新卒を採用するスケジュールを立てる際には、採用基準と採用戦略を考慮する必要があります。また、学生の多様な就活スケジュールに合わせ、時期ごとにやるべきことが異なる点にも注意が必要です。
本記事では、2024年卒の採用スケジュール例を確認しながら、新卒の採用スケジュールを考える上でのポイントなどをご紹介します。
1.新卒の学生の就活スケジュールの変化
2016年・2017年卒の2年連続で、新卒の学生の就活スケジュールは変更されました。2015年卒以前と2016年卒、2017年卒以降の新卒の学生の就活スケジュールは、以下のとおりです。
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採用広報解禁開始
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面接選考開始
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2015年卒以前
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12月
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4月
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2016年卒
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3月
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8月
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2017年卒以降
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3月
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6月
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2015年、2016年に行われた就活スケジュールの変更は、どちらも学生への配慮を目的として行われたものです。
また、日本経済団体連合会が組んでいた新卒採用のスケジュールは、2021年からは政府が主導することが決まりました。ただし、学生の混乱を防ぐため、しばらくは現状のままとされています。2024年卒の予定者においても、3月に採用広報解禁開始、6月に面談選考開始のスケジュールです。
2.2024年卒の採用スケジュールの例
企業の規模や業界によって、採用スケジュールは大きく異なります。2024年卒の採用スケジュールを大企業・中小企業・外資系企業の3種類に分けて解説します。自社の計画にあった採用のスケジュールを確認しましょう。
2-1.大企業の採用スケジュール
インターンシップ
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2022年6月〜2023年2月
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広報活動
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2022年6月〜2023年5月
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試験・面接選考
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2023年2〜5月
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内定出し
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2023年3〜8月
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大企業の採用スケジュールは、中小企業よりも早い傾向にあります。「優秀な人材が他企業に採用されてしまう前に、自社で採用したい」という目的があるためです。
2-2.中小企業の採用スケジュール
中小企業の採用スケジュールは、大手企業とは異なり、春と秋の2回に分けて採用活動を行うことが多い傾向にあります。
まず、春採用の採用スケジュールは以下のとおりです。
インターンシップ
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2022年6月〜2023年2月
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広報活動
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2022年12〜2月
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試験・面接選考
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2023年2〜4月
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内定出し
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2023年2〜4月
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つづいて、秋採用の採用スケジュールです。
インターンシップ
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2022年6月〜2023年2月
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広報活動
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2023年6〜8月
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試験・面接選考
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2023年7〜10月
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内定出し
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2023年8〜10月
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大手企業とは選考時期をずらしているのは、春採用で大企業より先に内定を出し、秋採用で大企業の採用活動のピークが過ぎたころに内定を出すためです。
2-3.外資系の採用スケジュール
インターンシップ
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2022年6〜12月
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広報活動
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2022年8月〜2023年5月
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試験・面接選考
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2022年10〜5月
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内定出し
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2023年2〜5月
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外資系企業は、日本経済団体連合会に所属していません。そのため、就活ルールが適応されず、採用スケジュールが他業種に比べて早い傾向にあります。また、外資系の企業はインターンシップから採用につながることが多い点も特徴の一つです。
3.新卒採用の早期選考のメリット
日本経済団体連合会により、就活ルールが定められているものの、多くの企業は就活ルールよりも早く採用活動を行っています。その理由は、新卒採用の早期選考を行うことにより、以下の3つのメリットがあるためです。
- 自社にマッチした学生を確保できる
- 採用活動を早く終えられる
- 採用活動の質が向上する
それぞれのメリットについて解説します。
3-1.自社にマッチした学生を確保できる
新卒採用の早期選考のメリットの一つとして、自社にマッチした学生を確保できることが挙げられます。一般的に、学生は内定をもらうと就職活動をやめる傾向があります。
早期選考を行うとより多くの学生と出会うことができ、選考が遅くなるとそれだけ学生と出会う機会を失うことになるのです。多くの学生と接触することで、自社にマッチした学生を確保しやすくなります。
3-2.採用活動を早く終えられる
新卒採用の早期選考のメリットには、採用活動を早く終えられることも挙げられます。新卒採用の早期選考が早ければ早いほど、その分早く学生を確保できるためです。
また、早い段階で採用活動を終えられた場合、本来であれば採用活動に充てる時間をその後の入社準備や来期のための振り返りに充てることができます。
3-3.採用活動の質が向上する
採用活動の質が向上することも、新卒採用の早期選考のメリットです。選考活動を行うと、いくつもの改善点が見出されるでしょう。早期から選考を行い、仮説検証を何回も行えば、採用方法や選考形式などをより効果的・効率的なものに改善していけます。
4.採用スケジュールを立てる手順
採用スケジュールを立てる手順は、以下のとおりです。
- 採用基準の設定
- 採用戦略の考案
- スケジュールの作成
まずは、採用基準を設定しましょう。
採用基準の設定には、求める人物像を明確化することが重要です。どのような資格・能力・勤務条件・経歴・考え方を持った人物を求めるのかを具体化することで、詳しい採用基準を設定することができます。
自社が求める人物像が定まっていないと、自社にマッチしない人材を採用してしまう恐れがあります。早期退職につながる可能性も高く、企業にとってはもちろん入社した人にとっても不幸な結果になりかねません。自社にあった人材を迎えるためには、求める人物像の設定が大切です。
採用基準を設けたら、次に採用戦略を考えましょう。採用戦略を立てる際は、企業の魅力や求職者のニーズを分析し、求める人物像にあった人材を惹きつけるための手法を見つけることが重要です。採用戦略を考えることで、自社にとって適切な採用手法を選べるため、採用効率のアップが狙えます。自社のどのような情報を発信すべきなのかが分かるようになり、適切な採用広報が可能です。
採用戦略が決まったら、採用スケジュールの作成に移ります。採用時期から逆算し、説明会の日程やいつからエントリーの受付を開始するのかなど、細かい部分まで決めておきましょう。
5.前年夏(5~8月)の採用スケジュール
企業が採用スケジュールを立てるためには、学生の動きを把握することが重要です。学生の動向に合わせ、学生が参加しやすい時期にイベントを開催したり、活動時期にあわせて広報を行ったりすることで、より多くの学生の目に留まりやすくなります。
以下では、前年の5〜8月の採用スケジュールを企業と学生に分けて解説します。
5-1.企業のスケジュール
前年夏に企業がやるべきことには、以下の5つが挙げられます。
- 夏のインターンシップの開催
- 前年度の振り返り
- 秋冬のインターンシップに向けた準備
- 広報物の戦略設計
- 説明会の計画
まず、5月頃に前年度の振り返りを行い、どのような人材が何人ほど必要なのかを明らかにします。その後は、夏のインターンシップを開催しましょう。夏のインターンシップは、学生の夏季休暇の時期に開催されるため、長期にわたって開催することが多い傾向です。応募状況を見て、秋冬のインターンシップの準備も行います。
また、翌年3月から始まる採用広報解禁のために広報物の戦略設計や説明会の計画も開始しましょう。広報物の戦略設計や説明会の設計を行う際は、自社がターゲットとする人物像を元に考えるのが大切です。
5-2.学生のスケジュール
学生は5月頃に採用情報サイトに登録し、6月頃から夏のインターンシップに申し込みます。
インターンシップとは、社会に出る前の学生のうちから企業で就業体験をすることです。企業で実際に仕事をしている人から話を聞いたり、仕事を体験してみたりすることで、企業の雰囲気や仕事内容を知ることができ、学生にとっては将来を考えるための重要なイベントとなるでしょう。
インターンシップは、企業によって日数ややることが異なりますが、長期休暇に開催されるインターンシップは、比較的長い傾向にあります。学生のインターンシップへの参加率は高く、複数の企業のインターンシップに参加する場合もあります。
6.前年秋(9~11月)の採用スケジュール
9〜11月といえば、夏季休暇の終わりとともに後期の授業が開始される時期です。前年の9〜11月の採用スケジュールを、企業と学生に分けて解説します。
6-1.企業のスケジュール
前年秋に企業がやるべきことには、以下の3つが挙げられます。
- 秋冬インターンシップまたはワンデー仕事体験の実施
- 学生への個別アプローチ
- 広報の制作
夏のインターンシップが終わったばかりですが、学生との接触の機会を多くするために秋冬インターンシップやワンデー仕事体験を実施する企業が多くあります。ただし、夏のインターンシップと違って学生は授業が始まっているため、短期間で行うことが多いようです。
さらにこの時期には、夏や秋冬のインターンシップで出会った学生により企業への理解を深めてもらえるように、説明会や座談会を実施するなど、学生への個別アプローチを行うことが特徴です。
また、採用サイトの作成や企業紹介のパンフレットなどの広報の準備も同時に行います。広報物の制作期間の目安は、およそ2〜3ヵ月です。
6-2.学生のスケジュール
夏季休暇が終わり、後期授業が始まります。選考対策として、自己分析や業界研究を行い、志望業界を絞っていく時期です。就職活動の一環として、秋冬のインターンシップやワンデー仕事体験に参加する方も多い傾向にあります。
7.冬(12月~2月)の採用スケジュール
12〜2月といえば、多くの大学では後期の試験期間であるとともに、企業は採用スケジュールを決定する時期でもあります。12〜2月にかけての採用スケジュールを企業と学生に分けて解説します。
7-1.企業のスケジュール
冬に企業がやるべきことには、以下の5つが挙げられます。
- 採用スケジュールの決定
- 面接官の選定
- 面接官のスケジュール確保
- 会場の確保
- インターンシップ参加者のフォロー
採用スケジュールを決定し、面接官の選定や面接官のスケジュール確保、会場の確保などを行います。広報物の完成までの期日も同時に確認しておくことが大切です。また、各部署で採用したい人物像や人数の最終チェックも行いましょう。
インターンシップを開催した企業は、参加者へのフォローを行う必要があります。たとえば、積極性の高い学生には、追加のインターンシップやオンラインコンテンツなどの案内を個別に送ると、企業が評価していることが学生にも伝わるため効果的です。
ただし、多くの学生は後期試験期間中です。学生にアプローチする際は、試験終了後以降に行うなど学業の妨げにならないように配慮しましょう。
7-2.学生のスケジュール
ほとんどの大学では1月ごろに後期試験を実施するため、学生は学業を中心とした生活を送ることになります。
ただし、3月から採用広報が解禁されるため、2月は就活の中でも重要な時期です。自己分析や志望する企業の選考時期、選考の流れを把握し、大企業を志望する人はWebテスト対策を行うなど、後期試験が終わると就職活動で忙しくなります。
8.春の採用スケジュール
3月は、採用広報が解禁される時期です。春の採用スケジュールを企業と学生に分けて解説します。
8-1.企業のスケジュール
春に企業がやるべきことは、以下の2つが挙げられます。
春は採用活動開始の時期です。これまでに準備した採用サイトや企業紹介パンフレットなどを使い、学生に直接的なアプローチを行えるようになります。
春に企業が特に力を入れるのは、会社説明会です。1社単独で行う会社説明会と複数の企業が集まる合同説明会がありますが、近年ではWeb開催が主流となりました。会社説明会などの広報活動を行った後は、学生のお礼メールへの対応も忘れないようにしましょう。
応募状況が予想を下回る場合は、採用サイトのアクセス数などをチェックし、適宜改善していく必要があります。
8-2.学生のスケジュール
学生は春休みに入るものの、3月には採用広報解禁とともに、就職活動が本格化し、エントリシートの提出や説明会の予約・参加などで忙しくなります。4月の後半からは既に応募を締め切った企業が多く、応募できる企業が限られてきます。
9.夏の採用スケジュール
6月からは、面接やグループディスカッションなどの選考活動が開始されます。また、来年度の新卒の採用準備が始まる時期です。以下では、夏の採用スケジュールを企業と学生に分けて解説します。
9-1.企業のスケジュール
夏に企業がやるべきことには、以下の6つが挙げられます。
- 採用選考
- 面接の実施
- 内々定の通知
- 内定式の準備
- 内定者のフォロー
- 来年度の新卒採用活動の準備
6月になると、選考活動が本格的にスタートし、面接を実施したり内々定の通知を送ったりします。近年では学生が複数の内定を持つことが主流になっており、内定辞退を避けるためにも内定者フォローは重要です。
具体的には、懇談会や入社前研修、内定者交流会などが挙げられますが、近年ではオンラインで実施する企業が多くなっています。オンラインによるイベントは、対面で行うよりも味気なくなりやすいため、工夫が必要です。また、来年度の新卒採用活動の準備も並行して行う必要があります。
9-2.学生のスケジュール
夏季休暇で授業がない学生が多く、積極的に就職活動を進めます。また、複数の内定を得た学生は、入社先を絞り込み、内定辞退や入社先の同期との交流を深めていく時期です。
10.秋以降の採用スケジュール
秋には、長期間にわたる新卒採用活動が区切りとなります。10月に内定式を開催し、入社する4月まで入社前研修を行うのが一般的です。秋以降の採用スケジュールを企業と学生に分けて解説します。
10-1.企業のスケジュール
秋以降に企業がやるべきことは、以下の3つです。
前述のように、多くの企業が10月頃に内定式を開催します。必要に応じて内定者を集めて入社前研修を行います。学生は社会に出るための不安を感じやすい時期です。入社前研修は、そういった学生の不安の解消や入社までのモチベーション維持、早期戦力化するために重要です。
入社前研修では、業務に使うスキルの習得や社会人になるための意識転換などを行います。また、入社前の不安の払拭や入社後の活躍において先輩社員との交流も効果的です。
10-2.学生のスケジュール
冬休みや卒業式、内定式への参加など、学生には多くのイベントがあります。また、入社先にアルバイトとして雇用されることもあるでしょう。通常のアルバイトとは異なり、単なる労働力ではなく、入社後に即戦力として働いてもらえるように教育することがほとんどです。強制参加ではありませんが、参加することで企業との相互理解促進や社会人スキルの向上といったメリットがあります。
また、公務員志望から一般企業希望へ切り替えた学生は、この時期から本格的に就職活動を開始することがあります。
11.採用スケジュールを立てる際のポイント
採用スケジュールを立てる際のポイントは、以下の4つです。
- 採用活動のブラッシュアップを心がける
- 学生の動きに合わせた採用計画を立てる
- インターンシップに力を入れる
- 他社のよいところは取り入れる
それぞれのポイントを解説します。
11-1.採用活動のブラッシュアップを心がける
採用スケジュールを立てる際のポイントには、採用活動のブラッシュアップを心がけることが挙げられます。
「応募者が増えたのは、どの時期の取り組みだったのか」「採用につながる取り組みは何だったのか」など、計画の時点で前年度の取り組みを振り返ることが大切です。実際に採用活動が始まると、忙しさからその場しのぎの対応になってしまいがちです。
計画の時点で前年度の取り組みを分析し、反応のよかったものは今年度にも取り入れ、悪かったものは改善策を考えるなど、採用活動をブラッシュアップするよう心がけましょう。
11-2.学生の動きに合わせた採用計画を立てる
採用スケジュールを立てる際のポイントとして、学生の動きに合わせた採用計画を立てることが挙げられます。
学生はその年の就活スケジュールに合わせて活動します。自社が採用したいと思う学生の就活イベントや大学の日程などを考慮して、採用計画を立てるとよいでしょう。
たとえば、大手企業や外資系企業を志望する学生は、就活スケジュールに合わせて就活のスタートが早い傾向にあります。これは、卒業年次に研究が忙しい理系学生も同様です。これらの学生を狙う場合は、学生が大学3年生の6月からインターンシップに参加することを予想し、5月までにインターンシップの準備を負わせておかなければなりません。
また、体育会系の学生は部活引退後に就活を始めるため、就活のスタートが遅い傾向にあります。そのため、体育会系の学生を狙う場合は、学生が大学3年生の年明け以降にインターンシップを開催したり、合同説明会を開催したりと時期を考えて接点を持つとよいでしょう。
他にも、公務員試験に落ちた学生を狙うにはワークバランスなどの面からアピールするなど、求める学生に合わせて計画立てることを念頭に置いておきましょう。
11-3.インターンシップに力を入れる
採用スケジュールを立てるポイントとして、インターンシップに力を入れることが挙げられます。
大手企業を志望する学生は、6月頃にインターンシップに参加する傾向にあります。志望順位を上げてもらうために、インターンシップに力を入れることが大切です。
特に、2025年卒以降は就活ルールの変更により、ある一定の条件を満たすインターンシップ参加者の直接採用が認められたため、今後インターンシップに力を入れる企業や参加者が増えることが予想されます。インターンシップ参加者を超苦節採用するための条件は、以下のとおりです。
- 5日以上のインターンシップ
- 就業体験が必須
- 現場の社員が指導を行いフィードバックさする
- 長期休暇に行う
インターンシップを開催する際は、上記に注意して行いましょう。
11-4.他社のよいところは取り入れる
採用スケジュールを立てるポイントとして、他社のよいところを取り入れることが挙げられます。
まずは、大手企業やライバル企業などの動向をチェックすることが必要です。ライバル企業というと、同業他社を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、採用市場では同業種だけがライバルとは限りません。業種・勤務時間・地域など、あらゆる点でライバルになる可能性があります。
チェックした後は、採用手法など可能なものは自社でも取り入れてみましょう。ただし、単に大手企業やライバル企業の手法を取り入れるだけでなく、差別化を図ることも重要です。分析から給与や待遇などを知り、適切に自社をアピールする必要があります。
12.採用スケジュールは学生の動きを見ながら立てよう
近年の採用市場では、新卒採用の早期選考が主流となっています。早期選考をすると、「自社にマッチした学生が確保しやすい」「採用活動を早く終えられる」「採用活動の質が向上する」といったメリットがあるものの、ただ単に時期を早めればよいというものではありません。
学生が部活に所属しているか、専攻しているのは文系であるか理系であるかなどで、就活スケジュールが異なります。自社がターゲットとする学生の動向を見ながら、採用スケジュールを立てましょう。