アルバイト採用とは、1週間の所定労働時間が正社員と比べて短い非正規の労働者を雇用することです。基本的に雇用期間の定めがある有期雇用契約で、勤務時間や勤務条件は柔軟に対応できます。
アルバイトの採用で気を付けるポイントを解説します。
社会保険を適用している企業では、非正規雇用のアルバイトでも、条件を満たしている場合は健康保険・厚生年金保険など社会保険への加入義務があります。
まずフルタイムの勤務、もしくは週の所定労働時間・月所定の労働日数がフルタイムの4分の3以上の場合は、社会保険に加入しなければなりません。
また、従業員数101人以上の企業で働き、以下のすべてを満たす場合は社会保険加入の対象になります。
なお、2024年10月からは、従業員数の要件が101人以上から51人以上に拡大される予定です。
参照元:厚生労働省「従業員数500人以下の事業主のみなさま」
非正規のアルバイトでも、一定の要件を満たす場合は有給休暇の付与が必要です。有給の発生要件は、以下の2点です。
例えば6ヵ月間の出勤日数が100日のアルバイトの場合、80日以上出勤したときは有給の付与が必要です。付与される有給の日数は、1ヵ月の所定労働日数と1日あたりの所定労働時間により変わります。
参照元:厚生労働省「年次有給休暇とはどのような制度ですか。パートタイム労働者でも有給があると聞きましたが、本当ですか。」
アルバイトの採用は、必要なときに必要な時間だけ働いてもらえることが大きなメリットです。また、予算に合わせて人件費を調整できます。
ここでは、アルバイトを採用するメリットを詳しく解説します。
アルバイトは自社が必要とするとき、期間や日数、時間を定めて雇用できるのがメリットです。繁忙期で正社員だけでは業務が進まないとき、突発的に人手が必要になったときなど、アルバイトを雇用することで切り抜けることができます。
単純作業や簡易な業務、定型業務など誰でもできる業務をアルバイトに任せれば、正社員の負担を軽くし、長時間労働を防げるでしょう。正社員は、より重要な業務に集中することもできます。
アルバイトは人件費の削減にもつながります。繁忙期も正社員が対応すると、超過勤務で割増の賃金が発生するなど人件費がかさみます。アルバイトであれば繁忙期・閑散期に合わせて時給単位で人員を調整できるため、人件費の削減が可能です。
正社員や契約社員など比較的人件費の高い雇用形態には重要な業務を任せ、補助的な業務をアルバイトに任せることで、全体的な人件費を抑えることができます。
アルバイトの採用はデメリットな側面もあります。自社の都合がいいときに働いてもらえるというメリットはありますが、すべて自社の都合のいいように運ぶとは限りません。また、アルバイトは学生や副業で行う人も多く、定着しにくいのがデメリットです。
ここでは、アルバイトを採用するデメリットを紹介します。
アルバイトは学生や本業を持つ人、主婦などが多く、働く条件が合わない場合もあります。テスト期間中や本業の都合、子どもの体調不良で突発的に休むなど、調整が難しい場面も少なくありません。
アルバイトをする側では休みがとりやすい、働く時期を調整しやすいことをメリットと考えているため、気軽に休みをとる傾向にあります。休みが発生して業務に支障が出れば、人員を増やす、代わりの人員をあてるなど対応が必要です。すぐに補充の人員が見つからない場合、正社員がカバーする必要も出てきます。
アルバイトは正社員よりも離職率が高い傾向にあります。学生アルバイトであれば、長くても就職が決まるまでがタイムリミットです。副業のアルバイトは、本業の業務が変わればアルバイトを続けられない可能性もあります。
主婦の場合、夫の転勤や子どもの成長などによって働ける時間・場所が変わることもあります。定着して長く働くアルバイトもいますが、その割合は少なめです。人件費は抑えられても、離職率が高いことで採用コストがかかります。
アルバイトの募集方法は複数あり、業種やターゲットによって適した方法は異なります。ここでは、アルバイトの募集方法について、特徴やメリット・デメリットを紹介します。
求人サイトとは、求人募集を専門に掲載するサイトです。アルバイト募集を専門にするサイトも複数あります。無料で掲載できるハローワークと異なり、掲載は有料です。
数多くのサイトがあり、それぞれターゲット層が異なります。専門職に特化したサイトもあり、自社に合うターゲットを絞った求人も可能です。紙媒体に比べて掲載できる情報量が多く、写真などを使って職場の雰囲気をわかりやすく伝えることもできます。求職者に働くイメージを伝えやすく、応募を促すための工夫を凝らすことも可能です。
特に、大量にアルバイトを採用する場合や、専門職など集客が難しい職種で採用したい場合に向いています。また、求人サイトはインターネットを日常的に利用している若年層の利用が多く、若手のアルバイトを探している場合にもおすすめです。
ただし、「求人が集まらない」「採用に至らなかった」という場合でもコストがかかるのがデメリットです。また、求人の件数が多いため、他社と似たような求人情報は埋もれがちになります。そのため、差別化するための工夫が必要です。
求人検索エンジンとは、ネット上の求人情報を集めて検索結果に表示するサービスです。GoogleやYahooなどの検索エンジンが求人に特化したものと考えることができます。職種や勤務地などキーワードを入力すれば、該当する求人を検索する仕組みです。
求人検索エンジンに登録するだけで、自社の求人情報を検索上に表示できます。また、掲載料金・初期費用はかからず、求人票をクリックさることで料金が発生する「クリック課金型」のため効率的に求職者へのアプローチが可能です。
求人検索エンジンは利用者が多いため、求職者を集めやすいというメリットもあります。できるだけコストを抑え、多くの求職者に求人情報をみてもらいたい場合におすすめです。
TwitterやFacebookなど、SNSを利用してアルバイトを募集することもできます。コストがかからないのが大きなメリットで、若年層をターゲットにする場合におすすめです。
SNSにはシェア機能が付いており、魅力的な求人情報を発信すれば拡散され、より多くの人に広まる可能性があります。応募者のSNSを確認すれば、どのような人物かのリサーチができ、採用後のミスマッチを減らせるのもメリットです。
SMSは企業ブランディングにも効果があり、企業の認知度を高めたいときにも向いています。
ただし、SNSは常に情報を発信し続けることで初めて多くの人に見てもらうことができるため、こまめな更新が必要です。また、拡散してもらうためには多くのフォロワーを獲得しなければなりません。フォロワーが少なければ、情報が拡散される機会も少なめです。
いずれにせよ、SNSで成果を上げるには時間がかかり、中長期的な運用が必要です。また、不適切な表現があると批判を集め、炎上するリスクがあるという点に注意しなければなりません。
駅やコンビニなどに置かれ、自由に持ち帰れる無料の求人情報誌です。インターネットが普及する前は、アルバイトの広告として広く利用されていました。求人サイトが主流となった近年は、利用者が減っています。
無料で掲載できる場合もあり、有料でも求人サイトと比較してコストは低めです。コストを抑えたアルバイトの求人をしたい場合に向いています。また、地域に密着した採用を行いたい、近隣からアルバイトを集めたいという場合におすすめです。
ただし、発行後の修正ができず、募集期間が限られているというデメリットがあります。
求人広告を印刷したチラシを新聞に折り込む方法です。玄関ポストに直接入れる方法もあります。一定の地域をターゲットにした募集ができるのがメリットです。チラシは手に取ってみてもらいやすく、フリーペーパーよりも求人情報を多く掲載できます。
近年は若年層の新聞離れが進んでおり、若い世代への訴求には向いていません。シニア層のアルバイト・パートを募集したい、地域密着で採用したい場合に適しています。
ハローワークとは、厚生労働省が全国500ヵ所を超える地域に設置する公共職業安定所のことです。アルバイトの求人広告も取り扱っており、無料で掲載できます。
求人を出すには、自社の居住地を管轄するハローワークに出向き、事業所登録をして申込書を提出します。
コストをかけずに求人を出せるのがメリットで、条件に合えば助成金の受給も可能です。ただし、登録や掲載などで手間がかかるというデメリットもあります。
人材紹介会社は、自社の採用要件に合う人材を見つけ、マッチングする会社です。成果報酬型の場合が多く、採用が成立して初めて費用が発生します。
人材紹介会社の数は多く、幅広い分野の求人を扱う会社のほか、業種や職種・属性などに特化した求人を扱う会社もあります。
自社が提示した条件をもとに候補者を探すため、自社に採用ノウハウがなくても求める人材像に合う人材を採用しやすいのがメリットです。成功報酬型であれば初期費用がかからず、採用できないのにコストだけかかったという不都合がありません。
また、採用に関して専門性の高い担当者から採用に関するノウハウをアドバイスしてもらえるため、自社の担当に採用の知見が高まるのもメリットです。
ただし、手数料は高めの傾向があります。採用のコストはできるだけ抑えたいという会社には向いていません。
アルバイトの応募を増やすには、求人募集の原稿に工夫が必要です。ここでは、アルバイトの応募を増やすためのコツを紹介します。
求人の原稿を書く前に、アルバイトに求める人物像を明確にする必要があります。人物像が明確でないまま求人の原稿を作成すると、必要とする人材が集まらず、採用のミスマッチが起こりやすくなります。ターゲットが明確でなければ、適した募集方法を決めることもできません。
年代だけでなく、住んでいる地域や属性、趣味など詳細に絞り込み、言語化することが大切です。
競合他社の求人情報を調査し、比較して劣っている点がないか確認してください。特に給与・時給が重要なポイントです。求職者は同じ職種・仕事内容であれば、より給与・時給の高い求人を選びます。同じエリアの平均時給を把握し、下回っていないかをチェックすることが必要です。
勤務する曜日や時間はできるだけ固定せず、柔軟に対応できるようにすることも大切なポイントです。特に学生や主婦などをターゲットにする場合、曜日・時間の選択の幅を広げることが応募を増やすコツといえます。
求人サイトなどインターネットを利用した募集方法を選ぶ場合、ターゲットに合わせたキーワードを盛り込むことが応募者を増やすコツです。キーワードとは、求職者が求人を検索する際に入力する単語やフレーズのことで、入力したキーワードが求人情報内に多いほど検索結果に表示されやすく、募集要項を見てもらえる機会が増加します。
設定したターゲット層がどのようなことに着目して求人を探すかを考え、検索で入力すると思われるキーワードをできるだけ多く募集要項に加えてください。
職種・仕事内容・待遇など、できるだけ具体的に記載することが大切です。抽象的な記載では働くイメージがわかず、応募しようと思わないでしょう。より具体的に記載することで求職者は自分が働く姿を詳細にイメージできます。
例えば、以下のような募集要項では、他の求人広告と代わり映えがなく、具体的なイメージがわきません。
一例として、以下のような記載にすればより具体的になり、訴求力が高まります。
・募集職種:女性客が多いおしゃれなレストランのホールスタッフ ・仕事内容:オーガニック野菜を使ったメニューが女性に人気のレストランで、接客や会計、清掃をする仕事です。外国人の来店も多く、働きながら語学力を磨きたい方にもおすすめ!オーダーはタッチパネルシステムを採用しているので、レストランのアルバイトが初めての方でも安心です。 ・給与:時給1,200円以上 ※オーガニックのまかないランチ付き。 ※夜のシフトでは夕食も付きます。
・勤務曜日・勤務時間:週1日、1日3時間から勤務OK 昼・夜の忙しい時間帯だけの勤務も歓迎します。 |
自社ならではの補足情報を追加することで求職者の興味を惹き、アピール効果は格段に高まります。ホールで働いているスタッフの写真などを掲載すれば、よりイメージが湧きやすくなり、応募を増やすのに効果的です。
人材不足の時代には、アルバイト採用の面接にも工夫が必要です。面接後に採用の連絡をしたにもかかわらず、出社してこないという例は少なくありません。
応募者は初めから入社の意思がなく応募することはなく、採用の連絡をしても出社してこないのは、「面接で応募者の期待に応えられなかった」「面接官の印象が悪かった」「働くことに不安を感じた」などが考えられます。
厳しい質問ばかりしていては、応募を辞退される可能性もあります。ただ応募者を選ぶ場所というだけでなく、応募者に自社の魅力をアピールするという視点を持つことが大切です。
ここでは、アルバイトの採用面接を行う際のコツを解説します。
面接に入る前には、アイスブレイクを入れることを忘れないようにしてください。アイスブレイクとは、堅苦しい場所の緊張を和らげるため、雑談をするなどしてリラックスした雰囲気を作ることです。面接に慣れない学生などは緊張している場合も多く、本音を引き出せないこともあります。
まずは応募してくれたことへの感謝を伝えてください。さらに、履歴書に書かれた趣味を見て話題にしたり、経歴を誉めたりすることで、場の雰囲気を和ませます。面接官に親しみを感じた応募者は緊張をほぐし、質問にも適切に回答できるでしょう。アイスブレイクを入れることで会社への印象も良くなり、辞退する確率を下げることができます。
採用・不採用にかかわらず、応募者は誰でも自社の大切な顧客になる可能性があります。そのような意味でも、会社の顔となる面接官の第一印象や対応は重要です。
面接では勤務できる時間やスキルだけでなく、希望の条件や働き方をよく確認することが採用後のミスマッチを減らすためにも大切です。
また、応募者の人柄を見極めるには、できるだけ「はい」「いいえ」で答えられる質問は避けましょう。「~について話してください」といった質問で、相手の話を引き出します。応募者の言葉遣いや表現、態度などを観察してください。
面接の際は、事前に記入してもらったアンケートや履歴書を見て、記載事項の確認も行います。
応募者には、自社の仕事内容や職場の雰囲気、時給など待遇面について具体的に伝えることも大切です。わかりやすい言葉で、働くイメージがわきやすいように説明すれば、応募者の不安を払拭できます。
面接の場所を工夫することも、採用後の辞退を減らすために重要なポイントです。オフィスではなく応募者に利便性の良い場所を選んだり、オンライン面接を導入したりすることで、面接日の都合がつかない応募者でも面接に臨むことが可能です。
オンライン面接は応募者に交通費や移動時間などの負担をかけず、 会社側も会場の確保や準備にかける時間を削減します。その分も面接の数を増やせるなど、より採用活動が円滑に進むのがメリットです。
アルバイトを採用できても、定着しなければ意味がありません。採用したアルバイトがすぐに辞めないようにするには、いくつかのコツがあります。
アルバイトの定着率を高めるコツを解説します。
アルバイトが定着するには、働きやすいシフトを提供することが大切です。シフトの作成が遅いと予定が立たず、迷惑をかけてしまいます。基本のシフトはあらかじめ決めておき、アルバイトの希望に柔軟に対応できるようにしておくとよいでしょう。
シフト管理を自動で行う仕組みがあれば、シフト管理者の負担を減らしアルバイトにも迷惑をかけません。その際は、シフト変更に対するルールを決めておくことも大切です。
アルバイトが定着するかどうかは、初日の対応が大きなポイントです。アルバイトの初日は誰でも緊張するもので、そのときの印象はその後の仕事に影響を与えます。歓迎している雰囲気を出すことで安心でき、気持ち良くスタートを切ることができます。そのためには、まず入社前に新しいアルバイトが入社することを周知し、出勤初日は全員に紹介することが欠かせません。
教育係を決めておくことも大切です。年齢が近いなど相性の良さそうな社員を選び、指導にあたることで、新人アルバイトは仕事に対する不安を取り除けます。わからないことや疑問点をすぐに聞いて解消できるようにしておけば、早く職場に馴染むことができます。
正社員の教育制度は整っていても、アルバイトの教育制度は特に設けていないという会社も少なくありません。いつ何をするのかがわからないとアルバイトは不安や不信を感じ、早期離職につながりやすくなります。制度として整備しないまでも、入社から数日間の教育フローは設けておくことが必要です。
また、マニュアルを作成しておくことも大切です。接客業であれば、接客の基礎や基本業務、身だしなみ、安全衛生などを解説したマニュアルが役立ちます。図解やイラストを入れるなど、知識のない人が見てもすぐに仕事内容が理解できるよう作ることがポイントです。
アルバイトは自社が必要なときに必要な時間だけ働いてもらえるというメリットがあり、人件費の削減にもつながります。アルバイトに簡易な仕事を頼むことで、正社員はより重要な仕事に注力できるのもメリットです。
アルバイトの募集にはさまざまな方法があります。あらかじめ設定したターゲット層の利用が多い媒体で募集することが、採用に成功するポイントです。
応募者を増やすには原稿の書き方にコツがあり、入社辞退を避けるためには面接の方法にも工夫が必要です。入社後も初日の対応やシフトの整備など、早期離職を防ぐためのポイントがあります。アルバイト採用のコツを知り、採用活動を成功させましょう。