面接評価シートとは、評価項目や評価基準を一覧にしたもので、応募者が自社の求める人材であるかどうかを面接官が評価するために用いるシートのことです。面接官は、面接評価シートに記載されている項目や採用基準を見ながら面接を進め、合否を決定します。
面接評価シートを作成することで、評価のために必要な質問を漏れなく聞けたり、一貫した基準で判断しやすくなったりするのがメリットです。
面接という限られた時間で、自社にマッチする人材を見極めるためには、面接評価シートを作成し活用しましょう。
ただし、企業によって求める人材像は異なるため、どの企業にも使える面接評価シートというものは存在しません。企業ごとにカスタマイズした面接評価シートを利用することが必要です。
面接評価シートを活用するメリットは、以下のとおりです。
前述のとおり「面接評価シート」を活用することで、質問項目や評価基準が定型化され、質問の聞き漏れや、採用判断に一貫性がでるといったメリットがあります。質問が定型化されることで、面接時の記録を蓄積でき、応募者の比較や採用判断の分析にも活用できるでしょう。また、どの面接官でもスムーズに面接を進められる点もメリットです。
ここでは、面接評価シートを活用する4つのメリットについて解説します。
面接評価シートを活用することで、一貫性のある判断が可能です。面接評価シートがない場合、面接官が応募者の評価を主観で判断することになります。
その場合、どの候補者を採用すればいいのか判断が難しくなるでしょう。それぞれの面接官の主観をもとに曖昧な基準で合否を判断することになります。質問内容や評価基準が面接評価シートに記載してあれば、主観ではなく、会社として応募者の合否を判断できます。
客観的に採用の合否を判断するためにも、面接評価シートが有効というわけです。
面接評価シートを活用すれば、面接での聞き漏れを防止できます。経験が少ない面接担当者などが面接を実施する場合、聞かなければならない質問をするのを忘れてしまうケースがあるからです。また、複数の面接官が異なる会場で面接する場合、面接官によって質問内容が異なる場合もあるでしょう。
面接評価シートで質問内容が定型化されていれば、その内容に沿って質問すればいいので、必要な質問を忘れる心配がありません。面接評価シートの活用により、誰が担当しても質問の聞き漏れを防止し、スムーズに進めることができるでしょう。
応募者の比較ができることも、面接評価シートを活用するメリットです。複数の面接官で面接を実施する場合、面接官によって評価や見ているポイントが異なるケースがあります。
面接評価シートに評価基準や注目するポイントが明確になっていれば、見るポイントや評価のバラツキがなくせるはずです。
同じ条件で面接された応募者たちは、応募者同士での比較がしやすくなるため、選考時に判断しやすくなるでしょう。また、面接評価シートの記録を蓄積することで、応募者の傾向や採用判断の分析ができます。
面接評価シートの活用により、応募者のデータを見える化でき、今後の採用活動に活用できるというわけです。
面接評価シートに基づいて面接を進めれば、評価のために必要な質問を漏れなく聞き出せます。そのため、面接官としての経験が浅い担当者であっても、スムーズに面接を行えるのがメリットです。
経験が浅い面接官の場合、何を聞けば良いかわからず、必要な質問を時間内に聞き出せないで終わってしまう可能性もあります。本来なら自社の求める人材であったにもかかわらず、面接官の力量不足で不採用にしてしまうリスクもあるのです。
応募者を正しく評価するためにも、面接評価シートを活用しましょう。
上記のとおり、面接を効果的かつ円滑に行ううえで、面接評価シートは非常に役立ちます。
しかし、面接評価シートの活用はメリットだけではありません。以下のようなデメリットがあるため、注意が必要です。
質問項目が定型化されることで、面接が型にはまった内容になり、面接慣れしている応募者の評価が高くなってしまうというデメリットも考えられるのです。ここでは、面接評価シートを活用するメリットとデメリットについて解説します。
一方で、面接評価シートを活用することで、面接慣れしている応募者の評価が高くなるというデメリットがあります。
面接評価シートには、質問の聞き漏れを防止するため必要な質問をまとめていますが、その内容は一般的で、型にはまった内容になる傾向にあります。また、決められた質問を聞くことに集中した結果、性格や適性といった人間性を見抜けなかったというケースもあるようです。
面接慣れしている応募者であれば、これまでにも質問された内容に答えられるため、スムーズに話すことができます。結果として、面接慣れしている応募者が優位になってしまうというわけです。
このようなケースを回避するためには、自由評価項目を設ける必要があります。面接官が自由にメモを残すことで、決められた質問ばかりで質問項目をチェックするだけにならないようにすることにもつながります。
面接では、目に見える成果や資格だけでなく、潜在的な能力やスキルも見極める必要があります。特に新卒採用の場合は、ポテンシャルを見極めることが重要です。
面接評価シートで細かく評価項目や点数を設定すると、定量的な評価だけになってしまい、応募者のポテンシャルやパーソナリティを評価できなくなってしまう可能性があります。表面的な評価にならないよう、数値評価だけでなくメモ欄も用意するなどして、ポテンシャルを評価できるシートを作成することが大切です。
面接評価シートを作る前に、「採用ペルソナ」の設定が必要です。採用ペルソナを設定することで、採用を判断する項目や基準を決められます。また、合格ラインの設定も大切です。評価基準があっても、合格ラインがなければ合否の判断は曖昧になります。
面接をスムーズに進めるためにも、質問例を用意するといいでしょう。ここでは、面接評価シートの作り方について解説します。
面接評価シートを作るには、採用ペルソナを明確にすることからはじめましょう。自社が求めている人材を採用するには、人物像を明確にすることが大切です。人物像を明確にすることで、採用を判断する項目や基準ができ、質問項目が決まります。
性別や年齢、経験、スキルだけでなく、人柄やライフスタイル、といった部分まで設定した人物像を作り上げ、社内でイメージを共有しましょう。
採用ペルソナが決まれば、評価項目と評価基準を決めましょう。評価項目は経験やスキルといった実務的な項目と、パーソナルな項目に分かれます。実務的な項目では、業務に必要な資格や経験の有無を定めます。
パーソナルな項目では、行動力やコミュニケーション能力、協調性、共感性といった、自社で一緒に働くために必要な能力を設定しましょう。パーソナルな項目の評価として、コンピテンシー評価やSPIを参考にするケースがあります。
しかし、これらはあくまで一般的な項目であるため、採用ペルソナと一致していない場合があります。項目はまず自分たちで書き出し、そのあとでコンピテンシー評価やSPIを参考にするのがおすすめです。
評価方法を決めるには、判断基準を設定する必要があります。面接官によって評価にブレがでにくいのは段階別評価です。5段階評価にする場合であれば、中央値となる「3」の基準を定めておきましょう。
評価項目と評価基準が定まったら、合格ラインを決めます。評価基準があっても合格ラインがない場合、合否の判断が曖昧になります。これではせっかく評価基準を設定した意味がなくなります。
評価基準がどうなっていたら合格とするのかを決めましょう。合計点が〇〇点以上であれば合格とするケースや、評価「2」が〇〇個以上あれば不合格とするケースがあります。例えば、採用ペルソナを設定したのであれば、評価「2」以下が3個以上は不合格といった線引きがいいかもしれません。
評価項目や合格ラインが決まったら、質問例をリストアップしましょう。質問項目をリストアップすることで、「面接官によって質問していない項目があった」という抜け漏れが防げます。
質問項目リストは、経験が浅い面接官や長い期間採用面接をしていない人にとって、スムーズに面接を進めるツールになります。
面接でよくある評価項目としては、以下のようなものが挙げられます。
全てを盛り込もうとすると、評価することで精一杯になってしまいがちです。評価項目は、後述のとおり重要なものに絞り、最低限にしましょう。
特に評価項目に入れるべき内容は、以下のとおりです。
求める人材像にマッチした応募者を採用し、長く活躍してもらうためにも、上記の項目をシートに盛り込み、面接を通じて評価しましょう。
ここでは、それぞれの項目について解説します。
求める人材を採用するためには、業務内容に適したスキルや経験を持っているかが重要な判断材料となります。特に、即戦力となる人材を求める中途採用の場合、個性や人柄以上にスキルが重視されることが多いです。
評価項目にスキルを入れ、職歴や資格、過去の実績、失敗体験など、さまざまな角度からスキルを判断できる質問を盛り込みましょう。
自社にマッチした人材を採用するためには、個性や人柄を判断することも重要です。特に、スキルや経験で判断しにくい新卒採用の場合、ポテンシャルやパーソナリティを重視する必要があります。中途採用の場合でも、人材の定着を図るために、企業風土や自社の雰囲気に合った人材を見極めることが大切です。
協調性や向上心など、評価項目に個性や人柄を入れて評価できるようにしましょう。
職種ごとに仕事の進め方はさまざまであり、求めるパーソナリティが異なる場合もあります。募集職種ごとに、評価の比重を変えることも大切です。
内定辞退や早期離職を防ぐためには、自社への志望度も重要な評価項目となります。志望度が高い応募者は、入社後も長く活躍してくれることが期待できるでしょう。逆に、いくら経験や人柄が求める人物像とマッチしていたとしても、入社意欲が薄ければ内定辞退や転職してしまうリスクがあります。
志望度を評価項目に入れ、自社や業界についてどの程度理解しているか、自社のどのような点に魅力を感じているのかなどを質問しましょう。
志望度が薄いと感じたら、懇親会やカジュアル面談など、志望度を高めるための施策を講じることも可能です。
面接評価シートのテンプレートは以下のとおりです。評価シートを作成する際は、ぜひ参考にしてください。
面接評価シート 面接日: 応募者名:
※経験・スキルは、要件を満たしている場合が3、経験はあるが指定の年数は満たしていない場合が2、経験がない場合は1 面接官からのコメント |
面接評価シートに入れるべき内容は、自社が求める人材像によって異なります。また、募集職種や時代とともに求めるスキルやパーソナリティなどは変わるため、作成した面接評価シートが人材要件を適切に反映しているかをチェックすることが大切です。
テンプレートをそのまま使用したり一度作ったシートを何年も使い続けたりするのではなく、自社に合ったオリジナルのシートを作成し、適宜アップデートして活用しましょう。
面接評価シートを作成する際のポイントは、以下のとおりです。
面接評価シートを作成する場合、評価項目は最低限にしましょう。評価項目が多い場合、評価項目を埋めるための質問ばかりになり、面接の本来の役割を果たせなくなる恐れがあります。
項目に優先順位をつけ、評価基準を言語化したり、基準となる点数を決めておくこともポイントです。優先順位や判断基準が明確になることで、面接官による目線の違いや捉え方のバラツキを抑えられます。また、項目によっては、点数だけで評価せず、定性的な評価を取り入れましょう。
採用ペルソナに合わせて面接評価シートを分けることも大切です。ここでは、面接評価シートを作成するときのポイントについて解説します。
評価項目は必要最低限にするのがポイントです。評価項目が多い場合、評価項目を埋めるための質問ばかりになってしまうケースがあります。運用することが目的となってしまっては、面接の本来の役割がなくなってしまいます。
面接の役割は、応募者と対話をすることでコミュニケーション能力やパーソナリティを見極めることであるはずです。面接評価シートはあくまで面接の進行を補助するもので、面接の役割を果たすためにも評価項目の数は最低限にしましょう。
評価項目が多くなる場合、2段階面接を実施するのもおすすめです。1次面接ではスキルや経験、コミュニケーションの確認にとどめ、2次面接でパーソナルな項目を確認するといった方法が有効です。
ピックアップした評価項目の中で外せない項目に、優先順位を付けることも大切です。優先順位が高い項目がわかれば、面接官が応募者を見る視点や話の掘り下げ方が変わります。面接官による目線の違いも回避されるはずです。
面接自体の質にも影響するため、評価項目に優先順位を決め、面接官の目線が合うようにしましょう。
評価基準を細かく言語化することもポイントです。パーソナルな項目では、面接官によって捉え方が異なる場合があります。同じ応募者に対してでも、異なる判断をするケースも十分に考えられるでしょう。
どのような状態であれば、中央値となる「3」になるのかといった基準を以下のように言語化しておくことで、面接官による捉え方のバラツキを抑えられます。
実行力
このように具体的に言語化することで、判断基準を揃えられるでしょう。
評価項目や評価基準が客観的で適切であるか、社内で検討することも大切です。面接を行った面接官からフィードバックをもらい、より適切な評価や基準を設定できるようブラッシュアップしましょう。
点数だけで評価しないこともポイントです。人材評価において、すべてを数字で評価できるわけでは ありません。価値観をはじめとしたパーソナルな部分は定性的な評価のほうが適切といえます。また、身だしなみや清潔感といった、点数に差をつけることに意味がないような項目では、〇✕で判断したほうが効率的です。
見極めたいものを明確にしたうえで、定量的な評価が適した項目と定性的な評価が適した項目を判断しましょう。
面接官によって評価基準が変わってしまわないよう、基準となる点数を決めておくことが大切です。どのレベルだと中間点になるのかという認識を、面接官の間で具体的に統一させます。
たとえば5段階評価の場合、どのレベルなら3がつくのかを決めておけば、面接官によって数字の意味合いが変わってしまうリスクを防げます。
「基本的な企業研究をしていれば3」「質問に対して違和感なく答えられていれば3」など、企業によって基準はさまざまです。面接官の主観で評価が変わることがないよう、事前に基準についてすり合わせを行いましょう。
新卒採用と中途採用で、面接評価シートを使い分けるのもポイントです。新卒と中途では、求める人物像が異なります。
新卒ではパーソナリティに評価基準の重きをおく傾向がありますが、中途採用では社会人としての経験やスキル、実績が評価のポイントになるでしょう。
評価の基準が違えば、面接評価シートの内容も変わります。そのため、新卒と中途では面接評価シートを使い分ける必要があるというわけです。
面接評価シートを運用するポイントとして、管理しやすくすることが挙げられます。自社で管理しやすい方法を定めることで、スムーズに運用できます。
内容を定期的に見直すことも大切です。評価項目や評価基準を見直すことで、会社の成長や社会情勢の変化に合わせた人材の採用につながります。
また、面接評価シートはあくまで面接で応募者を客観的に評価するツールであることを忘れてはいけません。ここでは、面接評価シートを運用するうえでのポイントについて解説します。
面接評価シートを運用するためには、管理しやすくすることがポイントです。管理方法が定まっていない場合や複雑な場合、シートがどこにあるのかわからず、探す手間がかかります。
紙で管理するのか、電子データで管理するのかといった管理方法を定めることで、スムーズに運用できるでしょう。
紙で管理する場合はファイリングのルールを、電子データで管理する場合は、データの保存場所やフォルダ名といった管理ルールを決めるなど、運用しやすいルールを設けることがポイントです。
面接評価シートの内容は、定期的に見直す必要があります。自社が求める人材の条件は不変ではありません。
会社の成長や社会情勢の変化によって、求める人材の条件も変わるはずです。定期的にシートの項目や評価基準を見直すことで、必要な人材の採用につながるでしょう。
また、面接担当者が使用することで、改善が必要な部分も見つかります。面接担当者とも定期的に話し合い、使用しやすいシートを作り上げていきましょう。
面接評価シートは見極めのツールとして使用しましょう。シートと応募者を照らし合わせ、自社が求めている人材の条件に当てはまるかを客観的に見極めることが、面接評価シートの役割です。
面接では応募者と対話をすることで、コミュニケーション能力やパーソナリティを見ることも必要です。応募者の不安を和らげたり、自社の魅力を話したりすることも必要になります。
その役割を、一人で完璧にこなすことは簡単ではありません。複数人数で対応し、面接評価シートを使いながら客観的に応募者を見極める役と、対話を中心にする役に分かれるといった対応がおすすめです。
面接評価シートを活用するメリットには、質問項目や評価基準が定型化され、質問の聞き漏れや、採用判断に一貫性がでることが挙げられます。
一方、質問項目が定型化されることで、面接が型にはまった内容になり、面接慣れしている応募者の評価が高くなってしまうというデメリットもあることを理解しておきましょう。
面接評価シートを作る前に、採用ペルソナの設定が必要です。採用ペルソナの設定により、採用を判断する項目や基準を決めることができます。また合格ラインも設定することで、合否の判断基準が明確になります。面接をスムーズに進めるためにも、質問例を用意しておくといいでしょう。
面接評価シートの評価項目は最低限とし、優先順位をつけることがポイントです。評価基準を言語化することも忘れてはいけません。項目によっては点数だけで評価せず、定性的な評価を取り入れましょう。
面接評価シートを運用するポイントは、自社で管理しやすい方法を定めることです。評価項目や評価基準を定期的に見直すことで、会社の成長や社会情勢の変化に合わせた人材の採用につながります。
そして、面接評価シートはあくまで面接で応募者を客観的に評価するツールであることを忘れてはいけません。面接評価シートを適切に使用し、自社の基準に適した人材を採用しましょう。