採用ブランディングの目的や注目される背景について、詳しくみていきましょう。
採用ブランディングの目的は、学生や求職者だけでなく、それらを取り巻くさまざまな人々を対象にして企業イメージを向上させることです。
採用サイトや会社説明会などあらゆる場所でブレのない一貫した情報発信をしていくことで、求職者の信頼や共感を獲得します。
採用ブランディングは、短期間で成し遂げるものではありません。改善を重ねながら長期的視野で取り組むことで、ブランドとしての認知を定着させることができます。
採用ブランディングが注目される背景には、近年の少子高齢化があります。労働力人口の減少により人材不足が続くなかで、企業が求める人材の獲得は今後ますます難しくなると予想されています。そのような状況において企業はこれまでの採用戦略を見直し、より積極的に広報活動を進めなければなりません。
SNSの普及も、採用ブランディングが求められる理由のひとつです。受け取る情報量が増えるなか、求職者が間違った情報でマイナスの企業イメージを抱かないためにも、自社から正しい情報を発信していく採用ブランディングの役割は重要になっています。
採用ブランディングの推進により、企業の認知度が向上します。求職者だけでなく、これまで接点がなかった転職潜在層も自社の情報を目にする機会を増やせるためです。
中小企業やベンチャー企業などは認知度が低いことで採用活動が困難になることも多く、認知度の向上はスタートラインに立つために欠かせません。多くの層に認知されることで、将来的な就職先候補としてもらえる可能性が高まります。
採用ブランディングにより自社が求めるターゲットに向けて一貫したメッセージを発信することで、求職者の理解が深まります。自社について十分な知識を得た人材からの応募が増え、採用のミスマッチを減らすことが可能です。効率の良い採用活動ができ、採用コストの削減を削減できます。
また、日々の取り組みにより自社の認知度を上げることで、口コミなどの情報拡散も期待できます。そのため、広告媒体にかけるコストを減らすことも可能です。
採用ブランディングで認知度を高めることで、応募者が増加するというメリットもあります。自社の魅力を発信していくプロセスで求める人物像がより明確になることで、効率的かつ効果的な訴求ができるためです。
これまでメッセージが届かなかったターゲット層にもアプローチできるようになり、応募者の増加が期待できるでしょう。
採用ブランディングにより、同業他社との違いや自社ならではの魅力を明確にアピールできます。その結果、他社と差別化して競争に巻き込まれにくいのもメリットです。
特定の業界・業種に絞って就職・転職活動する求職者に、他社との違いを示すことで、数ある転職先候補のうちのひとつではなく「この企業で働きたい」と思われる企業にすることができます。
採用ブランディングは自社の魅力を発信してファンを増やす取り組みでもあり、自社に共感する求職者を採用することでミスマッチが起こりにくくなります。その結果、早期退職者が減り、人材の定着率アップを図れる点がメリットです。定着率が上がれば、採用コスト削減にもつながります。
また、自社の社風や価値観に共感して入社した人材はモチベーションも高く、入社後の活躍も期待できます。
採用ブランディングにより自社が魅力的な企業として広く認知されると、既存社員も企業の一員としての誇りや喜びを感じます。仕事へのモチベーションが上がり、生産性も高まるでしょう。
また、採用ブランディングで自社の理念や価値観を発信していく過程で会社の魅力を再認識することができ、あらためて社員としての自覚が芽生えます。
採用ブランディングを進めていく際のデメリットについて、さらに詳しく解説します。
採用ブランディングの取り組みでは一貫した情報発信を行うために、人事部や採用担当だけでなく、全社的に行う必要があります。全社員が認識と行動を統一させなければなりません。
発信している内容やメッセージと現場社員の認識にズレがあると、採用ブランディングがうまくいかないことになります。意識の不一致をなくすためには、外部へ情報を発信するだけでなく、社内の意思統一や従業員エンゲージメントを向上させるなどの施策も必要になるでしょう。
採用ブランディングの効果が出るまでには、時間がかかります。短く見積もっても、2〜3年はかかると考えてよいでしょう。PDCAを繰り返し、改善を重ねながら進めていく必要があります。
時間はかかるものの、採用ブランディングに取り組むことは着実に自社の採用力を高めることにつながります。長期的な計画を立て、腰を据えて取り組むことが大切です。
採用ブランディングは一度情報を発信したらそれで終わりではなく、継続して行うことが必要です。採用サイトは、常に情報を更新しなければなりません。古い情報のままでは、マイナスのイメージを持たれてしまう場合もあります。
自社のターゲット層がどのような情報を必要としているのかを把握し、一貫した戦略のもとに継続的な情報発信が求められます。
まず、現状における自社の立ち位置を確認することから始めます。採用市場におけるトレンドや他社の状況などを調べるとともに、自社の商品やサービス・制度などの特徴を分析します。他社との違いや独自の強みなど、アピールできるポイントを把握しましょう。
分析には、3C分析が役立ちます。3C分析とは、外部環境である「Customer(市場・顧客)」「Competitor(競合)」と、内部環境である「Company(自社)」について分析する方法です。マーケティング戦略の策定に用いられます。
採用マーケティングではCustomerを求職者に、Competitorを採用市場における競合他社に、Companyを自社の強みに置き換えて分析ができます。
次に、自社が求める人物像を設定します。自社に必要な人材を明確に絞りこむことが大切です。ターゲットを絞り込まなければ、自社が必要としない人材の選考にコストをかけることになり、採用のミスマッチを招くことにもなります。
スキルや能力だけでなく、性格や行動パターン、人間関係などさまざまな側面から詳細に絞り込みを行いましょう。設定が詳細であるほど、効率的な採用活動ができます。
人物像を設定したら、それに向けてどのようなメッセージを発信するかというコンセプトを定めます。採用コンセプトが曖昧のままでは、情報の発信方法によって求職者に与える印象が変わり、ブランディングがうまくいきません。情報発信の媒体は多種多様ですが、コンセプトは一貫させることが大切です。
コンセプトを作る際は、自社分析で把握した自社の強みや立ち位置について、どのようにアピールすればターゲットとなる人物像に伝わるかを考えます。
採用ブランディングに関わる情報をどのように発信するか、具体的な手段を設計します。発信手段には、形式と媒体、タイミングの3点で考えます。
これら3つを設定した人物像に合わせて設定しましょう。
採用ブランディングには継続的な取り組みが必要なため、適したスキルを持つ担当者や予算の確保も考えなければなりません。
発信手段を決めたら、実際に情報発信を行います。採用ブランディングは、長期的・継続的な運用が必要です。移り変わる採用市場やターゲット層のニーズを確認しつつ、反応や成果を見ながらPDCAを回して改善をしていきましょう。
PDCAは、「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(評価)」「Action(改善)」のプロセスを循環させ、品質を高める手法です。業務効率を高め、目標達成に役立ちます。
運用では、KPIの設定も有効です。KPIとは重要業績評価指標のことで、最終目標の達成度を示す指標です。「半年以内に10名採用する」など、明確な時期と数値を設定します。ゴールまでの過程でKPIを細かく設定し、達成度を管理しながら最終目標を達成する手法です。
KPIの設定とPDCAにより、採用ブランディングをより円滑に進めることができます。
また、全社をあげて取り組み、社内の意思統一も図らなければなりません。今後、人材不足がますます深刻化するなかで、採用ブランディングは企業の生き残りと成長のために不可欠な手法ともいえるでしょう。