採用活動を行う人事担当者の多くは、募集段階から採用選考中、採用後と各フェーズでさまざまな悩みに直面します。本記事では採用担当者によくある悩みと解決策のほか、採用がうまくいかないときの対処法などを解説します。
1.募集の段階によくある悩みと解決策
採用活動の募集段階における、人事担当者のよくある悩みは、主に次の4点です。
- 自社に適した採用方法がわからない
- 自社の伝えるべき魅力がわからない
- 応募者が少ない
- 採用したい人物像から外れた人から応募される
それぞれの内容と解決策について、解説します。
1-1.自社に適した採用方法がわからない
募集の段階では、自社に適した採用方法がわからないと、人事担当者が悩みを抱えるケースが少なくありません。自社の採用ページや就活サイト、合同企業説明会やインターンシップなど、採用手法はいくつも存在します。選択肢が多く、なかなか絞りきれない可能性があります。
自社に合った採用方法を取り入れるためには、ターゲットとする人材を獲得するにはどの手法か有効か、見極めることが大切です。それぞれの採用手法の強みや弱み、利用者層を理解しましょう。
1-2.自社の伝えるべき魅力がわからない
自社の魅力のうち、何にフォーカスして伝えると効果的なのか、わからない場合もあります。ターゲット人材を確保するためには、求職者に対して、自社の魅力を積極的に伝えていく必要があります。
しかし、 客観的にみると魅力である点であっても、その企業で働いていると、それが自社の魅力であることに気づかないことも珍しくありません。 また、他社の実情がわかりにくく比較することが難しいことも、自社の魅力に気づかなかったり、採用ターゲットに響きやすい魅力がわからなったりする要因の一つです。
求職者へのアピールポイントがわからないときは、自社をよく知る人材紹介会社の担当者などに、聞いてみることも一案です。
1-3.応募者が少ない
応募者が集まらず、少ない状況であることも、募集の段階でみられる悩みです。応募者が集まらない背景としては、主に以下の2点が挙げられます。
- 求人に対する情報が不足している
- 募集ターゲットを限定しすぎている
求職者は、求人情報が少ないと不安を覚えることがほとんどです。また 、募集ターゲットを限定すぎている場合も、「自分はこの企業が求めている要件を満たしていない」と判断されやすくなるため、応募者が集まりにくいといえます。
応募者が集まらない場合は、求人に対する情報量や募集ターゲットの見直しをすることをおすすめします。
1-4.採用したい人物像から外れた人から応募される
採用したい人物像から外れた人からの応募が集まることも、募集段階における人事担当者の悩みの一つです。背景にあるのは、通常、以下の2点であると考えられます。
- 採用したい人物像を明確に言語化できていない
- 採用したい人物像に合わない採用方法を取り入れている
採用活動を行う際、「このような人物を採用したい」というターゲット設定を行う企業がほとんどです。
しかし、たとえば「コミュニケーション能力の高い人材」というように、曖昧な表現にとどまっているケースも多くみられます。コミュニケーション能力とは相手の気持ちや意向を察する能力なのか、物事を筋道立ててわかりやすく説明できる能力なのか、表現力の豊かさを指すのか、明確にする必要があります。
また、母集団を増やそうと採用間口を広げた結果、ターゲット人材の属性に合わない採用方法を取り入れていることも、採用における需要と供給が発生する原因の一つです。
採用ターゲットに合致した人物が応募してくるようにするには、求める人物像を明確に言語化するほか、採用ターゲットに合った採用方法を選択する必要があります。
2.採用選考中によくある悩みと解決策
採用選考中によくある悩みとしては、以下の4点が挙げられます。
- 適切な面接の仕方がわからない
- 選考辞退やドタキャンが多い
- 応募者の選定が難しい
- 内定辞退されることが多い
解決策とあわせて、それぞれの採用選考中の悩みをみていきましょう。
2-1.適切な面接の仕方がわからない
採用選考において、適切な面接の仕方がわからないという悩みを抱える人事担当者も多いです。企業は、応募者が自社の求める人材であるかどうかを判断する必要があります。そのため、人事担当者は、面接で応募者の実績や経験などを聞き出すとともに、能力や性格などを読み取ります。
しかし、応募者が面接対策をしてきていたり、逆に緊張して、本来の良さが出し切れなかったりすることがあるため、本当はどのような人物かを判断することは容易ではありません。そのため、人事担当者は、ただ決められた項目を質問し、表面的な回答のみで判断することは避けましょう。応募者の本質を見極めることが求められます。
そのためには、 応募者が面接で安心して素の部分をみせられるように、リラックスした雰囲気作りに努めることが大切です。また、取り繕ったものではない、本当の志望動機や志望度合い、人柄などを読み取るための、適切な質問を準備しておきましょう。
2-2.選考辞退やドタキャンが多い
選考辞退やドタキャンが多いことも、採用選考中によくある悩みの一つです。 選考辞退やドタキャンは、応募者の体調不良や事故などの不測の事態が原因の場合もあります。
しかし、企業に連絡をすれば、再調整が可能なことがほとんどです。それにもかかわらず、これらを理由に応募者が選考辞退やドタキャンをするのは、応募者と企業が良好な関係を築けていなかった可能性があります。企業が応募者の人となりを見ているのと同時に、応募者もまた、その企業の評価をしていることを、常に認識してください。
また、面接前の辞退やドタキャンの原因として、企業から面接日程を連絡する際の対応の悪さも挙げられます。人事担当者は、企業の顔であるという自覚を持ち、マナーを意識した対応が求められます。
そのほか、採用段階での応募者からの質問に可能な限り答えることで、応募者の不安を払拭したり不明点を明らかにしたりすることも大切です。自分の質問に対して企業側がきちんと答えてくれれば、企業に対して好印象を抱き、次の選考に行く意欲が高まることが期待されます。
2-3.応募者の選定が難しい
採用選考中によくある悩みとしては、応募者の選定が難しく、選考に通すか不採用にするかの自分の判断に、自信が持てないことも挙げられます。
前述のとおり、採用ターゲットの要件を明確に言語化しておくことで、人によって判断がぶれる事態を避けやすくなります。応募書類や面接時の態度などを考慮し、応募者が採用ターゲットに当てはまっていないと判断した場合は、不採用にしましょう。
2-4.内定辞退されることが多い
内定辞退が多いことを悩みとする、人事担当者も少なくありません。内定を出す段階まできたからといって、安心するのは早計といえます。
内定を獲得する人材は、自社だけでなく、ほかの企業からもまた評価されると考えるのが妥当です。複数の内定を得た応募者は、各企業の条件を比較し、自分にとってベストな企業を選択します。
このとき、自社の魅力が他社に比べて弱いと、内定を辞退される可能性が高いです。そのためにも、採用ターゲット人材に響く自社の魅力を、しっかりとアピールすることが求められます。
そのほか、選考途中や内定後に、自社の優秀な人材に会ってもらい惹きつけを行うことや、内定後の研修や懇談会で、定期的に接点を持つことも有効です。内定が出てから入社までの期間に企業との接点がないと、内定者の不安や不満が募る場合があるためです。
3.採用後によくある悩みと解決策
内定承諾後によくある悩みは、以下のとおりです。
- 入社前後のフォロー方法がわからない
- 適切な研修の方法がわからない
- 早期離職が多い
順番に解説していきます。
3-1.入社前後のフォロー方法がわからない
入社前後のフォローの方法がわからないという悩みもあります。入社直後は、慣れない環境にストレスを抱く従業員が多いです。そのため、入社後にさりげなく声をかけたり、悩みを抱いている従業員の相談に乗るとよいでしょう。そうすることで従業員の不安を解消し、企業に対する信頼を高められると考えられます。
人事担当者が、業務とは直接関わりのない第三者として、従業員の思いに耳を傾けてあげることが、離職防止にも有効です。
また、入社後すぐにリモートワークとなる場合、人間関係が築けていないため孤独感を感じたり、業務に関する質問や相談をしにくかったりといった状況に陥る可能性があります。
そのため、意識的にコミュニケーションの機会を設ける、あるいはメンター制度や1on1ミーティングを導入するなど、入社したばかりの授業員をフォローする必要があります。
3-2.適切な研修の方法がわからない
適切な研修の方法がわからないという悩みも、人事担当者が抱えやすいため、対策が必要です。過去の事例を確認しつつ、他社の事例も参考にして、必要に応じて外部研修も取り入れることをおすすめします。
社内研修は基本的に従業員が行うため、企業の業務や経営に関する内容を学ぶのに適しています。社内研修のメニューに向いているのは、企業ビジョンや経営方針のほか、営業や技術などの業務に必要な自社のノウハウなどです。
一方、モチベーションアップやビジネスマナー、一般的な営業手法などのビジネス知識を体系立てて学ぶ際は、外部講師への依頼を検討しましょう。
3-3.早期離職が多い
入社後の早期離職が多いことは、人事担当者にとって深刻な悩みです。早期離職が起きると、これまでかけてきた採用コストが無駄になってしまいます。また、離職した従業員の補充をする必要があるため、再び採用活動を行わなければなりません。
入社直後は慣れない環境によりストレスを抱えやすいため、新しい環境や人間関係に馴染めるように、歓迎会など、ほかの従業員との交流の機会を設けることも有効な手段です。また、すでにお伝えしたように、ささいな悩みや疑問を聞くといったフォローを行うことも大切です。
4.その他のよくある採用に関する悩みと解決策
その他の、よくある採用に関する悩みは以下のとおりです。
- 業務量が膨大
- さまざまな人との板挟みになりやすい
- 現場からクレームが入ることがある
それぞれの悩みと内容と解決策を確認していきましょう。
4-1.業務量が膨大
人事担当者は、膨大な業務量を抱えています。行わなければいけない業務の種類は、採用関連の一例を挙げただけでも、以下のように多岐にわたります。
- 採用計画の策定
- 説明会会場の予約・実施
- 書類選考の準備・実施
- 面接会場の予約
- 面接官への依頼・スケジュール調整
- 面接日程の調整
- 面接の実施
- 合否の連絡
- 内定者のフォロー
さらに、採用手法の多様化により、ますます業務が煩雑化している傾向にあるのが特徴です。従来であれば、求人サイトに募集文を掲載するだけで、応募者を集めることもできました。しかし、企業から直接応募者にアプローチをかけるダイレクトリクルーティングや、社員から人材を紹介してもらうリファラル採用をはじめとした、新しい採用手法が増えています。
また、企業によるものの、採用関連以外にも業務を抱えている人事担当者も少なくありません。日々のタスクに追われ、採用業務の振り返りや改善、効率化ができなければ、希望する人材を獲得することは困難な可能性があります。
できる限り周囲に協力を求めたり、人事業務に関連するツールを活用したりして、業務の効率化を図ることが求められます。
4-2.さまざまな人との板挟みになりやすい
さまざまな人との板挟みになりやすく、ストレスを抱えてしまいがちなのも、人事担当者のよくある悩みの一つです。人事担当者は「上司と部下」「現場と経営陣」「社外と社内」など、板挟みに直面する機会が数多くあります。人に関わる仕事であるからこその、悩みといえます。
板挟みに直面した際に、関わるすべての人に良い顔を見せようとすると、ほとんどの場合はうまくいきません。 物事をフラットに捉え、最善の選択肢を見極めることが大切です。
すべての従業員の意見や主張を受け入れることは不可能であるため、反発を買う可能性もあります。しかし、状況をよりよくするために真摯に対応していることが伝われば、おのずと理解を得られるようになると考えられます。 板挟みの状況に対するスキルを向上させるように、努めましょう。
4-3.現場からクレームが入ることがある
採用に関する悩みとしては、採用した人材に関して、現場からクレームが入ることも挙げられます。採用した人材が、現場の求める人材とマッチしていないことが、主な原因です。
新しく入ってきた従業員が現場に馴染めない、期待するほどの成果を挙げられない、あるいは成長が見られないといった場合、現場は採用過程に原因を求めることが多いです。また、現場の従業員は、こういった問題が起きるのは、人事担当者が現場をよく理解していないからだと考える場合もあります。
そのため、現場と連携して採用活動を推進することが重要です。具体的には、募集段階での採用人材のすり合わせや、現場の従業員の面接への参加などが挙げられます。
さらに、現場では何を価値を置いて働いているかといったことを、人事担当者が把握しておくことも大切です。現場の従業員に当事者意識を持ってもらいながら連携を図り、採用活動を進めることで、現場からの理解を得られやすくなるといえます。
5.採用がうまくいかないときに検討したほうが良いこと
採用がうまくいかず悩みを抱えたときに検討したい対処法は、以下の4点です。
- 採用プロセスを精査する
- 実際に現場に行って連携を図る
- 採用代行サービスや採用管理システムの利用を検討する
- 個人のスキルを磨く
これらの対処法を試すことで、採用に関する悩みが払拭する可能性があります。1つずつみていきましょう。
5-1.採用プロセスを精査する
採用がうまくいかない悩みを解決するには、採用プロセスを精査することが効果的です。現行の採用方法の問題を洗い出し、見直すことで、採用活動の改善につなげます。
前年の採用方法を踏襲し続けている企業は、少なくありません。 しかし、過去はそれでうまくいっていたとしても、今の状況に本当にあっているかどうかを、冷静に評価する必要があります。
採用プロセスの見直しでは、ターゲット人材を明確に設定することで求める人材に合わない無駄な選考をなくし、適切な選考のみに絞り込むことも重要です。 さらに、 採用した従業員のその後のフォロー体制も整えることが、早期離職を防ぎ、定着率の向上に寄与します。
社内で採用プロセスの見直しを行うほか、 外部の採用コンサルティング会社に依頼して、客観的な意見やアドバイスをもらいながら進めることも一案です。
5-2.実際に現場に行って連携を図る
採用活動がうまくいかない悩みを解決するために、実際に現場に行き、連携を図ることは欠かせません。すでにお伝えしたとおり、 採用した人材に対して、現場から人事担当者にクレームを寄せられることもあります。
採用した従業員が現場になじめない、あるいは思ったほどの成果を挙げられないといった場合、その原因を面接の採用の過程に求められる傾向があります。また、人事担当者が、現場をよく理解していないことが原因とされることもあるでしょう。
そのため、人事担当者が現場に足を運び、現場で働く従業員とコミュニケーションを取ることが重要です。そして、コミュニケーションを深めることで、現場と人事担当者のギャップを解消します。
採用した従業員と、一緒に働くのも、日々の育成を行うのも現場の従業員です。現場で求めている人材を正しく把握するために、現場との連携を強化する必要があります。
5-3.採用代行サービスや採用管理システムの利用を検討する
人事担当者の業務量の多さや、求める人材を確保できないことが悩みである場合は、採用代行サービスの導入を検討することも手です。専門知識やノウハウを豊富に備えた採用代行サービスの事業者であれば、各企業の社風や事業展開、 部門ごとの特徴を正確にとらえ、採用活動を行うことが可能です。
また、最近の多様化した採用手法の中からターゲット人材を確保するための手法を選び、採用を行うことは、人事担当者がすでに抱えている業務量を考慮すると困難なケースもあります。 そのような場合、採用代行サービスを利用することで、採用業務の一部を安心して委託できます。
さらに、ルーチン業務や日程調整の自動化、コミュニケーション工数の削減などを目的に、採用管理システムを活用することもおすすめです。採用管理システムは、採用に関する業務を一元管理し、効率化を図るシステムです。
採用管理システムを用いることで、選考の進捗の確認や応募者の選考評価、内定者のフォローなど、採用活動に関するさまざまなことの管理や自動化ができます。そのため、採用活動の効率化や、人事担当者の業務負担の軽減が実現します。分析やレポート機能が備わっているものもあるため、採用活動の効率化だけでなく、評価と改善にも役立てることが可能です。
5-4.個人のスキルを磨く
個人のスキルを磨くことも、採用活動がうまくいかない悩みに、有効な対処法です。人事担当者に必要なスキルには、以下のようなものが挙げられます。
人事担当者は採用活動にあたって、必要な人材要件のすり合わせや面接の依頼など、日頃から各部署との調整が求められます。各部署との各部署と円滑なコミュニケーションを取る必要があるほか、細かいスケジュール管理も発生することが特徴です。 そのため、社内調整力を身につけることで、これらの業務をスムーズに進められると考えられます。
またオペレーション能力も、人事担当者に求められるスキルです。 採用人数が増えると取り扱う情報量もかなりのボリュームになります。たとえば100名程度の採用を行う場合、獲得する個人情報は数千名分となり、1,000人以上に説明会に参加してもらい、数百件の選考プロセスを管理しなければなりません。
振り返りを行う際、各プロセスが数値で管理されている必要があるため、ツール活用や外注化も含めた、オペレーションの設計と運用力も求められます。このように社内調整力やオペレーション能力は人事担当者に欠かせないスキルであるため、それぞれを磨き上げることで、成果の伴った採用活動を行うことが可能になります。
6.よくある悩みを知り解決策を見出そう
採用活動を行う人事担当者は、募集段階から採用選考中、採用後と各フェーズでさまざまな悩みを抱えることが少なくありません。採用活動のゴールは、企業が求める人材をしっかりと確保することです。やらなければならないことが数多くあるため、業務の効率化に向けた取り組みも求められます。
採用がうまくいかない悩みを解決するには、採用プロセスの精査や現場との連携を行うほか、採用代行サービスや採用管理システムの利用などを検討すると効果的です。採用活動によくある悩みを知り、それぞれの解決策を確認しておきましょう。