ハローワークは厚生労働省が管轄する公共の就職支援機関であり、民間の職業紹介サービスなどでは就職が難しい求職者にとっては、就職のための「最後のセーフティネット」ともいえます。国による運営のため、求人内容の高い信頼性が求職者にとって大きなメリットです。また企業側にとっても、信頼性の高さゆえにより広い層への告知のしやすさはメリットになり得ます。
ここでは、企業がハローワークに求人を掲載する際のメリットを3つみてみましょう。
一般に新聞やチラシ、求人情報誌、求人サイトなどへの求人掲載には、掲載料や手数料がかかります。一方でハローワークは、厚生労働省が管轄する「公共の」就職支援機関のため、求人掲載に費用は一切かかりません。
より確実に採用を確保したいときは、通常複数の媒体に求人掲載しますが、媒体が多いほど費用も増えてしまうのが難点です。その点、求人掲載をハローワークだけに絞れば費用をかけずに採用活動を進められます。
ハローワークへ仕事を探しに来るのは、年齢も性別も、持っているスキルや経験も違う幅広い層の人々です。たとえば2023年9月の1ヵ月間における新規求職申込の件数は、約35万8000件にもおよびます。
求人内容に当てはまる求職者を見つけるには、まず求人していることを広く知ってもらうことが大切です。その点でいえば、ハローワークは他の媒体に比べ大きなアドバンテージがあるといえます。
また求人掲載の範囲を、特定のエリアに限定しないこともハローワークのメリットです。なかでもUターンやIターンを狙った求人には、訴求しやすい媒体といえます。
参照元:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和5年9月分)について」
厚生労働省は、就職の促進のためさまざまな助成金制度を設けています。たとえば期間を定めた雇用には「トライアル雇用助成金」を受けられますが、「一般」、「障害者」などいくつかのコースに分かれており、支給金額や期間が異なるため、慎重な検討が必要です。
しかしハローワークなら、もともと厚生労働省が管轄しているため、各種の助成金制度の受給を見込んだ採用活動ができます。またどのような助成金があるかをハローワークの窓口に問い合わせ、受給条件に当てはまる求人内容に調整することも可能です。このような採用活動ができることは、ハローワークにしかない特別なメリットといえます。
ハローワークでの求人掲載には、メリットがいくつもある一方でデメリットもあるため、実際に利用するときはメリットとデメリットの両方を考慮することが大切です。デメリットには、国が管轄していることと、対象となる求職者の幅広さが関係しています。
ここでは、ハローワークへ求人掲載するときに考慮すべきデメリットについて考えてみましょう。
初めてハローワークで求人掲載する場合は、利用の際のデメリットとして「登録に手間がかかる」ことが挙げられます。求職者にとって安心できる求人だということを証明するには、まず求人する企業が自身で事業内容や会社の特徴などを正しく申告しなくてはなりません。
事業所登録で登録する項目は、事業所名や代表者名、事業所の住所などの情報はもちろん、事業所の最寄り駅や福利厚生の内容、資本金など多岐にわたります。これらは原則としてすべて求人票に反映され、公開区分によっては応募者だけでなく閲覧するすべての求職者が参照する情報です。間違った情報や誤解されるような表現は避けなくてはなりません。
自分だけですべての項目を埋められない場合は、窓口の担当者に相談しながら埋めていくこともできます。しかし、記入する内容はよく確認しながら埋めていく必要があるため、一定の手間がかかってしまうのはデメリットです。
毎月、ハローワークに求職者として新規登録される数はたしかに膨大です。しかしながら、求めるような人材が必ずいて、必ず応募が来るわけではありません。求人を閲覧する求職者の層の厚さは、場合によっては採用のミスマッチの原因になる可能性もあります。
労働条件や職場環境について「こんなはずではなかった」といったミスマッチが起これば、早期退職につながり、再び採用活動を始めなくてはなりません。このような事態はハローワークだけに限ったものではないものの、費用がかかるだけでなく、事業の維持や拡大に間に合わない可能性もあります。求人情報の掲載では、間違いがないことはもちろん、誤解させてしまうような表現や記載漏れにも注意する必要があります。
ハローワークに求人を掲載することは、費用の面でも、求人をより多くの求職者にみてもらえる点でもメリットがあります。ただし、公的な就職支援機関のため、求人を掲載するには一定の手続きが必要です。
ここではハローワークへ求人を掲載するまでの流れを解説します。
求人を掲載するときは、求人する事業所の所在地を管轄するハローワークの窓口に出向いて、求人申込手続きをします。
求人申込の手順は、次の2種類のいずれかです。
直接ハローワークに行って手続きするときは、ハローワーク内にある端末で求人を仮登録、またはハローワークにある紙の書類「求人申込書」へ記入したのち窓口で本登録します。
手続きにあまり時間がかけられない場合は、先に事業所のパソコンなどで仮登録しておくと効率的です。どちらにしても窓口で求人内容に漏れや誤りがないかはチェックされるため、便利な方法を選びましょう。
事業所がこれまでハローワークに求人を掲載したことがない場合は、まず事業所の詳細をハローワークに登録しなければなりません。登録するときはまず、ハローワークに用意されている「事業所登録シート」に記入します。記入する項目は次のとおりです。
これらの項目はすべて、原則として求人票に反映されるため、正確かつ誤解の余地のない方法での記入が求められます。なかでも事業内容と事業所の特長は、事業所の魅力を伝えられる大切な項目です。じっくり検討し「ここで働きたい」と思ってもらえるような書き方を目指しましょう。
求人申込書には、大きく分けて次のような内容を記入します。
とくに仕事内容や必要な経験・資格は応募が集まるかどうかに大きく影響します。正確に、また誤解を与えないよう注意して記入しましょう。
求人申込書が受理されると、ハローワークは求職者が閲覧する「求人票」作成の手続きに入ります。発行されたら求人票を受け取り、内容に間違いがないか確認すれば、これで手続きは完了です。また初めてハローワークに求人を掲載する場合は「事業所確認票」も発行されるため、あわせて受け取りましょう。
求人票は、ハローワークにある求人情報端末や掲示板、ハローワークインターネットサービスなどで公開されます。
求人の目的はあくまで求める人材を採用することであって、ハローワークに求人を掲載することではありません。掲載する情報は少しでも求める人材が応募したくなるよう工夫し、掲載後の応募数や応募の傾向などをみながらの調整も必要でしょう。
ここではハローワークへ求人掲載する際、より効率よく応募してもらうためのポイントを解説します。
受理された求人申込書の内容は、求人票として各地のハローワークにある端末や、ハローワークインターネットサービスを通じて全国に公開されます。その際、公開区分は次のいずれかに設定することが可能です。
場合によっては情報の公開を制限したい場合も考えられますが、制限することで応募が来なければ求人する意味がなくなってしまいます。公開区分は状況に応じて、都度検討することが大切です。
ハローワークに求人を掲載する際は、職種名などを用意されている職業分類から選ぶこともポイントです。
ハローワークに掲載されている求人票は非常に多いため、求職者は職業分類を絞って特定の職種の中から探す傾向があります。その際ハローワークの職業分類の階層や名称、職種名の中から選べば、一見似た職種との違いが明確になり、求職者に対して募集職種をわかりやすく伝えられます。
求人において仕事内容はわかりやすく書かれていることも重要です。部外者からは同じように見える職種でも、仕事内容が詳しく書かれていれば、求職者は実際に働く姿をイメージしやすくなり、応募のハードルを下げ、応募者数を増やすことにもつながります。
たとえばアパレル店の販売員は、誰にもなじみのある職種といえますが、すべてのアパレル店販売員が同じ仕事をしているわけではありません。営業時間中の販売・接客業務だけでなく、営業時間後のレジ締め業務や、売上金の夜間金庫への入金、他店舗への商品の移動といった業務もこなさなければならない職場もあります。
とくに未経験者を対象にする求人では、より具体的な説明が必要です。その仕事が自分にできるかどうかがはっきりわかれば、より強い意志で応募できるようになります。
専門性が高く、経験が重視される職種では、どの程度の経験やスキルが求められるのかは重要な情報です。資格についても応募する際、「必須」なのか「持っていると望ましい(=持っていなくても応募は可能、とも受け取れる)」のかも明確にしておく必要があるでしょう。
また必須の資格が複数ある場合は、面倒でもすべて記載することが大切です。書き漏れがあると、資格を持っていない応募者が増え、面接や連絡の手間が膨大になりかねません。
賃金の項目は求職者にとって非常に重要です。それだけに金額が明記されていても「各種手当込み」などと曖昧に表現されていると、手にする正確な金額が把握できないため応募が後回しにされる可能性があります。
手当は分類するとおよそ次の3種類です。
この他、賞与の有無や種類、昇給の回数、実績を記載すると、よりイメージしやすくなります。
ハローワークに申請する求人申込書には、事業所が独自にPRしたいことを「求人PR情報」として記載できます。たとえば次のような内容は、求職者にとって魅力的に感じやすく効果的です。
このような定められた項目の記入だけでは十分に表現しにくい内容は、事業所からのメッセージが記入できる求人PR情報欄を活用しましょう。
求人の掲載後、最終的に採用し就業するまでにはいくつかの段階があります。求職者が応募したあとは、書類選考や面接、場合によっては二次面接や筆記試験、実技試験を設けることもあるでしょう。求職者にとっては、採用予定の人数も重要です。
そのため求人するときは、採用までのステップも明記する必要があります。またあわせて応募書類として職務経歴書の添付が必要なことや、面接の際の服装や持参するもの、選考結果の通知方法なども記載すると効果的です。
ハローワークへ提出する求人申込書は、これから採用する求職者との数少ない重要な接点です。求職者が閲覧したとき、少しでも興味を持ちやすく、応募しようと感じやすい内容である必要があります。同時に、表現や用語に難しさや誤解を与えたりすることのないような配慮も欠かせません。
そこでここでは、求人申込書に記入するときに注意しておきたい4つのポイントを解説します。
求人申込書は求人する企業が自由に記入してよい書類ですが、その最終目的は求職者が正しく理解し、働きたいと感じて応募してもらうことです。そう考えれば、記入する内容は求職者の目線に立って、欲しい、必要な情報である必要があります。
未経験者を対象とするならいっそう、専門用語などわかりにくい言葉は控え、イメージしやすく表現することが大切です。
ハローワークの求人は、有効期限となっても再度申し込めば引き続き掲載できます。しかし内容を見直さず、長期間同じ内容が掲載されていると、求職者に「何かの理由があってずっと採用できないのだろう」などの誤解を与えかねません。
求人掲載の内容は、期限前でも見直しが可能です。求人の条件や仕事内容などが変更されたら、すぐに最新の情報に更新しましょう。
少しでも早く、多く、求める人材を集めたいあまり、伝えたいことが多すぎると求人PR情報欄はどうしても長くなりがちです。ただし、あまりに長いと「最後まで読もう」という求職者は少なくなり、結局意図をうまく伝えられない可能性があります。
読みやすく書くには、ポイントを種類や内容ごとに短くまとめたり、箇条書きにして端的に記載したりといった方法が効果的です。
同じ業界、同じ職種であっても、業務内容は一様ではありません。とくに未経験者を対象にした求人では、詳しく知らないことを前提にわかりやすく誤解のないよう書くことが大切です。
用いる言葉も、業界経験がある人や関係者にしかわからないような用語や言い回しは、求職者に疎外感を与えてしまうため、できる限り使わないよう配慮する必要があります。
求人掲載における情報は、できる限り誰にでもわかりやすいことが重要です。求める求職者像の立場に立って、求職者がどのように感じるかを考慮する必要があります。
ハローワークは公的な就職支援機関のため、他の求人サービスとは異なる点があります。なかでも基本的に無料で、しかも全国に向けて求人掲載できること、各種の助成金を含めた採用計画が相談できることは大きなメリットです。
求人の公開期限が来ても引き続き掲載できますが、掲載する内容は常に最新のものに更新し、わかりやすく詳細に記載する必要があります。そうすることで、求職者自身が仕事をしているイメージを持てるようになり、志望度の向上につなげられます。
もしこれまでハローワークで求人したことのない企業であれば、民間の求人サービスと併用しながら、採用活動を効率的に行う方法として利用を検討しましょう。