採用フローとは、会社が新卒や中途の採用を行う際に行う一連の活動のことです。社内関係者と採用活動の進捗を共有し、振り返りによる改善ができるなどのメリットがあります。今回はフロー作成のメリットや事前準備、作成の方法、効果を高めるポイントなどをご紹介します。
1.新卒や中途採用における採用フローとは?
採用フローとは、採用活動において情報を公開してから内定を出し、入社するまでの一連の流れです。新卒採用でも中途採用でも、効率的に求める人材を確保するためにはフローの作成が欠かせません。
採用フローを作ることで採用活動の流れを把握でき、目標達成に向けて採用活動をスムーズに進めることができます。ここでは、採用フローの内容についてご紹介します。
1-1.効率的な採用活動に必要
採用フローは採用活動を効率的に進めるために不可欠な手法です。採用フローの流れに従うことで、採用活動がスムーズに運びます。採用フローの内容は新卒と中途採用、職種、人数などで異なるケースが多く、採用計画に沿った作成が必要です。
採用フロー作成に際しては、まず採用計画の策定をしなければなりません。採用計画は事業計画の達成を最終目的とするものであり、事業計画に基づいた採用計画の策定が求められます。
1-2.採用までの一連の流れ
採用フローは採用までの一連の流れであり、募集開始から入社までの各工程で構成されています。具体的には、求人掲載などの情報公開から始まり、応募を受けて書類選考を行います。
適性テストや面接を経て内定を出し、入社するという手順です。フローの内容は新卒と中途採用、募集する職種、人数などで異なり、新卒で多くの企業が実施する会社説明会など求職者を集めた説明会は、一般的に中途採用では行いません。
2.採用フロー作成の2つのメリット
採用フローの作成は、採用の流れを各部署の担当者や経営層など、社内の関係者と共有できるというメリットがあります。また、採用活動の振り返りが容易になり、課題の改善に役立つのも利点です。
採用活動で思うような結果を得られなかった場合に、どの時点で問題があったかを確認できます。改善のための対策を立てやすくなるでしょう。ここでは、採用フローの作成で得られる2つのメリットをご紹介します。
2-1.流れを関係者と共有できる
採用活動は人事だけが行うものではなく、経営層や各部署の担当者など多くの関係者が関わります。そのため、採用についての一連の流れと進捗状況を関係者が共有できなければなりません。
採用フローの作成により採用活動のプロセスが明確になり、採用活動の方向性やスケジュールについて関係者間の認識が異なるという事態を防止できます。
2-2.振り返りができる
採用フローの作成で工程ごとの振り返りがしやすくなり、改善や今後の対策を立てやすくなります。問題が発生したときも、どの工程で問題となったのかを確認でき、具体的な対処ができるでしょう。
各工程の応募者やエントリー数、通過数などを正確な数値を残しておくことで、次年度に向けてどのような点を改善したらよいのかがわかりやすくなります。
3.採用フロー作成の事前準備
採用フローを作成する際には、事前準備が必要です。採用計画を立案し、スケジュールや選考内容を決めることで、採用フローの作成が容易になります。 新卒の場合は広報解禁日など決まっているスケジュールを基準にしながら日程を決めましょう。
一連のスケジュールが決まったら、採用フローの構成要素を決定します。採用フロー作成の事前準備について、詳しくみていきましょう。
3-1.採用計画を立てる
採用フロー作成の前提として、採用計画を立案します。まずはどのような人材を採用するのか、詳細なターゲットを設定します。 その後、具体的なスケジュールを立て、選考内容を決めましょう。事前準備では全体を把握することが大切なポイントです。
また、採用計画の最終的な目的は、効果的な人材の採用・配置により、事業計画を達成させることにあります。そのため、採用計画を立てる際は事業計画に沿って考えることが重要です。
3-2.採用フローの項目を決める
選考内容やスケジュールを決めたら、採用フローを構成する項目を決定します。項目は新卒や中途採用など目的ごとに異なり、募集要項公開から入社まですべてのアクションをもれなく取り上げなければなりません。
エントリーや面接など応募者が参加する項目だけでなく、採用活動で行う全アクションを決定することが必要です。主な項目を確認しておきましょう。
【会社側が発信するもの】
募集情報の公開
↓
会社説明会(新卒の場合)
↓
応募受付の開始
↓
書類選考結果の通知
↓
筆記試験、適性検査
↓
面接
面接選考結果の通知
↓
内定通知
【応募者が参加するもの】
エントリー
↓
会社説明会(新卒の場合)
↓
応募書類提出
↓
筆記試験、適性検査
↓
面接
↓
内定承諾
↓
内定式
↓
入社
これらは一般的なものです。自社独自に行うアクションがある場合は項目を組み込んだり、採用する職種やポジションによって調整したりして必要な項目を決めておきましょう。
4.新卒における採用フローの作り
採用フローの作り方について、新卒の場合を例にみてみましょう。新卒採用の採用フローは、以下の流れで作成するのが一般的です。
- 募集活動
- 選考活動
- 内定通知
選考活動は面接が個人とグループに分かれる場合があり、グループワークや適性試験を行うケースもあります。ここでは、新卒採用における採用フローの作り方についてご紹介します。
4-1.募集する
採用フローのスタートは、募集活動です。募集段階で行うアクションは、広報活動や会社説明会があげられます。募集情報や事業内容などを学生に伝え、入社希望者を集める段階です。広報活動にはさまざまな手法があります。
会社説明会は、プレエントリーしてきた学生が自社への理解を深め、本エントリーへと促すために開催されます。まず、採用フローにおける募集のフェーズについてご紹介します。
4-1-1.広報活動
広報活動は自社が採用活動を行っていることを学生に認知させ、会社との接点を作ることを目的に行います。
広報活動の手法には求人広告を出して学生のエントリーを待つ従来からの手法や、自社サイトや採用サイトを作って情報を積極的に配信する、SNSなどを活用するといった方法があります。1つに限定せずさまざまなメディアを利用することで、幅広く周知を広めて効果的な母集団形成ができるでしょう。
また、「攻めの採用」として会社が学生に直接アプローチするダイレクトリクルーティングという手法もあります。主にSNSを利用し、必要な人材に対して記者側から直接コンタクトを取ってスカウトする方法です。
4-1-2.会社説明会
会社説明会は、プレエントリーもしくは本エントリーした学生に向けて開催します。自社独自の説明会を行うほか、合同説明会や就活セミナーへの参加を行う場合もあります。求人広告だけではわからない情報を提供し、自社への理解を深めてもらうことが目的です。
会社説明会では、時間をかけて自社の魅力をアピールでき、学生からの質問に答えたり、学生と個別に話す時間を用意したりできるというメリットがあります。
一方、合同説明会は会社説明会よりも多くの学生が参加するため、自社を広くアピールできるのがメリットです。また、参加しているほかの企業の情報を集められるという利点もあります。自社の知名度がまだ低く、会社説明会だけでは学生が集まりにくい会社に有効です。
4-2.選考する
募集の次の段階に行うアクションは、選考です。選考には書類選考や筆記試験、面接があり、会社によっては適性検査を行う場合もあります。
書類選考では応募書類を精査し面接は1人ずつ受ける方法のほか、グループ面接やグループディスカッションといった方法もあります。
選考におけるアクションについて、詳しくみてみましょう。
4-2-1.書類選考・筆記試験
書類選考では、履歴書やエントリーシート、成績証明書などの応募書類を精査します。自社が求める人物像の条件を最低限満たしているかをチェックする段階です。
近年は、自己PRをする動画の提出を求める会社も増えています。学生のエントリー数が多い会社では、面接時間を確保しなくて済む、短い時間で応募者の雰囲気や人柄がわかるなど、メリットが少なくありません。書類選考をスムーズに運ぶためには、あらかじめターゲットを詳細に設定しておくことが大切です。
筆記試験は一般常識や時事問題などについての問題を出すもので、適性検査は職業適性や性格特性などをチェックする試験です。自宅からパソコンで試験や検査を受けるケースもあります。
4-2-2.面接
書類選考や筆記試験などを通過した学生は、面接に進みます。面接は、採用担当者が学生に対し質疑応答をして仕事に対する意欲や適性などの確認を行い、お互いの関係を深めることを目的に行われます。
1人ずつ行う方法のほか、グループ面接やグループディスカッションなどの方法もあります。面接は質問を通し、学生が自社の求める人材としてふさわしいかを確認する重要な機会です。ここで判断を誤ると採用のミスマッチにつながるため、1度でなく数回に分けて行うのが一般的です。
一次面接では基本的な能力を見極めます。主に実務担当者が担当し、担当者の質問にきちんと答えられるか、コミュニケーション力などをチェックします。一次面接をクリアした学生は二次面接以降に進み、社長などの役職者が対応して自社の求める人物像に適合するかを判断するという流れです。
4-3.内定を出す
3つ目の段階は、内定を出して入社するまでのフォローアップです。自社の求める人物像に合う学生を選んで内定を出し、入社までフォローします。
選んだ学生には内定通知を送付し、内定式や研修を行うという流れです。内定通知を送る際は、同時に不採用の学生にも通知を送らなければなりません。それぞれのフェーズをみていきましょう。
4-3-1.内定通知
新卒の場合、内定通知を送るタイミングには決まりがあります。経団連は従来からある就活ルールを廃止することを発表しており、今後のルール策定は政府が主導することになりました。ただし、学生の就職活動はしばらくの間、従来の日程で行われることになっています。
内定通知の解禁日は4年生の10月からと決められており、それ以前に内定が決まっても会社は内定通知を出すことができません。そのため、10月以前に内定を出して人材を確保したい場合は、「内々定通知」という形で伝えます。10月以前に内々定通知を出し、内定通知の解禁日である10月1日には内定式を開催するという会社も少なくありません。
内々定と内定はほとんど同じ意味ですが、内々定は「採用予定通知」であり、労働契約には至らないものです。内定は「始期付解約権留保付労働契約」という正式な労働契約である一方、内々定はその前段階で、労働契約による拘束がありません。
内定は内定通知書で通知を行い、内定者から内定承諾書を受け取ることになります。また、不採用になった学生には不採用を知らせるメールもしくは文書を送りますが、内定辞退に備えて送付のタイミングには注意が必要です。
内定者の承諾通知が届く前に不採用の通知を送ってしまうと、貴重な候補者を失うことにもなります。内定承諾を受け取り、内定者の入社が確定してから送付するとよいでしょう。
ただし、学生は結果の通知次第で行動を変えようと待機していることが多いため、不採用の通知を必要以上に遅くすることは避けましょう。
参照元:経団連「2022年度卒業・修了予定者等の就職・採用活動に関する要請について」
4-3-2.内定フォロー
内定を出して承諾を受けた学生に対し、入社するまでフォローを行います。内定辞退を防ぎ、入社に向けてモチベーションを高めてもらうためです。
内定フォローの目的はさまざまで、主に以下のような手法で行われます。
- 数回の面談
- 選考の振り返りを掲載した社報の送付
- 内定者懇親会
- 職場見学
- 社内行事への参加
- 入社前研修
面談は入社前に内定者の意思を確認し、不安や疑問を解消して入社の意思を固めてもらう目的で行います。
社内報の送付は各部署の業務内容を説明し、入社後の具体的なイメージを作ってもらうために効果的です。内定者懇親会は内定者同士の交流で距離を縮め、関係性を深める役割をします。
職場見学や社内行事への参加は会社への理解を深め、入社してから早く職場になじめるという効果が期待できるでしょう。入社前研修は、社会人としての基礎知識や心構えを身につけてもらうために効果のあるフォローです。
5.中途採用の採用フロー
中途採用の採用フローは、新卒とは異なります。
中途採用を行う目的は、事業拡大のための補充や退職者の後任など事情に応じてさまざまです。まず、採用フローを作成する前に、配属される各部署とも連携し、採用したいターゲットを設定することが必要になります。
選考をスムーズに行いミスマッチを防ぐためには、必要な能力やスキル、現場が求める人物像を明確にしておかなければなりません。さらに、中途採用の採用フォローは新卒とどのように違うのかみてみましょう。
5-1.新卒との違い
中途採用の採用フローでは、一般的に新卒採用のような会社説明会は行いません。会社説明は面接時に行い、筆記試験や適性検査なども実施しない場合もあります。
新卒採用は多くの候補者を選考するため筆記試験などの選考方法も必要になりますが、比較的候補者の少ない中途採用は個人面接が中心で、キャリアや職種に応じて筆記試験などを行う場合もあります。
書類選考は新卒の場合、履歴書とエントリーシートを提出しますが、中途採用では履歴書と職務経歴書で選考します。また、新卒採用は学生のポテンシャルを見極めるため長期的な採用スケジュールが必要になるのに対し、中途採用はスキルや経験で即戦力となる人材を選ぶため、比較的短期間で完了します。
6.【新卒・中途】採用フローの効果を高めるポイント
採用フローの効果を高めて採用活動を成功させるためには、フローをただ設定するだけでなくポイントを押さえることが必要です。採用フローは職種やポジションで使い分け、選考方法や面接回数などを適切な内容に設定するようにしましょう。
また、フローの工程ごとに歩留まりの目標を設定して効果検証していくことも大切です。採用フローの効果を高めるポイントについて、ご紹介します。
6-1.職種で採用フローを使い分ける
採用フローは、職種やポジションにより使い分けることが大切です。経理や営業、営業などは必要なスキルは異なります。また、若手採用や管理職候補の募集など、ポジションの違いにより採用フローで重視すべき点も異なってくるでしょう。
実施すべき試験や適性検査、面接で担当する者も変わってきます。管理職の雇用で人材を適切に見極めたい場合は、面接回数を多くするなどの対応も必要になるでしょう。
6-2.各工程の目標を設定・改善する
採用方法が順調に進んでいるかを判断するためには、あらかじめ各工程の歩留まりの目標を設定するとよいでしょう。歩留まりとは、採用の各工程に進んだ人数の割合です。応募数や選考に進んだ人数、内定数、実際に入社した人数を把握するために用います。
選考の工程で計算する場合、歩留まり率の計算式は以下のとおりです。
「選考通過数」÷「選考対象数」×100
例えば、応募者50人のうち書類選考に通過した人は10人だった場合には、「書類選考通過者数10人」÷「応募者数50人」×100=20%となり、応募者に対し、20%が書類選考を通過したことになります。目標と実際の歩留まりを確認し、目標よりも下回っている工程がないか確認しましょう。極端に低い数値がある場合、その工程に問題がある可能性があります。
例えば、書類選考の人数が低い場合、選考基準に問題がないか確認が必要です。会社説明会の後にエントリー数が少ない場合、説明会の内容や運営に課題があるのかもしれません。面接の通過者が極端に少ない場合は、採用条件について各面接官の認識に違いがある可能性があります。
歩留まりを算出して工程ごとの課題がわかった場合、改善方法を考えなければなりません。以下の工程における改善方法をみてみましょう。
募集段階の課題は、「求める人材からの応募が集まらない」「そもそも応募者が少ない」などです。そのような場合は、採用手法の見直しやターゲットの再設定が必要となります。
選考段階の課題は、「書類選考や面接の通過者が少ない」「面接の辞退者が多い」などです。審査基準や面接の日程の見直し、面接担当者の認識を擦り合わせるなどの改善が必要になります。採用基準の見直しや、全担当者の共有を徹底することも必要になるでしょう。
内定・入社段階の課題は、内定辞退です。学生や求職者のほとんどは複数の企業に応募しており、内定辞退が出る可能性はどの会社にもあります。
内定辞退が起こる原因の多くは、内定フォローが足りず、入社へのモチベーションが保てないことです。学生や求職者の入社意欲を保つため、十分なフォローの施策が必要といえるでしょう。
7.採用フローを作成して効率的な採用活動を行おう
採用フローとは人材募集から入社するまでの流れのことで、新卒採用や中途採用を実施する際に作成が必要になります。採用フローの作成により一連の流れを関係者が共有でき、各工程に問題があれば振り返って改善が可能です。
フローは新卒と中途採用で異なり、職種やポジションでも違います。採用の実施を決めたら採用フローの作成から始め、採用活動を成功させましょう。