「採用基準」とは、自社に合う人材を見つけるための基準です。採用のミスマッチを防ぎ効率的な採用活動を行うためには、採用基準の設定が欠かせません。
採用基準は、新卒と中途採用では設定方法が異なります。中途採用は即戦力を求めるのに対し、新卒はポテンシャルを見極めることが大切です。ここでは、採用基準の内容や、新卒と中途採用の違いについて紹介します。
採用基準は、自社に必要な人材を効率的に採用するために必要となる指標です。採用基準を適切に設定できない場合、ミスマッチが起こり早期離職が発生する可能性があります。また、明確な基準を設定しなければ人事と現場に判断の違いが起こり、面接通過率が悪くなる場合もあるでしょう。採用活動を成功させるには、採用基準の適切な設定が不可欠です。
新卒採用と中途採用では採用基準が異なります。基本的に社会人経験のない新卒の採用基準は能力ではなくポテンシャルであり、熱意や会社が求める人物像に合致するかを見極めることが大切です。
これに対し中途採用は即戦力として必要なスキルや能力などをしっかりと身につけているか、応募に至った背景はどのようなものかをチェックするための判断基準を設けます。
採用基準が重視されるのは、無駄のない効率的な採用活動を進めて採用活動に成功するためです。判断基準が曖昧で希望する人材の採用がうまくいかなければコストや労力がかかり、適切な人材配置を予定した事業計画にも支障が出る可能性があります。
求める人材の見極めができず、採用しても早期離職者が出る恐れもあります。採用基準が重視される理由を具体的にみてみましょう。
採用基準が重視されるのは、早期離職を防止するためです。自社が求める人物像を詳細に定め、応募者がその条件に合致するかをしっかり見極めなければ、ミスマッチが起こる可能性があります。企業風土や業務内容が合わないなどで早期離職につながることもあるでしょう。
採用活動にかけた多くの時間とコストが無駄になり、応募者にとっても大切な時間を失うことになります。企業風土になじみ、能力を発揮できるかを選考時に見極めるため、適切な採用基準の設定が必要です。
共通の明確な採用基準を定めなければ、人事や現場、経営陣のそれぞれが求める人物像にギャップが生じ、面接通過率の低下につながります。
人事の判断では選考に通過しても、現場の判断では業務の適任ではない、もしくは経営陣が求める人物像ではないなど、それぞれの判断に食い違いが出て通過できない可能性があります。
このような判断の相違をなくすため、誰もが同じ認識のもとで判断できる採用基準が必要です。
面接は1回で終わらず、2次、3次と複数回行うのが一般的です。それぞれ異なる面接官が担当するため、採用基準が曖昧だと各面接官の主観が入る可能性があります。
それぞれの価値観で選んでしまうと公平性が失われ、その結果自社に合わない人材を選んでしまう場合もあるでしょう。主観が入らず、誰が担当しても同じ判断ができるような明確な基準を設定しなければなりません。
新卒採用や中途採用において採用活動を成功させるための採用基準を定めるには、まず以下のような採用基準が重視される理由の確認が必要です。
これらの目的を達成するためには何が必要かを考え、設定することが大切です。ここでは、中途採用の採用基準について決め方の手順をご紹介します。
採用基準の設定には、モデルとなる社員を選んでコンピテンシーを分析することから始めましょう。コンピテンシーとは、業務に高い能力を発揮して成果を上げている社員に共通して見られる行動特性のことです。自社で活躍している従業員のコンピテンシーを分析して採用基準を設定することで、入社後の活躍が期待できる人材を採用しやすくなります。
分析・設定は、以下の手順で行います。
面接での質問では、その行動モデルを基準にした具体的な質問を行います。例えば、以下のような質問です。
「前職で最も成果を上げたエピソードは何か」
「そのとき、どのような工夫や対策を行ったか」
「なぜ、そのような対策をしようと考えたか」
成果を上げるための行動について質問をすることで応募者の行動特性を確認でき、自社に合った人材かの判断ができるでしょう。
次に、求める人物像を明確にします。面接官ごとの判断が食い違わないよう、現場や経営陣へのヒアリングは必須です。
業務で必要となる能力やスキルは、現場がより正確に判断できるでしょう。また、採用活動は会社の事業計画を達成するためであり、採用基準は会社の経営方針に合わせなければなりません。そのため、経営陣の求める人物像の確認も重要です。
求める人材は、事業内容や業績によって変わります。採用活動を行うごとにコンピテンシーの分析やヒアリングを行い、求める人材の判断基準を明確にしていきましょう。
求める人物像を明確にしたら、具体的な評価項目を決定します。評価項目がかぶるのは効率的でないため、1次から最終面接まで評価する項目を分けるのがよいでしょう。その際は、ほかの面接でどのように評価されたかがわかるようにしておくことが大切です。
評価項目は、学歴や資格など客観的・具体的に判断できる項目と、仕事に対する考え方や取り組み方など客観的に判断しにくい要素の両面を考慮しながら、具体的に設定します。定性的な部分で自社に合う人材を見極めることが、ミスマッチを防ぐために重要です。
項目を決定したら、求める人物像をもとに項目の優先順位を定めます。例えば即戦力が必要であれば、経験年数やスキルが最優先項目になるでしょう。
最後に、評価項目ごとの評価基準を定めます。項目は適切でも、実際の評価が適切でないとミスマッチにつながるため、評価の尺度は明確でなければなりません。
一般的には項目に対し、1を不足として5が十分要件を満たす5段階評価を定量的に把握できるよう設定するという方法がとられています。例えば、項目を具体的な質問に置き換え、質問に対する回答内容をレベル別に評価するという方法にすれば、判断がスムーズになるでしょう。
新卒採用と中途採用では、採用基準を設定する際のポイントが異なります。業務経験がほとんどない新卒の採用で重視されるのは、入社への熱意と企業風土に合う人物像です。
具体的には、以下の項目が重視されるポイントとなります。
一方、中途採用で重視されるのは即戦力になるスキルや経験です。
それぞれ、詳しくみていきましょう。
社内外の人と円滑に意思疎通をとり、信頼関係を築くためにはコミュニケーション力が欠かせません。面接官とスムーズにやり取りできるかを見るだけでなく、より自社の業務に合ったコミュニケーション力があるかを見極めるとよいでしょう。
具体的には、以下のようにスキルを細分化して設定します。
面接の受け答えでこれらのスキルが確認できるか、しっかりチェックしましょう。
主体性とは、さまざまな仕事に対し自ら積極的に行動できることです。上司の指示を待つだけでなく、自分の意思を持ち自分で考え行動に移すことができる人材が求められています。
主体性を持つ人材は自分で課題を発見し、対策を考えることができます。成長スピードも速く、企業の発展に貢献できるでしょう。将来、チームリーダーとなって事業を推進する存在となることが期待できます。なお、面接では学生の成功体験を質問することで、主体性があるかどうか判断します。
チャレンジ精神とは、困難な仕事や経験したことのないことにも熱意を持って取り組む心構えです。どんなことにも積極的に行う姿勢がある人材は、多くの会社で求められています。
変化の激しい時代において、企業も新しい事業へのチャレンジなど変化していくことが求められています。そのため、事業拡大や事業計画の変更に伴う難しい仕事にも積極的に挑戦できる人材は、会社の成長に欠かせない存在といえるでしょう。
組織の中で働くうえで、協調性は欠かせません。たとえスキルや能力が高くても、周囲との協調性がなければ仕事をうまく進めることはできないでしょう。
職場になじみ、周りと協力し合いながら仕事ができる人材が求められます。面接では、チームワークで成功へと導いたエピソードを質問することで、協調性を確認できるでしょう。
中途採用では即戦力を求めているため、募集する職種に役立つスキルと経験があるかが重要な採用基準です。必要な経験年数は職種によって異なるため、どの程度の経験が必要か明確に決めておいてください。
自社の社風に合う人材かどうかの確認も必要です。どのような人材が自社に適合するか明確な基準を作り、認識を共有しておきましょう。
採用基準に問題がある場合、以下のようなことが起こります。
転職市場の動向と合わなかったり、採用基準が高かったりする場合は応募者が集まらないことにもなります。応募は集まっても書類選考の通過者が少ないという事態にもなり得るでしょう。
また、解釈の幅がある採用基準の場合、人事と現場担当者に合否の不一致が起こる可能性もあります。
ここでは、採用基準の見直しが必要なケースについてみていきましょう。
募集をかけても応募数が極端に少ない場合、採用基準に問題がある可能性があります。採用基準が高すぎる、もしくは基準に対して給与が低いといったことが考えられます。
採用条件が多い場合は必須条件と歓迎条件に分けるなど、ハードルを下げる工夫が必要です。また、近年は労働人口の減少により獲得競争が激しく、採用基準が高くなくても他社より条件が悪いなどの事情で応募が集まらない場合もあるでしょう。
応募が集まらない場合は、転職市場の動向や競合他社の動きを調査することが必要です。募集する職種の有効求人倍率が高い場合や他社の求人件数が多い場合は、状況に合わせて採用基準の見直しも必要になるでしょう。
十分な応募数があっても書類選考の通過者が少ない場合も、採用基準に問題がある可能性があります。書類選考の採用基準が厳しすぎる、もしくは項目が多すぎて採用の入り口を狭くしているといったことが考えられます。一部の項目は面接の採用基準に回すなどして、通過の枠を広げるよう見直しが必要です。
また、現場の求める人物像をそのまま採用基準にしていると、すべての能力を満たすのは難しくなるかもしれません。まず即戦力となるためにこれだけは必要というスキルを決め、採用基準もそれを優先項目に絞り込むことが必要です。それ以外に必要なスキルは、業務を経験しながら身につけるようにするという対応も必要となるでしょう。
採用基準が曖昧な内容のままでは、人事と現場担当者に合否の不一致が出る可能性があります。採用のミスマッチで早期離職や入社辞退が起こる原因となるほか、自社で活躍できる人材が不採用になりやすくなります。
解釈に幅が出る内容は避け、明確な基準を設けなければなりません。実績やスキル、経験年数などの定量的な事項は誰でも齟齬なく判断が可能ですが、価値観や仕事への姿勢など解釈に幅の出る事項を曖昧にすると、離職の原因になります。
数値化・マニュアル化されにくい部分は、自社独自の評価基準を作って簡潔に判断できるようにしておくことが必要です。
採用基準を見直す際は、いくつか注意したい点があります。まず、採用基準の設定は現場の声を反映させることが不可欠であり、人事や経営層だけで決定することは避けましょう。基準には経営方針に合わせることも重要です。
また、就職差別には十分注意しなければなりません。ここでは、採用基準の見直しで注意したいことをご紹介します。
経営層や人事部門だけで採用基準を考えると、ミスマッチが起こる可能性があります。経営層の考える人物像と、現場のニーズは必ずしも一致するものではありません。
実際に現場で働いている人の声を聞いたうえで、採用基準の設定を行うことが大切です。ただし、現場の従業員はそれぞれ、新入社員のあり方に対してさまざまな主観を持っています。
単に「このような人材が理想」という意見を集めたのでは、評価基準として不適切な内容も含まれてくるでしょう。
そのため、現場の声を集める際には、具体的に内容を示しておくことが大切です。
一例として、以下のような内容があげられます。
現場で実際に活躍し、成果を出している人物像を明確にした上で、具体的な要件を決めていくとよいでしょう。
採用基準は会社の経営方針に合わせることも必要です。どのくらいのコストでどれだけの人材を採用できるかという経営的な視点も忘れてはいけません。
また、将来のビジョンや会社の方向性と合わせることも大切です。採用基準が会社の方向性やビジョンに合っていれば応募者に具体的な事業内容や企業風土などを説明しやすくなり、ミスマッチを防ぐことができるでしょう。
採用基準を見直す際は、項目の設定が就職差別にならないよう注意しなければなりません。就職差別とは、会社が応募者の資質や能力と関係のない事柄や、本人の責任でない事項などで採用・不採用を決定することです。
採用にあたっては、以下の2点を心がけなければなりません。
選考時には、以下の内容を応募用紙等に記載させ、もしくは面接で尋ねて把握することは禁じられています。
(本人に責任のない事項の把握)
(思想信条など本来自由であるべき事項の把握)
これらの内容が採用基準に含まれないよう、十分注意が必要です。
なお、採用基準とは異なりますが、身元調査の実施や合理的・客観的に必要性が認められない選考段階での健康診断は、本人に責任のない情報が入る可能性があります。就職差別につながる場合があるため注意しましょう。
採用基準の目的は採用活動を成功させ、自社に必要な人材を確保することです。そのためには現場の声を聞き取り、共通の採用基準を明確にしなければなりません。また、経営陣と話し合い、経営方針に合わせた採用基準を設定することも大切です。
単に採用基準を定めることを目的とするのではなく、どうしたら事業計画の成功のために必要な人材を確保できるかを考え、採用活動の成功へとつなげなければなりません。