通年採用とは?メリット・デメリットと成功させるための5つのポイント

採用ノウハウ

通年採用とは1年を通して採用活動を行うことで、近年は導入する企業が増えています。従来の新卒一括採用だけでは難しい、多様な人材に出会えるのがメリットです。本記事では通年採用の概要や成果を挙げるためのポイント、導入している企業例をご紹介します。

1.通年採用とは

通年採用とは通年採用とは、年間を通して採用活動を行うことです。限られた期間で実施する新卒一括採用だけでは人材を確保できないなどの事情から、採用する企業が増えてきました。

ここでは、通年採用と一括採用との違いを解説します。

1-1.一括採用との違い

通年採用と一括採用は、採用の対象と時期が異なります。一括採用とは、毎年決まった期間に新卒学生を対象として採用活動を行う手法です。これまで日本のほとんどの企業で、終身雇用制とともに採用されてきた伝統的なシステムでもあります。一括採用は3月から採用活動が始まり、6月ごろまでに終了するのに対し、通年採用は年間を通じて採用活動を行います

一括採用は主に3月卒業の学生を対象にしますが、通年採用は外国人留学生や第二新卒、既卒者など幅広く対象にするのが一般的です。

 

 

2.通年採用が注目されている背景

通年採用が注目されている背景通年採用が注目されている背景には、少子高齢化で労働力人口が減り、一括採用だけでは人材獲得競争に勝ち抜けないという事情があります。第二新卒や既卒者など、ターゲット層を広げる必要性があるのです。さらに、学生の卒業時期が多様化していることも影響しています。

近年はグローバル化や技術の急激な進化など社会の変化が著しく、時代に対応して事業を発展させるには高いスキルや専門技術を持つ人材が欠かせません。多様な人材を獲得するため、採用時期が限られる一括採用ではなく、通年採用が求められているのです。

 

 

3.通年採用を実施する企業のメリット

通年採用を実施する企業のメリット通年採用は一括採用と異なり採用時期や対象の制約がなく、さまざまなメリットがあります。企業が通年採用の実施で得られる5つのメリットについて、それぞれみていきましょう。

3-1.一括採用で出会えない多様な人材と会える

通年採用は一括採用のように対象が限定されないため、留学生や既卒者など幅広い候補者の中から人材を採用できるのが利点です

また、一括採用では活動時期が限られ、企業が出会える学生の数は限られます。一方の通年採用では学生と出会う機会を増やすことができ、接触する人数を増やしたり、一括採用では出会いにくい人材と接触機会を持ったりすることも可能です。

3-2.新卒者以外の採用もスムーズにできる

通年採用では、新卒者以外の採用がスムーズにできます。一括採用の場合、帰国子女を採用するためには別に「留学生枠」を設ける必要がありました。

通年採用にすることで、さまざまな状況にある学生の採用が行えます。卒業時期が3月に限らない外国人留学生や既卒者の採用も可能です。いつでも優秀な学生を受け入れる体制ができ、人材確保の可能性が広がります

3-3.ミスマッチを減らすことができる

一括採用では、採用活動の期間が限られています。そのため、短い期間内で自社に合う人材を見極めなければなりません。これに対し、選考に十分な時間をかけられる通年採用では、ミスマッチを減らせるのが利点です。

一人ひとりの求職者にじっくり時間をかけて選考することができ、求職者の疑問や不安にも丁寧に対応できます。十分な話し合いで求職者の価値観や特性などを知ることができるため、自社に適した人材であるか判断しやすくなるでしょう。お互いのミスマッチを減らして、早期離職を防ぐことができます。

3-4.内定辞退があった場合でも補填ができる

通年採用では、内定辞退を補えるのも優れたポイントです。一括採用で内定辞退があると、その後に募集を再開するのは手間がかかります。募集をかけても学生が集まらないということも少なくありません。

入社直前に内定を辞退されてしまうと、人材不足の状態で新年度をスタートすることになります。年間を通じて採用を行う通年採用であれば、内定辞退があっても、すぐに募集をかけて補完できるのがメリットです

3-5.採用スケジュールに柔軟性が生まれる

通年採用では、採用スケジュールも企業側の都合で柔軟に組むことができます。必要な時期に必要な人数の人材を採用できるため、事業戦略や採用市場の状況に合わせて柔軟に採用活動を進められるのがメリットです。

一括採用では採用期間を過ぎてから優秀な人材が現れても、採用枠が埋まっていれば採用できないという問題があります。しかし、通年採用であれば企業にとって最適なタイミングで募集をかけられるため、効率の良い人材獲得が可能です。

4.通年採用を実施する企業のデメリット

通年採用を実施する企業のデメリット通年採用はメリットばかりではありません。採用担当者の負担が増えるなど、注意したい側面もあります。通年採用を導入する際は、課題となる側面も把握しておく必要があります。

通年採用を実施する際の問題点をみていきましょう。

4-1.採用担当者の負担が増える

通年採用は年間を通して採用活動を行うため、採用担当者の負担が増えることになります。通年採用の窓口では、応募があるごとに選考の対応をしなければなりません。

一括採用の場合1年の予定は明確で、スケジュールは立てやすいのが特徴です。これに対して通年採用では応募者のピーク時期が読みづらく、面接のスケジュールなど年間計画を立てるのが難しくなります。通年採用を専任で行う担当者を置き、体制を整えて取り組む必要があるでしょう

4-2.一括採用とのバランスの維持が必要となる

通年採用への注目が高まってはいても、すぐに通年採用へと完全シフトするのではなく、一括採用とのバランスも考慮することが大切です。

全体で見ればまだ一括採用を行っている企業は多く、学生もそれに合わせて就職活動を行なっています。一括採用の時期に採用活動を怠っていると、優秀な人材の獲得を逃してしいかねません。一括採用で就職を目指す学生から見れば、通年採用を行う企業はいつでもエントリーできるため、滑り止めのようにとらえられる可能性もあります

4-3.体制構築とコストが必要となる

期間が限定されている一括採用と異なり、通年採用は1年中採用活動をしている状態です。採用活動や事前研修をその都度行うことで、さまざまなコストが発生します。

採用活動の頻度を増やすほどに、求人媒体への告知や採用広報、イベントなどのコストがかかります。これらをまとめて実施する一括採用と比較して、総合的にコストが高くなる恐れがあります。

一括採用における就職活動の時期は、学生側が企業調査を行うため、それに合わせて効率の良い広報が可能です。しかし、通年採用では企業から積極的に広報活動を行う必要があります。

これら煩雑になる選考フォローや情報発信などを効率良く行うため、体制構築や予算の設定が求められるでしょう

4-4.早期内定者への入社までのフォローが必要

通年採用で早期に内定を出す場合、入社までの期間が長く、どのようにフォローしていくかが課題になります。内定を受けたあとに他社で一括採用の選考を控えている場合、そちらに内定すれば自社の内定を辞退するケースがあり得るためです。

そのような内定辞退を防ぐため、うまくフォローしていくことが大切です。入社までの期間が長い場合は、内定者フォローの計画をしっかり立てなければなりません

4-5.教育・研修を実施しづらい

採用活動には内定者研修などの教育・研修が含まれます。一括採用ではこれらもまとめて実施することでコストを抑えることが可能です。

しかし、通年採用で採用活動が分散すれば、教育・研修もその都度行わなければなりません。それだけ手間やコストがかかることになります。入社月をある程度固定にする、中途採用・新卒採用での合同研修を行うなど、体制を整える工夫が必要です

5.通年採用で成果を挙げるための5つのポイント

通年採用で成果を挙げるための5つのポイント通年採用の成果を挙げるには、採用環境を把握するなど、押さえたいポイントがあります。ここでは、通年採用を成功させるための5つのポイントについて、詳しく説明しましょう。

5-1.採用環境を的確に把握する

通年採用を成功させるには、採用活動を行う環境について正確に把握しておかなければなりません。近年は通年採用を導入する企業も増えており、これまでとは異なる業界や企業と競合する可能性も出てきます。十分な競合分析を行い、自社が採用活動を展開する市場の状況を把握することが、的確な採用戦略を立てるために不可欠です。

5-2.さまざまな手法を組み合わせる

学生が積極的に企業調査を行う一括採用とは異なり、通年採用では企業側が自社の認知度を高めるために行動しなければなりません。求人広告を掲載するだけでなく、SNSや自社サイトなど、さまざまな手法を組み合わせるのが効果的です

特に学生をターゲットとする場合は若年層が利用するTwitterやInstagramで情報を拡散し、認知度を高める手法が欠かせません。SEOを行いながら、ターゲット層のアクセスを集めることも大切です。

5-3.採用活動を行うエリアを拡大する

通年採用で自社が求める人材を確保するためには、採用活動を企業周辺にエリアを限定せず、より広い範囲に拡大することも検討してみましょう。採用エリアの拡大は、面接や会社説明会をオンラインで行うことで可能になります

オンラインによる採用活動で、これまで物理的にエントリーが難しかった学生も採用候補者となり、人材確保の幅を広げることができます。

5-4.採用ブランディングを行う

知名度の低い中小企業などは、自社の企業イメージを高めるために採用ブランディングを取り入れてみるとよいでしょう。採用ブランディングとは、経営理念や事業内容、企業の方向性など、企業の価値観を伝えることで求職者の共感を得る手法です。

自社が求める人物像を描き、ターゲットを自社の価値観に共感する求職者に絞り込むという、量よりも質を重視したアプローチができます。採用ブランディングを効果的に行うことで、コストを抑えながらミスマッチの少ない人材確保を実現できます。

5-5.学生動向をリサーチする

学生の動向をリサーチし、ターゲットになる学生についての理解を深めることも通年採用を成功させるために重要です。

学生がどのようなスケジュールで就職活動を始め、行動しているか、どのような企業で働きたいと考えているかなど、細かい傾向をチェックしていきましょう。リサーチによるデータを蓄積することで、効果的なアプローチが可能です

6.通年採用を導入している企業例

通年採用を導入している企業例通年採用を導入し、求める人材を獲得している企業は少なくありません。実際に成功している代表例を3社、ご紹介します。

6-1.ソフトバンク株式会社

大手電気通信事業者である「ソフトバンク株式会社」は、2015年より通年採用として「ユニバーサル採用」を導入しています。従来の新卒一括採用とは異なり、挑戦する意欲ある方に広く門戸を開いた制度です。同社は世界No.1と、300年続く会社の実現を目指しています。そのためには変化を楽しみながらチャレンジできる人材が何よりも大切であり、多様な人材を獲得できるユニバーサル採用が導入されました。

募集対象は、入社時30歳未満であれば新卒・既卒を問わず、一度就職をしていても再度挑戦することができます。

選考プログラムは就労体験型のインターンシップなど多岐にわたり、自分の最適なアピール方法で臨むことが可能です。

6-2.楽天グループ株式会社

インターネット関連サービスを中心に展開する「楽天グループ株式会社」は、エンジニア職でエントリーレベルと呼ばれるポジション別通年採用を導入しています

選考フローには「選考イベントへの応募」と「ポジションを検索して応募」の2種類があり、どちらも自由に応募できます。

内定時には職種や配属が確定しているため、入社後の働き方を具体的にイメージしながら、卒業までの期間でさらに専門性を磨くことが可能です。

給与は個人の能力や経験が考慮され、入社時期は卒業時期や留学などの事情を考慮しながら柔軟に対応しています。

6-3.株式会社リクルートホールディングス

求人広告や人材派遣などのサービスを手掛ける「株式会社リクルートホールディングス」は、2019年4月以降、国内9社の新卒採用を株式会社リクルートで統合し、自由度の高い通年採用を導入しています。応募先が一つに統合されて応募作業が簡略化され、採用プロセスや内定後の配属なども、各社の枠にとらわれない配属を実現しています。

大学3年生の3月から30歳以下であれば応募でき、既卒業者や就業経験者も応募できる制度です。 365日、通年エントリーを受付しており、地域的な制約を解消するためオンライン説明会および面接を実施しているのが特徴です。

7.通年採用で求める人材を確保しよう

通年採用で求める人材を確保しよう通年採用とは年間を通して採用活動を行う制度のことで、これまで新卒一括採用を行っていた企業からも注目を集めています。新卒だけにとらわれずに留学生や既卒者など幅広い人材を獲得でき、選考に時間をかけることで採用のミスマッチを減らせるなどメリットは少なくありません。

通年採用を成功させるには、採用市場の分析や採用エリアの拡大、さまざまな広報の手法を組み合わせるなど、押さえたいポイントがあります。導入している企業例も参考に、ぜひ通年採用の導入を検討してみてください。

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