にあるようです。スキルや経験も大切ですが、「協調性」を重視していることの現れといえるかもしれません。
職場の雰囲気や既存スタッフの様子から、どのような人物が馴染みやすく活躍してくれるのかを考えます。そのうえで、求める人物像を設定するとよいでしょう。
担当してもらう業務内容から、必要なスキルや条件を洗い出すことは、採用基準の設定には不可欠です。例えば、接客業であれば「コミュニケーション力」「対人スキル」といったものが挙げられます。業務内容によっては「体力」や「健康」が重視される場合もあるでしょう。
業務に対応できる能力と適性を有しているかを判断するために、求めるスキルと条件を明確にしなくてはなりません。
書類選考においては、書面の丁寧さや、写真や記入漏れの有無といったポイントで仕事に対する姿勢をチェックするとよいでしょう。また、無理なく通勤できるか、勤務希望時間が合致するかといった点も確認する必要があります。
面接選考においては、第一印象や意欲といった、書類選考では測れない要素を確認していきます。また職場に馴染めるか、協調性も重要なチェックポイントです。
書類選考、面接選考いずれにおいても、チェックポイントと基準を決めておき、担当者間で共有することで、精度の高い採用が可能になります。
必要最低限の基準を設定し、満たない項目が1つでもある応募者は、採用を見送ることが望ましいでしょう。具体的には「身だしなみ」「言葉遣い」「態度」といった基本的な項目が挙げられます。
職場にふさわしくない人物を採用してしまった場合、早期退職にとどまらず、トラブルに発展するケースもあります。こうしたトラブルは、既存のスタッフをはじめ、職場全体に悪影響を及ぼしかねません。こうした事態を防ぐためには、必要最低限の基準を設定し、基準に満たない応募者は採用しないことを、担当者の共通認識とする必要があります。
実際に活躍し成果を出しているアルバイトの、行動特性や思考(コンピテンシー)から採用基準を設定するのも一つの方法です。まず、成果につながっている具体的な行動を分析します。その際、なぜそのような行動をとっているのか、「思考」の部分にまで着目するとよいでしょう。
分析結果から「コンピテンシーモデル」を作成し、採用基準に取り入れます。モデルに近い共通点をもつ人物を採用することで、活躍する人材が採用できる可能性が高まります。
他の項目が高評価であっても、重点項目が基準に達していない場合、採用を見送ることを徹底します。複数の担当者で面接にあたる場合は、しっかりと基準合わせをしておく必要があります。
共通の面接評価表や管理シートを用いて共有することで、採用基準の徹底が図れるでしょう。
・応募者の基本的人権を尊重すること
・応募者の適性・能力に基づいて行うこと
採用基準は、この2つの基本を十分に念頭に置いて、設定する必要があります。
応募者本人の意思や努力で変えられないことは、採用基準にふさわしくありません。また思想や信条などは、業務に対する能力や適性とは無関係です。
こうした要素は採用活動において、極力把握しないことが望ましいとされています。採用基準としていなくても、応募者の誤解を招く恐れがあるためです。あくまでも採用基準は、応募者の適性と能力のみを測るものでなくてはなりません。
本人に責任のない事項を、採用基準としてはいけません。具体的には以下の内容が挙げられます。
・本籍・出生地に関すること
・家族に関すること
・住宅状況に関すること
・生活環境・家庭環境に関すること
これらの項目は、本人の意思で変えられるものではありません。本人に責任のない事項であるため採用基準にはふさわしくないといえます。
思想や信条など、本来個人が自由に選択できる項目は、採用基準として不適切です。具体的には以下の項目が挙げられます。
・宗教に関すること
・支持政党に関すること
・人生観、生活信条に関すること
・尊敬する人物に関すること
・思想に関すること
・労働組合に関する情報、学生運動など社会運動に関すること
・購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること
これらの項目は、人となりを知るための質問として問われることもあるようです。しかし、業務に関する能力と適性には、まったく関係ありません。安易に質問をした場合、トラブルの原因となることを知っておく必要があります。
「公正な採用選考の基本」では、以下2つの採用選考の方法について、就職差別につながる恐れがあると注意喚起しています。
・身元調査の実施
・合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施
こうした情報は採用基準にしなくても、把握したことにより、採否結果に少なからず影響を与えることも考えられます。適性と能力の判断に直接関係のない選考方法は、無用なトラブルや誤解を避けるためにも、実施しないことが望ましいでしょう。
ミスマッチを防ぎ、アルバイト採用の精度を向上させるためには、適切な採用基準の設定が不可欠です。加えて、採用基準を担当者の共通認識とすることで、主観が入らない公平な採用選考が可能になるでしょう。
また、採用基準を明確にすることは、面接での不適切な質問を防ぐことにつながります。無用なトラブルを避けるためにも、適切な採用基準は欠かせません。
アルバイトに活躍してもらうことは、職場に多くのメリットをもたらします。自社のアルバイト採用基準を今一度、見直してみてはいかがでしょうか。