「スクラム採用」とは、株式会社HERPが提唱する概念です。採用活動を経営陣、人事、現場社員が協力しあい行うことで、成果を最大化していく採用方式です。エンジニアがチームを組み、タスクを分散しつつ開発に取り組む「スクラム開発」から名前がつけられました。
なお、スクラム開発という言葉は、ラグビーのスクラムにちなんでいます。そのため、スクラム採用も、ラグビーのスクラムのように一丸となって協力することを指す言葉と考えられるでしょう。
スクラム採用には、次の3つの要素が含まれます。
現場がある程度の決定権を持っていないと、採用活動をスムーズに進めることができません。全社一丸となった採用を実現するためにも、現場が決定権を有し、現場目線で求職者を絞り込む必要があります。
採用活動の成果を可視化することも必要です。なんとなく採用活動に関わっていても、成果が見えなければ主体的に活動を継続できません。成果を社員にフィードバックして、どのような人材を採用できているのか、効率性が改善されているのかについて詳しく伝えます。
また、スクラム採用では全社員が採用担当者となるため、従来の採用担当者は採用活動を統括し、指揮するプロジェクトマネージャーの役割を果たさなくてはいけません。採用活動のプロフェッショナルとして社員に採用のノウハウやコツを伝え、スクラム採用がスムーズに進むようにサポートすることが求められます。
スクラム採用が注目されている理由としては、次の2つが挙げられます。
採用を取り巻く状況は大きく変化しています。就職専門のサイトや自社サイト、SNSなどオンラインツールを使った採用活動も普及してきました。また、面接や説明会をオンラインで実施する企業も少なくありません。
このような中、求職者の情報源は多様化し、企業が求める人材も多様化しています。求職者側と企業側の変化に合わせて、採用活動にも新しい手法を採り入れることが必要といえるでしょう。
企業体質が柔軟化していることも、スクラム採用が注目される理由の一つです。スクラム採用を実施することで、現場が必要とする人材を採用しやすくなります。また、多くの社員が多角的に求職者を評価することで、より偏りのない採用活動を実現できるでしょう。
スクラム採用とは、全社員が一丸となり、各社員が主体的に採用活動に取り組むことを指します。一方、リファラル採用とは、社員が採用候補者を企業に紹介する採用方法のことです。
社員が主体的に採用活動に関わるという点は共通していますが、スクラム採用では社員が採用のすべての過程に関わるのに対し、リファラル採用では母集団を形成する過程だけに関わることが異なります。採用活動に関わる範囲の広さという点においては、リファラル採用はスクラム採用の一部ということができるでしょう。
スクラム採用を導入することで、次の4つのメリットが得られます。
それぞれのメリットについて、詳しくみていきましょう。
スクラム採用は、全社一丸となって採用活動に取り組むことです。つまり、特定の採用方法にこだわる必要はないため、リファラル採用やソーシャルリクルーティングなど、現場の社員が利用しやすいと感じる手法であれば何でも併用することができます。
例えば、ソーシャルリクルーティングは近年活用されるようになってきた手法の一つです。SNSを利用して求人情報を発信したり、SNSを利用している求職者にアプローチしたりすることが含まれます。情報拡散力が高く、また、個別にスカウトするなどの柔軟な対応が可能なため、採用活動の一環として採り入れることができるでしょう。
従来のトップダウン型の採用活動では、経営陣や人事部が現場に必要な人材を正確に把握していないときは、ミスマッチが起こりやすいというデメリットがありました。早期離職となると採用活動をやり直すことにもなるため、採用担当者の負担がさらに増えてしまいます。
一方、スクラム採用は、現場の社員主導で採用活動を進める手法です。現場に必要な人材かどうかを見抜き、採用につなげていくため、仕事内容と新入社員のミスマッチを減らせるでしょう。
スクラム採用では多様な採用方法を利用するため、求職者だけでなく、就活や転職活動をしていない潜在層にアプローチすることも可能です。
例えば、スクラム採用の一環としてリファラル採用を実施した場合、転職を検討していない方にも声をかけ、企業説明会や面接に誘ってみることができるでしょう。このように採用市場に出回っていない人材にアプローチすることで、優秀な人材の確保を実現しやすくなります。
社員が採用活動に携わるときには、まずは自社の業務内容やビジョン、他社との違いについて深く知らなくてはいけません。自社の魅力を再発見する機会にもなり、企業への愛着が強くなり、エンゲージメントの向上が期待できるでしょう。また、自社をより一層好きになることで、より積極的な採用活動を行えるようになります。
メリットの多いスクラム採用ですが、デメリットもあります。特に注意したい点としては、次の3つが挙げられます。
それぞれのポイントについて、わかりやすく解説します。
スクラム採用では、すべての社員が採用活動に携わります。しかし、採用活動が加わった分、通常の業務が減るわけではありません。そのため、社員の仕事量は増えることになります。
スムーズに採用活動を進めるためにも、業務分担をするなど、採用活動以外でもスクラムを組み、部署内や社内で協力することが必要です。また、採用活動に関する情報を共有し、社員や採用担当者の負担が増えないように配慮しましょう。
採用活動に関わる社員が増え、さまざまな手法を活用して大々的に実施することで、採用関連のコストが増大します。また、社員全員が採用活動に関わるため、情報を管理するコストも増えるでしょう。スクラム採用を始める前に予算を決め、コストが増えすぎないように管理することが必要です。
社員は個々に採用活動を行いますが、情報に関しては一元管理する必要があります。採用関連の情報を個別に管理していると、情報漏洩のリスクが高まるだけでなく、採用活動の効率性が低下し、コストが増加する可能性もあるでしょう。
しかし、情報を一元化することは容易ではありません。社内で採用ミーティングをこまめに行う、採用専用のスプレッドシートを作成して共有するなど、企業の実情に合わせた方法で一元管理しましょう。
スクラム採用を成功させるためには、次の4つのポイントを意識することが必要です。
それぞれのポイントについて、詳しくみていきましょう。
スクラム採用では社員は個々あるいは小グループで採用活動を行いますが、各自が異なる方向に目を向けていると期待するような成果を得ることは難しくなります。スクラム採用を始める前に、採用活動によってどんな目標を達成したいのかを明らかにし、全社員が理解することが不可欠です。
目標を明確にすることで、社員が方向性を見失いにくくなり、一貫した採用活動を進めていくことができるでしょう。また、スクラム採用を進行している途中も、何度か目標を再確認し、採用活動が意図していない方向に進んでいないかチェックすることも必要です。
現場に採用権限がないと、経営陣や人事主導の採用活動と同じ結果になってしまいます。スクラム採用ならではの社員主導型の良さを活かすためにも、現場に採用権限を持たせ、必要だと判断した人材を採用できる状態にしておきましょう。
ただし、現場が責任を持って採用権限を活用できるよう、採用の過程を丁寧に振り返り、成果を評価し、フィードバックすることが不可欠です。採用過程の見直しと修正を習慣化することで、より良いスクラム採用を実現できるようになるでしょう。
採用活動とその結果は、全社員に共有します。良かった点、あるいは今後考えられる課題点を客観的に評価することで、より良い採用活動につなげられます。
また、採用結果を全社員で共有することで、社員一人ひとりが当事者として採用活動に携われるようになります。全社一丸となって採用活動を進めるためにも、採用計画の立案から結果共有、フィードバックまで全社員が関わる必要があるといえるでしょう。
スクラム採用において、人事担当者は監督あるいはプロジェクトマネージャーとしての役割を果たすことになります。つまり、社員が採用活動しやすいようにサポートする役割を、人事担当者が引き受けることになります。
今まで培った採用のノウハウやスキル、面接時のチェックポイントなどを他の社員と共有し、より良い採用活動を行えるようにサポートしましょう。
スクラム採用は、全社員の協力が不可欠です。全員が当事者として採用活動に関わり、部署や企業に必要な人材を発掘し、採用していきます。
また、協力の前に自社に対する理解が必要です。何を目標として採用活動に取り組むのか、そして、どのような人材が必要とされているのかを理解するだけでなく、自社の魅力や他社との違い、福利厚生制度や評価制度、業務内容など自社について深く理解しておくことが求められます。
さらに企業側は、スクラム採用が社員に負担を強いるものであることを理解しておくことが必要です。通常の業務を行いながら採用活動も並行して実施するため、業務量が増え、時間的な余裕がなくなる可能性もあるかもしれません。
少しでも社員の負担を軽減するために、必要な情報を適切に共有し、社員同士が協力し、そして採用担当者が適切なサポートを提供してスクラム採用を進めていきましょう。