会社の魅力を上手に伝えるには、競合他社と異なる独自の魅力を見つけることが必要です。自社の魅力について考える要素は6つあり、それぞれについて自社の魅力を考えましょう。本記事では会社の魅力を明らかにするために必要な要素や上手な伝え方、魅力を見つける方法をご紹介します。
1.会社の魅力を伝えるために大切なこと
理想の人材を獲得するには、競合他社と比較して自社にしかない魅力を上手に伝えることが大切です。自社の魅力は採用担当者の主観や数字だけで判断するのではなく、さまざまな角度から洗い出して複数の魅力を提示するようにしましょう。
ここでは、会社の魅力を伝えるためにはどのようなことをすればよいか、詳しくご紹介します。
1-1.競合他社と差別化できる魅力を考える
求職者や転職潜在層などに会社の魅力を伝えるには、競合他社と差別化できる魅力を見つけ出すことが大切です。求職者は1社に応募するのではなく、複数社に応募して一番魅力のある企業に応募したいと考えています。競合他社ではなく自社を選んでもらうため、差別化できる魅力を少しでも多く見つけなければなりません。
いざ会社の魅力は何か考えるとき、長く勤めているほど環境が当たり前になってわからなくなりがちです。経営トップから役員、社員まであらゆる立場からヒアリングし、自社の魅力を洗い出しましょう。
2.特徴別に見た会社の魅力
会社と一口に言っても大企業や中小企業、ベンチャー企業では、魅力となるポイントが異なります。大企業は給与が安定していて福利厚生が充実しているなどの魅力があり、中小企業は小規模でさまざまな業務ができるなどのアピールポイントがあります。
スタートアップやベンチャー企業は成長スピードが速く、新入社員でも責任のある仕事に取り組めるなどが魅力です。
特徴別に見た会社の魅力についてご紹介します。
2-1.大企業
大企業はブランドとしての価値があり、社会的信用が高いことが魅力です。給与が安定しており、福利厚生も充実しています。
独自の制度を設けているところも多く、他社との差別化に力を入れている会社も少なくありません。大企業は人材育成を重視し、教育制度が整っている会社が多いのも特徴です。
一方、大企業は社員が多いため分業化・専門化が進んでいます。中小企業と比べて携われる業務範囲が狭い傾向があり、実務でスキルアップする機会が少ないというデメリットがあります。仕事全体に携われないため、試行錯誤して自分に合う業務を見つけるという機会がありません。
また、大企業は組織が大きいため事業部も細分化され、社風や職場環境が部署により異なるということも珍しくありません。インターンシップで職場環境が気に入っても、配属された部署はまるで異なる雰囲気だったということもありえるでしょう。
魅力は多いものの大企業に特有な課題もあり、どのように伝えていくかも試されるところです。
2-2.中小企業
中小企業は幅広い仕事を経験できる、経営陣との距離が近いといった魅力があります。少人数のため一人が担当する業務の幅が広く、経験を積んでスキルを高めることができます。経営陣との距離が近く、アイデアや意見を受け入れてもらいやすいのもメリットです。自分の声が経営に活かされていることは働くモチベーションを高め、「もっと会社に貢献したい」というエンゲージメントを高めることができます。
大企業ではまだ古くからの年功序列制が採用されている会社が多いのに比べ、中小企業では成果主義を採用しているところも多く、実力次第で早く昇格できる可能性があるのも魅力です。人数が少ないと成果も目につきやすく、頑張ったことがそのまま評価につながりやすいのも中小企業の魅力といえます。
ただし、中小企業は大企業と比較すると給与の安定性に欠け、福利厚生も十分ではない側面もあります。そのようなデメリットを補完できるような、独自の魅力を伝えることがポイントです。
2-3.ベンチャー企業
ベンチャー企業に決まった定義はなく、革新的なアイデアや新しい技術・ビジネスモデルをもとに展開する企業のことです。事業の展開がスピーディーで、成長志向が高いという特徴があります。
小規模で社員数の少ないベンチャー企業であれば、新入社員でも早い段階で大きな仕事を与えられる可能性があります。未経験の仕事に取り組む機会も多いでしょう。
経営トップや経営陣との距離が近く、コミュニケーションも活発に行われる傾向があります。
さらに、ベンチャー企業はプロジェクトなどの進行や意思決定が迅速で、自分の提案がすぐに採用されることもあります。
ただし、少人数でスピーディーに事業を展開するベンチャー企業は一人の業務量が多く、激務であることが少なくありません。ハードな部分を補える会社の魅力を発信する必要があります。
また、ベンチャー企業は大きく成長する可能性を秘めているものの、まだ安定しておらず、事業を長く継続できるかも未知数です。そのような不安を感じさせないための魅力を伝えることがポイントといえるでしょう。
3.会社の魅力を伝えるのに必要な要素
会社の魅力はさまざまな観点から洗い出し、明確にすることが必要です。魅力を伝える要素は、自社に深く根ざしている企業理念や独自性のある企業風土、社会に提供する価値のある商品など、いくつかの項目に分けられます。自社ならではの魅力を見つけましょう。
ここでは、会社の魅力を伝えるために必要な要素を6つご紹介します。
3-1.企業の理念やビジョン
明確な企業理念やビジョンがあり、社員にも浸透している場合は会社の魅力になります。会社が目指しているものは何か、何が行動の指針となっているのか、なぜこの商品・サービスなのかを企業理念やビジョンを通して伝えましょう。事業の根幹となっている企業理念やビジョンは求職者の共感を呼びやすく、会社選びのポイントになります。
企業理念は企業活動と結びつけて語ることが大切です。企業理念だけを標語のように伝えると堅苦しいイメージになるため、伝え方には注意が必要です。なぜその企業理念なのか納得できるよう、説得力をもって伝えましょう。
3-2.企業風土
特にアピールしたい独自の企業風土があれば、会社の魅力として積極的にアピールしましょう。企業風土とは会社で働く人の気質や文化など、その企業特有の環境のことです。決まった定義はなく、環境や社員の行動様式、暗黙のルール、習慣などさまざまな要素を含みます。
企業風土と似た言葉に「企業文化」や「社風」があります。企業風土は環境によって自然に形成されるもので、企業文化は制度の創設などで意図的・戦略的に形成されるものです。自然発生的な企業風土は時代の流れや外部からのコントロールが難しく、大きく変化することはありません。
社風は企業風土と同義で使われる場合もありますが、意味は違います。社風は企業風土や企業文化によって醸成される雰囲気であり、「穏やか」「活気がある」など社員が感じている会社の特徴ということができます。
企業文化や社風で独自の魅力があれば、あわせて伝えるのがおすすめです。
企業風土はさまざまな要素で構成されています。ハード面では企業理念や社訓、組織体制など明文化されているものがあり、ソフト面では職場内の人間関係や暗黙のルール、社員の行動様式などが挙げられます。
3-3.商品や事業内容
自社が提供している商品やサービス、あるいは事業内容は、会社が社会に対してどのような貢献をしているか、どのような価値を与えているかを伝えられる要素です。
自社が提供する商品・サービスが人々にどのような価値を提供し、どれだけの社会貢献を果たしているかを伝えることは会社の大きなアピールになります。会社の一員となって一緒に社会貢献をしたいと思ってもらえるようにしましょう。
3-4.経営者や働いている社員
経営者や働いている社員の特徴、人間関係など、会社のメンバーをアピールするのも効果的な伝え方です。求職者にとって経営トップや一緒に働く社員がどのような人たちなのか、高い関心があるでしょう。
特に、経営者の魅力は、会社選びの際に判断材料になる要素の一つです。経歴に特徴がある、カリスマ性があるなどの経営者であれば、人物像を掘り下げてアピールしていくと効果が見込めます。事業の目的や社会にどう貢献したいかについて、経営者自身の言葉で伝えることも有効です。
働いている社員の年齢層や特色なども、会社の魅力としてアピールできる要素です。若年層がターゲットの場合は若い年代が活躍していることが魅力となり、社内コミュニケーションの仕組みが整っていて良好な人間関係が築けていることも、高いアピールポイントとなります。
入社して間もない社員の活躍を紹介するのもおすすめです。入社したあとの様子がイメージできるよう、社員の1日の過ごし方などで紹介すると共感を呼びます。
どのような仕事を任せてもらえるか、会社はその社員をどのように評価しているか、入社してからどのように成長したのかも伝えるとよいでしょう。
入社してから感じている会社の魅力について、社員自身の言葉で語ってもらうのも効果的です。
3-5.労働環境
働きやすい環境であることは大きな魅力です。労働環境の改善に努めていることがあれば、会社の魅力として伝えましょう。労働環境でアピールできる魅力は、以下のような内容です。
- 残業が少ない
- 残業時間削減に取り組んでいる
- 月8日以上など、休日が多い
- 有給休暇の取得率が高い
- 職務配置について社員の希望が反映される
- 幅広い働き方が用意され、社員の都合に合わせて選択できる
- 何でも相談しやすい職場環境
- 目的のわからないルールがない
- 休憩スペースなどの社内設備やサービスが充実している
- パソコンなど最新設備への投資を積極的に行っている
残業時間が少ないことや休日の取りやすさなどはホワイト企業を証明するもので、会社の魅力として大きな要素です。テレワークやフレックス制などを導入していて働き方が多様であることも、働きやすい会社であるというアピールにつながります。さらに、社内設備が充実していることも、会社の魅力として伝えることができます。
3-6.制度や待遇
制度が充実し、待遇が良いことも会社の魅力として大きなアピールになります。具体的には、以下のような内容が会社の魅力となるでしょう。
(制度の魅力)
- 研修制度が充実している
- 教育制度が整っている
- 人材育成に力を入れている
- 客観的で公平な評価制度がある
- 独立支援制度がある
- 子育て支援の制度を設けている
(待遇の魅力)
- 給与水準が高い
- 昇給の機会が多い
- 手当が充実している
- 独自の福利厚生がある
研修や教育制度が整い、スキルアップの機会を設けている場合は、会社の魅力としてアピールできます。客観的な基準が設けられた評価制度があり、公平に評価される会社は働くモチベーションを高めることができます。
また、新卒・中途採用にかかわらず実力のある人が評価される会社は、中途採用のハンデを感じることなく入社できるとして、求職者に良い印象を与えることができます。子育て支援が充実していることも、女性をサポートする会社として魅力をアピールできます。
さらに、給与や福利厚生などの待遇も、会社選びに影響を与えます。給与水準が平均より高い、入社から数ヵ月で昇給のチャンスがあるといった内容は、大きなアピールポイントです。独自の福利厚生を設けているのも、他社と差別化できる要素といえます。
4.会社の魅力を洗い出す方法
会社の魅力を洗い出すには、まず経営層や働いている社員にヒアリングすることから始めましょう。さまざまな立場の声を集めることで、多角的な観点からの魅力が明らかになります。
また、会社が求める人材の視点に立ち、魅力的に感じるかを考えることが重要です。
ここでは、会社の魅力を洗い出す方法についてご紹介します。
4-1.経営層や社員にヒアリングする
会社の魅力は経営層や現場で働く社員など、社内のさまざまな層から幅広く意見を聞きましょう。勤務している会社の魅力は長く勤務しているほど慣れてしまい、見えてこなくなるものです。部署を超えて聞き取りを行い、会社を分析しましょう。
経営理念やビジョン、会社の成長性といった内容は経営者や役員に、仕事内容や労働環境、待遇などで魅力に感じる部分は現場社員にヒアリングします。多方面から聞き取ることで、採用担当者が気づかなかった会社の魅力を発見することもできます。会社としては当たり前だと思っていたことが、自社ならではの魅力だったという場合もあるでしょう。
4-2.求める人材にとって魅力的かを考える
多方面から集めた意見は、自社が求める人材が魅力的に感じるかという観点から検討することが大切です。獲得したい人物像の視点に立ち、他社と比較して魅力と感じられるポイントを見つけなければなりません。
たとえば、求職者は会社を選ぶとき、会社の雰囲気や働きやすさ、成長性、仕事内容、自分が成長できる職場かといった点を重視する傾向にあります。自社が求める人材から見て、それらの項目で自社独自の魅力といえるものは何か考えてみましょう。
5.会社の魅力の上手な伝え方
会社の魅力を見つけ出しても、伝え方を工夫しなければ求職者にうまく伝わりません。先輩社員の具体的なエピソードを交えたり、担当者自身の体験談や思いを伝えたりするなど工夫してみるとよいでしょう。
また、会社の魅力は表現の方法を間違えるとネガティブに伝わる可能性があるため注意が必要です。
会社の魅力の上手な伝え方についてご紹介します。
5-1.具体的なエピソードを交える
会社の魅力は、具体的なエピソードを交えると伝わりやすくなります。先輩社員のエピソードを交えたストーリーを作ってみましょう。よりリアルにイメージしやすくなります。
先述した社員の1日を紹介するのも、入社後の自分をイメージしてもらうのに役立つ方法です。さらにエピソードを加えることで、会社の魅力がより伝わりやすくなります。
伝え方の一例をご紹介しましょう。
「自由な社風で、上司を名前で呼ばせるなどあまり上下の関係を感じさせない雰囲気が気に入っています。社内でチャットができるコミュニケーションツールがあり、部署を超えた交流も盛んです。入社した自分と同じ20代後半の社員が多く、よく仕事帰りに飲みに行ったりしています。仕事の悩みも気軽に相談できるのがいいですね。」
「この会社を選んだのは、教育制度が整っていることが決め手の一つでした。資格試験の対策講座が割引になったり受験料の補助があったりと、サポートが充実しています。入社して3年目ですが、資格を2つ取得して担当する業務の幅が広がりました。また、残業がほとんどなく定刻で帰れるので、帰りに買い物や好きな映画が楽しめるのもこの会社の魅力だと思います。」
「自由で人間関係が良い」など大まかな表現ではなく、実際に働いている社員の声を届けることで会社の魅力がリアルに伝わります。
5-2.担当者自身の思いを伝える
会社説明会などで、採用担当者が自身の体験談や思いを伝えることも効果的な伝え方です。担当者自身の体験として語られた内容は、求職者の印象に残りやすいです。
その際は、ただ良い面ばかりを伝えるのではなく、自社の課題もあわせて伝えると良い印象を与える場合もあります。
たとえば残業が多いという課題があれば、改善の取り組みを伝えることで、その姿勢が評価される可能性もあります。
担当者の体験談や思いを伝える方法として、一例をご紹介します。
「わが社はしばらく前まで残業が当たり前のようになっていました。しかし、労働環境を少しでも良くするため残業しない日を定期的に設け、ルーティンワークはITを導入して業務の効率化を図り、残業を少なくする取り組みを行いました。その結果、現在は繁忙期以外ほぼ定刻で帰れる状態になっています。」
5-3.伝え方を考える
会社の魅力は、伝え方次第によって求職者へ与える印象がポジティブにもネガティブにもなりえます。たとえば「活気がある職場」「アットホームな雰囲気」など表現が抽象的な場合、さまざまな解釈を与えてしまいます。
また、ネット上では「アットホームな職場」というフレーズを使うのはブラック企業だという憶測が生まれる可能性もあります。解釈によりどの職場にも当てはまるような表現を用いる場合、結果として、アピールする魅力がない会社というイメージを与えかねないのです。
そのため、会社の魅力はできるだけ具体的に伝えることが大切です。たとえば教育制度が充実しているならばどのような教育が、どのような形で受けられるのかを具体的に伝えましょう。活気がある職場であれば、定期的にイベントを開催している、部活があるなど、社内交流が盛んであることを示す具体的な内容を伝えます。
5-4.求職者の視点で考える
すでにお伝えしたとおり、会社の魅力を伝えるには求職者の視点に立つことが必要です。
求職者は会社の公式サイトや採用サイト、求人サイト、説明会などさまざまな媒体を見て会社の情報を集めます。複数の媒体から情報を集めるのは、情報不足により転職の失敗を防ぐためです。
十分な情報を集めずに入社すると、イメージしていた会社と違っていたということにもなりかねません。早期離職につながる可能性もあるでしょう。求職者は自分を守るため、各媒体で細かい情報をチェックし、会社の魅力を探っています。そのような求職者の目線に立って、会社の魅力について正確な情報を届けなければなりません。
前にご紹介した「会社の魅力を伝えるのに必要な要素」について、求職者の視点に立ってストーリーを作りましょう。
たとえば専門職の中途採用を考えているのであれば、「経験やスキルが活かせるか」「やりがいのある仕事に携われるか」という視点で仕事を探していると想定できます。
実力を正当に評価する制度が整っていることや商品・サービスの社会に提供する価値などを魅力として伝えれば、求職者を惹きつけることができるでしょう。
5-5.魅力と魅力のかけ合わせで作り出す
自社の魅力を洗い出しても、「他社と差別化できるような特別な魅力が見つからない」ということもあるでしょう。確かに、一つひとつの魅力を見れば他社でもよくあるというケースは少なくありません。しかし、それぞれを組み合わせることで、会社独自の魅力にすることはできます。
魅力を洗い出した結果、次のような会社の特徴が浮かび上がったとしましょう。
- 給与は平均並み
- 休みは普通に取れるが他社と変わらない
- 社員はなんとなく仕事や職場に満足している
- コミュニケーションが活発というわけではないが、社員同士のトラブルはない
どれも平凡で、会社の魅力として発信できるものではないとしても、すべてを揃えて考えると「ストレスのない働きやすい職場」と見ることができます。あとは伝え方一つで、魅力のある会社だということをアピールできるのです。
自社の魅力と魅力をかけ合わせ、独自の魅力を伝えてください。
6.会社の魅力を伝え、選ばれる会社になろう
求職者は複数の会社に応募し、より魅力を感じた会社を選びます。近年の人材不足という状況においては、企業が人材を選ぶというよりは自社が求める人材に選ばれる会社になるという視点が必要です。
会社の魅力は大企業や中小企業など規模で異なり、魅力を伝える要素は複数あります。社員へのヒアリングを行って自社の魅力を洗い出し、上手に伝えて選ばれる会社になりましょう。