「ジョブ型雇用」とは、人材を採用する際に職務や必要なスキルなどの条件を明確に決めて契約を結ぶ雇用システムのことです。職務内容以外にも勤務時間や勤務場所など詳細に定め、契約の範囲のみで働きます。異動や転勤はなく、昇進や降格も基本的にありません。
ジョブ型雇用は目新しい雇用形態ではなく、欧米をはじめ世界ではスタンダードなシステムです。一方、日本で主流を占めているメンバーシップ型雇用は日本独特のシステムといえるでしょう。
ここでは、ジョブ型雇用の意味やメンバーシップ型雇用との違いについてご紹介します。
ジョブ型雇用は成果主義とは異なります。成果主義とは仕事の成果や本人の能力などに応じて評価し、待遇を決めることです。
成果主義は1990年代、従来の年功序列型の賃金体系を見直すために導入されました。成果主義により成果に応じた適正な評価を行い、人件費のコストを抑えようとしたのです。しかし、その試みの多くは失敗に終わります。
失敗の理由は、日本の雇用システムの多くがメンバーシップ型を採用していたからです。仕事内容や仕事の範囲、勤務地などが明確に決められていない中で成果を上げることを求められたら、現場は混乱します。そのため、成果主義は長くは続かず定着しませんでした。
ジョブ型雇用は欧米をはじめ世界では古くからあるスタンダードなシステムですが、日本では古くから多くの企業がメンバーシップ型雇用を採用しています。メンバーシップ型雇用は採用する際、職務や勤務地などの条件を限定せずに雇用するシステムです。
メンバーシップ型雇用の代表例として、新卒一括採用があげられます。ジョブ型雇用が「仕事」に対する雇用であるのに対し、メンバーシップ型雇用はその名称どおり会社のメンバーになるシステムです。
また、ジョブ型雇用は業務に対して人を配置しますが、メンバーシップ型雇用は人を雇ってから仕事を配置します。まず総合職として人材を採用し、会社が社員の適性や能力を判断して適切な場所に配置しながら育成していくシステムです。
以下の表に、メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用の違いをまとめました。
メンバーシップ型雇用 |
ジョブ型雇用 |
|
雇用のシステム |
人に対して仕事を配置する |
業務に対して人を配置する |
業務内容・役割 |
業務内容は総合的であり、組織が適宜役割を定める |
専門的な仕事を割り当て、役割が明確に定められている |
人事権 |
異動や転勤命令、ジョブローテーションなどが可能 |
異動や転勤命令などは原則不可 |
給与・報酬 |
年齢や役割などに応じた職能給 |
業務内容や役割に応じた職務給 |
流動性 |
解雇は厳しく制限されている |
比較的解雇しやすい |
組合 |
企業別労働組合 |
産業別労働組合 |
メンバーシップ型雇用のメリットは、以下のとおりです。
<企業側>
<求職者側>
一方、メンバーシップ型雇用のデメリットは、以下のとおりです。
<企業側>
<求職者側>
ジョブ型正社員とは、一般的な正社員に比べて、勤務地・職務・労働時間のいずれかの条件が限定された社員のことです。限定正社員とも呼ばれます。
ジョブ型正社員は、限定されている条件によって以下の3つに分けられます。
勤務地限定正社員とは、その名のとおり勤務地域が限定された正社員のことです。企業によってさまざまですが、異動の可能性がない場合や、引っ越しの必要がない近隣エリアへの異動のみである場合など、転居せずに働きたい人材を雇用する場合に活用されます。
職務限定正社員は、担当する職務内容が限定されている正社員のことです。エンジニアやデータサイエンティスト、証券アナリスト、医療・福祉関係のように、高度な専門性や資格が必要な職務において活用されます。専門性の高い人材を育成したり、生産性を高めたりしたい場合にも役立ちます。
勤務時間限定正社員とは、所定労働時間がフルタイム正社員よりも短い「短時間正社員」や労働日数が少ない「勤務日数限定正社員」、残業が免除される「残業免除等正社員」などのように、勤務時間が限定されている正社員のことです。育児や介護などと仕事を両立したい人材や、定年後も働き続けたい高齢者などを雇用する際に活用されます。
ジョブ型正社員制度は、専門スキルを活かしながら働きたい方や専門スキルを磨き続けたい方、家族の都合で転勤が難しい方や、子育て・介護をしながら働きたい方などに適したシステムです。メンバーシップ型雇用の課題を解決できるため、導入が進んでいます。
近年、日本でジョブ型雇用が注目されたきっかけには、2020年における経団連会長の発言があります。雇用をめぐる発言において「従来の日本型雇用システムでは、新しいビジネスモデルへの転換に対応できる人材は育ちにくい」と指摘し、ジョブ型雇用などを組み合わせる必要性に言及しました。
発言を前後する時期には、大手企業がジョブ型雇用の導入を表明したという報道も行われていたことから、ジョブ型雇用は多くの注目を集めるようになったのです。また、国際競争力の低下や働き方の変化などにより、ジョブ型雇用に関心を寄せるようになった企業も少なくありません。
ジョブ型雇用が注目される背景について、ご紹介します。
ビジネスのグローバル化が拡大する中で、市場で生き残るためには国際競争力を上げなければなりません。近年の日本は国際競争力の低下が懸念されており、その原因の一つともいえるのが従来のメンバーシップ型雇用です。
国際競争力を上げるには専門性を高めることが必要ですが、メンバーシップ型雇用では個人も企業も専門性を高めるのには限界があります。国際競争に勝ち抜くため、ジョブ型雇用で専門性の高い人材を雇用し、会社全体の専門性を高めていく必要があるのです。
終身雇用制度が限界を迎えていることも、ジョブ型雇用が注目されている理由です。相次ぐ雇用期間の延長により賃金の高い高年齢従業員の数が増え、企業はその対応に追われています。
60歳までの定年延長や65歳までの雇用延長、そして「70歳までの就業機会の確保」が努力義務化され、そのたびに企業は賃金のバランスを調整するなどの措置を講じてきました。
終身雇用を前提に事業活動を考えることには限界がきており、雇用が比較的安定している大企業でも希望退職者を募るケースが相次いでいます。
年齢が高くなるごとに昇給し、長く勤めるほど退職金が多くもらえるシステムは企業の負担となり、それに代わるジョブ型雇用が注目を集めているのです。
働き方改革や新型コロナウイルスの拡大により、テレワークが普及していることも、ジョブ型雇用を検討するきっかけとなっています。
テレワークの普及は、仕事を成果で判断しなければならない状況を生み出しつつあります。これまでの仕事では毎日定刻に出社してデスクワークに励んだり、上司や同僚とうまくコミュニケーションして長くオフィスにいたりすることで評価されるという曖昧な部分もありました。
これに対し、リモートワークで評価の基準となるのは仕事の成果であり、明確です。テレワークが主流となる企業では、成果で評価するジョブ型雇用を採用した方が仕事を進めやすいということにもなるでしょう。
近年、AIやIoTなどの高い専門性が必要な領域が注目されています。専門的な知識やスキルを持った人材を確保するためには、あらかじめ職務内容や人材要件などを明確にしたうえで、ターゲットに求人情報が届くよう工夫しなければなりません。
スペシャリストよりジェネラリストを育てるメンバーシップ型雇用では、ニーズが高まっている事業領域に対応できるような、専門性の高い人材を獲得しにくいのが難点です。IT分野では慢性的に人材が不足しており、人材不足問題を解決する手段としてジョブ型雇用が注目されています。
経団連(日本経済団体連合会)は、2020年1月にジョブ型雇用の導入を推奨する旨を提言し、注目を浴びました。2022年には、ジョブ型雇用について「導入・活用の検討が必要」と表明しています。なお、2021年には「総合的に勘案しながら検討することが有益だ」と結論づけており、経団連がジョブ型雇用の導入・活用を検討する必要があると提言するようになった事実は、大きなポイントです。
ジョブ型雇用について経団連は、「主体的なキャリア形成を望む働き手にとって魅力的な制度となりうる」と評価しています。
参照元:日本経済団体連合会「春季労使交渉・協議の焦点〈4〉」
経団連会長の発言と前後して、日立製作所、富士通、KDDIなどの大企業が相次いでジョブ型雇用の導入に着手するという報道が流れました。
ジョブ型雇用に関心を持つ企業は多く、その理由には「職務と報酬が見合っていない社員がいる」「中長期的に人件費管理の必要性がある」などが多くあげられています。
今後、働き方が多様化し、人材の確保が必要になっていく中、従来のメンバーシップ型雇用に行き詰まりを感じる企業も多くなっていくでしょう。
ジョブ型雇用は企業と従業員の双方にメリットがあります。企業にとっては専門性の高い人材を採用でき、即戦力を雇用できるのが利点です。評価基準も成果として明確にしやすいでしょう。
従業員にとっても、自分の専門領域に集中して仕事ができるのがメリットです。ジョブ型雇用における、企業と従業員それぞれのメリットをご紹介します。
ジョブ型雇用ではスキルを条件に採用活動を行うことで、専門性の高い人材を採用できます。即戦力となる人材を雇用できるのがメリットです。また、職務の能力に応じて報酬を支払うため、他社よりも有利に採用活動を進めることもできます。
職務範囲や責任が明確になり、不要な業務を削減して業務の効率化をはかることができるのもメリットです。社員の専門性が高まることと合わせて業務品質が上がり、生産性の向上につながりやすいでしょう。
ジョブ型雇用は仕事に着目した雇用であるため、人事評価の基準を成果として明確にできるのもメリットです。
ジョブ型雇用は、従業員にとっても大きなメリットがあります。専門の職務に集中でき、職務以外の業務負担を軽くすることができるでしょう。
職務を明確にして雇用契約を結ぶため、基本的に異動や配置換えなどが行われることもありません。安心して専門分野に集中できます。
また、年齢や学歴に関係なくスキルに応じて給与が決まるため、若いうちに高収入を得ることも可能です。
ジョブ型雇用にはデメリットの側面もあります。デメリットは企業と従業員それぞれにあり、今後ジョブ型雇用に移行を考えている企業にとって課題といえるでしょう。どのような課題があるのか把握しておけば、適切な対策を講じることができます。
ここでは、ジョブ型雇用のデメリットをみていきましょう。
ジョブ型雇用では契約に職務内容や勤務地など詳細を盛り込むため、柔軟な人材配置をしにくいのがデメリットです。雑務や繁閑期だけ発生する業務など、担当者がいない業務が生じるケースもあるでしょう。
ジョブ型雇用の社員は与えられた職務を遂行することが使命であり、チームで相互に助け合うという意識や従業員エンゲージメントを形成しにくいという側面もあります。
また、メンバーシップ型雇用は終身雇用により長く働くことが前提ですが、ジョブ型雇用は定年まで働くという観念は基本的になく、よりよい条件・待遇の会社があれば転職を選ぶ可能性もあるでしょう。そのため、長く働いてもらうための工夫が必要です。
さらに、ジョブ型雇用への完全移行は、企業風土に合わない可能性がある点に注意が必要です。日本に長く根付いていたメンバーシップ型雇用のシステムは、企業の風土醸成に大きく影響しています。
たとえば、ジョブ型雇用に完全移行すると、これまで一括で採用していた新卒を、欠員補充のために適宜採用することになります。このような変化には、企業がスムーズに対応できない可能性が高いです。このように、ジョブ型雇用に完全移行したくても、企業風土に合わず、うまく制度を運用できないリスクが大いに考えられます。
ITに代表される専門分野の進化は著しく、ジョブ型雇用で採用された従業員はスキルを高めるため、常に自己研鑽が求められます。
また、事業計画の変更などで専門スキルを活かした職務が不要になった場合、ジョブ型雇用では仕事を失う可能性もあります。メンバーシップ型雇用では配置転換など柔軟に対応できますが、契約で職務が決まっているジョブ型雇用では、そのような選択肢は期待できないでしょう。
ジョブ型雇用はこれまでの雇用制度とは異なる部分が多く、導入する際は採用制度や人事評価制度、昇進・異動制度などの根本的な改定が必要です。
新卒一括採用も見直しを迫られるでしょう。業務内容と範囲に対するジョブディスクリプションの定義も必要です。
ここでは、ジョブ型雇用を導入するために必要なことをみていきましょう。
ジョブ型雇用を導入する場合、新卒一括採用の見直しを検討しなければなりません。人数を減らすか、新卒一括採用自体をなくし通年でジョブ型の人材を採用する方式に変えることになります。
人数を減らして新卒採用を継続する場合、ジョブ型雇用に移行する部署はどこか、ジョブ型人材の入社はいつにするか、どのようなスキルを求めるかなどを検討する必要があります。新卒一括採用をなくす場合、総合職の人材をどのように育てるかも考えなければなりません。
ジョブ型雇用では、「ジョブディスクリプション」の定義が必要です。ジョブディスクリプションとは「職務記述書」のことで、職務内容や職務要件で構成されています。
職務内容は目的や責任、職務の範囲などを詳細に定義しなければなりません。職務要件とは、職務の遂行に必要なスキルや経験などです。
人事部門が現場の業務内容を細かく把握できていない場合、職務範囲の捉え方などに齟齬のないように担当社員や現場の管理職と話し合うことが大切です。
ジョブ型雇用の給与体系や人事評価制度はメンバーシップ型雇用と根本的に異なるため、見直しが必要です。ジョブ型雇用では成果に見合った給与体系にしなければならず、職種や役職、責任範囲などに応じて設定します。
報酬額を設定する際は、相場を確認することが必要です。他社より条件が劣る場合、応募が集まらない可能性もあるでしょう。勤続年数が長いほど賃金水準が高くなる年功序列制のもとで行ってきた評価制度も、見直さなければなりません。
ジョブ型雇用では職務の能力に応じて報酬を支払うシステムであり、社員がスキルアップできるよう、成果に対して明確に評価基準を設定することが大切です。
評価基準は全従業員への周知を徹底しなければなりません。従来の雇用形態にある従業員と評価や待遇面で不公平が生じないよう、公平性を考えた見直しが求められます。
ジョブ型雇用では職務内容や勤務地、勤務方法などが契約で定められ、配置転換や異動は基本的にできません。既存の従業員とは異なる扱いになるため、既存の配置転換システムを見直し、周知することが必要です。
全体的に制度を変更する場合は、既存の社員に対しても説明が必要であり、導入の意図や雇用条件について、理解を得ることが大切です。
ジョブ型雇用制度を導入する際は、制度について全社に周知する必要があります。
メンバーシップ型雇用を実践している多くの企業では、職能資格制度によって人事・賃金体系を定めて運用しています。ジョブ型雇用制度の導入は、職能資格制度を廃止し、職務等級制度に変更することです。導入にあたって、不利益を被る社員が発生する可能性は否定できません。典型的なのは、これまでは年次が高いため多くの賃金をもらっていた社員が、減額になってしまうという例です。
ジョブ型雇用の導入には、既存の社員とジョブ型雇用の社員の間で不公平感が生じたり、ジョブ型雇用への移行にともなって損失を受ける社員が発生したりするリスクがあります。そのため、ジョブ型雇用制度を導入する意図や雇用条件など、制度について丁寧に周知しなければなりません。
ジョブ型雇用は従来の日本にはなじみのない制度であり、導入には制度の大きな見直しが必要になるなど課題が多くあります。メンバーシップ型雇用が社風として根づいている企業も多く、ジョブ型雇用に切り替えるのは容易ではありません。
ジョブ型雇用かメンバーシップ型雇用かの二者択一で考えるのではなく、一部を導入するなどの対応も可能です。
職務内容の定義が難しい業務や、メンバーシップ型雇用の方がメリットがあると考えられる業務については従来どおり遂行して、専門性が求められる業務についてジョブ型雇用を導入するといった柔軟な取り組み方を採用するのもよいでしょう。
さらに、新卒一括採用はそのまま行い、キャリアを築いて専門性を身につけてからジョブ型に移行するという方法も推奨されています。自社の事情や課題を検討し、よりよい方法を取り入れていくとよいでしょう。
ジョブ型雇用には、さまざまなメリットがあります。しかし、長年メンバーシップ型雇用が取り入れられていた日本では、なかなか受け入れられない可能性が高いです。
そこで注目されているのが、タスク型雇用です。タスク型雇用とは、職務内容をさらに細分化したタスクによって、人材をスポット的に雇用することを指します。「あるプロジェクトの期間だけ専門人材を雇用する」というように、高いスキルを持った人材を一時的に確保したい場合に活用できる雇用形態です。
ジョブ型雇用よりも柔軟に人材を確保でき、企業も取り入れやすいのが特徴です。
しかし、労働者にとっては正規雇用の社員に比べて雇用が不安定という大きなデメリットがある点は見逃せません。
タスク型雇用には、ほかの雇用形態と組み合わせながら活用されることが期待されています。
ジョブ型雇用が注目される中、いち早く導入・推進を実施している大企業もあります。日立製作所ではジョブ型の人事制度でグローバル化に対応しており、資生堂は同一ジョブファミリー内での採用・育成に取り組んでいます。
また、富士通は報酬体系を職能ベースから職責ベースへと切り替え、ジョブ型雇用への移行を進めています。ソニーも、ジョブ型雇用を導入している企業の一つです。
ここでは、ジョブ型雇用の導入事例について解説します。
大手総合電機メーカーの日立製作所は、世界市場で社会イノベーション事業を行うグローバル企業です。創業から110年以上経つ老舗企業ですが、変化を恐れず積極的にジョブ型雇用の導入を進めています。
同社は約30万人の従業員のうち過半数が外国籍であり、国や地域をまたぐ事業推進ではグローバル共通の人事制度としてジョブ型雇用を導入していました。
10年ほど前からジョブ型雇用の取り組みは始まり、全世界の人財情報の把握や仕事の基準を明確化するなど、グローバルで統一された人事制度を構築してきています。
その流れの中で2020年4月からジョブ型雇用を強化し、一部の職務を対象に、スキルや経験、職務の内容などを考慮した個別の処遇設定を導入しました。事務系職種でも「職種別採用コース」を新設するなど、ジョブ型雇用への移行を積極的に進めています。
同社のジョブ型システムは会社から与えられたキャリアをこなすのではなく、自分自身でキャリアを築くことを目的にしており、それをサポートするための仕組みも整えています。従業員はライフステージに合わせ、ワークスタイルを選ぶこともできるでしょう。
また、同社では新卒一括採用ではなく通年採用を導入しており、例えば留学などで卒業が3月以外になった場合でも、卒業時期に合わせて入社が可能です。
入社後はスキルを磨くため、「日立アカデミー」で数千講座ものプログラムを用意し、キャリアの形成を支援しています。
化粧品メーカーの大手・資生堂は人材育成への投資に積極的であり、ジョブ型の人事制度として「ジョブグレード制度」の導入を進めています。
同社では2015年からとり入れていた役割等級制度を発展させ、20以上のジョブファミリーとそれぞれのジョブディスクリプションを設計し、同じジョブファミリーでも、役割・グレードに応じて期待されるジョブを明確化しています。
2020年1⽉には、国内の⼀部の管理職約1,700⼈を対象に「ジョブグレード制度」の適⽤を開始し、
2021年からは、国内の一般社員にもジョブグレード制度の本格的導入を始めました。
今後、国境を越えた異動やキャリアアップを効率的に実施するため、グローバルグレード制度の導入を2022年に計画しています。
また同社では、ジョブ型人事制度の導入に際して主体的なキャリア開発と専門性を強化するため、2020年から全社員に対しキャリアワークショップを実施しています。
基礎的なビジネススキルやそれぞれのジョブファミリーで必要な専門性を高めるための研修プログラムを幅広く用意しており、自発的なキャリア開発ができるワークショップです。
総合エレクトロニクスメーカーの富士通は2022年4月、新たな人事制度を国内グループの一般社員45,000人向けに導入しました。
従業員一人ひとりの挑戦と成長を後押しする「ジョブ型人材マネジメント」の考え方に基づく制度で、先駆けて2020年4月に制度導入した幹部社員と合わせ、対象をすべての職層に拡大しています。
報酬体系は職責の高さを表す「FUJITSU Level」を導入し、レベルに応じた報酬水準とすることで、より高い職責へのチャレンジを促進しています。
また、評価制度は2021年度より幹部社員に適用しているグローバル共通の評価制度「Connect」を一般社員にも展開しています。社会・顧客へのインパクト、行動、成長を評価するという内容です。
さらに同社では新たな人事制度の導入に合わせ、求められるスキルの変化に合わせた教育の拡充や1on1ミーティングの実施を行い、従業員一人ひとりの成長を支援しています。
日本の総合電機メーカーであるソニーは、2015年に「ジョブグレード制度」の等級制度を、2016年に評価制度を導入しました。ジョブ型雇用に基づく人事制度を本格的に運用している企業です。
ジョブグレード制度では、等級がI等級群(インディビジュアルコントリビューター等級群)とM等級群(マネジメント等級群)の2つに分かれています。I等級群は1〜9、M等級群は6以上と細分化されており、現在の役割によって、等級がシームレスに変動する仕組みです。あくまでも「今何をしているか」によって等級が変わるため、長い間在籍しているからといって等級が上がるわけではありません。
評価は、実績評価と行動評価の2軸です。実績評価では、会社方針や組織目標をブレイクダウンして設定した「年間個人目標」の高さと達成度が見られます。さらに行動も評価されるため、高い目標に前向きに挑戦できる仕組みです。
報酬は、毎月のベース給と年2回の業績給に分かれています。ベース給はジョブグレードによって決まり、実績評価と行動評価による総合評価の結果から改定が行われます。業績給は会社業績と個人の実績評価によって決まるため、成果に応じた報酬制度となっているのがポイントです。
ジョブ型雇用は、特定の専門的な職務を遂行できる人材を採用するシステムです。職務を定めずに採用するメンバーシップ型雇用に対し、ジョブ型雇用は職務内容を定めて雇用します。基本的に異動や転勤はなく、業務内容や役割に応じた報酬を支払うのが特徴です。
ビジネスのグローバル化が進む中で、国際競争力をつけるためジョブ型雇用を採用する企業も増えています。ジョブ型雇用の特徴を理解し、自社の事情をよく考えながら導入の可否を検討しましょう。