2.採用マーケティングのメリット
採用マーケティングのメリットには、自社が求める人材とのマッチ度向上や優秀な人材からの応募増加といった人材に関するものだけでなく、採用コスト削減や早期離職防止などのコスト削減効果もあります。
ここでは、採用マーケティングを導入するメリットについて解説します。
2-1.マッチ度を高められる
採用マーケティングの導入により、自社が求める人材とのマッチ度を高めることができます。採用マーケティングでは、自社が求める人物像を設定することで、その人物像に対するアプローチをかけることが可能です。
採用情報だけでなく、自社の理念や文化、福利厚生などの魅力を発信しているため、応募者は自社のことを理解した状態で応募しています。そのため、ミスマッチを原因とした内定後の辞退や入社後の早期離職の割合削減も期待できるのです。
また、早期離職のリスクが下がることにより、長期的に見た採用コストや教育コストの削減にもつながります。さらに、欠員時の機会損失や残業時間の増加といった、表には見えにくいコストの抑制にもつながるでしょう。
2-2.優秀な人材からの応募を獲得しやすくなる
2つ目のメリットは、優秀な人材からの応募が見込めることです。採用マーケティングでは、求職者だけでなく、まだ転職を考えていない潜在層に対しても発信します。
潜在層に対する認知を高めることで、応募者数の分母が増えることになります。応募者数が増えれば優秀な人材が応募してくる可能性も高まります。結果として、優秀な人材の確保につながるのです。
2-3.潜在層へのアプローチが可能になる
前述したように、潜在層に対するアプローチができることもメリットです。労働人口の減少が進む昨今では、採用ブランディングとして、募集していない時期でも情報発信することにより、まだ転職や求職を考えていない層にもアピールできます。
自社の魅力を潜在層にも認知してもらうことで自社のファンができ、いつか「この会社で働きたい」と思ってもらえます。そのような活動を続けることで、いざ募集をかけた際や、潜在層が転職活動を始めた際に効果が現れる可能性があります。
2-4.採用コストを削減できる
4つ目のメリットは、採用コストを削減できることです。これまでの採用活動では、ターゲット外となる層に対しても広告費をかけているケースがありました。
採用マーケティングでは、求める人物像をペルソナ設定し、ペルソナに向けて訴求します。それにより、不要な広告費がかかることがなくなるため、採用コスト削減につながります。
3.採用マーケティング導入のステップ
採用マーケティングは、正しい手順を踏むことで効果が出ます。自社分析を行い、採用ターゲットを設定したうえで、ニーズの調査やカスタマージャーニーの設計に取り組みましょう。
施策はただ実行するのではなく、PDCAサイクルを意識することで、質の向上や今後の採用活動に活かせます。ここでは、採用マーケティングを導入する際の手順について解説します。
3-1.ステップ1:自社分析を行う
はじめに自社分析を行います。自社の経営理念や戦略を見直し、強みと弱みを分析します。強みであれば、特定の分野やサービスにおいて競合よりも優れている点が該当します。職場環境であれば、福利厚生や設備が挙げられます。
弱みとしては、業界やサービスの認知度の低さや若手が少ない社員構成であることなどが該当します。弱みを認識したうえで、強みをどうやってアピールするのかを検討しましょう。
3-2.ステップ2:採用ターゲットとペルソナを設定する
自社分析ができたら、採用ターゲットとペルソナを設定します。マーケティング戦略では、ターゲットを決めることが重要です。採用マーケティングでのターゲットは求職者ではなく、自社が求めている人物像です。
自社で活躍できる人材の特徴や条件を洗い出し、優先順位を決めることで、ペルソナを設定します。ペルソナを明確に設定することで、集中的にアプローチをかけることができるため、コストと労力の消費を抑えることができます。
3-3.ステップ3:採用ターゲットのニーズを調査する
採用ターゲットを決めたら、そのニーズを調査します。これまでの採用活動から得た情報だけでなく、SNSによるアンケート調査でも情報を集めることが可能です。
求人広告代理店であれば、すでにアンケートを実施している可能性があります。自社で調査する場合の費用対効果によっては、採用活動のプロである求人広告代理店に相談するのも一つの手段です。
3-4.ステップ4:カスタマージャーニーを設計する
ニーズの調査が終わったら、カスタマージャーニーを設計します。「カスタマージャーニー」とは、求職者の応募から採用に至るまでの過程に対し、行動や感情をストーリーとして整理したものです。
カスタマージャーニーの設計により、情報収集や検討段階、選考段階といった各フェーズに対して「どうやって求職者と接点を持ち」「どのようなメーセージを訴求すれば」内定に至るのかを考えることができます。
効果的な採用活動につなげるためにも、カスタマージャーニーの設計は欠かせません。
3-5.ステップ5:コンテンツを企画する
カスタマージャーニーを設計したら、コンテンツを企画します。ニーズ調査結果やカスタマージャーニーで整理したストーリーをもとに、各フェーズでの求職者に対するアプローチを考え、広告やイベント、メディアといったコンテンツを企画します。
記事や動画を作成する場合、専門の技術が必要です。ただし、最近では簡単な操作で作成できるCMSや動画編集ツールも存在しています。費用対効果を考え、社内で作成するのか外注するのかを検討しましょう。
3-6.ステップ6:採用施策を実施する
コンテンツを作成したら、採用施策を実行します。施策を進めながら、応募状況やSNSでの反応を確認しましょう。状況や反応を確認することで、施策のやり方や方向性が合っているのかを確認できるため、施策の質も上がります。
また、社会の変化が採用活動に影響を与えるケースもあります。ニュースやSNSで情報を収集し、常にアンテナを張ることも大切です。
3-7.ステップ7:PDCAサイクルを回す
施策の実行とともに、PDCAサイクルを回すことを意識することが大切です。採用に限らず、施策は実行したら終わりではありません。会社がある限り、採用活動は続きます。
ステップ6でも前述していますが、施策の状況や反応を確認し、やり方や方向性が合っているのかを振り返りながら継続的に改善することで、施策の質が向上します。次の施策につなげるためにも、PDCAサイクルを意識して取り組みましょう。
4.企業が採用マーケティングを成功させるポイント
ここでは、採用マーケティングを成功させるポイントについて解説します。採用マーケティングを成功させるためには、自社に合った採用手法を活用することや、適切なチャネルを選ぶことが大切です。
また、チャネルから取得できるデータを整理し、効果や傾向を分析することや、メッセージを工夫することで成功の確率は向上します。
4-1.自社に合った採用手法を活用する
採用マーケティングを成功させるポイントとして、自社に合った採用手法を選ぶことが挙げられます。近年では、人材紹介やリファラル採用、ダイレクトリクルーティングなど、採用手段が多様化してきました。
流行だからという理由で導入した結果、採用活動がうまくいかないケースも存在します。自社の業界やサービス、文化に適した採用手法を選ぶことで、自社が求める人材の獲得につながります。手法の特性を理解したうえで、最適な採用手法を選択しましょう。
4-2.適切なチャネル選びを行う
適切なチャネルを選ぶことも採用マーケティングを成功させるポイントです。チャネルとは、応募者へのアプローチの手段を指しており、広告やSNS、求人サイト、ハローワークといったものが挙げられます。
適切なチャネルは、ターゲットの年齢や地域、業種によって異なります。年齢や地域によっては適したチャネルがハローワークになる場合もあるのです。特殊な職種の場合、ダイレクトリクルーティングや人材紹介会社を併用することで効果が上がる傾向があります。
流行りのチャネルを選ぶのではなく、ターゲットの条件を確認したうえで、適切なチャネルを選択することが大切です。
4-3.データ分析を行う
データ分析の実施も採用マーケティング成功のポイントです。採用活動では、チャネルごとの応募数や属性、SNSのフォロワー数といったさまざまなデータの取得が可能です。データは継続して測定することで、効果や傾向が見えてきます。
これらのデータの整理・分析により効果測定ができ、施策に対するPDCAサイクルを回すことが可能です。施策の質が向上すれば効率良く予算を活用できるため、コスト削減にもつながります。
4-4.伝えるメッセージを工夫する
伝えるメッセージを工夫することもポイントです。採用活動では、求人広告媒体や自社のホームページ、SNSといったチャネルでさまざまなメッセージを掲載しています。
伝えたい内容を記載すればターゲットに響くわけではありません。自社の魅力をどのように伝えるのかを工夫することで、ターゲットの目に留まります。試行錯誤しながらメッセージをつくりましょう。外注し、プロの手を借りることも一つの方法です。
5.採用マーケティングで活用できるフレームワーク
「フレームワーク」とはさまざまな情報を整理し、分析するための枠組みのことです。マーケティングに限らず、ビジネスでの計画立案や問題解決にも使用されています。ここでは、採用マーケティングで活用できるフレームワークについてご紹介します。
5-1.3C分析
「3C分析」とは、Cで始まる以下の3つの言葉の頭文字を取った用語で、自社のマーケティング活動における環境要因を分析するフレームワークです。
- Company:自社
- Competitor:競合
- Customer:顧客
採用マーケティングでは、顧客を求職者に置き換えます。自社や競合をターゲットとなる求職者からの視点で分析し、施策の考案に活かします。
5-2.4C分析
「4C分析」は、Cで始まる以下の4つの言葉の頭文字を取った用語です。マーケティングにおいては、顧客から見た自社のサービスを分析するためのフレームワークです。
- Customer Value:価値
- Cost:コスト
- Convenience:利便性
- Communication:コミュニケーション
採用マーケティングでは、求職者から見た自社の価値や入社に対する懸念材料、応募に対するハードル、自社と応募者の接点を分析します。
5-3.SWOT分析
「SWOT分析」は、以下の4つの要素の頭文字を取った用語で、自社の立ち位置を客観的に分析できるフレームワークです。
- Strength:強み
- Weakness:弱み
- Opportunity:機会
- Threat:脅威
採用マーケティングでは、求職者に対する強みや弱み、採用活動におけるポジティブな要因やネガティブな要因を分析することで、アプローチの方法やメッセージを考えることができます。
5-4.STP分析
「STP分析」は以下の3つの要素の頭文字を取った用語で、細分化した市場から自社が狙いたい領域を定め、自社の立ち位置を決めるフレームワークです。
- Segmentation:市場細分化
- Targeting:狙う市場
- Positioning:立ち位置
採用マーケティングでは、細分化した市場から自社のターゲット層を定め、自社の立ち位置を決めます。決めた立ち位置から、どうやってターゲット層にアプローチするのかを考えます。
5-5.AIDMA・AISAS
「AIDMA」は、インターネットが普及する以前から存在するフレームワークで、顧客の行動プロセスを以下のフェーズごとに分析します。
- Attention:認知
- Interest:興味
- Desire:欲求
- Memory:記憶
- Action:行動
それに対し、インターネット普及後の行動プロセスを整理したものが「AISAS」です。AISASの行動プロセスは以下のとおりです。
- Attention:認知
- Interest:興味
- Search:検索
- Action:行動
- Share:共有
AIDMAに対し、AISASでは欲求がインターネットでの検索に、記憶が口コミサイトやSNSでの情報共有に変わりました。フェーズごとにどのような情報や施策が求められているのかを考案することで、現在の求職者の行動に即した採用活動ができます。
5-6.SIPS
「SIPS」も、AIDMAやAISASと同様に顧客の行動プロセスをフェーズごとに分析するフレームワークです。AISASと同じくインターネット普及後の行動プロセスを整理していますが、順番が異なります。SIPSでは以下の順番としています。
- Sympathize:共感
- Identify:確認
- Participate:参加
- Share & Spread:共有&拡散
マーケティングフレームは「認知」から始まるものが一般的ですが、SIPSは「共感」がはじめにくることが特徴です。これは特にSNSでの行動を整理しています。
SNSで見たイベント情報に対し「共感」することで、その情報を「確認」しにいきます。その後、イベントに「参加」し、その情報を共有するために拡散するという流れです。
6.効果やポイントを理解し採用力強化につなげよう
採用マーケティングとは、マーケティングの考え方を取り入れた採用活動のことです。人材不足による採用競争の激化や、採用方法自体が多様化したことにより、採用力強化が求められるようになったことから、注目を集めています。
導入するメリットは、自社が求める人材とのマッチ度向上や優秀な人材からの応募増加だけではありません。採用コスト削減や早期離職防止のようなコスト削減の効果もメリットです。
採用マーケティングは、正しい手順を踏むことで効果が出ます。PDCAサイクルを意識しながら施策を実行することで、施策の質や今後の採用活動に活かすことができます。
成功させるためには、自社に合った採用手法やチャネルを選択することが大切です。データを分析することや、メッセージを工夫することで、成功の確率は向上します。採用マーケティングの効果やポイントを理解し、採用力強化につなげましょう。