SNS採用(ソーシャルリクルーティング)とは、TwitterやLINEなどのSNSを使って採用する方法です。SNSの普及に伴い、情報収集源や意思決定の方法が変化したことから注目を集めています。今回はSNS採用のメリットと注意点、成功のポイントや各SNSの特徴を活かすポイントを詳しく解説します。
1.SNS採用(ソーシャルリクルーティング)の概要
「SNS採用」はソーシャルリクルーティングとも呼ばれる、TwitterやLINEなどのSNSを活用した採用活動のことです。SNSを通じた求人の掲載やスカウト、企業のブランディングや認知度向上など、使い方は多岐に渡ります。特に、企業が自社に合うと判断した特定の求職者に対して直接アプローチできる点が特徴です。
SNSネイティブと呼ばれるスマートフォンの所有率が高い20代〜30代に対して、新卒採用で取り入れられる傾向にありましたが、SNSの普及に伴って中途採用でも主流になりつつあります。
1-1.従来の採用方法、ダイレクトリクルーティングとの相違点
SNS採用(ソーシャルリクルーティング)は、従来の採用方法に比べて就職、転職市場に出てきていない潜在層の人材にまで幅広くアプローチできる手法です。
従来の求人サイトや紙の求人媒体、就活イベント、人材紹介を使った採用方法では、自社が求める人材に出会えるとは限りません。しかし、SNS採用(ソーシャルリクルーティング)の場合、表には出てきていないそれらの人材にも直接コンタクトを取ることが可能です。
また、SNS採用(ソーシャルリクルーティング)と似た採用方法として「ダイレクトリクルーティング」があります。ダイレクトリクルーティングは、SNSや採用媒体などを介して企業が候補者に直接アプローチをする採用方法のことです。
ダイレクトリクルーティングもSNSを活用しますが、SNSはあくまでも手法の一つである点が、SNS採用(ソーシャルリクルーティング)との違いといえます。
1-2.SNS採用が脚光を浴びる背景
SNS採用(ソーシャルリクルーティング)が脚光を浴びる背景としては、SNSの発展と普及に伴い、若手世代を中心に情報収集源や意思決定の方法に大きな変化が生じたことが挙げられるでしょう。
従来はGoogleをはじめとする検索エンジンを用いた情報収集が主流であったのに対し、近年はSNSを駆使してよりリアルな情報を得ようとする傾向があります。公式発表される内容よりも口コミを重視する風潮は、就職活動においても同様です。
そのため、多くの民間企業や地方自治体などが、採用情報をSNSで発信し、双方向のコミュニケーションを取ることや、口コミを広げてもらうことを意識しています。
1-3.SNS採用に期待される効果
SNS採用(ソーシャルリクルーティング)に期待される効果には次の4つが挙げられます。
- 企業のブランディング・認知度の向上
- 採用母集団の形成
- 採用のミスマッチの抑制
- リファラル採用の効率化
SNS採用(ソーシャルリクルーティング)の導入は、企業のブランディングや就職・転職市場における潜在層も含めた層への認知度の向上などに有効です。また、SNSの活用によって自社に興味や関心を抱く母集団を形成することができるでしょう。企業と求職者の間でコミュニケーションを取ったり、リアルな口コミを知ってもらったりすることで、採用のミスマッチの抑制にもつながります。
そのほか、社員や退職者が友人や知人などを企業に紹介するリファラル採用においても、SNS採用(ソーシャルリクルーティング)は有効です。LINEやTwitter、Instagramなどを利用して企業の採用情報を拡散させることができれば、偶然その投稿を見た、転職を検討中の友人が興味を示すかもしれません。
リファラル採用ツールにSNSを連携させれば、社員の紹介活動にかかる負荷を軽減し、効率的かつスピーディーに行うことも可能です。
2.SNS採用(ソーシャルリクルーティング)を導入するための5ステップ
SNS採用(ソーシャルリクルーティング)は、以下の5つのステップを経て導入するのが一般的です。
- SNSを採用に活用する目的を明確にする
- 採用のターゲットを決定する
- ターゲットにあったSNSを選定する
- 運用フローを策定する
- 発信コンテンツの方針を決定する
はじめに、採用活動にSNSを活用する目的を明確にしましょう。具体的には、採用フローの中のどの工程での効果を期待するかということです。たとえば「潜在層へのアプローチを目的にする」、あるいは「まだ知名度が低い企業の場合は企業の認知度向上のために利用する」などです。
SNSを活用する目的を明確にしたら、採用のターゲットを決定します。つまり、どのような人材の獲得を目指すかということです。
SNS採用を行うのは新卒採用なのか中途採用なのか、また自社が求めるのはどのような人材かを明らかにします。決定したターゲットについては、採用チーム内で認識のブレが生じないようにしっかりと共有しておきましょう。
選定した採用のターゲットへのアプローチとして有効なSNSを選定します。SNSにはさまざまなメディアが存在し、登録者の属性や投稿できる文章の長さなどに違いがあることをおさえておきましょう。各SNSの特徴と採用に活かすポイントについては、後述します。
活用するSNSの選定まで終わったら、運用フローを策定します。具体的にはSNSの運用担当者や運用するスケジュール感、更新する頻度などを決め、運用マニュアルにまとめておくとよいでしょう。たとえば企業アカウントで情報発信する際、投稿者によって文体や内容にバラつきが出る可能性があるためです。
発信コンテンツの方針を決めることも重要です。ともすると自社が伝えたい内容に偏ってしまいがちですが、求職者やSNSユーザーが求めるリアルな情報を発信できるとよいでしょう。ここでも、利用するSNSの選定の際と同様に、採用のターゲットが興味や関心を持ちそうな内容にすることがポイントです。
3.SNS採用(ソーシャルリクルーティング)のメリットと注意点
ここからは、SNS採用(ソーシャルリクルーティング)の、メリットと注意点を解説していきます。メリットだけでなく注意点もあわせて確認しておくことで、万全な状態でSNS採用(ソーシャルリクルーティング)をスタートできるはずです。
3-1.メリット
SNS採用(ソーシャルリクルーティング)を導入するメリットとしては、以下の6点が挙げられるでしょう。
- 就職、転職潜在層への働きかけができる
- リアルな情報を含め幅広い発信が可能
- 企業のブランディング構築につながる
- 候補者のキャラクターを知ることができる
- 採用コストを抑えられる
- 運営担当者のキャリアにも有効
SNS採用(ソーシャルリクルーティング)のメリットとしてまず挙げられるのは、就職、転職市場いずれにおいても潜在層へ働きかけができる点です。従来の求人サイトや人材紹介などの採用方法では、アプローチできるのはサイトや人材紹介会社に登録している顕在層のみでした。
しかしSNS採用(ソーシャルリクルーティング)の場合、中途採用であれば、今すぐの転職は考えていないが、良い企業があれば検討したいと考えている層にもアプローチができます。新卒採用であれば大学1〜2年生に対してアピールすることも可能です。
公式サイトの形式的な発表とは違う、ユーザー一人ひとりに話しかけるような、リアルで人間味溢れた情報発信ができるのも、SNS採用(ソーシャルリクルーティング)のメリットの一つです。
SNSで企業の様子を発信する企業は、よりリアルな情報が求められる時代ということもあり、従来の求人広告や求人サイトでの打ち出しをする企業に比べ、親しみやすい印象を与えられるでしょう。SNSを活用することで効果的に企業ブランディングの構築ができるというわけです。
SNS採用(ソーシャルリクルーティング)の活用によって、採用コストを抑えられる点もメリットです。たとえばTwitterを利用し、一切のコストをかけることなく採用を成功させている企業の事例もあります。
SNSの多くは無料でアカウントを作ることができ、有料のプロモーションを利用する場合でも予算に合わせて調整が可能です。そのため、予算に限りがあるけれど魅力的な人材を獲得したいと考える企業におすすめです。
さらに、採用でSNSを活用することが、運用担当者のキャリアに有効に働くという面もあります。採用活動はもちろん、それ以外の領域であっても、ビジネスにおけるSNSを運用するスキルは今後さらに求められるといえるでしょう。
3-2.注意点
SNS採用(ソーシャルリクルーティング)を運営するにあたっての注意点は、以下の4点です。
- 作業工数が増える
- ネットリテラシーが不可欠
- 発信するコンテンツの魅力が求められる
- 中長期的な運用が必要
先ほど、SNS採用(ソーシャルリクルーティング)のメリットとして採用コストを抑えられる点を挙げましたが、その分、一定以上の時間の投下が求められるという側面があります。SNS採用(ソーシャルリクルーティング)で注目を集め続けるためには頻繁な更新が必要であり、双方向のコミュニケーションであるため、適宜レスポンスや対応をしなければなりません。
工数の増加は採用担当者の負担を間違いなく大きなものにするため、運用代行サービスを上手に活用し、工数・費用・効果の最適なバランスを探るようにしましょう。
また、SNSに掲載されている個人情報を慎重に扱う必要があります。配慮に欠けた投稿が引き起こす炎上も、避けなければなりません。
加えて、発信するコンテンツの魅力が求められ続けることにも、注意が必要です。コンテンツの更新回数が多ければよいというわけではなく、現場のリアルな声や企業の何気ない日常の風景など、ユーザーが興味をいだくようなコンテンツを継続して発信することが重要です。
SNS採用(ソーシャルリクルーティング)の注意すべき点としては、即効性が低く、中長期的な視点に立った運用となる点も挙げられるでしょう。定期的なコンテンツの発信によってじわじわと認知度が高まり、フォロワーといった形で企業のファンが増え、ようやく採用面にプラスの影響が期待できるといった側面があります。
4.SNS採用(ソーシャルリクルーティング)を成功させる5つのポイント
SNS採用(ソーシャルリクルーティング)を成功させるためのポイントは、次の5つです。
- ターゲット合うSNSの選定、内容の発信を行う
- コツコツと継続的に発信する
- リアル志向を重視する
- 記事・動画コンテンツの併用、プロモーションなどの活用
- アウトバウンド、インバウンドの施策を行う
それぞれの内容を解説していきます。
4-1.ターゲットに合うSNSの選定、内容の発信を行う
SNS採用(ソーシャルリクルーティング)を成功させるには、自社の採用ターゲットの利用割合が高いSNSの選定を行い、ターゲットが興味や関心を持つ内容を発信することが重要です。いずれにしても、採用ターゲットの定義を明らかにしたうえで、SNSや発信するコンテンツを企画することがおすすめです。
4-2.コツコツと継続的に発信する
SNS採用(ソーシャルリクルーティング)を成功させるためには、コツコツと継続的な発信が不可欠といえるでしょう。表示順位に伴ってクリック率が大きく異なってくるケースも珍しくありません。
また、一方的に発信するだけでなく、求職者や他の企業アカウントとのコミュニケーションを取ることも重要です。特に他の企業アカウントとのコミュニケーションによって、自社アカウントのフォロワー以外のユーザーに見てもらえる可能性が高まります。
4-3.リアル志向を重視する
求職者はリアル志向であり、公式サイトや求人媒体では知り得ないような情報を求めています。そのため、これらと同じような内容を発信することは避けたほうが賢明といえるでしょう。
たとえば新卒者には、社員の実際の雰囲気や仕事内容などが伝わるような投稿をすると、興味を持ってもらえるかもしれません。
4-4.記事・動画コンテンツの併用、プロモーションなどの活用
企業の日常の光景や社員の様子をリアルに伝えるためには、記事コンテンツと動画コンテンツを併用させることが効果的です。文字のみの発信、あるいは動画のみの発信よりも、相乗効果が期待できるでしょう。
また、なんとなくSNSに投稿している場合、フォロワーを増やすのが難しいこともあるため、キャンペーンなどのプロモーション施策も合わせて実施するとよいでしょう。
4-5.アウトバウンド、インバウンドの施策を行う
SNS採用(ソーシャルリクルーティング)を成功させるポイントとして、自発的な行動であるアウトバウンド施策と、インバウンド施策の使い分けも重要です。
4-5-1.アウトバウンド施策
SNSのアカウントを開設してしばらくは、フォロワーがいないことが一般的です。そのため、この時期に最も重要なのはアウトバウンド施策であり、具体的には潜在層に対して、積極的に「いいね!」やフォローを行うことなどが挙げられます。
潜在層は、競合アカウントのフォロワーに存在する可能性が高いです。それにより、自社に興味を持つ可能性のある層の獲得につながるといえるでしょう。
4-5-2.インバウンド施策
SNS採用(ソーシャルリクルーティング)におけるインバウンド施策には、共感してもらったり、笑いを誘ったりすることで、フォロワーを増やしていく方法があります。SNSの運用で肝となるこれらを心がけることも、SNS採用(ソーシャルリクルーティング)の成功の鍵といえます。
そのほか、Twitterのトレンド入りや、ハッシュタグ検索されることを意識された投稿を行うこともインバウンド施策の一つです。
5.SNS採用(ソーシャルリクルーティング)の成功事例
全国にコーヒーショップを展開する企業は、採用専用ページの中で従業員インタビューや1日密着動画などの投稿を行い、企業の内側を公開しています。働いている様子をわかりやすく伝えつつ「あなたも仲間になりませんか?」とメッセージを伝えることで、ユーザーに「この企業で働いてみたい」と思わせることに成功している代表例です。
また、人事・採用支援を行う企業では、4コマ漫画を活用して自社の様子や就職活動に関するエピソードを発信しています。求職者にとってはわかりやすくて嬉しいアカウントといえるでしょう。
6.各SNSの特徴と採用に活かすポイント
SNSにはさまざまなメディアが存在します。ここでは、以下の4つのそれぞれの特徴と、採用活動に活かすためのポイントを解説していきましょう。
- Twitter
- Instagram
- Facebook
- LINE
6-1.Twitter
Twitterは10〜30代の登録者が多く、匿名アカウントであるという特徴があります。採用活動においては、リツイートや「いいね!」による2次拡散でフォロワー以外にもリーチできる拡散力や、最新の情報やトレンドを随時確認できるリアルタイム性を活かしましょう。
企業の最新情報や説明会やインターンシップのお知らせなどを発信し、企業の認知度向上やブランディングとして利用するのがおすすめです。
6-2.Instagram
Instagramは、特に10代と20代の女性ユーザーが多いとされ、写真や動画といったビジュアルを重視した投稿ができる点が特徴です。そのため採用においては、オフィスの様子や社員の勤務風景、社内イベントの様子を動画や写真で投稿し、企業のソフト面をわかりやすく伝えるという使い方に向いています。
ただし、他のSNSメディアに比べると拡散性がやや低いため、ハッシュタグを上手に活用したり、こまめに有益な情報を発信したりするなどの工夫が必要です。
6-3.Facebook
Facebookは実名アカウントでメッセージ機能も充実していることから、採用活動には最も適しているといえるでしょう。長文の投稿が可能であるため、それぞれの部署の詳しい仕事内容や働き方などを伝える手段としても有効です。
「いいね!」やシェア、「友達」などの検索機能を用いて採用ターゲットを検索、投稿内容や興味、関心がある内容をチェックし、メッセンジャーでダイレクトメッセージを送ることができます。応募をプラットフォーム上で促すことが可能な「求人機能」も実装されています。
6-4.LINE
LINEは幅広い年齢層が利用する、インフラ化したコミュニケーションツールです。公式アカウントの活用によって、ユーザーに直接メッセージを送ることができます。
ただし、友だち追加していないユーザーにはアプローチできないため、カジュアル面談や採用イベントなど、候補者と接触するタイミングで友だち追加を促すことがポイントです。LINEは他のSNSメディアに比べてクローズドなコミュニケーションが取れるという特性があるため、選考時のメッセージのやり取りで使う企業もあるようです。
連絡ツールとして普及しているためユーザーの閲覧率が高く、友だち追加という最初の壁をクリアできれば、採用において有効なツールといえるでしょう。
参照元:総務省情報通信政策研究所「令和2年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」
7.自社にあったSNS採用(ソーシャルリクルーティング)を始めよう
SNS採用(ソーシャルリクルーティング)は、従来の採用方法に比べて潜在層の人材にまで幅広くアプローチできる点が特徴です。
このSNSを活用した採用方法を成功させるためには、自社の採用ターゲットに合うSNSを選定し、発信する内容もターゲットを意識したものにすることがポイントです。コツコツと粘り強く発信をし続けられるかどうかも成功の鍵といえるでしょう。自社にはどのようなSNS採用(ソーシャルリクルーティング)が適しているかを見極めた上で、導入することをおすすめします。