パタハラとは?意味や事例から対策や起きた際の対処方法までを解説

パタハラとは?意味や事例から対策や起きた際の対処方法までを解説

人事ノウハウ

男性の育児参加が浸透するなか、パタハラが発生するケースが増えています。パタハラは育児に参加する男性従業員に対し、嫌がらせや不利益を及ぼす行為をするハラスメントです。本記事では、パタハラの意味や事例、対策、発生時の対応について解説します。

1.パタハラとは

パタハラとはパタハラとは、男性従業員が育児休業取得や育児時短をすることに対し、嫌がらせを受けることや不利益を被ることを指します。パタニティハラスメントを略したもので、パタニティとは父性を指す言葉です。

ここでは、マタハラとの違いやパタハラが注目をされている背景について解説します。

1-1.マタハラとの違い

マタハラとの違いは対象者です。マタハラは、女性従業員が妊娠や出産することに対して、嫌がらせを受けることや不利益を被ることを指します。長期間の休職により業務に支障をきたすのを嫌がり、退職を促すような行為があることから問題になっています。

一方、パタハラは男性従業員が育児に参加することに対する嫌がらせです。マタハラは女性従業員、パタハラは男性従業員が対象であることが違いです。

1-2.パタハラが注目されるようになった背景

パタハラが注目されるようになった理由として、女性の社会進出増加と育児に対する価値観の変化が挙げられます。結婚後は専業主婦になることが当たり前の時代では、育児は女性がするもので、男性が育児のために仕事を休むことは一般的ではありませんでした。

しかし、女性の社会進出が増え共働きが当たり前になった現代では、男性が育児に参加することは当たり前になっています。女性の社会進出増加により、男性も育児に参加することが当然という価値観が生まれたことから、パタハラが発生する機会が増えてきました。

 

2.パタハラが発生する原因

パタハラが発生する原因パタハラが発生する原因として、男性の育児参加に対する理解不足や知識不足が挙げられます。これは、育休取得率の結果からも読み取ることができます。

また、休業を取得できる雰囲気ではない職場も、パタハラが発生しやすいケースです。ここでは、パタハラが発生する原因について解説します。

2-1.上司・同僚の理解不足

パタハラが発生する原因として、上司や同僚の育児に対する理解不足が挙げられます。育児に参加してこなかった上司や、子どもがいない同僚のなかには、育児の大変さや必要性を理解していない人がいるためです。

そのような人は、仕事よりも育児を優先するという価値観を持ち合わせていません。育児に参加しようとする男性に対し「業務を優先できないのであれば任せられない」といった感情を持ってしまうのでしょう。

そのため、育児を優先する男性従業員に対し、嫌がらせをしてしまうのです。

2-2.育児休業に関する知識不足

育児休業に対する知識不足も、パタハラが発生する原因です。男性の育児参加を理解できない人のなかには、そもそも育児休業制度があること自体を知らないケースがあります。

そのため、男性従業員が育児休業を取得しようとすると「あの人はズルい」「特別待遇だ」といった感情が生まれるのです。これは、育児休業制度の周知不足も原因といえるでしょう。

2-3.企業体制の未整備

男性が、育児に参加するための体制が整っていないケースもあります。人手不足や残業が蔓延化している職場の場合、1人休むだけで周りの業務負荷が高まることから、休むことに対して否定的な雰囲気があるためです。

このケースの場合、育児休業だけでなく有給休暇に対しても取得しにくい雰囲気があるでしょう。休みを取得しにくい雰囲気がある職場も、パタハラが発生する可能性が高くなります。

2-4.育休取得率の男女差

育児休業取得率に男女差があることも、パタハラが発生する原因の一つです。厚生労働省の調査によると、女性従業員の育休取得率は2007年以降、80%を下回る年はありません。

一方、男性従業員の育休取得率はここ3年で急激に向上し、2021年度が約19%に達したものの、2015年までは5%を上回った年がありませんでした。

男性の育児参加が増えてきているものの、男女差にはまだ開きがあることがわかります。この結果から、まだ男性の育児参加が一般的であることは認められておらず、パタハラが発生しやすい状況であることが理解できます。

参照元:厚生労働省「令和3年度雇用均等基本調査」

3.パタハラの裁判事例

パタハラの裁判事例ここでは、パタハラにより、裁判に発展した事例についてご紹介します。パタハラは、医療法人や証券会社、メーカー企業など、業種を問わず発生しています。このことからも、国内全体で発生している問題であることが明らかです。

3-1.医療法人の事例

1つ目の事例として、医療法人のケースをご紹介します。3ヵ月以上の育児休業を取得した男性看護師が復帰した際、以下の扱いを受けました。

  • 職能給を上げない
  • 昇格試験を受けさせない

この対応を不服とした看護師側が訴えた結果、育児休業の取得が人事評価に影響することは違法であることとして、医療法人の対応を無無効としました。上記の扱いが就業規則で定められていたこともあり、裁判所は就業規則も合理性を欠いたものであると指摘しています。

3-2.証券会社の事例

2つ目の事例は、証券会社のケースです。男性の外国人従業員が育児休業の取得を申請したところ、母子手帳がないため休業を認められませんでした。

従業員の要望により育児休業自体は取得できたものの、復帰後に業務を与えられないという扱いを受けた結果、従業員はうつ病を発症しました。

従業員は東京地裁に対し、地位の確認や賃金支払い、損害賠償を求めて提訴しています。

3-3.メーカー企業の事例

3つ目の事例は、メーカー企業のケースです。男性従業員は第一子誕生時に1年間、第2子誕生時に1年間と、計2年間の育児休業を取得しました。育児休業を終え復帰したところ、それまで担当していた業務とはまったく異なる業務への配置転換を命じられました。

男性はこの対応を不服として、会社を提訴しています。

4.パタハラを防止するための対策

パタハラを防止するための対策パタハラを防止するための対策として、育児休業取得に対する仕組み化や環境づくりが挙げられます。制度や育児参加に対する説明や、取得推進に対する啓蒙活動をすることで、従業員の価値観も変わるでしょう。

ここでは、パタハラ防止のための対策について解説します。

4-1.社内における育休の制度化

パタハラを防止するための対策として、社内での育児休業制度取得の仕組み化が挙げられます。最近では、男性従業員に対して1ヵ月以上の育児休業を義務化している企業も出てきています。

また上司の評価項目の一つとして、育児休業の取得率を設定している企業もあるようです。育児休業の取得を促すような仕組みをつくることで、育児休業に対する価値観が変わり、パタハラ防止につながります。

4-2.育休を取得しやすい環境づくり行う

2つ目の対策として、育児休業を取得しやすい職場づくりが挙げられます。育児休業取得を義務化したとしても、職場の雰囲気が変わらなければパタハラは発生します。

業務量や進め方を見直し、従業員全体の負荷を下げなければ、休業を取得しやすい雰囲気にはなりません。業務を見直し、従業員の休業取得が当たり前の環境にすることで、自然にパタハラの発生を抑えることが可能です。

4-3.周囲への理解を広げる

3つ目の対策として、周囲への育児休業制度に対する理解を深めてもらうことが挙げられます。

育児休業制度は「どのような制度なのか」「なぜこの制度が必要なのか」といったことを従業員全員に説明し、理解してもらうことで育児休業を取得しやすくなるためです。

子育てに対する価値観は人によって異なります。子どもがいる従業員と子どもがいない従業員とでは、そもそも子育てに対する知識自体に差があります。価値観の違いから発生するパタハラを防止するためには、育児参加が当たり前という考えを経営者から発信することが大切です。

男性の育児参加やパタハラについても説明すれば、より理解が深まり、パタハラ防止につながります。

4-5.子育て推進企業の認定を受ける

5つ目の対策として、子育て推進企業の認定を受けることが挙げられます。厚生労働省からもらえる「くるみんマーク」は、子育てができる環境が整っている企業の証です。

くるみんマークをもらうことで、子育てに取り組む企業として、会社のイメージアップにつながります。このようなイメージが浸透することで、周囲が従業員を見る目が変わります。

男性の育児休参加に対し安易な発言ができなくなるため、必然的にパタハラの防止にも効果的です。

参照元:厚生労働省「くるみんマーク・プラチナくるみんマーク・トライくるみんマークについて」

5.パタハラが起きた時の対処法

パタハラが起きた時の対処法ここでは、パタハラが発生した際の対処法について解説します。パタハラに限らず、問題が発生した場合は状況把握からはじめましょう。この際、あくまでも客観的に話を聞くことがポイントです。

また問題の当事者と行為者に対応するだけで、すべてが解決するわけではありません。今後の再発防止を目指し、会社としての対策を考えることも必要です。

5-1.当事者への事実確認

パタハラが発生したときにまず実施することは、状況把握です。当事者に確認して事実を把握します。相談窓口の担当者が対応します。5W1Hを意識し「だれが」「だれに」「何をされて」「どうなったのか」を把握し、次のステップに進めましょう。

状況に応じて人事部や関係する部署、外部機関との連携を取れる仕組みを構築しておくことがポイントです。

5-2.行為者への事実確認

次に、行為者に対して事実確認をしましょう。当事者への事実確認と同様に、5W1Hを意識して確認します。ここでのポイントは、客観的に聞くことです。ほかのハラスメントと同様に、厳しく指導されたことでハラスメントを受けたと感じ、訴えを起こすケースがあります。

適切な範囲での指示や指導であれば、ハラスメントにはなりません。そのため、当事者寄りの視点で聞くのではなく、あくまでも客観的に判断するための材料集めの場として対応することが大切です。

5-3.第三者への事実確認

当事者と行為者から聞いた事実が一致しない場合、第三者から事実確認をしましょう。当事者と行為者は自身の主観で発言するため、どちらの主張が正しいのか判断できないケースがあるためです。

当事者であれば必要以上に重く受け止める場合があり、行為者であれば、悪気がなく発言したケースや事実と異なる内容を発言しているケースが考えられます。公正に判断するためにも、第三者からの事実確認が必要です。

ただし第三者が動くことで、聞き取り内容が個人情報に該当する場合や、問題が社内に漏れてしまう可能性も考えられます。第三者への確認は、慎重に実施することを覚えておきましょう。

5-4.当事者への解決策、行為者への処分の決定

状況把握が終われば、当事者に対する対応と行為者の処分を決めます。当事者への対応は、関係改善の援助や配置転換を実施します。メンタル面に支障をきたしている場合は、産業医をはじめとした外部機関への相談が必要です。

行為者の処分内容は、就業規則や懲戒規定に則って判断します。初めての事案なのか再犯なのかによっても処分内容は変わってくるため、事実と規定を確認したうえで判断する必要があります。

また、処分するだけでなく根本的な問題解決も必要です。育児に対する価値観や職場環境の改善、パタハラに該当する内容を当事者に理解してもらい、今後の再発防止につなげることが大切です。

5-5.再発防止策の検討と実施

当事者と行為者への対応後は、会社としての再発防止策の検討と実施を進めます。パタハラは、当事者と行為者だけの問題ではありません。

今後二度と再発させないためにも、会社として対策を打つ必要があります。具体的には、パタハラの定義や処分に対する判断基準、防止に向けた対応です。

ただし、定義や基準を決めるだけでは再発防止にはなりません。行為者になる可能性が高いマネジメント層がパタハラを理解していなければ、新たなパタハラが発生する可能性が考えられるためです。

マネジメント研修で、パタハラを含めたハラスメントに関する内容の教育をすることで、マネジメント層からのパタハラ発生を防止できます。マネジメント層の理解が深まることで、職場環境改善にもつながるでしょう。

6.職場環境の改善で男性の育児参加を促そう

職場環境の改善で男性の育児参加を促そうパタハラとは、育児休業の取得や育児時短をする男性従業員が、嫌がらせを受けたり、不利益を被る行為をされたりすることです。男性の育児参加に対する理解不足や、知識不足が原因で発生します。有給休暇を含めた休業を取りにくい職場も、パタハラが発生しやすい環境です。

パタハラの防止対策として、育児休業取得に対する仕組み化や職場環境の整備が挙げられます。制度や育児参加に対する説明や、取得推進に対する啓蒙活動といった取り組みをすることで、従業員の価値観も変わるでしょう。

パタハラが発生した場合は、状況把握からはじめます。客観的に話を聞くことがポイントです。また、発生した問題に対応するだけですべてが解決するわけではありません。再発防止を目指し、会社としての対策を考えることも必要です。

会社として男性の育児参加への価値観を見直し、職場環境を改善することで、パタハラが発生しない職場をつくりましょう。

 

 

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