グローバル人材の定義とは?必要な能力や人材育成のポイントを徹底解説

人事ノウハウ

海外で活躍できる人材を意味する「グローバル人材」という言葉をよく聞くようになりました。しかし、グローバル人材の具体像や、どう育成するかなどは必ずしも知られていないようです。本記事ではグローバル人材に焦点を当て、定義や育成方法などにつき解説しました。

1.グローバル人材とは

グローバル人材とは海外に複数の拠点を置き、事業展開する企業をグローバル企業と呼びます。企業は国境を越えてマーケットを拡大し、利益を上げてさらなる成長を目指します。

企業がグローバル化を図る際に必要となるのが、グローバル人材です。グローバル人材とは、一言でまとめると「海外で活躍できる人材」のことですが、必要とされる要件はさまざまで、文部科学省や総務省などが定義付けしています。

1-1.文部科学省のグローバル人材の定義

文部科学省の定義によると、グローバル人材にはまず、以下の3要素が必要とされます。

  • 語学・コミュニケーション能力
  • 主体性・積極性、チャレンジ精神、協調性・柔軟性、責任感・使命感
  • 異文化に対する理解と日本人としてのアイデンティティ

それに加えて、幅広い教養と深い専門性、課題発見・解決能力、チームワークと(異質な者の集団をまとめる)リーダーシップ、公共性・倫理観、メディア・リテラシーなどが必要だとしています。

文部科学省が、グローバル人材の能力水準を示したものが以下の5段階です。

  • 海外旅行会話レベル
  • 日常生活会話レベル
  • 業務上の文書・会話レベル
  • 二者間折衝・交渉レベル
  • 多数者間折衝・交渉レベル

この中で、4.と5.レベルの人材が継続的に育成され、一定数の人材層として確保されることが極めて重要だと位置付けています。

グローバル人材については、総務省も定義付けを行っています。内容は以下のとおりで、日本人としてのアイデンティティや、日本の文化に対する深い理解は前提となっています。

  • 豊かな語学力・コミュニケーション能力
  • 主体性・積極性
  • 異文化理解の精神等を身に付けてさまざまな分野で活躍できる人材

参照元:文部科学省「グローバル人材の育成について」 

   :総務省「グローバル人材育成の推進に関する政策評価書」

1-2.グローバル人材はなぜ必要なのか

日本の人口は今後、長期にわたって減少が見込まれています。企業にとっては市場の縮小を意味するため、業績拡大には海外展開が不可欠です。

世界という大きな舞台でビジネス活動を行っていくには、言語や文化、価値観などの違いを乗り越え、競争の中にも協調し合う関係を築けるグローバル人材が必要なのです。

語学力はもとより、積極性やチャレンジ精神、協調性と柔軟性などを兼ね備えたグローバル人材の育成は日本企業のみならず、日本全体にとっても急務といえるでしょう。

 

2.グローバル人材に必要な能力や要件

グローバル人材に必要な能力や要件文部科学省の定義を見てもわかるように、グローバル人材には多くの要素が必要とされます。語学力は当然必要ですが、単に語学が堪能というだけでは、グローバル人材とは呼べません。

この項では、グローバル人材と呼ぶに値する人に不可欠とされる能力や要件について、以下の8項目に分けて説明します。

2-1.語学力

グローバル人材として、第一に必須の要件となるのは語学力です。世界共通言語である英語はもちろん、幅広く他の言語も使いこなせる人材であれば、国境の壁を越えたビジネス展開に力を発揮できるでしょう。

他国の言語に合わせた会話ができなければ、伝えたいことを伝えたり、知りたいことを尋ねたりすることが的確にできない可能性が高まります。

ビジネスにおける語学力は、会話が通じるだけでは十分ではありません。相手に対してこちらの要求を聞き入れさせるなどの、交渉力も伴う必要もあります。

2-2.コミュニケーション能力

コミュニケーション能力とは、相手の話をよく聞き、意図をくみ取ることができる能力をいいます。それにあわせて、こちらの言いたい内容を的確に伝えることも重要です。

他国の人や企業との折衝では、文化や価値観の違いから議論が膠着状態に陥ることもあり得ます。そうした際にも、相手の立場や意見を尊重したうえで、こちらの主張や要望を受け入れてもらえるようなコミュニケーション能力があれば、ビジネスが円滑に進むでしょう。

2-3.主体性・積極性

グローバル人材には自ら主体的に、積極的に行動していく能力が求められます。いわゆる「指示待ち社員」であっては、グローバル人材たり得ません。

主体性を持って動くということは、自分の頭で考えて、一定のリスクを負って行動することであり、行動に責任を持つことです。自分で考えて課題解決できる力を持つ人こそが、グローバル人材と呼ぶにふさわしいといえます。

2-4.協調性・柔軟性

日本人とは異なる文化や価値観を持つ外国人と働くためには、異なる価値観を受け入れ、吸収しつつ調整する力が必要です。相手の価値観を一方的に受け入れるのではなく、自分の意見や考えも理解してもらわなければなりません。

さまざまなバックグラウンドを持つ人たちとの仕事をスムーズに進行させるためには、協調性と柔軟性が必要なのです。

2-5.責任感・使命感

海外拠点で仕事をする場合には、国内での仕事と異なるリスクや困難に遭遇することも少なくありません。グローバル人材には、直面する課題を乗り越え、逆境に打ち克つ責任感と使命感が求められます

日本人の仕事に対する責任感、使命感の強さは、世界的にも定評があるといわれます。国内では想定できないようなトラブルに見舞われても、自らの立場と使命をしっかり意識して、解決の道を探れるのがグローバル人材だといえるでしょう。

2-6.チャレンジ精神

海外拠点でのビジネス展開では、失敗を恐れずチャレンジする姿勢が重要になる場面もあります。異文化に囲まれた環境で事業を成長させるには、これまでと同じ方法を採るばかりでなく、新しいやり方を試みたり、未開拓の市場に打って出たりすることも時には必要です。

試行錯誤の過程では失敗もあるでしょう。それでもへこたれず、商品開発や市場開拓などのミッションに取り組むことで、グローバル人材としての成長が見込まれます。

2-7.ビジネスマナー

外国人を相手とするビジネス交渉や、海外拠点での業務においては、ビジネスマナーを身につけておくことが肝要です。日本人同士でもビジネスマナーは不可欠ですが、習慣や文化の異なる外国人が相手になるため、その国に合わせたビジネスマナーの習得が求められます。

日本のビジネス習慣でも名刺の出し方や受け取り方に決まりがあるように、握手をするかどうか、挨拶はどのようにするかなど、国や地域によってビジネスマナーはそれぞれです。思わぬところで足をすくわれないように、入念な準備をしましょう。

2-8.日本人としてのアイデンティティ

世界に多様な価値観や文化があるように、日本にも独自の文化があり、歴史があります。他国の人たちとコミュニケーションをするうえでは、「自分が何者であるか」を説明できることが重要です。

グローバル人材には他国を理解するだけでなく、自分と自国を理解してもらうことが求められます。日本の文化、自然、歴史などを語り、自分のバックグラウンドを知ってもらうことで、相互理解がさらに深まるでしょう。

3.グローバル人材の育成方法

グローバル人材の育成方法ここまで、グローバル人材の定義や要件について説明してきました。では、海外展開する企業になくてはならないグローバル人材は、どのように育成すればよいのでしょうか。

自社でグローバル人材を育成できれば、競争力アップにつながります。この項では、グローバル人材の育成方法について、段階ごとに細かく解説していきます。

3-1.自社が求めるグローバル人材の要件を定義付ける

グローバル人材の育成にあたり、企業によってグローバル化の進展度合いが異なるため、まずは企業ごとに必要とされるグローバル人材の要件を定義付けます。

グローバル人材に必要な能力や要件を、最初からすべて備えた人はほとんど存在しません。自社でグローバル人材を育成するなら、どのようなスキルを重視するかを決め、社内で認識を共有できるようにするのが第一歩です。

3-2.候補人材をリストアップする

続いて、グローバル人材の候補をリストアップします。人事評価システムなどを利用して、前項に示したグローバル人材に必要な能力のうち、いくつかを備えた人材を選び出すのが一般的です。

絶対に必要な能力と、できれば持っていてほしい能力に分け、点数化していくとリストアップが容易になるでしょう。

ポイントとなるのは以下の2点です。

  • 現在の業務で成果を上げているか
  • 自社が人材を的確に評価できているか

現在の業務で、会社に利益をもたらすだけの業務遂行能力があるかどうかは、グローバル人材の候補選びにおいて重要な観点です。自社に、社員のスキルや能力などを的確に評価できるシステムがなければ、グローバル人材の候補者選抜が的外れとなる危険性もあります。

3-3.育成計画を作成する

候補者が決定したら、育成するための計画を作成します。候補者はそれぞれに優れたスキルを持っているはずですが、不足する要素もあるはずです。伸ばした方がよい、あるいは不足を補わなくてはならない能力について、5W1H法を用いて育成計画を立てていきます。

具体例は以下のとおりです。

  • Who(誰を)…(例)グローバル人材候補者を
  • Why(なぜ)…(例)語学力向上のため
  • When(いつ)…(例)定期異動のタイミングで
  • Where(どこで)…(例)アメリカで
  • What(何を)…(例)語学研修を
  • How(どのように)…(例)短期留学させて

育成は実務と並行して行われることが多いため、両立できるようなプログラムとすることが大事です。長期的で具体的な計画を作成し、自社が目指すグローバル人材の育成を図りましょう。

3-4.育成計画のPDCAをまわす

育成計画を実行しても、すべてが思うように進むとは限りません。計画の進捗を定期的に確認して、うまくいかない部分があれば随時改善しなくてはなりません。

PDCA(Plan<計画>-Do<実行>-Check<評価>-Action<改善>)サイクルをまわして、うまく行った点とそうでない点、課題は何かなどをあぶり出していきます。

必要があれば、育成計画全体の修正を行い、修正された計画でさらにPDCAをまわします。Check<評価>の段階では、育成対象となっている社員にもフィードバックを行うことがおすすめです。それにより、社員も成長を実感できます。

3-5.人材を抜擢する

育成計画が終了したら、グローバル人材としての職務に抜擢します。仕事で結果を出さなくては、グローバル人材の育成に成功したとはいえません。グローバル人材といっても、得意分野と不得意分野があって当然です。職務にマッチした人材を選んで、配置しましょう。

グローバル人材の層が厚ければ厚いほど、適材適所の選択ができるようになります。グローバル人材を育成する場合、少人数に限るのではなく、できるだけ多くの人材を確保できるように進められれば理想的です。

3-6.グローバル標準のスキル研修を行う

グローバル人材を育成するには、グローバル人材にとって必要となる各種スキルに特化した研修を行うのが早道です。語学研修や海外研修をはじめとして、異文化理解に関する研修やグローバルなビジネスを視野に入れたスキル研修などがそれに当たります。

グローバル標準のスキル研修を受けることで、スキルアップを図ることができるのはもちろん、グローバル人材として育成されている社員の意識も高まるでしょう。

3-7.グローバル人材の仕事を社内で広く共有する

自社内に、すでにグローバル人材が存在する場合は、その人をお手本としてグローバル人材の仕事を社内で共有することが可能です。グローバル人材の実際の仕事ぶりを間近で観察したり、実際に体験したりすることで、仕事の性質や内容の理解が深まるでしょう。

グローバル人材の仕事ぶりを確認することにより、候補者は自身に不足する能力を確認でき、今後の学習に対するモチベーションも高まる効果が期待できます。グローバル人材の仕事を社内で広く共有できれば、グローバルな視点を職場全体に浸透させることも可能となるでしょう。

4.グローバル人材育成を進める際のポイント

グローバル人材育成を進める際のポイント前項で、グローバル人材の育成方法について細かく解説してきました。グローバル人材の育成には時間がかかるだけでなく、手間と費用も大きなものとなります。ここでは、グローバル人材の育成を進める際に要注意のポイントを3つご紹介します。

4-1.ダイバーシティを意識する

ダイバーシティは「多様性」と訳される英単語です。近年、ビジネスの場に限らず、広く聞かれるようになってきました。人種、性別、国籍、宗教など、さまざまな切り口での個人間の違いを認めようとする考え方を意味する用語としても使われています。

異なる文化や社会的背景を持つ人とのビジネスにおいては、ダイバーシティを意識することが重要です。多様な価値観がぶつかり合う中から新たな価値観が生まれ、それをビジネスの結果に結び付けていくことが、グローバル人材の役割ともいえます。

 

 

4-2.社員がアウトプットしやすい環境を作る

グローバル人材の育成に際しては、候補者となっている社員がアウトプットしやすい環境を作ることもポイントの一つです。会議のときに出席者全員に発言の機会を設けるなどの施策が、具体策として考えられます。 

新規の企画やプロジェクトの提案時に多くの社員から意見を募るようにすれば、社員それぞれがグローバル人材に必要とされる主体性やチャレンジ精神などを鍛えることができるでしょう。

4-3.上司がフィードバックしやすい環境を作る

グローバル人材の育成には、社員からのアウトプットだけでなく、上司からのフィードバックも重要です。社員がアウトプットしやすい環境を作るのと同様に、上司からフィードバックしやすい環境も整備する必要があります。面談の機会などに、上司からのフィードバックを行うのがおすすめです。

上司からのフィードバックを得ることで、社員は業務上の課題を発見し、解決に向けた努力につなげることができます。社員がモチベーションを向上させ、グローバル人材と成長していくには、ガイド役となる上司のフィードバックが大きな力となるでしょう。

5.グローバル人材の必要性は高まる一方

グローバル人材の必要性は高まる一方本記事ではここまで、グローバル人材の定義や必要とされる能力、育成方法と注意点などについて詳細に解説してきました。デジタル技術の進展で国境を越えたビジネスのハードルが低くなり、人口減による日本市場の縮小も想定される中で、企業におけるグローバル人材の必要性は高まる一方です。

高いスキルと幅広い視野を兼ね備えたグローバル人材の育成は、一朝一夕にはできません。将来を見据えて、早めの取り組みが求められるでしょう。

 

 

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