ここでは「求める人物像」と「採用基準」との違いや、求める人物像を設定する重要性について解説します。
求める人物像と混同される用語として、採用基準があります。しかし、求める人物像と採用基準では、考え方が異なります。採用基準とは、選考時に採用を判断する際の基準のことです。採用基準を決める際は、能力や経験、考え方といった要素に対し、自社が求める基準を定めます。
その「自社が求める基準」のもとになるのが「求める人物像」です。どのような能力や考え方を持った人材が欲しいのかを具体的にした「求める人物像」をもとに、採用基準を設定することで、自社が必要とする人材を採用することができます。
採用基準はあくまでも「採用するための基準」であり、その基準を決めるもとになるのが「求める人物像」であることを理解しましょう。
求める人物像は、採用活動の方向性を示す基礎となるものです。求める人物像が明確ではない場合、能力だけでなく、自社の価値観や社風に合わない人材が入社する可能性があります。
そのような人材が入社した場合、活躍できなかったり早期退職してしまったりといった問題が発生する可能性が考えられます。これは自社だけでなく、入社した人材にとっても良いことではありません。
同じ会社でも職種や部署によって求める人物像は異なります。営業職と技術職では必要な能力が異なることは明らかです。海外の部署に勤務する人材を求めている場合は、海外での適応力も求める人物像の要素に含まれます。
自社全体だけではなく、職種や部署によって求める人物像を設定し、それをもとに採用活動を進めることで、適した人材を採用することが可能です。
どれも、どのような人物を求めているのかを社内で共有することで生まれるメリットです。ここでは、3つのメリットについて解説します。
求める人物像を設定するメリットとして、採用活動をスムーズに進められることが挙げられます。求める人物像を設定すれば、求人を出す方法や時期、選考方法といった採用活動をするための方向性や基準が定まります。
方向性や基準が定まれば、それに沿って採用活動を進めるだけです。求人票の作成や面接の方法も基準があればスムーズに作成できます。求める人物像の設定は、採用活動の効率化にもつながります。
2つ目のメリットは、入社後のミスマッチを防げることです。求める人物像を設定しない場合、面接官や人事の主観で採用を決定することがあります。その場合、入社後にミスマッチが発生し、退職につながることも考えられるでしょう。
前述したように、求める人物像を設定することで採用基準が決まります。採用基準が決まれば、面接官や人事の主観で採用を判断するリスクを減らすことが可能です。自社が決めた基準で採用を判断することで、入社後のミスマッチ防止につながります。
3つ目のメリットは、経営側と現場の認識のズレをなくせることです。採用活動では、人事だけでなく経営側も参加するのが一般的です。特に最終面接を役員が担当するケースは多くあります。
しかし、現場のことをすべて把握している役員は多くありません。求める人物像を設定していない場合、経営側の判断で採用を決めてしまい、現場の求める人材とはズレた人材が入社する可能性が考えられます。
経営側と人事だけではなく、現場の意見も取り入れた人物像を設定することで、経営側と現場での認識のズレをなくせるのです。
ここでは、求める人物像を決める際のポイントについて解説します。
求める人物像を決める際のポイントとして、経営側だけでなく現場にもヒアリングを行うことが挙げられます。求める人物像を設定するメリットでも述べたように、現場の意見を求めずに採用活動を進めた場合、現場が求める人材が入社せず、ミスマッチが発生する可能性があります。
ミスマッチを回避するためにも、現場が求める能力や経験、考え方をヒアリングしたうえで、求める人物像を設定しましょう。ただし、経営側と現場が求める人物像をすべて取り入れた場合、非現実的な人物像が出来上がるケースがあります。
経営側と現場の意見を洗い出したうえで、優先順位を決め、現実的な人物像を設定しましょう。
2つ目のポイントは社内で成果を上げている人の特徴をまとめることです。現場にヒアリングをすることで、現場が理想とする人物像の特徴がわかります。しかし、その特徴が現実とはズレているケースもあります。
自社が求めているのは、自社の目標や成長に必要な人物です。その人物のわかりやすい例が「社内で成果を上げている人」です。
その人物がどのような能力や経験、考え方を持っているのかを分析し、経営側や現場でヒアリングした内容と照らし合わせることで、より具体的な人物像が出来上がります。
3つ目のポイントは、自社の方向性を整理することです。ここで重要な点は「事業状況に合わせて」整理することです。自社が求める人物像は、状況によっても異なります。欠員を補充したいのであれば、退職した人材と同等の能力を持つ人物像を求めます。
しかし、新しい事業を進めるための人材を求めるのであれば、求める条件を組み直すことが必要です。自社の事業状況や今後の事業展開から方向性を整理し、人材に求める条件を洗い出しましょう。
どの原因も、募集の際のアプローチを工夫する必要があります。ここでは、求める人物像の人材を獲得できない3つの原因について解説します。
求める人物像の人材を獲得できない原因として、応募が少ないことが挙げられます。応募が少ない理由としては、以下の2つが考えられます。
求める人物像は、条件を増やしたり基準を上げたりすればするほど具体的になります。しかし、条件に合致する人材の数は少なくなるため、応募数も少なくなるのです。条件に対し、優先順位をつけ、条件を限定しすぎないようにするのがポイントです。
そもそも条件に該当する絶対数自体が少ない職種もあります。例えば「データサイエンティスト」の場合、この職種自体が比較的新しい職種です。この分野を専攻科目として学べる教育機関も少ないため、そもそも母集団形成が困難です。そのため、必然的に応募数も少なくなります。
このような絶対数が少ない職種の採用に動く際は、アプローチを工夫する必要があります。
自社が求める人物像と実際に応募してくる人材に、ズレがあるケースもあります。その原因として考えられるのは、以下の2つです。
条件の言語化ができていない場合、応募者は自社の条件を理解することができません。例えば、行動特性として「行動力がある人」までしか言語化していない場合、どのように行動することを求めているかの捉え方は、受け手によって異なります。
「問題発生時には、その日のうちに対応する」「わからないことがあればすぐに質問する」といった具体的なレベルまで言語化できていれば、応募者もどのような人物を求めているのか理解できます。
また、その条件が指す意味を社内で共有できていない場合も問題です。例えば「リーダーシップ」であれば、先頭に立って引っ張るタイプや、チームのバランスを取るタイプなど、さまざまな解釈が存在します。
解釈が間違ったまま採用活動を進めた場合、担当者によって採用条件が異なる事態が発生します。選考の過程でミスマッチが発生する可能性もあるでしょう。
採用活動を効率的に進めることや、応募者の時間を奪わないためにも、条件の言語化と、その意味の共有を怠らないことが大切です。
応募してくるターゲット層に偏りがある場合もあります。これは、求職者の自社に対するイメージが表面的なものだけになっていることが理由に考えられます。
就業経験がない新卒学生の場合、企業の内面的な情報を自分で集めることは簡単ではありません。そのため、複数の分野で事業展開している企業であっても、メイン事業に応募が偏ります。
このような状況から脱却するためには、一括でエントリーを集める方法ではなく、募集方法を工夫したり、応募が少ない分野をアピールしたりといった対策が必要です。
ここでは、求める人物像の人材を獲得する方法について解説します。
求める人物像の人材を獲得するためには、企業の存在を認知してもらう必要があります。自社の知名度が低い場合、合同説明会や就活サイトを利用するだけでは他の企業に埋もれてしまうため、自社の存在をアピールするのは簡単ではありません。
自社の存在をアピールできなければ、求職者が自社の「求める人物像」に触れることすらできないのです。その状況から自社の存在を知ってもらうには、以下のような方法で自社を認知してもらう必要があります。
求職者に対し、どのようにアプローチをするのかを意識しましょう。
2つ目は、必須条件や歓迎条件と人物像を分けて書くことです。どれだけ求める人物像を整理したとしても、求人票の書き方に問題があれば、思うような人材は応募してきません。
採用基準に沿って、能力や経験といった必須条件と採用にあたって有利になる歓迎条件を分けて記載します。そして、自社が求める人物像の行動特性を記載することで、条件の優先順位や、どのような特性を持った人材を求めているのかが伝わります。
求人票のわかりやすさも、人材を獲得する有効な手段です。
3つ目は、人物像はなるべく具体的に設定することです。どれだけしっかり自社が求める条件を洗い出しても、具体的でなければ求める人物像をイメージできません。能力や経験であれば、資格名や使用できるソフト名、業務内容などを記載します。
人物像については「数字やデータを見ながら分析することが好き」「打ち合わせでは自分の意見を主張したい」といったところまで設定する必要があります。
見る人によって複数の解釈が生まれないように具体的に設定しましょう。
求める人物像を設定すれば、採用活動をスムーズに進められるだけでなく、入社後のミスマッチ防止や、経営側と現場の認識のズレをなくせるといったメリットがあります。
求める人物像を設定する際は、多角的な視点から人物像を洗い出すことが大切です。「現場へのヒアリング」や「社内で成果を上げている人の特徴をまとめる」「自社の方向性を整理する」といったポイントを押さえましょう。
求める人物像の人材を獲得できない原因には「そもそも応募が少ないこと」や「求める人物像と実際に応募してくる人材にズレがある」「応募してくるターゲット層に偏りがある」といったことが挙げられます。
そのための対策として、企業の存在を認知してもらえるようなアプローチが必要です。求める人物像を理解してもらうためには、求人票の書き方を工夫することもポイントです。
求める人物像を具体的に設定し、ミスマッチのない採用活動を行いましょう。