採用基準とは採用活動の指標となるもので、採用担当ごとに判断のばらつきが起こらないようにするための客観的な基準です。採用基準を設定することで公平な採用を実現し、自社の求める人材を獲得できようになります。
採用活動がうまくいかない場合、採用基準に問題がある可能性があります。曖昧な基準になっていないか、公平性が担保されているか、採用基準を見直してみることが必要です。
採用活動を行う前に、採用基準を決めることが不可欠です。採用基準が必要な理由としては、次の3つが挙げられます。
それぞれの理由について、詳しくみていきましょう。
採用担当者には、企業にとって必要な人材を選ぶことが求められています。採用基準が決まっていないと、採用担当者によって採用する人材の基準がばらばらになり、本当に企業に必要な人材を採り漏らしてしまうかもしれません。採用担当者に左右されずに人材を選ぶためにも、あらかじめ明確な採用基準を定めておくことが必要です。
また、採用基準がわかりやすくかつ具体的に表記されていることも、チェックしておく必要があります。例えば、「ポテンシャルが高い応募者を選ぶ」といった曖昧な基準では、せっかく採用基準を定めても採用担当者によって異なる結果をもたらすでしょう。
採用基準が正しく機能するためにも、「論理に飛躍がない」「専門分野以外にも興味を持ち、1つ以上の資格を保有している、あるいは勉強中」などのように採用担当者の目線によらない基準を打ち出すことが必要です。
採用基準を決めずに面接すると、会社に合わない人材を選んでしまう可能性があります。企業と人材のミスマッチが起こり、早期離職につながることもあるでしょう。
早期離職となると、再度採用活動を始めなくてはいけません。時間とコストがかかり、企業にとって大きな損失になることもあります。また、早期離職しない場合でも、採用によって期待した成果が得られず、再度採用活動をし直す必要性が生じる場合もあります。
近年、オンライン面接を実施する企業も増えています。オンライン面接では非言語的コミュニケーションを判断しづらく、実際に対面して面接するときと比べて、必要な人材を選ぶ精度が低くなる傾向にあります。
一定の採用基準を定めることで、非言語的コミュニケーション以外でも応募者を判断できるようになります。オンラインでも対面でも同じ精度の面接を実行するためにも、採用基準を明文化することが必要です。
採用基準は、どの面接官がどのタイミングで面接しても同じ結果を得るために必要なものです。しかし、採用基準自体にぶれがあると、面接によって異なる結果を生み出すことになりかねません。常に同じ採用基準で決定し、ぶれが生じないようにすることが大切といえるでしょう。
採用したい人材と実際に採用する人材にずれが生じないために、採用基準を次の8つのポイントに基づいて決めることが必要です。
それぞれのポイントについて解説します。
採用選考では、能力が高く優れたスキルを有する人材を選ぶのではありません。企業にとって必要な人材を選ぶことが、本来の採用選考であるはずです。採用活動を始める前に、どのような人材を採用したいのかについて明確にし、そのターゲットを選ぶためにはどのような基準が必要かを分析します。
例えば、次々と新規事業や事業拡大に取り組む成長期にある企業であれば、自分で考えて自分で動ける人材が必要です。また、視野が広く幅広い分野に興味を持つ人材も求められます。まずは採用のターゲットを詳細に描き、採用担当者全員が正確に理解できるように明文化しておきましょう。
ターゲット像が企業にとって合理的かつ納得できるものであっても、必ずしもそのターゲット像だけに照準を絞って採用活動を行うべきとはいえません。
例えば、働き方改革が推進され、ワークライフバランスを重視する風潮が高まりつつある現代では、働き方にも多様性が求められています。そのような中、「休日は会社のイベントに参加できる人」「時間外労働を積極的に行える人」「出産・育児において半年以上のブランクを開けない人」などをターゲットとするのでは、応募者が少なくなるだけでなく、企業としてのコンプライアンスを問われることになりかねません。
採用基準を定めるときは、その基準が社会の現状に合っているのかチェックする必要があるでしょう。また、企業倫理の観点からも問題がないのか、厳しく確認することも有用です。
採用基準には、応募者の性格や人柄、働き方に関する考え方などだけでなく、実務的な部分も含めます。例えば、業務に必要なスキルを有しているか、適性があるかについても見極める質問を作成し、基準として明文化しておくようにしましょう。
採用基準を決める際に、既存社員からもヒントを得ることができます。特に有能な社員に注目し、どのような要素を持っているのか洗い出してみましょう。有能な社員に共通する要素を採用基準に活かすことで、企業の業績向上を実現できる人材を採用できるようになります。
なお、有能な社員とは、企業に何らかの成果をもたらしている社員のことです。営業成績のように目に見える形での成果だけでなく、「あの人がいると業務がスムーズに回る」「あの上司の下では働きやすい」などの評判にも注目し、どのような資質を備えているのか分析してみましょう。
有能な社員から採用基準を洗い出したら、共通する要素の中から選考で活用できるものを抽出し、評価項目としてまとめます。以下のように分類すると、まとめやすくなるためおすすめです。
1から4までの作業で洗い出した基準について、選考で活用できる評価項目としてまとめましょう。項目は主に次のようなものがあげられます。
自社が求める人材に対し、優先的に必要となる要素な何かを考えて項目を設定してください。
評価項目をまとめたら、それぞれに評価基準を設定します。
例えば「コミュニケーション能力」の項目であれば、「人の話に耳を傾け相手の感情に配慮し、情報の伝達を積極的に行っている」「自分の伝えたいことを相手に理解させることができる」など、誰もがイメージしやすい基準を作り、社内で共有します。
公平な採用基準を作っても、社内に浸透しなければ効果は期待できません。面接官それぞれが採用基準について十分に把握し、設定した採用基準に沿って判断することが不可欠です。
採用選考の際にチェックする基準は1つではありません。ほとんどの企業では膨大な基準を作成しており、チェックリストも長くなるでしょう。
そのため、どの基準も同程度に重要だという風に決めてしまうと、面接の時間が長くなるだけでなく、面接後の選考も進みにくくなってしまいます。採用基準の中で特に重視する要素を決め、優先順位を決定しておきましょう。要素ごとに配点して傾斜をかけると、より公正かつ明瞭な選考結果を得やすくなります。
採用基準が増えるのは問題ありませんが、基準間で矛盾があると選考時に正しく機能しない可能性があります。矛盾がないかチェックし、全体の方向性がまとまっているかも確認しておきましょう。
例えば、「自主性に富み、一人だけ異なる意見でも主張し、実行できる」という要素を基準に加える場合、「自分の意見が他の意見と異なるときは、協調性を優先した行動ができる」という要素とは相反する可能性があります。矛盾なく両立できる基準に調整し、求める人材を見極められるようにしておきましょう。
採用基準を設定する際は、新卒・中途採用に共通して注意すべきポイントがあります。基準はできるだけ具体的なものにすること、厚労省が定める基本的な定め方に配慮するということです。
詳しい内容を解説します。
採用基準は、できるだけ明確かつ具体的な内容にすることが大切です。抽象的な内容では面接官ごとに解釈が変わり、主観が入って選考結果が変わる可能性があります。自社が求める人材であるのに不採用となったり、採用のミスマッチで早期退職につながったりしてしまいます。
人により解釈が変わるような内容にならないよう、誰が見ても明確な基準を設けなければなりません。
厚生労働省では「採用選考の基本的な考え方」について見解を公表しており、採用選考にあたっては以下の2点に基づいて実施すべきとしています。
公正な採用選考を行うためには応募者に広く門戸を開かなければなりません。そのためには応募者の適性・能力に応じて職業を選べることが必要であり、その前提となるのが公正な採用選考です。
雇用条件や採用基準に合ったすべての人が応募できるよう、原則を作らなければなりません。
公正な採用基準とは、家族や生活環境など応募者の適性・能力とは関係ない事項で採否を判断しないということです。応募者の適性・能力に関係のない事項を応募用紙に記入させる、もしくは面接で質問することがあれば、採否決定に影響を与える可能性があり、公平性を損ねることになりかねません。
参考:厚生労働省「公正な採用選考の基本」
採用基準はスキルやポテンシャルだけでなく、自社の社風や文化に合うかどうかの判断も重要です。自社は求めるスキルやポテンシャルはあっても、社風や文化になじめなければミスマッチを生む可能性が高くなります。
どの企業にも独自の社風や風土・文化が存在し、雰囲気になじめるかどうかは定着率や企業への貢献度に影響を与えます。
社風に合う人材を採用するためには、自社の社風・文化を明確に発信し続け、それに共感する人材を求めることが大切です。
このような、企業の社風に馴染めるかをみることは「カルチャーフィット」と呼ばれ、離職率の低下につながるとして採用に取り入れる企業が増えています。
カルチャーフィットを見極めるには企業が自社のカルチャーを定義して担当者間に共有するとともに、面接で求職者の価値観を掘り下げることも必要です。
ターゲットが新卒あるいは中途採用であるかを考慮した採用基準も必要です。新卒の採用基準を決める際には、特に次の2つのポイントに留意するようにしましょう。
・企業風土と合致するか確認する
・スキルよりもポテンシャルを重視する
それぞれのポイントについて、詳しく解説します。
多様な性格、考え方を持つ社員がいると、他の社員にも影響を与え、刺激を受けたり、良いアイデアが思いつきやすくなったりすることがあります。そのため、性格や考え方を特定の基準に絞り込みすぎる必要はありません。
しかし、価値観については注意が必要です。企業の持つ価値観、企業風土が合わないと、新規採用された社員は居心地の悪さを感じ、早期離職する可能性があります。まずは企業風土を丁寧に分析し、その風土・価値観に合う社員とはどのような人材なのか分析することから始めましょう。
今まで社会人としての経験がない新卒であれば、ビジネススキルはなくて当然です。いきなり実践的なスキルや経験を求めるのではなく、今後必要とされるスキルや経験を習得できるか、ポテンシャルを重視して応募者を見極めるようにしましょう。
例えば、面接時の受け答えから積極的に学ぼうという姿勢が見えたときには、ポテンシャルが高いと考えられます。また、グループワークやグループ面接を通して、臨機応変に対処する様子が見受けられたときも、成長性の高さを評価できるかもしれません。
中途採用は新卒採用と比べると研修期間も短くて済み、即戦力となることが特徴です。採用する際にも、即戦力として活躍できるスキルがあるのかチェックするようにしましょう。
例えば、経理担当者として高いスキルを有している応募者であっても、営業社員の応募者として採用の場にいるときは、即戦力として活躍できるスキルが十分にあるとはいえません。ビジネス関連のスキルや経験であれば何でも一様に評価するのではなく、自社で求めているスキルを列挙し、そのスキルに合致するときに評価を与えるようにしましょう。
スキルや経験は、必ずしもわかりやすい形で提示されるわけではありません。例えば、エンジニアであれば特定の資格を有していても、実際に職場で活かしたことがないのであれば、即戦力にはならない可能性があります。社員の中で優れたエンジニアを選び、面接官として採用の場に参加してもらい、どの程度のスキルを有しているのか専門的にチェックすることも有効です。
また、経験についても同様のことがいえます。「構成担当10年」「営業5年」など、年数だけみれば相当の経験であっても、どのような水準で仕事をしてきたのかがわからないため、場合によっては経験年数が浅い応募者のほうが優れていることもあるでしょう。年数で一律に判断するのではなく、応募者に担当してきたプロジェクトや仕事内容について簡単に話してもらい、どの程度の業務に携わってきたのか確認することが必要です。
近年、中途採用も新卒と同じくポテンシャル採用をすることもあります。実際のところ、特定の分野で優れた成果を上げてきた人材は、他の分野でも評価に値する優れた結果を生み出せる可能性は大いにあります。
なお、ポテンシャル採用を実施する場合には、経験やスキルだけではなく、社会人としての基礎が身についているかを確認することは欠かせません。ビジネスにおける実務的な経験は少なくとも、新人研修は受けたはずなので、学んだことを自分のものとして習得できているかどうか確認しておきましょう。基礎が身についていれば、新人より短期間の研修で済み、短期間で順応して即戦力になると期待できます。
スタンバイが人事担当者100人に聞いたアンケートでは、中途採用の面接時重視している点は、人柄や性格を含めた「人間力」(53%)であることがわかりました。
前述のとおり中途採用における採用基準を決める際は、即戦力として活躍できるスキルを保有しているかが重要です。中途採用でポテンシャル採用をする場合は、社会人としての基礎が身についているかどうかの確認も欠かせません。
これらのポイントに加えて、人柄や性格を含めた「人間力」を見極めれば、活躍する人材の採用できるでしょう。
■御社の中途採用の面接において重視している点は何ですか?(複数回答可)
1位 |
人間力(人柄・性格) |
53% |
2位 |
コミュニケーション力 |
46% |
3位 |
経験 |
35% |
4位 |
社会人としての常識 |
34% |
5位 |
スキル |
29% |
6位 |
ストレス耐性 |
25% |
7位 |
ポテンシャル |
20% |
7位 |
資格 |
20% |
9位 |
熱意 |
18% |
9位 |
志望動機・自己PR |
18% |
11位 |
中途採用は行っていない |
15% |
12位 |
外見第一印象 |
14% |
13位 |
仕事の成果 |
13% |
14位 |
学歴 |
12% |
15位 |
キャリアプラン |
7% |
16位 |
その他 |
2% |
参照元:スタンバイ調べ(調査期間:2023年3月、人事担当者100人が回答)
また「中途採用の面接時に最も重視している点」を1つ選ぶ設問でも、「人間力」と回答した企業が最多(34.1%)でした。なお、2位は「経験」(17.6%)、3位は「コミュニケーション力」(14.1%)となっています。
■御社の中途採用の面接において最も重視している点は何ですか?(単一回答)
1位 |
人間力(人柄・性格) |
34.1% |
2位 |
経験 |
17.6% |
3位 |
コミュニケーション力 |
14.1% |
4位 |
資格 |
5.9% |
5位 |
社会人としての常識 |
4.7% |
6位 |
熱意 |
3.5% |
6位 |
志望動機・自己PR |
3.5% |
6位 |
ストレス耐性 |
3.5% |
9位 |
スキル |
2.4% |
9位 |
ポテンシャル |
2.4% |
9位 |
仕事の成果 |
2.4% |
9位 |
その他 |
2.4% |
13位 |
学歴 |
1.2% |
13位 |
キャリアプラン |
1.2% |
13位 |
外見第一印象 |
1.2% |
参照元:スタンバイ調べ(調査期間:2023年3月、人事担当者100人が回答)
すでに採用基準を定め、面接官によって結果が変わらないことを意識して採用活動を進めている企業も多いでしょう。しかし、そもそもの採用基準に問題があるときや、採用基準が現状や時代の流れにそぐわないときは、見直す必要があります。特に次のいずれかの兆候が見られているときは、見直すタイミングだと判断できます。
・選考通過者や応募者が少ないとき
・現場と人事の基準に乖離があるとき
それぞれの兆候について、詳しく解説します。
応募者はある程度集まってはいるものの、選考通過者が少ないときは、優秀な人材が応募していない可能性もありますが、採用基準そのものに問題がある可能性があります。まずは採用基準が高すぎないかチェックしてみましょう。
応募者にある程度のスキルやポテンシャルを期待するのは当然のことですが、あまりにも本人が持つスキル・ポテンシャルを重視し、他の要素が見えなくなってはいないでしょうか。人材は企業内で育成するものでもあります。選考通過者が少ない場合は、採用選考の際にチェックするスキルやポテンシャルは「この程度はないと困る」と判断される程度にとどめておくほうがよいでしょう。
また、求人広告に掲載している基準が現状と合っていないときは、応募者が少なくなることがあります。例えば、勤務時間が長すぎる、転勤が多い、育児休暇についての対応が十分ではないときなどは、応募しようという気持ちを削ぐ恐れがあります。採用基準を見直すのはもちろんのこと、求人広告に掲載する内容も見直しましょう。
なお、求人広告の内容を見直すときには、それが虚偽や誇張でないか確認することが必要です。例えば、「就学前まで時短勤務可能」と記載すれば、育児と仕事の両立に悩む応募者を惹きつけることができるでしょう。しかし、実際にはそのような制度がないのであれば、応募者をだますことになってしまいます。求人広告を魅力的なものにするためにも、社内制度や福利厚生などの見直しも適宜行いましょう。
採用基準は、企業の総意で定められるべきものです。経営陣が「このような人材が欲しい」と独断で決めてしまうと、現場で求められている人材を採用できない可能性があります。
実際に現在の採用基準で採用した人材が現場でミスマッチを起こしているときは、現場と人事の基準に乖離があると判断できるでしょう。採用ターゲットを決める段階から、改めて仕切り直す必要があります。
採用基準を各選考段階で上手活用することが、自社が求める人材を採用できるコツです。
ここでは、各選考段階での活用方法をご紹介します。
書類選考の段階では、数値に表しやすいスキルや経験をメインに選考します。
といった一定の基準を設け、条件を満たすかで合否を判断します。そこで選考通過が少なくなった場合、基準が高すぎるのかもしれません。
新卒採用で重視するポテンシャルは書類上に現れない部分もあり、「この項目だけは必須」というものに限定するなど、基準を絞り込むことも必要です。
求職者の能力や性格を定量的に測定するために行う適性検査は、自社が求める人物かを判断するために効果的です。
適性検査は成績が良いだけで高く評価するのではなく、最低限必要とする要素があるかを確認するために使います。求職者が多く、短時間で絞り込みをかけたいときの基準として一定の数値を設定するという活用方法が便利です。
面接では、書類や適性検査では判断できない、求職者の人柄や入社への意欲といった側面をメインに判断します。定量化できないため個人の主観が入りやすい部分であり、より採用基準を明確にすることが求められます。
客観的な採用基準を設定するとともに、面接官の認識がずれないように事前の説明・擦り合わせが欠かせません。
近年は、オンラインによる面接も多くなっています。オンラインの面接では、以下のような要素の見極めが難しくなっており、新たな課題となっているのが実情です。
これらを見極めるための新たな基準も明確にしておく必要があります。
採用基準の設定では、よくある失敗があります。
これらの失敗にはどのような対策が必要かを解説します。
採用基準ではどうしても曖昧になってしまう項目もあり、判断に迷う場合もあります。
例えば、以下のような項目です。
人によりその判断には違いがあり、解釈が異なって選考に誤りが出る可能性があります。曖昧になりやすい項目は特に具体性を持たせ、解釈を一致させることが必要です。
また、「事務経験が1年以上ある」など客観的とみられる要件を設定する際も注意しなければなりません。経験年数が同じでも、業界や職種によって習得しているスキルは異なります。事務経験を1年以上持つ人について、どのような経験やスキルが必要なのかも具体的に定めておくことが大切です。
人により価値観は異なるため、解釈により評価が変わることもよくある失敗です。客観的な基準でも、面接官ごとに感じ方は異なり、評価にずれが生じる可能性があります。
認識の相違が起こらないよう、定期的に擦り合わせを行うことが必要です。面接官ごとの面接通過率についてもチェックしましょう。人により通過率が高い・低いなど極端な違いがあれば、認識にずれがある可能性があります。原因を見つけ、改善を行ってください。
採用活動で特に重視されるのが「人柄」です。いくらスキルや経験があっても、人柄に問題があれば、一緒に働くことは難しくなります。
しかし、人柄はスキルや経験のような定量化が難しく、評価にばらつきが生じやすいのも事実です。それだけに具体的な採用基準の設定は欠かせません。曖昧になりやすい項目を明確に定義し、評価についても具体的に定める必要があります。
ここでは、曖昧になりやすい採用基準の項目と設定例について、項目の定義と評価に分けてご紹介します。
各評価は中間の選択肢がない4段階にすることで、曖昧な評価を避けられます。評価基準の内容は一例で、自社の目的に合わせて具体的な基準を設定してください。
主体性とは仕事に対し自ら積極的に行動することです。上司の指示がなくても自ら考え行動に移すことができる人材は、自分自身で課題を発見し、仕事を推進できます。将来はチームや企業を牽引する存在となる可能性があり、求められる能力です。
主体性のある社員は成長も速く、企業の発展に大きく貢献することが期待できます。主体性は成功体験からも判断できるでしょう。
【主体性の定義】
「外部からの指示を受けなくても、自ら考えて行動に移せる。何が求められているかを判断し、自ら課題を発見して対策を考え、解決に向かう姿勢がある」
【評価基準】
非常に良い |
・課題の発見や解決について、自分のためだけでなく組織のことを考えて実施できる ・周りを巻き込み、物事を進めることができる |
良い |
・課題の発見や解決について、自分自身の成長のために行える ・目的や意味を把握し、自ら率先して実行できる ・必要だと感じたことは周りに相談し、取り組もうとする姿勢が窺える |
あまり良くない |
・与えられた業務に対し指示に従って実行できるが、自ら自主的に取り組む姿勢はない |
悪い |
与えられた業務に対し自主的に実行できない |
組織で働く上で協調性は欠かせません。業務を推進するために、社員全員が力を合わせて仕事に取り組むことが大切です。周りへのサポートを率先して行うなどの協調性は、重要な採用基準となります。
【協調性の定義】
「自分の都合にとらわれず、周りと協力し合い業務を推進できる。チームのパフォーマンスを優先して考え、メンバーとして何をするべきなのかを十分に理解し、実行する姿勢がある」
【評価基準】
非常に良い |
・積極的に他者の意見を聞いて協力し合うことができ、他の社員の模範となって指導ができる ・自分で仕事を抱え込まないために、必要に応じてメンバーの協力を求めることができる ・他のメンバーの業務に協力し、職場が明るくなるような雰囲気づくりができる |
良い |
他者の意見を聞いて協力し合う姿勢がある |
あまり良くない |
他者の意見を聞く姿勢はあるものの、自分のために行動することもある |
悪い |
自分の都合を優先し、他者の意見を聞くことはない |
組織の一員として、誠実に業務に取り組むのは必須事項です。企業のコンプライアンスを維持するためにも、法令や就業規則を遵守し、社内の慣習を受け入れる誠実性が求められます。
秘密や機密情報を他人に漏らさないことはもちろん、自分の仕事や役割に最後まで責任を持つなどの行動も評価基準となります。
【誠実性の定義】
「自分の役割を計画通り最後までやり抜くことができる。組織のメンバーとしての責任を理解し、与えられた業務に対して責任を持って取り組む姿勢がある」
【評価基準】
非常に良い |
・自分の役割に責任を持ち、計画通り最後までやり抜くことができる 他者の模範となり、指導ができる ・自分自身の役割を理解し、全力で業務に取り組める ・自らの責任を自覚して、責任を回避したり他に転嫁することがない |
良い |
・自分の役割に責任を持ち、計画通り最後までやり抜ける ・困難なことがあっても、最後までやり抜くために最善を尽くして いる |
あまり良くない |
与えられた仕事を責任を持って計画通りやれないことがある |
悪い |
与えられた仕事を計画通りやれないことが多い |
提案力とは、物事の特徴を相手にわかりやすく伝えて納得してもらう能力です。ビジネスでは顧客や取引先、他のメンバーなどさまざまな人に提案する機会は多く、相手に合わせてわかりやすく提案する能力が求められます。営業などの業務では、特に求められる能力です。
【提案力の定義】
「問題を発見し、解決方法を考えて提案できる能力のこと。提案内容の目的や課題を理解し、情報をまとめてわかりやすく説明できる」
【評価基準】
非常に良い |
・相手が抱える問題を発見し、解決に向けて積極的に考え妥当な提案ができる ・提案内容や妥当性を理解し、簡潔にわかりやすく説明できる |
良い |
提案内容をある程度理解し、説明できる |
あまり良くない |
提案内容の理解はできるが、整理するのに時間がかかる |
悪い |
提案内容を理解できず、うまく説明できない |
コミュニケーション能力は社内や社外の関係を良好にし、信頼関係を築くために不可欠なスキルです。
コミュニケーション能力と一口に言っても範囲は広く、自分の考えを正しく伝えられる、相手の話を引き出すのがうまい、相手との折衝が得意など、さまざまなスキルに分かれます。どのタイプが自社に必要な能力かも具体的に定めることが必要になります。
自社が求めるコミュニケーション能力の定義を明確にするとともに、面接では上手に会話のキャッチボールができるかも判断の目安となります。
【コミュニケーション能力の定義】
「対人関係で意思疎通をスムーズに行い、信頼関係を築ける。相手の立場や考え方を尊重し、適切な場面に適切な発言ができる」
【評価基準】
非常に良い |
・相手の意図や感情に配慮し、情報の伝達を積極的に行っている ・報告・連絡・相談が的確にできる ・情報を積極的に発信し、情報共有に努めている |
良い |
・会話で他者の意見に耳を傾け、自らも積極的に発言できる ・コミュニケーションをとろうとする姿勢がある |
あまり良くない |
・コミュニケーションはとれるが消極的 ・積極的な情報発信ができない |
悪い |
・他者との会話を維持できない ・自らコミュニケーションをとろうとする姿勢がない |
チャレンジ精神とは、新しいことに熱意を持って取り組む姿勢のことです。困難な問題に直面しても積極的に解決策を考え、行動します。
新規事業を拡大していたり、難しいプロジェクトを抱えたりする企業では欠かせない資質といえます。
チャレンジ精神は、仕事に対する熱意を確認したいときにも必要な項目です。熱意を入社後に活かすためには、会社に入って実行したいことを確認することも欠かせません。本人がやりたいことと、会社で求めることが一致しない場合はミスマッチにつながる可能性があるためです。
【チャレンジ精神の定義】
「新しいことに積極的に取り組み、困難なことにも立ち向かう姿勢がある」
【評価基準】
非常に良い |
・自分から進んで成長しようという意欲がある ・柔軟な発想ができ、より高い目標を設定をして物事に挑戦している |
良い |
新しいことに取り組みたいという姿勢がある |
あまり良くない |
現状維持を求める傾向がある |
悪い |
困難なことや経験したことのないことにはあまり関わりたくない傾向がある |
構造化力とは、物事全体の構成要素と構成要素間の関係を整理できる能力です。問題の原因を見つけやすくなり、的確に対処してスムーズに問題を解決できます。
構造化のスキルがあると状況を整理して思考できるため、仕事の質や課題解決のスピードは大きく変わり、仕事をしていく上で求められるスキルです。
【構造化力の定義】
「常に目的を意識し、達成するために必要なものは何かを考え要素を分解し、それらの要素の特性を明確にして解決に導ける」
【評価基準】
非常に良い |
目的を達成するために要素を分解し、理解できる |
良い |
目的を意識し、必要な要素を分解できる |
あまり良くない |
目的な理解できるが、要素の分解ができない |
悪い |
目的を考えず、計画性な行動している |
企業の発展には、企業で求められている人材を適切に確保することが不可欠です。企業に合う人材を採用するためにも、まずは採用基準を明文化することから始めましょう。
また採用基準を誰にでもわかるものにすることも大切です。理解にずれがない明朗な文章で基準を記すと、採用者の質が採用担当者によって左右されないようになるでしょう。