しかし、人材不足で採用が困難となっている近年、縁故採用は採用コストがかからず優秀な人材を雇用しやすいという理由で注目されています。
縁故採用の内容について、さらに詳しくご紹介します。
縁故採用と似た採用方法に、リファラル採用があります。リファラル採用とは、社内外の信頼できる人脈からの紹介で採用を行う方法です。縁故採用との明確な違いはなく、同じ意味として使われることも少なありません。
しかし、リファラル採用は企業の主導のもとに採用戦略の一環として行う採用活動であるのに対し、縁故採用は紹介者が主導となって採用につなげるもので、個人の関係性に重点が置かれています。
一般の採用活動では応募書類に記載された情報や面接試験で判断しなければなりませんが、本当に自社に合う人材かを判断しきれるとは言い切れません。実際に採用のミスマッチが起こり、早期退職となる事例は少なくないのが実情です。そのような事態を避ける意味でも、縁故採用は有効な採用方法といえます。
縁故採用は求人サイトへの掲載や人材紹介会社への依頼など、通常の採用活動で必要になる費用がかからず、採用コストを大幅に削減できるのがメリットです。
求人広告を出しても必ず応募があるとは限らず、採用までに時間がかかればそれだけ費用もかさみます。縁故採用はこのようなコストの心配なく採用活動ができるため、メリットは大きいといえるでしょう。
また、書類選考などの工程も省けるため、採用担当者の負担も軽くなります。
縁故採用では、選考にかかる時間を短縮できる点もメリットです。求人サイトなどを利用した採用活動では、求人を掲載して応募者を待ち、送られてきた書類で選考するなどに多くの時間を取られます。
しかし、縁故採用では初期の段階から求職者と直接やり取りができるため、採用までスピーディに話を運ぶことができます。社員や役員の家族・親戚であれば事情をよく知ることができ、入社までの手続きもスムーズに進む傾向です。
身元が確かという点も、会社にとって縁故採用の大きなメリットです。紹介者が社員や取引先であるため、経歴を詐称することは考えにくく、リスクは低いといえます。紹介する側も自身の信頼に関わるため、推薦に値する人物かどうかを十分に考えているのが一般的です。
また、会社では事前に紹介者から人となりについても聞き取ることができ、履歴書と面接だけが判断材料の一般採用よりも多くの情報を得て判断することができます。
縁故採用では、内定辞退や早期退職のリスクが低いというメリットがあります。推薦を受ける候補者は紹介者から自社の詳細な情報を事前に聞くことができ、採用のミスマッチが起きにくいためです。入社後も紹介者によるフォローにより、職場に早く馴染んで活躍することが可能です。
会社について熟知している紹介者は、企業の良い面だけでなく抱えている課題も含めて候補者に説明ができます。候補者はさまざまな角度から自分に合う企業なのかを判断でき、ミスマッチを防ぐことが可能です。
縁故採用のデメリットを4つご紹介します。
縁故採用は社員や取引先からの紹介に頼る以上、一般の採用方法のように計画を立てるのは難しいのがデメリットです。求人広告を出し、不特定多数の応募を集めるというわけにはいきません。人材が必要な時期に候補者が現れるとは限らず、現れても自社の求める条件に合わない可能性もあります。
新規事業の立ち上げなどで急いで人材が必要になるなど、緊急性の高い採用の場面では運用できない点もデメリットです。
選考の結果、紹介された候補者が採用の基準に満たないという結果になった場合でも、不採用にしにくいという問題もあります。紹介者が企業内で紹介者の影響が強いほど、その傾向は強くなるでしょう。
縁故採用を導入する際は、客観的な判断基準以外の要素を排除するために運用ルールを明確に定める必要があります。
書類選考や数段階の面接を経て採用された既存社員から見ると、縁故採用の選考方法は公平性に欠けると感じられる傾向です。「縁故という理由だけで採用された」「優遇されている」という印象を与える可能性があります。
縁故採用に不満を持つ社員は、仕事へのモチベーションが下がってしまうをと考えられます。十分なスキルや能力を持つにもかかわらず「縁故採用だから採用された」と見られることは、縁故採用の社員にとっても不本意なことです。
採用計画を立てにくいという点にも関係していますが、縁故採用は「いつまでに何人の候補者を集められる」という見込みを立てるのが難しく、大量採用には不向きな採用方法です。縁故採用はどうしても個人の関係性が重視されるため、企業の都合で採用活動ができません。
新規プロジェクトのために大量の人材が必要などの場合は、他の採用方法を選択する必要があります。
まず、運用ルールの策定が必要です。縁故採用を募集する際は、ただ「いい人材がいれば紹介してほしい」といっても、紹介する側は迷ってしまいます。紹介されても自社が求める人材でなければ、採用に至らないでしょう。そのため、運用に際しては以下のような項目を策定します。
縁故採用は通常の採用方法と異なる選考フローで進めるため、不採用にしにくいなど客観的な判断基準から外れがちです。しっかりと運用ルールや透明性の高い選考基準を策定し、主観的な要素を排除しなければなりません。
通常の選考フローとは異なるルートで入社する縁故採用については、社員から不満が出ないように事前の社内周知が必要です。十分な説明をしないまま縁故採用の社員を迎え入れると、既存社員のモチベーションに影響し、職場の雰囲気が悪くなる可能性もあります。
なぜ縁故採用を行うのかという導入の意図をしっかりと説明し、全社員の納得を得なければなりません。運用ルールの説明だけでなく、入社後の待遇などの詳細も明確にすることが大切です。
ルールの策定と社内周知が終わったら、縁故採用の募集を開始します。縁故採用の紹介者は自分の親族や知人を会社に紹介するため、紹介する人物に対する責任を感じるものです。「紹介しても採用基準に満たないのではないか」といった不安を感じる場合もあります。
そのため、募集では紹介者の不安を解消することが必要です。いきなりエントリーするのではなく、「このような人物の紹介を考えている」といった相談から受け付けるなど、心理的な負担を下げる運用が求められます。
紹介が集まったら、選考を行います。縁故採用では、紹介者から事前に人物像などを把握することが可能です。そのため、書類選考を免除したり面接ではなく簡単な顔合わせのみで済ませたりするなど、通常の選考方法とは異なる方法を選ぶ会社も多くなります。選考過程を省けるのも縁故採用のメリットであり、自社に適した方法を検討してください。
選考は社員の親族・知人が対象ということから、選考内容やそこで感じたことなどは紹介者に伝わるという点にも配慮した対応が求めらます。
選考が終わったら、採用か不採用かを決定します。通常の選考フローと同じく内定通知を出し、入社手続きを行うという流れです。社員などの紹介から入社が決まったという内容は社内に周知し、さらに紹介をしてもらえるよう協力を求めていくとよいでしょう。
縁故採用は企業が必要とするタイミングで人材を獲得できる手法ではなく、継続的な働きかけが必要です。そのため、PDCA(計画・実行・評価・改善)のサイクルを回して改善しながら、計画的に運用していくことをおすすめします。
縁故採用で入社した社員と他の社員が公平に評価されるため、ルールの策定が必要です。通常の選考過程を経ない縁故採用は他の社員から見ると不公平に感じやすく、入社後も全社員が公平に評価される客観的な基準を作ることが求められます。
例えば、縁故採用という理由だけで昇格を早めるといった人事は、公平性に欠けるものです。すべての社員が客観的な基準で評価されなければなりません。縁故採用も含め、全社員が能力やスキル、経験などに基づき公平に評価される透明性の高い評価基準の策定が必要です。
縁故採用は採用コストの削減などメリットの多い方法ですが、あくまでも数多くある採用方法のひとつに過ぎません。企業主導での採用計画を立てにくいため、大量雇用などの必要に応じて複数の採用方法を組み合わせることが必要です。
求人サイトや外部サービスも取り入れ、それらを補うような形で縁故採用を導入することをおすすめします。
縁故採用は採用フローを簡略化できるのが利点ですが、自社が求める人材かを正確に見極めるため、どのようなフローにするかの検討は必要です。
紹介された人物のスキルや経験・人柄などが明確に把握できる場合であれば、顔合わせだけで採用を決定する場合もあります。しかし、スキルや経験が十分でなく、人物像がよくわからない場合は通常の採用フローで判断することが必要です。状況を見ながら、最善と思われる採用フローを検討してください。
採用計画を立てにくいなどでデメリットな側面もありますが、他の採用方法も組み合わせながら、上手に運用していくことをおすすめします。