求人広告には、企業名や仕事内容、給与などについての情報が必要ですが、それだけでは十分とはいえません。例えば「未経験者歓迎!」「一緒に働く仲間を募集中!」などのように、キャッチコピーを付けることが必要です。求人広告にキャッチコピーが必要な理由としては、次の3つが挙げられます。
それぞれの理由について、分かりやすく解説します。
求人広告に仕事内容や給与、勤務時間などの情報は不可欠ですが、どの企業も同じ情報を掲載しているため、それだけでは他の企業の広告と差を付けることはできません。
また、福利厚生の内容なども求職者にアピールするポイントにはなりますが、「誕生月は1週間の連続休暇」や「子ども祝い金100万円」などのインパクトのある内容以外は人目を引く効果は少ないと考えられるでしょう。
福利厚生や給与などでインパクトを与えられなくても、キャッチコピーがあれば求職者に強い印象を与えられることがあります。数ある広告の中から選んでもらうためにも、インパクトが大切です。印象的なキャッチコピーを作り、求職者の目に留まる求人広告に仕上げましょう。
求職者が希望する仕事に応募してもらうためにも、キャッチコピーを使って注意を喚起し、求職者とのミスマッチを回避しましょう。
例えば、「効率良く働きたい方大集合!夜間専従者募集」というキャッチコピーであれば、勤務時間などの詳細情報を読まなくても、夜間勤務者を募集していることがわかります。また、キャッチコピーは、求人広告の他の情報よりも大きめのフォントや太字、異なるカラーなどを選んで目立たせることができます。
キャッチコピーを使って、仕事内容だけでなく企業そのものをアピールをすることができます。例えば、「子どもに自慢できる仕事です!」「将来の地球は私たちの技術が作ります」のようにスケールの大きなキャッチコピーを付ければ、求職者の目に留まりやすくなるだけでなく、企業のアピールにもつながるでしょう。
また、求人広告を見るのは、採用を希望する求職者だけではありません。例えばポスターとして駅構内に掲示する場合であれば、就職や転職を希望している方だけでなく、駅を利用する多くの方が目に留める可能性があります。
今後、就職や転職をする際に、候補として思い出してもらいやすくなる効果が見込めます。企業のイメージアップになるようなキャッチコピーを作り、求人広告に含めてみてはいかがでしょうか。
求職者の目に留まり、ターゲットとのミスマッチを回避し、なおかつ企業アピールにもなるキャッチコピーを作成するには、次の4つのポイントに留意して考えをまとめていくことが必要です。
それぞれのポイントについて、わかりやすく解説します。
求人広告の第一の目的は求職者を確保することです。どのような方に応募して欲しいのか、獲得したい人物像を明確にしましょう。
例えば、新卒をメインで採用したいのか、それとも即戦力となる転職希望者をターゲットにするのかについて決めておくと、求職者の心に響くキャッチコピーを作りやすくなります。
また、独立心旺盛な方か協調性重視の方か、どんな価値観を持っているのかなど、具体的な言葉で募集する人物像を描いていきましょう。
企業側が求職者に知ってほしいこと、伝えたいことをまとめておくこともキャッチコピー作りには欠かせません。世界基準の企業であることや業界内シェアトップであることなど、アピールしたいポイントを盛り込むこともできます。また、すでに実現していることだけでなく、これから目指すことをキャッチコピーに含めることもできるでしょう。
求職者にとってのメリットも、キャッチコピーに含めることができます。「有休消化率100%」「育児休暇平均2年取得を実現」など、採用されるとどのようなメリットがあるかまとめておきましょう。
数字があるとキャッチコピーのインパクトが増します。使える数字情報があるか探してみましょう。例えば「残業は月に10時間以下」「業界内シェア70%」など、具体的かつ求職者にアピールできるインパクトのある数字をリストアップしておきます。
キャッチコピーを作成したら、求人広告に掲載する原稿を作ります。主な手順は、以下のとおりです。
写真は求人広告を見てすぐ目に入る部分で、大きなインパクトを与えます。文字だけでは伝えきれない多くの情報を一度に伝えることも可能です。
会社のイメージを左右することもあるため、掲載する写真は慎重に選ばなければなりません。職場の写真であれば、ターゲットと同じ年代の社員が写っている写真を選ぶとよいでしょう。
原稿作りでは、キャッチコピーの文字数を広告媒体の見出しに収まるよう調整することも大切です。パソコンとスマホではレイアウトが異なるため、とくに若年層にアピールしたい場合はスマホからの見え方を重視するなど、ターゲットに合わせた工夫も大切です。
キャッチコピーは、一度作ったら終わりではありません。PDCAを回して効果検証を行いながら、よりよいものにしていきましょう。
Webサイトであれば求人広告の内容を変更できることも多く、作成したキャッチコピーで応募が集まらない場合は修正して改善を図れます。
簡単に効果検証できる方法に、ABテストがあります。キャッチコピーのみ異なる2つの求人広告をそれぞれ別の求人広告に掲載し、どちらの応募が多いか確認するテストです。
PDCAのサイクルにABテストを加えることで、より応募の集まるキャッチコピーに改善できるでしょう。
キャッチコピーはインパクトが大切です。次の4つのポイントに注目すると、求職者の目と関心を惹き付けるキャッチコピーに仕上がります。
・短文にまとめる
・わかりやすい言葉に変換する
・ありきたりな表現は避ける
・適切なビジュアルに仕上げる
それぞれのポイントについて詳しくみていきましょう。
長文のキャッチコピーも良いですが、インパクトを重視するなら、おすすめは短文にまとめることです。10~15文字程度の言葉に、伝えたいことを詰め込みましょう。
例えば「あなたの理想とする働き方を叶える職場です」というフレーズは、働きやすさやワークライフバランスを重視して仕事を選びたいと考える求職者を惹き付けることができるかもしれません。
しかし、文章がやや冗長なため、インパクトに欠けてしまいます。「理想の働き方がここにはあります」とまとめれば、伝えたい内容はそのままでインパクトを強めることができるでしょう。
あまり漢字の画数が多いと、読みづらくわかりにくい印象を与えるかもしれません。求人広告は難しい漢字や知識を披露することが目的ではないため、小中学生でも簡単に読め、なおかつ理解しやすい言葉に変換して掲載しましょう。
例えば、あえてひらがなを使ったり、カタカナやローマ字でインパクトを与えたりすることも有効です。「新しいSEKAIに飛び出そう」「キミの応募を待っています」などのようにイレギュラーな言葉の使い方で、求職者にアピールできます。
伝えたいことがシンプルで新奇性のないものであるとき、そのまま伝えてしまうとインパクトに欠けます。ありきたりな表現は避け、少し違和感を与えるような文章を作ってみてはいかがでしょうか。
例えば、「金曜日は16時に終業の仕事です」というフレーズでは、ありきたり過ぎてキャッチコピーとは気づかない求職者もいるかもしれません。「待ち合わせは金曜16時!アーユーOK?」くらいのインパクトのあるフレーズを検討してみましょう。
キャッチコピーで目を引くためには、文章の内容だけでなくビジュアルにも注意が必要です。求人広告にイラストや写真を掲載する、キャッチコピーの文字の色、大きさ、フォントなどにもこだわることで、インパクトを強めることができます。
ターゲットとして明確にした人物像に向け、メッセージを投げかけるキャッチコピーもおすすめです。「どんな未来を描きたい?」など、相手に問いかけるようなキャッチコピーは印象に残り、メッセージの先にあるものに興味を抱きます。
メッセージを受け取った求職者は、発信した企業に対しても興味を持ち、より詳しく知りたいと思うでしょう。
求人広告のキャッチコピーを作る際は、以下の点に注意しましょう。
それぞれ、詳しくみてみましょう。
他社との差別化や奇抜さを狙うあまり、自社の企業理念や文化からかけ離れた内容になってしまっては、キャッチコピーを作る意味がありません。
キャッチコピーは自社を一言で表すことに意義があり、自社との親和性が大切です。企業理念や事業内容が伝わり、自社が求める人材を惹きつけるキャッチコピーを作成することが大切です。
よくあるようなキャッチコピーでは、多くの求人広告の中から自社を選んでもらうのは難しいでしょう。他の求人広告と比較して、自社の魅力が十分に表現できているかチェックしてください。
ただし、魅力を伝えようとよい点ばかり強調するのはNGです。企業の魅力的な部分だけを見て応募した場合は入社後にデメリットの側面を感じやすく、早期退職につながる可能性があります。
新卒採用の場合は企業のイメージを伝えるため、ブランディングを意識して抽象的なキャッチコピーにする場合もあるでしょう。
しかし、中途採用の場合は抽象的な表現を避け、できるだけ具体的なキャッチコピーにすることをおすすめします。求職者はなんらかの悩みを抱えて転職活動を行っており、具体的な表現で現在の悩みや不満の解決を提示するキャッチコピーに惹かれるでしょう。
「残業月〇時間以下」など具体的な数字を盛り込めば、より求職者を惹きつけるキャッチコピーになります。
年齢差別や性差別など、特定の人にとってトゲになるような表現になっていないかの確認も大切です。
キャッチコピーに限らず、差別表現を求人広告に掲載することは法律で禁じられています。特定の人を優遇する・もしくは排除するような表現にならないよう注意してください。
どのような表現が禁止されているのかチェックし、キャッチコピーがそのような表現にあたらないかチェックしましょう。
求人広告のキャッチコピーを作成する際は、有名企業が実際に採用活動で使っているキャッチコピーが参考になります。ここでは、10社を厳選してご紹介しましょう。
コミュニケーションアプリ「LINE」を提供するLINE株式会社は、以下のようなキャッチコピーで採用活動を行っています。
We create “WOW” for the world! |
「WOW」はLINEという会社の価値基準であり、「ユーザーを感動させる初めての体験」や「思わず友だちに教えたくなるような驚き」を生み出すことです。
市場をリードする NO.1サービスには 必ず 「WOW」があり、「WOWを追求するからこそ NO.1になれる」としています。
WOWを生み出す源は「ユーザーニーズを把握すること」で、真のユーザーニーズは、ユーザー自身も言葉にできていない未知の部分です。
隠れた真のニーズを見つけるにはユーザーへの深い洞察力と執着心が必要であり、ユーザーのほんの小さな動きまで見逃さず、奥底にあるニーズを問い続けられる人材が求められています。
携帯電話の無線通信サービスを提供する株式会社NTTドコモは、次のようなキャッチコピーを掲げています。
あなたと世界を変えていく。 |
ただ企業の決意表明ではなく、「あなた」という言葉を入れて求職者に呼びかけるメッセージ性の強いキャッチコピーになっています。
NTTドコモは、2022年1月にNTTコミュニケーションズとエヌ・ティ・ティ・コムウェアをドコモの子会社とし、新ドコモグループを設立しました。3社の経営方針を統一し、ひとつの「ドコモ」としてビジネスを拡大する上での新しい挑戦と戦略を公表しています。
「あなたと世界を変えていく。」は、これからの事業展開を担う人材に呼びかける内容となっています。「この会社であれば世界を変える仕事ができる」というベネフィット(恩恵)を感じさせるキャッチコピーといえるでしょう。
大手食品メーカーの味の素株式会社は、次のようなキャッチコピーを発信しています。
動かしたい、心がある。 |
味の素には、「10億人の健康寿命を延ばすために、まず、目の前の1人の心を動かしたい」という目標があります。そのため、誰かの心を動かすことに一生懸命になれる人材を求めており、キャッチコピーにはその願いが込められています。
誰かの心を動かす大変さを知り、動かせたときの喜びを知っている人を求めるというメッセージ性の高いキャッチコピーであり、求職者の印象に残りやすい言葉です。
日本の航空会社であるANA(全日本空輸株式会社)は、採用活動で次のキャッチコピーを掲げています。
チームワークが支えになる。だから誰もがチャレンジできる。 |
空の安全を確保するため、パイロットや客室乗務員、事務職、技術職が一丸となってチームワークを作るという企業風土が伝わるキャッチコピーです。
チームワークのよい基盤があり、チャレンジしやすい職場であるというベネフィットが提示されています。「この企業で能力を発揮したい」という気持ちにさせる、キャッチコピーといえるでしょう。
大手広告代理店の電通が求職者に投げかけるキャッチコピーは、次のとおりです。
キミはどんな先駆者になる? |
キャッチコピーを掲載したサイトにはさまざまなドアのイラストが描かれ、「誰も見たことがない景色を目的地にするのはどうだろう」と呼びかけています。
「何かの先駆者となり、その先により良い社会を作ろう」という、求職者へのメッセージです。新しいことに挑戦し、その先駆者となれる人材を求めていることが伝わります。
疑問形による問いかけが求職者の想像力を駆り立て、仕事を通して自分の人生を切り拓けるような希望を持たせるキャッチコピーです。
大手総合商社の丸紅は、次のような採用キャッチコピーを掲げています。
とがった丸になれ、丸紅。 |
自己変革に取り組む丸紅から、求める人材に向けたキャッチコピーです。「丸は丸、とがった丸など存在しない」という既成概念を覆し、まだ世界が見たことにない丸紅を見せようというメッセージが込められています。
「とがる」と「丸」という対象的な言葉を使い、「どういう意味?」と求職者の興味を惹くように演出されています。
これまでの総合商社は、幅広い事業資源を持ちながらも縦割りの発想にしばられてきました。丸紅はそのようなビジネスモデルを一新し、あらゆる障壁を突き破って新たな変化を生み出すと宣言しています。
無限の可能性を秘めた舞台を「グローバル クロスバリュー プラットフォーム」と名づけ、時代が求めるソリューションを自由な発想で展開していくという思いが込められたキャッチコピーです。
大手旅行会社のJTBは、次のようなキャッチコピーで採用活動を行っています。
人をつなぐ、笑顔をつなぐ |
JTBは2022年3月に創業110周年を迎え、長い歴史の中で常に社会・マーケットに寄り添い、イノベーションを起こしながら進化し続けてきました。
これからも価値観の変化を感じ取り、人間力を活かして人の笑顔と夢をつなぐ企業を目指すというビジョンが込められたキャッチコピーです。
JTBでは「旅」という機会を通じて旅行先である地域や事業パートナーをつなぎ、顧客に豊かな体験をしてもらうことを追求しています。キャッチコピーにはそのような企業の姿勢が込められており、共感できる人材を求めていることが伝わります。
大手ビールメーカーのアサヒビール株式会社は、次のキャッチコピーで採用活動を展開しています。
「世界品質」で信頼される 企業を目指して |
アサヒビールを含むアサヒグループでは、「『食の感動(おいしさ・喜び・新しさ)』を通じて、世界で信頼される企業グループを目指す。」という長期ビジョンを掲げています。
その実現のため、世界を舞台にした活躍を目指す人材を求めていることが伝わるキャッチコピーです。
アサヒビールでは既存の酒類市場の在り方にとらわれず、新たな発想で価値・新市場の創造を追求する「Value経営」を推進しています。そのために必要な人材を求めており、日本全国、世界各国にさまざまな挑戦ができるステージを用意しています。
「『世界品質』で信頼される 企業を目指して」というキャッチコピーには、それらステージで活躍する人材への期待が込められているといえるでしょう。
ファミリーレストランチェーンを運営するすかいらーくグループは、次のようなキャッチコピーで採用活動を行っています。
居心地がいい理由は、あなたでした。 |
お客様でにぎわうすかいらーくの店内で、居心地のよさをプラスできる人材に向けたキャッチコピーです。お客様からの感謝の声がやりがいになり、そのために活躍できる人材を求めています。
視点をお客様に変えている、ユニークなキャッチコピーです。居心地のよさを感謝されることで「やりがい」というベネフィットが得られることを示唆し、応募を促すようなメッセージとなっています。
電通と並ぶ大手広告代理店の博報堂が掲げるキャッチコピーは、以下のとおりです。
答えは、君の中にある。 |
短い言葉でキレのよいキャッチコピーです。採用サイトのトップページに大きく表示され、大きなインパクトを与えています。
「答えは、君の中にある。」という言葉は、年齢や職種に関係なく「どう考える?」と語り合う企業風土や、個性を歓迎し尊重し合う文化があることを表現しています。
無限の可能性を持つ求職者が「もしもこの会社で働いたら、どのようなことができるだろう」と楽しく想像してもらうという願いも込められています。
キャッチコピーに自身を投影し、「この会社に入れば、世の中を変えるような仕事に従事できるのかもしれない」という想像を与えてくれるメッセージといえるでしょう。
キャッチコピーは、求人広告の大切な要素です。言葉を練り、インパクトのあるものを作りましょう。
また、キャッチコピーで伝えたいことが正確に伝わるように、ターゲットの人物像や求職者のメリットなどをまとめておくことも大切です。作り方と例を参考に、求職者の心に響くキャッチコピーを作成しましょう。