人材の採用でもらえる助成金とは?申請の条件とポイントも解説

人材の採用でもらえる助成金とは?申請の条件とポイントも解説

採用ノウハウ

「採用した人材によって助成金が受給できるのは知っていたが、種類や手続きがよくわからない」という人事担当者もいるのではないでしょうか。本記事ではそんな人事関係者に、採用にまつわる助成金の種類と申請方法やポイントについて詳しく解説します。

1.人材採用ではさまざまな助成金制度を利用できる

助成金の発見

採用活動にはコストがかかりますが、助成金を上手に利用すればコストを抑えながら必要な人材を確保できます。

国では企業の人材採用をサポートするためにさまざまな助成金を用意しているものの、手続きが煩雑なため利用していない企業も多いのが実情です。

ここでは、人材採用で利用できる助成金制度の概要や、補助金の違いについてご紹介します。

1-1.助成金と補助金の違い

助成金とよく似た制度に補助金があり、どちらも国や地方公共団体等から支給されるお金です。支給された金額の返済は必要ないという点でも共通しています。

どちらも受給するために申請や審査が必要ですが、助成金の場合は一定の要件を満たせば受給できる場合がほとんどです。これに対し、補助金は件数や金額があらかじめ決められていることが多いため、申請しても受給できない場合があります。

どちらも所定の金額が支給されるのは採用後一定期間が経過してからです。また、採用に関する助成金は、一定期間雇用した実績を作ってから申請する形式になっています。

2.雇用に関する助成金の5つの種類

助成金の説明

雇用に関する助成金は、大きく以下の5種類に分けられます。

  • 雇用維持関係
  • 再就職支援関係
  • 転職・再就職拡大支援関係
  • 雇入れ関係
  • 雇用環境の整備関係等

雇用維持関係の助成金は、新型コロナウイルスの影響により新たに創設された助成金です。雇用環境の整備関係等の助成金は、さまざまな事情の労働者が職場に定着するための環境を整備する事業者に対する助成金で、20種類以上に分けられています。

それぞれの内容をみていきましょう。

参照元:厚生労働省「事業主の方のための雇用関係助成金」

2-1.雇用維持関係の助成金

雇用維持関係の助成金は、以下の2種類です。

  • 雇用調整助成金
  • 産業雇用安定助成金

「雇用調整助成金」とは、新型コロナウイルス感染拡大の影響で創設された助成金です。コロナ禍により事業活動の縮小を余儀なくされた場合に、従業員の雇用維持を図るために休業など雇用調整をした事業主に対し、休業手当などの一部を助成しています。令和4年9月30日までは特例措置として、助成率や上限額が引き上げられています。

「産業雇用安定助成金」も同じく、コロナ禍の影響で創設されました。在籍型出向により労働者の雇用を維持する場合に、出向元と出向先の双方の事業主に対して出向に要した賃金や経費の一部を助成するものです。

2-2.再就職支援関係の助成金(労働移動支援助成金)

「労働移動支援助成金」は事業規模の縮小等により、離職を余儀なくされる労働者を支援する助成金です。「再就職支援コース」と「早期雇入れ支援コース」の2種類があります。

再就職支援コースは、離職しなければならない労働者の再就職支援を民間職業紹介事業者に委託する事業主に支給される助成金です。

早期雇入れ支援コースは、離職後3ヵ月以内に労働者を無期限雇用で雇い入れ、継続して雇用することが確実な場合に助成されます。

2-3.転職・再就職拡大支援関係の助成金(中途採用等支援助成金)

「中途採用等支援助成金」には、「中途採用拡大コース」と「UJIターンコース」の2種類があります。

中途採用拡大コースは中途採用者の雇用管理制度を整備し、中途採用の拡大を図った場合に支給される助成金です。一定期間後に生産性が向上した場合、追加の支給があります。

UJIターンコースは東京圏からの移住者を雇い入れた事業主に対する助成金で、採用活動にかかった経費の一部を助成するものです。

2-4.雇入れ関係の助成金

高年齢者や障害者など、就職困難者を雇い入れた事業主に支給される助成金です。 特定求職者雇用開発助成金や特定求職者雇用助成金など、13種類の助成金があります。 

雇い入れる対象となるのは、主に以下のような労働者です。

  • 高年齢者・障害者・母子家庭の母などの就職困難者
  • 65歳以上の高年齢者
  • 東日本大震災における被災離職者
  • 発達障害者または難治性疾患患者
  • 正規雇用に就くことが困難な者
  • 生活保護受給者等
  • 職業経験の不足などから就職が困難な求職者
  • 建設業の中小事業主が雇用する若年者(35歳未満)または女性の建設技能労働者

雇用形態は通常の雇用や試行的・段階的に雇い入れるものなどがあり、助成金により異なります。

2-5.雇用環境の整備関係等の助成金

雇用環境の整備をしながら、働きやすい環境を作る事業主を支援する助成金です。制度は20種類以上に分かれ、雇用を確保するためのさまざまな施策を支援しています。

例えば、障害者の職場定着を図るために職場支援員を配置する助成金や、人事評価制度と賃金制度を整備し、生産性向上や離職率の低下を支援するコース、適正な労務管理下における良質なテレワークの導入により離職率の低下を図るコースなどがあります。

3.採用対象別に見た助成金

採用担当別の風景

採用関係の助成金だけでも数多くの種類がありますが、それらは新卒や中途採用、中高年、就職困難者など、さまざまな採用対象に分かれています。例えば中途採用でも、早期雇入れや就職氷河期世代の安定雇用など、雇用形態ごとに分類されているのが特徴です。

ここでは、数多い助成金から、特にニーズの多いものを対象者別にご紹介しましょう。

3-1. 新卒、三年以内既卒者の採用

新卒や3年以内既卒者の採用を促進するための助成金として、以下の3つが設けられています。

  • トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)
  • キャリアアップ助成金
  • 特定求職者雇用開発助成金(三年以内既卒者等採用定着コース)

「トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)」 は職業経験の不足などで就職が困難な求職者について、無期雇用契約へ移行することを前提に一定期間トライアルで雇用する事業主に対して支給する助成金です。求職者の早期就職を実現し、雇用機会の創出を図ります。

「キャリアアップ助成金」は有期雇用労働者や短時間労働者、派遣労働者など非正規雇用の労働者の企業内におけるキャリアアップを促進するための取り組みを行う事業主に対して支給される助成金です。

「特定求職者雇用開発助成金(三年以内既卒者等採用定着コース)」は既卒者や中退者の応募機会や採用を推進するため、卒業または中退後3年以内の者を採用後、一定期間定着させた事業主に対し支給される助成金です。

3-2.中途採用

中途採用向けの助成金は、以下の5つです。

  • 中途採用等支援助成金(中途採用拡大コース)
  • 中途採用等支援助成金(UIJターンコース)
  • 特定求職者雇用開発助成金(就職氷河期世代安定雇用実現コース)
  • 労働移動支援助成金(再就職支援コース)
  • 労働移動支援助成金(早期雇入れ支援コース)

前項でも説明したとおり、「中途採用拡大コース」は中途採用者の雇用管理制度を整備し、中途採用率の拡大を図る事業主に対する助成金です。「UIJターンコース」は東京圏からの移住者を雇い入れた事業主に経費の一部を助成するもので、2021年4月1日から支給対象経費が拡充されています。

「就職氷河期世代安定雇用実現コース」の就職氷河期世代とは、バブル崩壊後の1993年から2005年ごろまでに卒業で就職活動に差しかかった年代を指します。就職氷河期に正規雇用の機会を逃したことで十分なキャリア形成ができず、正規雇用に就くことが困難な労働者を正規雇用労働者として雇い入れる事業主に対して支給される助成金です。

「再就職支援コース」と「早期雇入れ支援コース」はともに、事業規模の縮小などで離職せざるを得なかった労働者に対する再就職支援を行った事業者に支給されます。

再就職支援コースは労働者の再就職支援を民間職業紹介事業者に委託して行うことで支給され、早期雇入れ支援コースは離職日の翌日から3ヵ月以内に無期限雇用することが必要です。

3-3.中高年の採用

中高年の採用で支給される助成金は、主に以下となります。

  • 65歳超雇用推進助成金
  • 特定求職者雇用開発助成金(特定求職者困難コース)
  • 特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)
  • 特定求職者雇用開発助成金(中途採用拡大コース)

「65歳超雇用推進助成金」は、働く意欲と能力のある高年齢者が年齢に関わりなく働ける社会を実現するための助成金です。65歳以上への定年引上げや高年齢者の雇用管理制度の整備、有期契約から無期雇用への転換を行う事業主に対して助成されます。

「特定求職者雇用開発助成金」の3つのコースは、いずれも高年齢者の採用に対して支給されます。「特定求職者困難コース」は高年齢者や障害者等の就職困難者を、「生涯現役コース」では雇入れ日の満年齢が65歳以上の離職者をハローワーク等の紹介で雇い入れる事業主に対して助成されるものです。

また、「中途採用拡大コース」は、45歳以上の労働者を初めて採用する事業主に対する助成金です。

3-4.地方にある企業の採用

「地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)」は、雇用機会が特に不足している地域に会社を設立し、その地域に居住する人材を雇い入れた事業主に支給される助成金です。1年ごとに最大3回支給され、それぞれ対象労働者の定着などの条件があります。

助成金の対象となる地域は、以下の3つに区分されています。

  • 同意雇用開発促進地域
  • 過疎等雇用改善地域
  • 特定有人国境離島等地域

「同意雇用開発促進地域」とは、求職者数に対して求人数が不足している地域のことです。過疎等雇用改善地域とは、主に15〜44歳の流出が進んでいる地域を指します。特定有人国境離島等地域は北海道の利尻島・礼文島や東京の小笠原諸島など、国境近くにある全国の離島です。

3-5.就職困難者の採用

シングルマザーや障害者、生活保護者など、就職困難者を採用すると支給される助成金もあります。

主に以下の助成金です。

  • 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
  • 特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース)
  • 特定求職者雇用開発助成金(生活保護受給者等雇用開発コース)
  • 障害者職場定着支援奨励金(障害者雇用安定奨励金)
  • 障害者トライアル雇用奨励金
  • 障害者初回雇用奨励金(ファーストステップ奨励金)

助成金は対象者によって1〜3年間受給でき、金額は労働時間の区分により定められています。安定した職と生活を求める求職者と、労働人口の減少で人材確保が難しい会社の双方を支援する制度です。

4.助成金の対象となる企業の要件

企業風景

助成金の受給要件はコースごとに定められており、すべての助成金で備えなければならない共通の要件があります。

以下の5点は必ずクリアしなければなりません。

  • 雇用保険の適用事業所である
  • 過去5年間に不正受給をしていない
  • 関係法令の違反がない
  • 審査に必要な書類を作成・保管している
  • 受給審査に協力する

それぞれの内容を詳しくみていきましょう。

4-1. 雇用保険を適用している事業所であること

助成金の受給は、雇用保険に加入していることが要件です。助成金は事業所が支払う雇用保険料の一部が財源であり、雇用保険に加入していない事業所は支給の対象になりません。

ただし、労働者を1人でも雇っている事業所は法人か個人事業主かは関係なく、雇用保険への加入が義務付けられています。そのため、基本的にどの事業所も雇用保険への加入という要件を満たすことになります。

4-2.過去5年以内に不正受給していないこと

過去5年以内に助成金の不正受給をしている事業所は、助成金の申請はできません。2019年(平成31年)4月以降に雇用関係の助成金を申請し、不正受給であるとして不支給となってから5年を経過していない場合です。

ただし、不正に受給した金額を返済していない場合、時効が完成している場合を除いて5年を経過していても受給の対象にはなりません。

4-3.労働基準法など関係法令の違反がないこと

労働基準法など労働法関連の法令を守っていない場合も、助成金は支給されません。支給されるのは法を遵守している事業所だけです。例えば、本来支給するべき残業代を支払わない場合、労働基準法に違反します。そのような状況が審査で明るみに出れば、助成金の申請は通らないでしょう。

また、適切に雇用保険・社会保険に加入していない場合や労働保険料を滞納しているときなども助成金の申請はできません。

助成金を受け取るためには、法令に適合した労働環境を整えていることが前提となります。

4-4.受給審査に必要な書類を作成・保管していること

助成金を受け取るためには、審査に必要な書類を作成・保管していなければなりません。審査に必要な書類とは就業規則や出勤簿、賃金台帳などで、これらの書類を適正に作成し、毎日の労務管理を正しく行っていることが求められます。

例えば、労働時間が適切に記録されており、給与計算では時間外労働などの割増賃金を適切に計算して支給していることが大切です。

助成金を申請する際は、これらの必要書類が整っているかどうかをよく確認しておきましょう。

4-5.受給審査に協力すること

助成金の申請後、申請した内容通りに実施されているかについて管轄労働局の実地審査が行われる場合があります。調査が入り帳簿の提示などを求められた場合、協力しなければなりません。

従業員に対し、出勤簿の通りに打刻しているかなどの質問が行われる場合もあります。従業員の回答と記録に矛盾がある場合はさらに念入りに調査されることもあり、書類管理は適切にしておかなければなりません。

5.採用に関する助成金の申請方法

採用助成金の打ち合わせ

採用に関する助成金はさまざまな種類があり、それぞれ必要書類や申請先は異なります。申請する助成金について内容をよく確認し、書類に不備がないよう揃えましょう。

助成金は手続きが複雑なため、利用できる要件であるにもかかわらず申請していない会社も少なくありません。そのような場合は、専門家に申請代行を依頼して受給する方法もあります。

ここでは、採用に関する助成金の必要書類や申請方法、申請代行などについてご紹介します。 

 5-1.申請に必要な書類

申請に必要な書類は各助成金ごとに異なるため、それぞれの募集要項を確認して提出漏れのないようにしなければなりません。

おおむね共通して提出する必要があるのは、以下のような書類です。

  • 就業規則(労働協約)
  • 労働条件通知書(雇用契約書)
  • 賃金台帳の写し
  • 出勤簿またはタイムカード
  • 登記事項証明書
  • 各種申請書

提出するのは、それぞれの写しです。調査が入っても問題がないように、帳簿類は日々の管理を適正に行わなければなりません。

5-2. 申請先と相談窓口

助成金の申請先は、基本的に都道府県の労働局です。ただし、助成金の種類によっては労働局ではない場合があるため必ず事前に確認しておきましょう。また、都道府県によっては労働局以外の窓口でも受付をしている場合があります。

採用に関する助成金の多くは、各都道府県の労働局が申請先です。労働局とは厚生労働省の管轄下にある機関で、労働基準監督署の上部組織となります。労働局は労働者からの相談を受け付ける窓口でもあり、企業と労働者とのトラブル解決のために必要な助言や指導を行っています。労働局の中でも、助成金によって申請窓口が異なるため注意してください。

このほか、採用に関する助成金ではハローワークやポリテクセンターが申請先になる場合もあります。ポリテクセンターとは独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が運営する施設であり、主に高齢者の雇用に関する助成金の申請先となっています。

助成金は申請期間にも注意が必要です。助成金の申請期限は、申請から受給までに2つ設定されており、それぞれ助成金ごとに異なります。

1つ目の申請期限は助成金の審査のために書類を提出する期限であり、2つ目は助成金の受給のために支給申請の書類を提出する期限です。どちらも必ず期限内に提出しなければなりません。

助成金は多様な種類が用意されていますが、社会情勢に応じて内容が頻繁に変更されるのが特徴です。内容が変わったり廃止されたりすることが多い一方、新たに創設される助成金もあります。助成金を利用しようと考えている事業者は、常に最新情報を確認しておくことが必要です。

 5-3.助成金申請の代行を依頼する方法も

採用に関連する助成金は50種類以上にものぼります。受給しやすいもの、受給しにくいものなどさまざまです。支給される金額は事業を助けるものですが、あまり積極的に利用されているとはいえません。その原因の一つが複雑な手続きにあります。

書類を揃える時間がないなどで申請を断念している場合は、専門家である社会保険労務士に申請代行を依頼するという方法もあります。自社が受給要件に当てはまるかなどの相談もできるため、一度問い合わせてみてはいかがでしょうか。

6.自社が利用できる助成金を探して申請を検討しよう

助成金計算

採用に関する助成金は数多くの種類があり、上手に利用すれば採用活動のコストを大幅に削減できます。助成金にはそれぞれに要件があるため、自社が利用できる助成金はないかよく確認することが大切です。

助成金は改定される場合も多く、社会情勢に応じて新たに創設されることもあります。厚生労働省のホームページなどをこまめにチェックしながら、自社に合う助成金を見つけましょう。

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