オンライン採用は対面で行っていた面接をオンラインに切り替えるだけでなく、会社説明会や求人掲載までオンライン化する事例も出ているようです。
オンライン採用は、非接触で面接できるため感染症の心配がないという点だけでなく、多くのメリットを持つ手法です。メリットについては以下の項で詳述します。
それだけでなく、求職者のマインドの変化もオンライン採用の広がりに拍車をかけたと考えられます。若い世代になればなるほど、スマートフォンやSNSの利用が当たり前であり、オンライン採用に抵抗がない人も多いためです。
新型コロナウイルスによる感染拡大を受け、不要不急の人の移動を控えるよう求めるなど、一時は各種の行動制限が政府により要請されました。
企業にとっては、求職者と面接したくても面接できない、求職者が長距離を移動して面接場所まで来ることができないといった問題が起こり、オンラインでの対応が拡大する契機となったのです。
求職者の意識の変化も、オンライン採用の拡大を後押ししました。スマートフォンを使って、SNSでのやり取りを日常的に行っている若い世代になるほどオンライン採用に抵抗なく、むしろ歓迎する人も少なくなかったといわれます。
世の中の採用活動がオンラインに傾斜している中で、オンライン採用に対応していないようでは、時流に乗っていない古い企業であるという印象を与えかねません。
以下で、3つのメリットそれぞれについて詳しく説明します。
オンラインでの会社説明会や面接であれば、企業の所在地や求職者の居場所がどこであっても、通信環境とパソコンがあれば実施可能です。求職者からすれば、東京と大阪の会社で連続して面接を受けるなどということも、オンラインなら簡単にできます。
それにより、企業には実際の会場に人を集める面接では出会えなかった適切な人材を確保できる可能性が生まれるのです。
オンライン採用なら求職者も自宅から参加でき、面接に参加するハードルが低くなることで、面接辞退を減らせる効果も期待できます。
会社説明会や面接に際して、社外に会議室やホールなどを借りている企業も少なくありません。規模の大きな企業の場合、全国の複数の拠点で説明会や面接を実施しているケースもあります。
オンライン採用では、場所を借りる費用や、面接担当者が会場まで移動する交通費、遠方への出張であれば発生していた宿泊費などが不要となります。
会場の下見から設営、当日の移動などにかけていた時間も、その多くが削減可能です。オンライン採用の導入により、採用活動にかかる費用と時間の節約につながることは間違いありません。
会場の確保や設営がないオンライン採用の場合、会場を押さえた日と求職者の都合を合わせる必要がないため、迅速にスケジュール調整ができます。会社案内などの資料もオンラインで配布できるため、紙の資料を人数分揃えるなどの作業も不要です。
募集から面接、選考に至る過程で従来よりも大幅に時間を削減でき、内定を出すまでの時間も短縮することができます。応募してから内定までに空白の時間を作らないことで、採用活動のスピードが上がることはもちろん、応募率の向上や内定辞退率の低減といった効果も期待できます。
今やオンライン採用は企業と求職者にとって不可欠となっており、コロナ禍が落ち着いたとしても、この流れは変わらないと考えられます。人事担当者はオンライン採用のデメリットを知ったうえで、しっかりと対応策を講じて運用するよう心がけましょう。
オンラインでの面接は画面越しになるため、求職者の表情やしぐさがわかりにくく、本音が読み取りにくいという難点があります。同時に、求職者に対して面接官の反応も伝わりにくいことも大きなデメリットです。
この問題は、画面サイズや通信環境によって違いはありますが、オンラインである以上、ある程度は逃れられないものといえます。対応策として、人数を絞り込んだ最終面接だけは、実際に対面で面接を行うなどの方法を検討しましょう。
数人の求職者によって議論をさせるディスカッション形式の面接は、従来型の対面面接ではよくみられました。
しかし、オンラインでは、各求職者の通信環境が異なるためにタイムラグが発生する可能性があります。オンラインに慣れた参加者ばかりではないことにより、議論がうまく進まない懸念もあるため、ディスカッションの難度は高くなります。
ディスカッションの機会を持てない場合は、求職者のコミュニケーション能力や調整能力などをみる機会が少なくなり、人間性や特徴の把握が浅くなりがちな点も課題です。
採用の全過程をオンラインで完結させてしまうと、求職者は面接官や人事担当者以外の誰とも顔を合わせない可能性があります。社内を案内して回るなど、会社の実際の雰囲気を伝える機会も、オンラインでは作りにくいでしょう。
求職者が会社の実情に不安を覚えたまま面接に臨んだり、会社に対する理解が不足したまま選考が進んだりすると、ミスマッチによる内定辞退や早期離職につながることも考えられます。人事担当者は求職者の不安を払拭し、相互理解を深めるために、フォロー体制を整えておく必要があります。
オンライン採用の成否は、通信環境に左右される可能性があります。画像や音声がたびたび途切れるようでは、求職者も落ち着いて面接に臨むことができず、面接する側もスムーズに質問していくことが難しくなります。通信環境の良し悪しで、採用に影響が出ることは避けなければなりません。
通信が途切れることを最初から想定して、その場合は電話やSNSに切り替えるなどの対応を事前に考え、求職者と共有しておく必要があります。
メリットとデメリットを念頭に、どこからどこまでをオンライン化するのか、どのようなツールのどのような機能を活用するのかなどを決めていきましょう。
まず検討しなくてはならないのが、どの部分をオンラインで対応するかです。ひと口に採用活動と言っても、会社説明会や面接のほか、インターンシップ、内定者研修などさまざまなフェーズに分かれます。
その全部をオンライン化するのか、一部だけなのか、内定後のフォローもオンラインで行うのかなど、細かくオンラインで対応する部分を決めていく必要があります。
採用プロセスのどの部分にオンラインを組み込むのかを決めたら、使用するツールの選択に移ります。選考方法によって使いやすいツールや、必要とする機能も異なります。
一次面接だけをオンライン化するなら、一般的なウェブ会議ツールなど簡易なものでも対応できます。会社説明会をオンライン化する場合は、オンラインでのイベント開催に特化したツールを導入することが大切です。
なお、求職者とのやり取りには、個人情報の流出などがないよう、セキュリティがきちんと確保されているツールを使いましょう。個人利用しているSNSなどの使用を避けることが賢明です。
ツールの選択が終わったら、自社の採用活動に最適化したオンライン化を進めましょう。オンラインでは会社見学ができないなど、与えられる情報量に制約があります。そのようなことから、ミスマッチにつながる可能性があるのです。
社員の座談会などの動画を使って情報量を補うなど、求職者に自社を理解してもらうための工夫が求められます。
オンライン採用では、面接官は面接そのものだけでなく、ツールの使い方や通信が途切れた際の対応などもマスターしておかなくてはなりません。そのための面接官教育を、事前に講じておく必要があります。
オンライン採用の中心は面接ですが、それ以外に会社説明会、インターンシップ、カジュアル面談などをオンラインで行っている事例もあるようです。会社説明会のオンライン化は参加が手軽になることから、応募者の増加に効果があるとされます。
インターンシップをオンラインで行うのは簡単ではありませんが、感染症対策の観点から実施を検討する企業もあるようです。
自社の求める人材に企業側から声をかけ、本格的な面接の前に顔合わせとして行うカジュアル面談は、オンライン化しやすいものの一つです。オンラインであれば参加のハードルが下がり、優秀な人材を獲得するチャンスが増えると期待されます。
以下に、各項目について詳述しています。
オンライン採用を行うには、ツールを導入する必要があります。オンライン採用に使えるツールは多種多様なため、求職者にとっての使いやすさを念頭に選びましょう。もちろん、画面共有や録画、多重ログインなど、自社の採用活動で必要な機能を満たしていることは大前提です。
求職者によっては、通信環境などの条件でオンライン採用が難しいこともあります。求職者の要望に合わせて、場合によってはオンライン化せずに選考を進めるなど、柔軟な対応を取れる体制を検討しておきましょう。
オンラインでの面接には、通信回線の準備やツールのインストールなど、求職者側で準備に時間がかかることも考えられます。そのため、日時の案内などは早めに連絡しておき、求職者が余裕を持って準備できるようにしましょう。
ツールのインストールなどで、戸惑う求職者もいるかもしれません。接続やインストールの方法を記したマニュアルを準備して、事前に配布しておくとお互いに安心できるでしょう。
オンラインでの採用活動の最大の特徴は、実際に対面していないということです。求職者は画面越しでの会話に慣れていないことも多く、緊張していることがままあります。
面接官は求職者にリラックスしてもらい、真の姿を見せてもらうよう心がける必要があるため、本題に入る前のアイスブレイクで緊張感をほぐすことが重要です。
長めのアイスブレイクを取ったり、カジュアルな服装で臨んだりするのも、一案です。大きめのリアクションを取るなど、オンラインでのやり取りでも意思疎通がしっかりできるようにしましょう。
通信回線を介して実施されるオンライン採用では、通信面のトラブルはどうしても発生する可能性があります。通信が途絶えたからといって、途中で面接を終わりにするわけにはいきません。
代替のパソコンを用意したり、緊急時の連絡に備えて電話番号を聞いておいたりといった準備は怠らないようにしましょう。
トラブルが長引くなどした場合は、面接を別の日にやり直すのも対策の一つです。求職者側にトラブルの原因があって、面接をやり直すことになった場合でも、選考には影響しないことを伝えて安心してもらう心配りが必要です。
オンライン採用には、実際に会って面接していない分、応募者が不安になりやすいという弱点があります。
内定が出されたとしても、不安な気持ちが続いている可能性もあり、面接官と会って打ち解けていないこともあって内定辞退へのハードルが低くなりやすいのです。
内定から入社まで、こまめにコミュニケーションを取るなど、しっかりとしたフォロー体制を組んで、内定辞退を防ぐようにしましょう。
オンライン面接に利用できるツールは、多種多様な製品が市場に出回っています。その中から最適なものを選び出すには、自社がオンライン面接をどのように実施したいのか、それにはどういう機能が必要なのかを洗い出すことからはじめましょう。
オンライン面接ツールには多くの製品があり、漠然と選んでしまうと、使い勝手が悪いなど失敗につながりかねません。オンライン面接ツールを選ぶ際に注意すべきポイントは、以下の3つです。
自社が行いたいオンライン面接のあり方を確認することが、オンライン面接ツール選びの第一歩です。
専用アプリをダウンロードしなくても使える簡易なツールで十分なのか、録画や画面共有をはじめとした各種機能がどこまで必要なのかといった自社のニーズを取りまとめ、そのニーズからツールを絞り込んでいきます。
ツールによっては音声や画像の品質が低いものもあり、よく見えなかったり、会話が途切れ途切れになったりする可能性があります。事前に使用感をチェックし、自社の採用活動に十分なクオリティを備えたツールを選びましょう。
オンライン面接ツールには料金が無料のものもあれば、月額固定の有料制、利用人数により料金が変化する有料制など、料金体系もさまざまです。ハイスペックなツールほど料金は高くなるため、自社が必要とする機能や人数などの条件と、支払う料金のバランスを取って選ぶことが大切です。
オンライン面接は、以下の順序で進めます。
ツールを使うと、録画機能のオンオフ、オンライン面接に入る際のパスワード設定、退出時のアンケート実施など、さまざまな設定が可能です。必要な設定を事前に準備しておきましょう。
オンライン面接用に割り当てられたURLや、設定したパスワードなどを求職者にメールなどで連絡し、決めておいた日時にお互いが入室すれば、そこから面接が開始します。
録画機能を使う場合は、一言断りを入れておくのがマナーです。また、保存したデータは厳重に管理しなくてはなりません。選考を終えたら、データは速やかに消去しましょう。
オンライン採用の概要からメリット・デメリット、成功させるためのポイントやツールの選び方まで幅広く解説してきました。本記事を参考に、オンライン採用を必要な人材確保に役立ててください。