「人材」は「スキルや技術のある人物」を指し、ひいては「企業活動に役立つ人物」という意味を含んでいます。企業を取り巻く環境が激しく変化し、業務の改善や新規事業の立ち上げ、事業の再構築を余儀なくされる中で大いに高まっているのが人材確保の必要性です。
新規事業や事業の再構築では、企業が持っていないノウハウや経験、知識を持つ人材が欠かせません。しかし、これらの多くは一朝一夕に得られるものではないため、ノウハウや経験、知識を持っている人間「人材」を新たに採用する必要があります。
ノウハウや経験、知識を持っていない企業が、適切な人材なしでの新規事業の立ち上げや、事業を再構築するのは困難です。人材不足は、企業のこのような局面で問題となる重大な課題だといえます。
「人手不足」は、企業が活動する上で必要な人間の数が確保できず、思うように活動できなくなる要素の一つです。たとえば、飲食店で調理と接客、レジを1人で行わなくてはならない状態は、まさに人手不足の代表例といえます。
人手不足は従業員1人あたりにかかる負担を増やし、より深刻になれば製品やサービスへの需要に応えるだけの供給が確保できなくなるため、注意が必要です。
長期化すれば労働条件の悪化から従業員の離職が増え、採用しても続かないといった悪循環に陥ることも十分あり得ます。
企業にとって「人手不足」は、「人材不足」より差し迫った深刻な課題です。とはいえ、どちらも企業の存続に関わる課題であり、一日でも早い改善が求められます。まずは人手不足や人材不足の現状や原因を把握し、有効な対策を打つことが大切です。
現在日本は、深刻な人材不足・人手不足の問題を抱えているといわれます。正社員と非正社員のいずれにもみられる問題で、一部の業種では現実に倒産の原因となっているほどです。これは業種によって、必要な人手や人材が異なるためと考えられます。
人材不足・人手不足を適切に改善するには、まずは現場を知ることが大切です。そこでここでは人材不足・人手不足の現状を、全体の概要から正社員と非正社員、業種ごとに分けて解説します。
2017年に公表された中小企業庁の調査結果によると、企業活動の中核をなす「中核人材」の不足に悩んでいる企業は全体の48.2%と、実に半数近くにのぼっています。
さらに詳しく見ると、企業の安定・維持に関わる人材不足は43.7%と低めな一方、成長・拡大のための人材不足は59.7%と高い数値です。
ただどちらも中核人材、いわゆる「人材不足」よりも、労働人材「人手不足」を感じている割合が高いことは共通しています。
不足の理由も上位から、「仕事量の増加」「従業員の高齢化」「多様化する顧客ニーズへの対応」など、業務そのものや人員の年齢構成の変化によるものであることが特徴です。
しかし、調査結果からは、人材も不足していますが、人手はそれを上回るほど不足していることがうかがえます。つまり現在は、人材と人手の両方が不足している状態です。
株式会社帝国データバンクによる、2023年4月の「人手不足に対する企業の動向調査」によれば、正社員と非正社員によっても不足の割合は異なることがわかります。
どちらも2009年のリーマンショックで急激に下がった数値から、人手不足の割合は徐々に増え、2019年には正社員が50.3%、非正社員は31.8%となっていましたが、新型コロナの感染拡大によって正社員が31.0%、非正社員が16.6%まで低下していました。
それが調査時の2023年4月は、正社員51.4%、非正社員30.7%まで戻っています。これは新型コロナの感染拡大によって、悪化した需要が戻ってきたための変化です。
しかし、この変化が人手不足に及ぼす影響は、業種によって大きく異なります。とくに非正社員では違いは大きいため、対策を打つときは十分な注意が必要です。
先ほど紹介した帝国データバンクの調査結果では、正社員の人手不足割合は全業種平均51.4%ですが、以下のとおり業種によってはこれを大きく上回っています。
業種 |
2022年4月調査 |
2023年4月調査 |
前年比 |
正社員平均 |
45.9% |
51.4% |
5.5ポイント増 |
旅館・ホテル |
52.4% |
75.5% |
23.1ポイント増 |
情報サービス |
64.6% |
74.2% |
9.6ポイント増 |
メンテナンス・軽微・検査 |
60.1% |
67.6% |
7.5ポイント増 |
建設 |
59.4% |
65.3% |
5.9ポイント増 |
人材派遣・紹介 |
58.0% |
64.3% |
6.3ポイント増 |
自動車・自動車部品小売 |
58.4% |
64.1% |
5.7ポイント増 |
運輸・倉庫 |
52.2% |
63.1% |
10.9ポイント増 |
飲食店 |
56.9% |
61.3% |
4.4ポイント増 |
リース・賃貸 |
46.5% |
60.7% |
14.2ポイント増 |
医療・福祉・保健衛生 |
43.4% |
58.3% |
14.9ポイント増 |
なかでも旅館・ホテル、リース・賃貸、医療・福祉・保健衛生では人材が急激に必要になったことがうかがえます。
一方、非正社員の人手不足割合は全業種平均で30.7%です。しかし、以下の表を見れば、業種による違いは正社員よりずっと大きいことがわかります。
業種 |
2022年4月調査 |
2023年4月調査 |
前年比 |
非正社員平均 |
27.3% |
30.7% |
3.4ポイント増 |
飲食店 |
77.3% |
85.2% |
7.9ポイント増 |
旅館・ホテル |
56.1% |
78.0% |
21.9ポイント増 |
飲食料品小売 |
48.7% |
58.7% |
10.0ポイント増 |
人材派遣・紹介 |
53.6% |
58.3% |
4.7ポイント増 |
各種商品小売 |
52.3% |
56.9% |
4.6ポイント増 |
繊維・繊維製品・服飾品小売 |
42.9% |
52.0% |
9.1ポイント増 |
農・林・水産 |
43.3% |
49.5% |
6.2ポイント増 |
メンテナンス・警備・検査 |
43.9% |
49.0% |
5.1ポイント増 |
娯楽サービス |
42.6% |
47.2% |
4.6ポイント増 |
専門商品小売 |
37.1% |
46.0% |
8.9ポイント増 |
人材不足割合の増加が業績の回復によるものと考えれば、旅館・ホテルや専門商品小売、飲食料品小売、繊維・繊維製品・服飾品小売は、他より急激に回復しているといえます。
ただ飲食店は、旅館・ホテルと同様非常に高い値を示しており、慢性的に人手は不足しているといえるでしょう。
参照元:中小企業庁・(独)中小企業基盤整備機構「中小企業景況調査・第2部・第4章」
参照元:帝国データバンク「特別企画:人手不足に対する企業の動向調査(2023年4月)」
人手不足・人材不足には、さまざまな原因が考えられます。なかには、社会の大きな変化が影響しているため簡単には解消できないものもありますが、企業が努力によって改善可能なものもあるため、これから適切に対策するならしっかり把握しておくことが大切です。
ここでは、人材不足・人手不足が発生する原因を考えてみましょう。
日本は現在、急速に少子高齢化が進んでいます。誕生する人間より死亡する人間の方が多いため全体の人口は減少し、内閣府が2023年に公表した「令和5年版高齢社会白書」によれば、15歳から64歳までのいわゆる「生産年齢人口」は1995年の8,716万人をピークに減少し続けています。
2022年の生産年齢人口は7,421万人で、減少の割合はピーク時から実に14.5%です。
この傾向は今後も続くと考えられており、2025年には7,310万人(ピーク時から16.1%減)、2030年には7,076万人(同18.8%減)まで減少すると推定されています。
この流れは人材だけでなく、人手も確保は難しくなるため、早期に何らかの対策が必要です。
DXとは「デジタルトランスフォーメーション」といい、企業がビジネス環境の変化に対応するためデジタル技術を活用し、業務や組織、企業文化、風土、プロセスを変革して、新たなデジタル時代に勝ち残れるよう競争力を高めることと定義されています。
しかし、日本において、DXは決して順調に普及しているわけではありません。これは日本企業が、「既存システムの老朽化」と「DXを推進する人材の不足」という2つの問題を抱えているためです。
現状では、DXを推進する人材そのものが不足しています。さらに既存のシステムを改修するには多大なコストがかかるため、DX推進のための人材を採用しても、既存システムの運用や保守にあてざるを得ないのが現状です。
せっかくの高いスキルも、このような環境では十分に活用できず、離職してしまうこともあり得ます。DX化の需要は増えているものの、人材をしっかり確保するにはシステムの再構築と人材の適切な育成や活用が必要です。
人材不足や人手不足に悩む企業がある一方で、「仕事を探しているが見つからない」という求職者がいるのも事実です。これは求人する企業と求職者の間で、求めるスキルや資格、労働条件など、採用全体においてミスマッチが発生していると考えられます。
たとえば、子どもを育てている世帯の求職者が、急に地方へ転勤するよう求められることがある企業と、転勤は自身の意思によって決められる企業であれば、後者の企業の方が選ばれやすいといえるでしょう。
この場合、求職者は給料の多寡や待遇の優劣だけでなく、子どもの生活環境の変化や単身赴任による家族への悪影響も含めて検討します。
そのため、企業がこのような価値観に配慮していないと、貴重な人材を失いかねません。企業は求める人材像だけでなく、人材の持つ価値にも配慮する必要があります。
2017年の中小企業庁の調査では、事務や運搬、清掃などの職種では有効求職者数が有効求人数を大きく上回っていますが、販売やサービス、介護関係の職種ではまったく逆になっているのが現状です。
これは人材を必要としている職種への応募が少なく、必要としていない職種への応募が多いというミスマッチが発生していることを表しています。
特定の職種には十分な人材や人手が確保できているものの、別の職種では深刻な人材・人手不足に陥っている状況です。人材・人手が不足しがちな職種では、より手厚い労働環境や待遇などへの配慮が求められるといえます。
参照元:中小企業庁・(独)中小企業基盤整備機構「中小企業景況調査・第1部・第3章」
人材不足や人手不足は、企業活動に大きな影響を及ぼします。とくに長期化すれば企業の存続に関わってしまうため、どのような問題が起こるかを把握し、手遅れになる前に効果的な対策を打つことが大切です。
ここでは、人材不足・人手不足が及ぼす企業への影響を解説します。
人材や人手が不足すれば、業務に携わる人が減り、業務そのものがこなせなくなります。長期にわたると徐々に業務が減っていき、最終的に必要不可欠な業務にまでおよび、事業そのものの縮小や廃止、最悪の場合は倒産にもなりかねません。
たとえば、5人で携わっていた業務を4人でこなすには、平均で全員の業務が25%増えます。もう1人減れば65%増、さらに1人減れば150%増です。しばらくは人員不足の状態で対応できたとしても、いつかは限界に達し、業務の規模を縮小するか廃止するか、いずれにしても企業活動は制限されてしまいます。業務内容によっては業績を大きく下げかねません。
またこれほどの人材・人手不足に陥れば、新たな事業の立ち上げや、事業の再構成は困難です。ビジネスチャンスがあるとわかっていながら着手できず、業績を伸ばせないばかりか、維持することさえ難しくなってしまいます。
人材・人手の不足は業務量の増加はもちろん、残業の慢性化や有給休暇が取得できないなどの労働環境の悪化にもつながります。従業員は十分な休暇が得られず体調を崩したり、余暇が少ないことでリフレッシュできずに不満が蓄積したり、スキルアップができずに思うようなキャリア形成ができなかったりといった、不満を抱えたりしやすい状態となるためです。
労働環境が悪化すると、社員が一人あたりの業務量は増え、抜けや漏れなどのミスや、製品・サービスの品質が低下する可能性があります。顧客はサービスの低下に敏感です。評判は市場に広まり、悪影響が事業全体に及ぶことも十分考えられます。
このような事態は顧客からのクレーム対応や交換作業の手間などの手間を増やし、さらに残業が増えるといった悪循環に陥りかねません。
労働環境の悪化や業務量の負担は、従業員を肉体的・精神的な負担となって、仕事に対するモチベーションの低下につながります。とにかく業務をこなすことで精一杯で、業務の改善など創造性を発揮する機会がなく、仕事にやりがいを感じなくなりがちです。
「何のために仕事をしているのか」などの疑問を感じ、仕事を前向きにとらえられずにモチベーションが下がり、会社への信頼が失われる可能性さえあります。
モチベーション低下が進んだ場合、最悪の事態が離職です。離職によって企業はさらに人材・人手が不足し他の従業員の負担を増やしてしまうという悪循環に陥ります。
少子高齢化が進み、生産年齢人口が減る傾向にあっても、すべての業種が同じように人材・人手の不足に悩まされているわけではありません。なかには業種の性質上、他にはない原因があり、特殊な事情を抱えています。そのため人材・人手の不足に対処するには、まず業種の特徴や傾向についての理解を深めることが大切です。
ここではとくに人材・人手不足が著しい、5つの業界における現状を解説します。
医療業界は、新型コロナの感染拡大によって大きな影響を受けた業界です。
ピーク時の医療現場での業務の逼迫や医療崩壊といった危機的な事態は、サービス需要の急拡大にはつながったものの、医師や看護師といった難易度の高い資格が必要なため、単純に採用数を増やせず、慢性的な人材不足に陥っています。
また介護を含めた福祉業界は、サービスを必要とする高齢者の増加によって今後もニーズが高まると予想されているからこそ、人材が不足している業界です。
医療業界と同様、専門的な知識やスキルが求められ、さらに入浴や排泄といった身体的介助の負担が大きい割に給与水準型の業種に比べて低いため、人材・人手不足を助長しています。
医療・福祉業は資格を必要とする職種が多いため、正社員の求人増加率が高く、非正社員の求人は少ない業界です。
建設業界では、現場の責任者である管理監督者と、工事現場で働く職人の両方で人材・人手が不足しています。
高度成長期以降に整備された建築物などのインフラは、老朽化に伴いこれから取り壊し後の再建築などのニーズが高まると予想されており、それに呼応する形で労働力の需要を高めているのが現状です。
しかし、建設業は以前からの「3K(きつい・危険・汚い)」というマイナスイメージが払拭できず、とくに若い世代から敬遠されてきました。さらに、今現場を支えている人材が高齢に達し、引退するため人材・人手の不足に拍車がかかっている状況です。
建設業は専門的な知識やスキルの求められる職種が多いこともあり、正社員としての求人は多い傾向にあります。
新型コロナの感染拡大によるインターネット上でのショッピング需要は日増しに高まっていますが、一方で配達だけでなく、仕分けなどの業務に携わる人材・人手の不足は続いています。
大手企業ではITのしくみを取り入れ荷物の情報をデジタル化し、より効率的に集配できる体制を整え、限られた人材でより多くの業務がこなせるようになりました。
しかし、一方で集配するドライバーは減少し続けており、現場では高齢化が進んでおり、2030年には2020年よりも8.6万人が不足すると推計されています。
インターネットがいくら便利でも、実際に買った品物は運び届けなくては意味がありません。現状では高まるニーズに対して、業界の人材・人手が追いつかなくなるだろうと考えられています。
飲食業や観光業を含めたサービス業は、新型コロナの感染拡大によって業界全体が大きな打撃を受けたことで、休業し従業員を解雇するなどの対応のため深刻な人材・人手不足に陥っています。
業界全体が、感染リスクや今後の感染拡大による影響を受けやすいと露呈したことも重要です。
また、業界全体がもともと非正社員の割合が高いこと、特徴として長時間労働が慢性化しやすくその割に給与水準が低いことなどが、求人への応募を避けられている原因となっている可能性があります。
似たような理由を抱えた飲食料品小売や服飾品小売などの業界でも、人材・人手不足は深刻です。給与だけでなく、福利厚生などの待遇に満足できないケースもあります。
製造業は日本経済の成長を牽引してきた産業ですが、現在では人手不足が深刻化しています。
製造業で働くには少なからず「知識やスキル」も求められますが、業界での伝統的な育成方法は「言って聞かせる」「やって見せる」「やらせてみる」というOJTが主流です。
しかし、この方法では長い時間がかかります。人材の流動化が進んだ現在、人材はより条件のよい業界に流れやすいのが現状です。
さらに「3K」のイメージによる若者の製造業離れや、これまで現場を支えてきた団塊の世代の大量退職が、人材・人手の不足に拍車をかけています。このような現状から、製造業は正社員の求人が多い業界です。
人材不足・人手不足の原因は業種によって異なるとしても、共通する有効な対策や視点はあります。ただいずれにしても現状を打開するための方法であって、現状のままというわけにはいきません。
ここでは、人材不足や人手不足を改善するためにチェックしたいポイントを6つ解説します。
どれほど従業員が努力しても、1人でこなせる業務量には限界があります。そこで考えたいのは、業務内容そのものの見直しです。
業務の見直しにあたり、次のような視点によるチェックが考えられます。
業務を見直すときは、携わっている従業員にヒアリングするのも有効です。ムダだと感じている業務があれば、業務自体がモチベーションの低下につながっている恐れもあります。
これまで当たり前と考えていた業務を、「本当に必要か」「二度手間ではないか」など異なる視点でチェックすることが大切です。業務の本来の意味に立ち返り、公平かつ公正な立場で見つめ直せば、新たなアイデアが浮かぶ可能性もあります。
人材・人手不足を改善するには、人事制度、とくに採用方法を見直すことも重要です。人材・人手不足は、入職者より退職者が多いことでも発生します。そのため問題が、採用者が少ないことなのか、採用しても離職することが多いことなのかを見極めることが大切です。
もし採用者が少なければ、応募者が少ないのか、応募者は多いが採用者が少ないのかで対策は変わります。
応募者が少なければ求人内容を見直したり、広告媒体を変更したりといった対策が必要です。応募の割に採用者が少ない場合は、採用の基準を面接官に確認する必要もあるでしょう。
また早期退職が多ければ、退職の理由は何か、どうすれば退職を防げたのかを検討することで、離職率は下げるポイントを見極められる可能性があります。求人内容や面接での説明と現場のギャップが大きければ、育成の手順の見直しが必要です。
採用を含めた人事制度の整備は、人材・人手の確保に欠かせない要素です。人材・人手の確保の妨げになる事態が起こっていないか、制度全体を見直してみましょう。
たとえば、新型コロナの感染拡大によって「リモートワーク」が注目されました。リモートワークは「仕事はオフィスに集まって取り組むもの」という、従来の考え方を変える働き方です。
働いて成果を出すことを条件に働ける時間が自由に設定できるなら、家を空けるのが難しい子育て中の人や、家族などを介護する介護者、出産前後の女性や、体力的な難しさのあるシニア層にも働ける可能性が出てきます。
働き方や働く場所などへの考え方は多様化しているため、企業も少なからず多様な働き方への対応が求められるようになってきました。
多様な働き方の例としては、次のようなものが考えられます。
多様な働き方が可能であれば、求人への応募数を増やし、求める資格やスキルを持つ人材を採用できる可能性も高められます。
人材・人手の不足を改善するときは、現在想定している「求める人材像」をより幅広く見直すのも有効です。
たとえば子育て中で仕事のできる時間が定められない人や、特定の業務経験が豊かなシニア層、日本で働くことを希望している外国人などを含めれば、より多くの応募の中から適した人材を選べます。
また幅広い人材を雇用するときは、それぞれ求める働き方が異なる可能性にも配慮が必要です。「働きたいが体力的に1日4時間が限度」という人にはアルバイトやパート、「週3日だけ働きたい」場合は独自に契約を定めた契約社員というように適切な雇用形態を導入することもできます。
人材・人手の不足を解消するには、応募者という母数を大きくすることが有効です。業務が可能な範囲で、採用の条件や雇用形態も柔軟に検討することが求められます。
もし人材・人手が特定の業務に偏っており、他の業務に携われないようなら、従業員に対して学び直しやリスキリングがしやすい制度を設けるのも効果的です。
どちらも仕事をしながら自身をスキルアップできるため、より意欲的に仕事に取り組める効果が期待できます。
とくに人材・人手不足の解消に有効な企業のDX化には、専門的な知識やスキルが必要です。今いる従業員が習得すれば、新たに採用する必要もありません。
従業員にとっても新しいスキルを獲得することで、新たな分野のキャリア形成にも役立つため、仕事へのモチベーションアップにもつながります。
人材・人手が不足している業務内容によっては、アウトソーシング(外注)するという方法もあります。アウトソーシングとは、業務を企業外に委託することです。不足している人材・人手を外部から調達すれば、不足は解消できます。
アウトソーシングの対象となるのは、主に次のような業務です。
アウトソーシングを活用すると、委託先の専門的な知識やノウハウを利用できるため、業務品質を向上させられるのもメリットです。
企業活動が、人間が携わることで成り立っている以上、人材や人手の不足は企業にとって大きな問題です。企業活動の中核をなす人材と、実際に業務に取り組む人手では性質こそ異なるものの、どちらも欠かせない重要な要素といえます。
ただ人材・人手が不足する原因や状況は、少子高齢化や採用のミスマッチなど共通するものもありますが、業種や職種によって異なるものも多いため、有効な対策も違いに応じて定めることが大切です。
不足の改善には、業務内容や人事制度の見直しや多様な働き方への対応、幅広い人材の雇用などの対策が役立ちます。
人材・人手不足は、長期化すると他の問題を引き起こす可能性もある注意すべき課題です。有効な対策を打ち、できるだけ早期に解消できるよう努めましょう。